水を纏う犬


ハボックはターゲットがよく見える位置へと僅かに体を動かすと小さく息を吐く。背中を汗が一筋
流れて落ちた。連日の雨で空気は重く湿っており、やんでいる今でさえじっとりとハボックを包んでいた。
ぴったりと体を覆う黒い布地が汗と湿気を吸って普段より重くなっているような気がする。顔の半分
を覆う布地と相まって不快感を増し、ハボックの集中力を削ぐのではないかと思われたが、ハボック
は真っすぐに正面を見据えたまま微動だにしなかった。
一体どれだけの時間、この場所にい続けたのだろう。ハボックは高い湿度に全身しっとりと濡れたように
なっていた。布地から覗く金色の髪は、しっとりと濡れて額に張り付いている。液体と気体の境ギリギリ
のところでどちらになろうかと悩んだ末、液体となった湿気がハボックの髪から零れ落ち、頬へと筋を
引いて流れた。
ハボックは空色の硝子細工のような瞳を僅かに細めると耳を澄ませる。時計など確認しなくても時間
が近づいていることを首筋をちりちりと焼くような感触がハボックに伝えていた。長いこと沈黙していた
コムがザザッというノイズを発し。
「ジャクリーン?」
甘いテノールが彼を呼ぶ。
「Yes,sir!」
うっとりと答えてハボックは纏ったしとりを振り払うと、ゆっくりと行動を開始した。


2007/7/3

2007年7月の拍手御礼に使っていたものです。梅雨時で家の中も外も凄い湿気で「ああもう、うざったい湿気!!」と思ったところで
浮んだのがこのss。ハボの潜入服は日本には不向きだなぁと(笑)こんなしょうもないとこからいつもネタを拾っています(苦笑)