傘
ロイは雨の中を歩いている。手にしているのはお気に入りの傘だ。この間母と一緒に買い物に出かけたとき、ショー
ウィンドウに飾ってあるのを見てひと目で気に入ってしまったやつだ。
「傘なら持っているでしょう。」
そう言って眉を顰める母にどうしても欲しいと駄々をこねた。普段、あまり物に執着のない息子がの珍しい姿に、母も
「大事にするのよ」
と言ってロイにその傘を買ってくれたのだ。
ロイは雨の中くるくるとその傘を回す。傘はそれはそれは綺麗な空色で、雨の中ロイの頭の上だけが、青空を切り取った
ように見えた。傘を回せばそこから青空の欠片が飛び散って、雨雲を吹き飛ばしてしまうような気がする。ロイは楽し
そうに笑いながら、街中の雨雲を吹き飛ばしたくて傘を回しながら歩き続けた。
「たいさ、たいさってば。」
自分を呼ぶ声にロイはハッとする。目の前に心配そうに覗き込むハボックの顔を認めてロイはパチパチと瞬きした。
「大丈夫っスか?急にボーッとしちゃうからどうしたのかと思いましたよ。」
ハボックはそう言いながら傘を傾げてロイの顔を見る。なんでもないと苦笑するロイにハボックはようやく安心したように
ロイの顔から視線を上げた。
「あ、信号変わってる。」
早く早くと小走りに走り出すハボックが振り向いてロイを手招く。あの傘はもう無くしてしまったけれど、今はあの綺麗な
空色と輝く金色が雨雲を、さらには自分に近づこうとする暗雲を吹き飛ばしてくれるのだろう。
ロイは薄っすらと笑うとハボックを追って走り出したのだった。
2007/9/25
段々雨そのもののネタがなくなってきたような…(苦笑)
傘をクルクル回しながら歩くのってなんだか楽しいなって。