| ボクが雨の日を好きな理由2 |
| しとしとと雨が降る中、ハボックは傘を片手に歩いていく。ふと目をやれば金髪の子供が、空色の傘に空色のレインコートを着てヒヨコ色の長靴を履いて信号待ちをしていた。くるくると楽しそうに傘を回して信号が変わるのを待つ姿を見てハボックが目を細めた時。 バシャアアアンッッ!! 子供の目の前を通り過ぎた車が水溜りの水を跳ね上げた。頭の天辺からつま先まで、どっぷりと泥水に塗れた子供は呆然と目を瞠る。髪から垂れた滴が冷たかったのだろう、ピクリと震えた子供がポロポロと泣き出したのを見て、ハボックは慌てて子供の傍に駆け寄った。 「泥を跳ね上げられたのか、可哀想に」 そう言って子供の傍らにしゃがみこんで泥に濡れた頬に手を伸ばせば、子供がまん丸に開いた目で見つめてくる。涙に煙る金色の瞳に笑いかけながらハボックは言った。 「そこの喫茶店はオレの知り合いがやってるんだ。そこでタオルを借りよう」 そう言って子供の手を取ったハボックを軽いデジャヴが襲う。泥に塗れた金色の瞳が見上げてくるのにダブって、子供だった頃の自分の姿が見える気がした。 ハボックはその幻に笑みを深めて、子供の手を引き喫茶店の扉を開ける。 「マスター、タオル貸して」 と、カウンターの中に向かって声をかければ、コーヒーの支度をしていたヒューズが眉を顰めた。 「ああ?なんだ、ワンコか。来たと思ったらなんだ、いきなり」 そう言ってヒューズはハボックが手を引いている子供に目をやる。その姿を見てニカッと笑った。 「お、いい男が台無しだ」 ヒューズがそう言いながら差し出したタオルを受け取って、ハボックは子供の顔を丁寧に拭いてやる。脱がせたコートや靴も手早く拭いていくハボックにヒューズが言った。 「おいおい、なにか懐かしい風景だな」 「はは、マスターもそう思ったっスか?」 互いに遠い雨の日を思い浮かべて言葉を交わす二人に子供が不思議そうに首を傾げる。ヒューズは暖かいミルクを差し出しながら言った。 「昔な、このデカイお兄ちゃんもお前さんくらい小さい時、そんな風に泥まみれになってここの喫茶店に来たのさ」 「大佐や中尉やみんなとっても優しくて、オレ、そんな風に泥まみれになったのに益々雨の日が好きになったもんなぁ」 「挙句ロイ達に懐いて部下にまでなっちまってよ」 からかうように言うヒューズに苦笑するハボックを見ていた子供が、ハボックの目元に手を伸ばす。拭いたコートや傘を脇に置いたハボックは子供の体を抱え上げてスツールに腰掛けさせた。 「お兄ちゃんも昔は俺と同じくらい小さかったの?」 「ん?…ああ、そうだよ」 「だったら俺も大きくなるかな」 「そりゃあなるさ。ちゃんと寝て食って運動したらな」 そう言って笑うハボックの目元を子供はもう一度そっと撫でる。 「お兄ちゃんの目、空みたいだ」 金色の瞳を輝かせて子供はそう言うと、ハボックにギュッとしがみ付いた。そんな子供を見てヒューズが笑う。 「この子もお前さんみたいに“部下にしてくれっ”って言うのかね」 「そりゃ頼もしいや。そう言ってくれたら嬉しいっスけど」 楽しそうに笑うハボックの空色の瞳を子供―――エドワードはうっとりと見つめて。 そうして。 「やっぱりここにいたっ、少尉っ!」 カランとドアベルを鳴らし、雨の滴を撒き散らして店の中に飛び込んできたエドワードは、カウンターに座るハボックを見てそう言う。煙草に火をつけていたハボックは、エドワードに煙がかからないよう顔を背けて煙を吐き出すと言った。 「おう、大将。どうだった?」 あまり心配してそうもない口調で言うハボックをキッと睨んでエドワードは言う。 「受かったに決まってんだろ。少尉、俺、国家錬金術師になった」 「そうか。そいつはおめでとう」 言ってハボックはエドワードの金髪を優しく撫でた。 「めでたいけど、それじゃあ大将にオレの部下になってもらう夢は消えちまったな」 そんな風に言いながら頭を撫でるハボックの手をエドワードはむんずと掴む。 「だったら少尉が俺の部下になってくんない?」 「そいつは嬉しいお誘いだけど、生憎オレの首輪の主は決まっちまってるからなぁ」 「そんなのいいじゃんっ!俺の方が絶対少尉を大事にするぜっ!」 苦笑するハボックにエドワードが噛み付くように言ったその時。 「人の部下にちょっかい出すのはやめて欲しいものだな、鋼の」 扉を開いて入ってきたロイが眉を顰めて言う。エドワードはハボックの手を握り締めたまま言った。 「別に少尉はアンタの持ちもんじゃないだろっ!優秀な人材を引き抜くのは俺の勝手だ」 「そう簡単に引き抜かれてたまるか。他を当たれ、他を!」 ロイはそう言ってハボックの手を握るエドワードの手の甲を思い切り抓る。そのあまりの痛さに流石に手を離して、エドワードは涙の滲む金色の目でロイを睨みつけた。 「何すんだっ、このオッサン!!」 「オッ…?!誰がオッサンだっ!大体豆のクセに生意気だぞッ!!」 「誰が豆粒ドチビだーーッ!!少尉は俺が面倒見るんだッ!!」 ギャアギャアと喚きあう二人を見ながらハボックが笑う。しとしとと雨が降る中、その空間だけがぽっかりと明るく暖かだった。 2009/06/12 |
以前書いた「ボクが雨の日を好きな理由」の続きです。ロイ……何歳なんだろう(苦笑)うちの場合ハボック総モテなので、いつもロイとエドがハボを取り合う事に。ハボとしてはエドの事はとっても可愛いけどやっぱりロイvって感じでしょうか(笑)雨でも彼らがいるところはほんわか明るく暖かだと思います。 |