灰色の空の向こう
しとしとしと。
薄暗く沈んだ空から銀色の糸のような雨が降り注いでいる。ロイは執務室の机に肘を突いてぼんやりと空を眺めて
いた。
雨の日は嫌いだ。
しっとりと湿気を含んだ空気が体に纏わりついてその動きを遅くする。頭が重たくなって、考えることが面倒になる。
普段部下達がからかうように、雨だから焔を操れないわけではないが、それでもこの湿気は鬱陶しい。
(それもこれもアイツがさっさと帰ってこないからいけないんだ。)
ハボックが出張に出た途端振り出した雨は3日経った今日になってもやむ気配がない。まるで、ハボックの空色
の瞳が天の空色も一緒に持っていってしまったように、空はずっと灰色に染まったままだった。
ロイはため息を一つつくと書類を手に取る。普段なにくれと世話を焼いてくれる男の不在は、ロイの息抜きにも
少なからず影響していた。
(仕事がはかどらないのも、全部みんなアイツのせいだ。)
ロイは山と積まれた書類を見てそう思う。そうして書類を投げ出すと、また肘を突いて外をみやった。
自分だけの空色に、会いたくて、会いたくて。
世界はこんなにしっとりと濡れているのに、自分の心はこんなにも乾いたままで。
「早く帰って来い、バカが…。」
ロイがそう呟いた途端。
バタバタと廊下を近づいてくる足音がして、バンッと執務室の扉が開いた。
「たいさっ、ジャン・ハボック少尉、ただ今もどりましたっ」
満面の笑みを浮かべて飛び込んできた男に、ロイはまん丸に目を見開いた。それから呆れたように目を細めると
ハボックに言う。
「ノックぐらいしないか。大体お前、出張は明日までだろう?」
仕事はどうした、仕事は、と言うロイの側へ近づいてくるとハボックは言った。
「頑張って早く終わらせましたもん。」
そうして見上げるロイの頬に手を滑らせる。
「会いたくてとんで帰ってきました。」
「ばっ…」
バカかお前は、とロイが言おうとした瞬間、窓から薄っすらと陽射しが差し込んで。
驚いて窓を見やるロイのすぐ側で空色の瞳が笑った。
「やっと上がりましたね。」
そんなハボックをロイはじっと見つめる。そうして戻ってきた空色に嬉しそうに微笑んだ。
2007/2/2
拍手御礼ssに使っていたものです。しつこく雨ネタ!もうはっきり言ってやめるタイミングを逸している気がしますが(苦笑)
ま、とりあえず甘々な2人をお届けできれば、と。