| 夕立 |
| ヤバイと思っていた空からバラバラと大粒の雨。 「げーっ!降ってきたぁっ!」 あと5分も行けば家だったのにと思いながらハボックは瞬く間に土砂降りと化した雨の中を走る。とりあえず避難と借りた軒下は横殴りの雨の前では避難場所としてはまるで役にたたなかった。 「びしょ濡れじゃん。体ごと洗濯したみてぇ…」 己の姿を見下ろしてハボックはため息をつくと顔をあげて降りしきる雨を見つめた。しょっちゅう変わる風向きのままに右から降っていたかと思うと次の瞬間は左から、そうかと思うと軒下のハボックへと雨は叩きつけてくる。激しい降りのあまり白く霞んで見える景色にハボックは引き寄せられるように見入った。 「すっげぇな……」 叩きつける雨はここのところの晴天続きで乾ききった地面をあっという間に濡らしただけでなく、埃で白茶けていた街の何もかもを洗い流していた。 「そういやガキの頃そんな歌を聞いたな…」 まるで街中が洗濯機の中に放り込まれたようなそんな景色にハボックは幼い頃に聞いた歌を思い出す。 「ええと、なんだっけな…」 おぼろげに浮かんだもののはっきりとは思い出せないその歌詞を必死に思い出そうと首を捻っているうち、雨はだんだんと弱まり霞んでいた景色がはっきりとしてきた。 「ああ、くそ。思い出せないな」 はっきりとしてきた景色とは逆にぼやけていく記憶にハボックが苛々とそう呟いた時。 「おい」 そう声がしてハボックが声のした方を向けば傘を差したロイが立っていた。 「あ、大佐」 「……お前、人には傘を持っていけとか言ったくせに自分は持ってでなかったのか?」 呆れたように言うロイにハボックが聞く。 「ねぇ、大佐、覚えてません?夕立が街を洗濯するって歌」 「夕立が街を洗濯?…夕立、土砂降り、洗濯だ、とか言うヤツか?」 「ああ、それそれッ!!どんな歌でしたっけ?!」 噛み付かんばかりの勢いで聞くハボックにロイは引き気味になりながら考えた。 「ええと……街中ザブザブ、洗ってる、とか言うんだよな」 「そんな中途半端じゃなくちゃんと歌って下さいよ、たいさぁ」 はやくはやくと急かすハボックにロイのこめかみがヒクリと引きつる。 「ええい、煩いっ!お前が急かすから忘れてしまったじゃないかッ!」 「ええっ、そんなぁ」 二人がそうやって騒ぐうち、雨はいつしかやんで雲の隙間から陽が射してきた。雨ですっかり綺麗に洗い流された街がその日最後の陽射しを受けてキラキラと輝く中を、二人は子供の頃に口ずさんだ歌を思い出そうとワイワイ騒ぎ立てながら家への道を歩いていったのだった。 2008/08/02 |
| 今年の夏は突然の豪雨って言うのが多かったのですが、この時は怪しい空模様だなぁと思う間もなく瞬く間にあたりが真っ白になるほどの雨になり、しかも数秒おきに風向きが変わるので軒を借りたガレージにもザンザン雨が振り込んでもうぐっしょりでした。その時思い出したのが子供の頃に聞いた歌。「お空も道路も木も草も、街中ザブザブ、洗ってる」とか言う歌詞だったのですがどうにも通しで思い出せず…。うーん、気になって仕方ありません(苦笑) |