wedding band 第七章
冷たくなってきた風にぶるりと体を震わせると、ロイは伏せていた顔を上げた。きらきらと輝いていた川面には
夕暮れの気配が忍び寄り、オレンジからグレーへと瞬く間に色を変えていく。ロイはため息をつくとゆっくりと
立ち上がった。ずっと同じ姿勢で座り込んでいたために、体の節々が固まってしまったようにぎしぎし言う。
ロイは立ち上がったもののどこへも行くことが出来ずに小さく体を震わせると、冷たくなった手を上着のポケット
に突っ込んだ。
「?」
指先が何か硬いものにあたってロイはそれを掴むとポケットから取り出した。
「あ…」
取り出したものをロイは目を見開いて見つめる。それはペリーの結婚式の前に骨董品屋で手に入れたライター
だった。ロイは銀色の塊を握り締める。ハボックに渡すつもりが慌しさに紛れて忘れてしまっていた。いっそのこと
川に投げ入れてしまおうかとロイが思った時。
「たいさっ!」
自分を呼ぶ声にロイの体が大きく揺れる。ゆっくりと振り向いた先に息を弾ませて立つハボックの姿があった。
「よかった、こんな所にいたんですね…」
探しましたよ、と駆け寄ってくるハボックを見つめていたロイは手にしたライターを開けるとシュボッと火をつけた。
そうして、自分とハボックの間の草地に向けて放り投げる。ライターの火は乾いた草に燃え移ると瞬く間に燃え
広がった。
「な…っ、たいさっ?!」
火の向こうで無表情で自分を見つめるロイの姿にハボックは一瞬躊躇したが、ぐっと唇を噛み締めると自分と
ロイの間を遮る炎の中へ飛び込んでいく。ブワッと燃え上がる炎に、それでもハボックはロイに向かって走った。
「…うそっ」
ロイは炎を突っ切って自分に向かって走ってくるハボックの姿に目を見開いて呟いた。慌ててポケットから発火布
を取り出して嵌めると炎に向かって指を鳴らす。瞬間薄くなった空気にハボックはよろめいたが、それでも炎の
消えた地面に踏みとどまると呆然と自分を見つめるロイを見た。頼りなげなその表情にハボックは小さく笑うと
ロイに向かって腕を伸ばす。びくりと震える体をそっと抱きしめてハボックはその耳元に囁くようにロイを呼んだ。
「たいさ…」
その声にロイはびくんと震えると腕を突っ張ってハボックから体を離す。
「なんであんな無茶するんだっ!炎の中に飛び込むなんて…っ」
「だって突っ切らなかったらアンタを抱きしめられないじゃないっスか。」
「なん…っ」
ハボックは自分を見上げてくる黒い瞳を見つめると微笑んだ。
「たいさ…不安にさせてごめんなさい。」
そう言うハボックをロイは目を見開いて見つめる。
「悲しい想いさせてごめんなさい…。でも、オレとレティシアはなんでもないから、オレが好きなのはたいさだけっス
から…。」
「ハボック…。」
「すき…。」
囁きと共に降ってきた口付けを受け止めてロイの心が震える。ハボックの背に回した手がロイの心を映して
小刻みに揺れた。唇を離してハボックの胸に顔を埋めるとロイは呟いた。
「いいのか、私で…」
ハボックはロイの髪に顔を埋めると答える。
「アンタでなきゃイヤです。」
ハボックはそう言うとロイの顔を覗き込んで微笑んだ。ほんのりと目元を染めるロイの頬にチュッとキスをすると
すぐ先に落ちているライターに目をやる。
「ライターなんて持ってたんスね。」
「…マシュウの田舎の骨董屋で買ったんだ。お前にあげようと思って…。」
決まり悪そうにロイが言うとハボックはロイから体を離してライターを拾い上げた。
「オレにくれるつもりのものなら貰ってもいいっスか?」
