star on the Christmas tree


「ただいまぁ」
 玄関がガチャリと開く音がして帰宅を告げる声がしたもののなかなか姿を見せないハボックに、ソファーでブランケットを巻き付けて本を読んでいたロイは眉を寄せる。
「なにやってるんだ?アイツは」
 そう呟きはしたものの巻き付けたブランケットから抜け出して寒い玄関に行く気にはなれず、そのままリビングの扉を見つめていれば、漸く扉が開いてハボックが顔を出した。
「ああ、大変だった」
 そう言いながらリビングに入ってきたハボックをロイは目を丸くして見る。
「どうしたんだ、それ」
 ロイがそう言って指さしたのは鉢植えのもみの木だ。青青と繁ったそれをワサワサ揺らしながら運んできたハボックは、窓際によっこらせと下ろして言った。
「いやあ、商店街でクリスマスセールやってたんスけど、そこでクジ引いたら特別賞ってこれ貰っちゃって」
「すごいな、結構立派なものじゃないか」
 そう言って見上げたもみの木はハボックの背より少し低いくらいの高さがある。高さに見合うだけの枝が腕を広げたそれはなかなかに立派なものだった。
「飾りも貰ってきたんスよ。一緒に飾りましょう」
「えー」
 ハボックの誘いにロイが不服の声を上げる。寒いだの面倒だなどと言いながらブランケットを巻き巻きしているロイに目をやったハボックは、袋の中から飾りを取り出しながら言った。
「飾り付けしたら予行練習でブッシュドノエルでも作ろうかな、でも、早く終わらないと作れないよなぁ」
「………仕方ない、手伝ってやろう。その代わり中にバナナが入ってるヤツな」
 きっちり注文をつけて立ち上がるロイにハボックはクスクスと笑う。ブランケットを解いた拍子にブルリと一度体を震わせて、ロイは袋の中身に手を伸ばした。
「なにからつければいいんだ?」
「なんでもいいっスよ、好きなのからで。ああでも、てっぺんは星にしてくださいね」
「よし」
 頷いてロイはもみの梢にオーナメントを飾っていく。始めてしまえば文句を言っていたのが嘘のように楽しげに飾り付けていくロイを見て、ハボックも楽しそうに飾りをつけていった。
「おい、星がないぞ」
 殆どオーナメントをつけ終えたところでロイが言う。
「ええ?そんなはずないっスけど」
 二人は袋の中を覗き、ツリーの周りを見て回った。
「おっかしいなぁ、間違ってつけちゃったんスかね」
「せっかく私が飾ろうと思ってたのに」
 唇を突き出して言うロイにひらひらと手を振って、ハボックはぐるりとツリーの周りを回る。
「星のないツリーなんて間が抜けてる」
 ロイがそう言ってツリーを見上げれば、ツリーの向こうにハボックの頭のてっぺんが見えた。金色のそれはまるで星の輝きにも似て、ロイはクスクスと笑い出す。
「なんスかぁ?星ありました?」
 どうやったのかツリーの上からヒョコッと顔を覗かせるハボックに向かってロイが言った。
「お前、クリスマスの間ずっとそこにいろ」
「はあ?なんスか、それ」
 クククと笑うロイを首を傾げて見下ろすハボックだった。


2009/12/01


ハボックの頭のてっぺんがツリーの向こうにヒョコヒョコ見えていたら可愛いだろうなぁとv