小春


「うう、寒い……」
 ロイはそう呟くとコートの襟をかき合わせる。月が替わって急に冷え込むようになった。寒さが苦手なロイとしてはこれからの時期、外出は辛いばかりだ。それでもどうしても欲しい本があれば出かけざるを得ず、早々に用事を済ませたロイは足早に家へと向かっていた。足元ばかり睨むようにして歩いてきたロイが視線を上げればすぐそこに家の門が見えて、ロイはホッと息を吐く。駆けるように脚を早めて門を抜けると玄関に飛びつき、鍵をあけるのももどかしく中へと滑り込んだ。
「ああ、寒かった……」
 外気が遮断されてロイは体の力を抜く。今度は一刻も早く内側から体を温めたいと、廊下を抜けてキッチンに行ったものの目指す姿は見当たらなかった。
「ハボック?」
 温かいココアでも作らせようと思ったのに肝心のハボックがいないのでは話にならない。どこかに出かけるとは言っていなかった筈で、ロイはハボックを探して家の中を見て回った。
「ハボック!」
 そう声を張り上げればどこかから声がする。声の出どころを目指して歩いたロイは、中庭に続く扉にぶち当たって眉を顰めた。
「なんで庭になんているんだ……」
 せっかく寒い外から帰ってきたと言うのにまた外に出るなど真っ平だ。だが、ココアを作らせるにはハボックと話さねばならず、ロイは渋々扉を開けた。途端に冷たい空気が肌を刺してロイは「うっ」と立ち竦む。それでも何とか庭に出ると、庭の真ん中に寝転がっているハボックに近づいていった。
「………何をしているんだ、お前は」
 何を好き好んで寒い庭で寝ているのかと、目を細めて睨みつければハボックがへらりと笑った。
「お陽さまを抱き締めてるんス」
「はあ?」
 ハボックの言っている意味が判らずロイは眉を跳ね上げる。ハボックは上半身を起こすと降り積もった落葉を掌でバッと巻き上げた。
「ここ、あったかいんスよ。大佐も座ってみて」
「なんでわざわざ寒い外なんかで」
 思い切り嫌そうに言うロイの腕をハボックは強く引く。心ならずも落葉の上に尻を落としてしまったロイは、意外にもほこほこと暖かい事に目を瞠った。
「ね?お陽さまの香りがするっしょ?」
「……なるほど、それで抱き締めている、か」
 晴れた日が続いて降り積もった落葉はその中に陽射しの暖かさを閉じ込めているのだ。
「それに、ほら」
 言ってハボックが指差す先を見つめれば、黄色や紅に染まった葉の向こうに広がる晴れ渡った空。はらり、はら、と思い出したように降って来る落葉を受け止めてハボックが言った。
「いいもんスよ、ここも」
 そう言って笑う空と同じ色の瞳を飾るのは太陽の温もりを集めた金色の髪。
「そうだな」
 ロイは笑みを浮かべてそう答えると、ハボックに背中を預けて真っ青な空を見上げた。


2009/11/07


落葉の絨毯に座ってホコホコする二人。見上げるのはハボック色の空と金色の葉っぱ。