蒼天

「昨日は凄い雨風だったが」
 並んで歩いていたロイがそう言うのにハボックはロイに視線を向ける。ロイは空を見上げて言葉を続けた。
「今日はまた見事なまでの青空だ」
 そう言って見上げた空はハボックの瞳の色と同じ色に晴れ渡っている。そうっスね、と頷いたハボックは空を見ながら歩くロイに向かって言った。
「空を見るのもいいっスけど、足元気をつけないと濡れた落ち葉って滑るっスよ」
 並んで歩く二人の足元は、昨夜の雨で散った落ち葉が大量に降り積もって茶色い絨毯のようになっている。
「ん?ああ、大丈夫……っと…うわっ?!」
 ハボックの言葉にも猶も上を向いて歩いていたロイがズルリと足を滑らせる。咄嗟に差し出されたハボックの腕に縋って難を逃れたロイにハボックが言った。
「ああ、ほら。言った傍から」
 しょうがないなぁと言うハボックの腕から手を離してロイが空色の瞳を睨む。
「煩いな、仕方ないだろう、空がお前の色なんだから」
 見上げたくなるんだ、と言うロイにハボックが首を傾げた。
「なんスか、それ。訳わかんないっス」
 ハボックが言うとロイが晴れ渡った空を指差す。
「綺麗な空色だろう?お前の瞳の色じゃないか」
 だから見上げたくなるんだ、とにやりと笑って照れた様子もなく言うロイにハボックの顔がみるみる内に紅くなった。
「なに恥ずかしいこと言ってるんスか、アンタ」
 早口にそう言うと物凄い勢いで歩き出す。そうすれば今度はハボックが濡れた落ち葉に足を滑らせた。
「おわっ!!」
「ハボックっ?!」
 手を差し伸べる間もあらばこそ、水溜りに尻餅をつくハボックをロイは呆れて見下ろす。情けない顔でロイを見上げたハボックは、ロイを包み込むように広がる真っ青な空に目を瞠った。
「……まいったなぁ、もう」
 そう呟いたかと思うとクスクスと笑い出すハボックをロイは気味悪そうに見つめる。
「頭でも打ったか?」
 そういうロイの背後を守るように広がる空を見上げて。
「綺麗な空っスね」
 ハボックはそう言って笑った。


2008/12/24