霖雨


「ったく、アイツめっ」
ロイは書斎で本を取り出そうとして、目の前にぶらぶらとぶら下がる洗濯物をかき分けて書棚へと向かう。乱暴に
よけた濡れたシャツに強かに顔をはたかれて、ロイは唇を震わせると大声をあげた。
「ハボーーックっっ!!」

「あーあ…」
ハボックは窓ガラスに頭をもたせかけてため息をついた。外を見やれば細い糸のような雨がしとしとと降り続いている。
もう5日も雨が降り続いて、ハボックは秋の長雨の季節にうんざりとしていた。
「ハボック!!」
そんなハボックのところへリビングの扉を叩きつけるようにして開けると、ロイがやってきた。目を吊り上げて口をへの
字に曲げている様子から怒っているのだと判る。
「なんスか?」
それでもハボックはそんなロイの様子を気にも留めずに聞き返した。
「私の書斎を洗濯物干し場にするのをやめろっ!」
「仕方ないでしょ、外に干せないんですから。」
「本が探せん!だいいち本がしけるだろうがっ!」
「ちゃんと空調つけて換気してますもん。」
「とにかく邪魔だ!片付けろ!」
ハボックの言うことなど耳も貸さないロイにハボックはムッとして言った。
「あの洗濯物の半分は大佐が出したヤツですよ。」
その言葉にロイはうっと口ごもった。
「それにシーツだって、洗わないわけにいかないでしょうが。そりゃね、毎晩ヤれば毎晩汚すんですから、洗ったって
 洗わなくたって一緒かもしれませんけど、やっぱ気持ちワルイでしょ。」
ちらりと横目で窺うようにしてハボックが口にした際どいセリフにロイの目元が赤く染まる。
「あ、でも、シーツに関しては大佐のほうが汚してますよねー。」
さらりととんでもない事を言われてロイは耳まで真っ赤になった。
「おまっ、おまえ…っ」
「我慢がきかないから。」
「ハボックっ!!」
「綺麗なシーツで抱いてあげたいって思うオレの気持ちも察して欲しいなあ。」
ワザとらしくため息などつきながらそう言うハボックを見つめて、ロイは何か言おうとぱくぱくと口を開く。だが、結局
言う言葉が見つからずにむすっと黙り込んだ。そんなロイの様子にハボックはくすくすと笑うと、立ち上がってロイを
そっと抱きしめる。
「たいさ。」
「お前なんてキライだ…っ」
「ごめんなさい、苛めすぎました。」
「お前はいつだって意地悪だ…っ」
完全に拗ねてしまったロイを抱きしめて、ハボックはその顔にキスを降らせる。
雨に降り込められて何処へも出かけられない休日。ゆっくりと恋人の心と体を溶かしていくには丁度よいかも知れないと
ハボックはうっすらと笑った。


2006/10/1


拍手御礼に使っていたものです。しつこく雨ネタ!雨だと洗濯物乾かなくて嫌だよね、といかにも主婦的な発想です。特にシーツとかの大物は洗えないと
ツライですよ〜。ハボ達は大層困るだろうな、と思った次第(笑)