「えっ、でも…」
短時間とは言え炎の中に置かれたそれはすっかり煤けてしまって元の銀色の輝きはどこにもない。
「汚くなっちゃったし…」
「そんなの、どうとでもなりますよ。アンタがオレにくれようとしたのに置いていく訳にいかないでしょ。」
ハボックはそう言ってにっこり笑うとハンカチにライターを大切に包み込んでポケットに入れた。
「あー、オレもお返しに何かあげられたらいいんスけど…。」
「別にお返しが欲しくてあげたわけじゃない。」
「そりゃそうでしょうけど。」
ハボックはそう言うと辺りを見回した。ところどころ夜目にも白く見えるものに気がついて歩いていく。
「ハボック?」
少し行った先で地面にしゃがみ込んでなにやら始めるハボックに、ロイが不思議そうに聞いた。
「ちょっと待って下さい。」
ハボックは答えるとごそごそと何かを作っている。暫くして、できたと呟いて立ち上がるとロイのところへ戻って
来た。
「たいさ、手、出して。左手。」
ロイは首を傾げながらも言われたままに手を差し出す。ハボックはその手を取るとロイの指に持っていた
シロツメクサの指輪を嵌めた。そうしてその指輪を嵌めた指にキスをする。指に唇を寄せたまま上目遣いで
見上げてくるハボックの視線に、ロイはたちまち真っ赤になった。
「ば、かっ…おまえ…っ」
「今はこれしかあげられないけど、ちゃんときちんとしたのあげますから受け取って下さいね。」
「べつに、私は…っ」
「お嫁に貰ってあげるっていったでしょ。」
そう言って笑う空色の瞳に、マシュウの結婚式で貰ったブーケを思い出した。紅くなって俯くロイを、ハボックは
立ち上がるとそっと抱きしめる。
「明るければ四葉のクローバー探すんだけどなぁ。」
「四葉の?幸運のお守りってヤツか?」
「それもあるけど、四葉のクローバーの花言葉…はっぱだから葉っぱ言葉かなぁ…それ、知ってます?」
にこにこと笑って言うハボックにロイは聞いた。
「四葉のクローバーに花言葉なんてあるのか?」
聞いたことないぞ、と言うロイにハボックは答えた。
「あのね、『私のものになって』っていう意味なんスよ。」
だからアンタにあげたかったんだけど、と笑うハボックをロイは目元を染めながら蹴飛ばした。それからハボック
の腰に腕を回してぎゅっとしがみつくと小さな声で言う。
「もう、とっくにお前のものだろう…?」
ちがうのか、と見上げてくる濡れた黒い瞳にハボックは思わずロイをぎゅっと抱き返していた。
「やべぇ…どうしよう…」
ぼそりと耳元で囁くハボックをロイは不思議そうな顔で見る。ロイはそんなロイに困ったように笑いかけると
腰を押し付けて言った。
「シたくなっちゃいました。」
「ばっ、ばか言えっ!こんな所でできるかっっ!」
陽が落ちて暗くなったとはいえ、辺りは何もない野っぱらだ。川沿いには遊歩道もあり、誰かが通らないとも
限らない。
「大丈夫、暗いから判りませんよ。それに全部は脱がせないから。」
「お前には恥じらいと言うものがないのかっ!!」
「まあまあ。」
ハボックはそう言うともがくロイの体を抱きしめて口付ける。
「んっ、ん―――っっ」
深く口付けられ口中を弄られる。舌をきつく絡め取られて歯列をなぞられ唾液を交し合ううち、かくんと力の
抜けたロイの体をハボックは草の上にそっと横たえると囁いた。
「たいさ…すきです…」
「や…ハボっ」
シャツの中に忍び込んできた指に胸の飾りを弄られてロイが身を捩る。ハボックの腕から逃れようと四つに
這ったところを後ろから抱え込まれ、更に乳首を嬲られてロイは頭を振った。
「あっ…あんっ…いやっ」
「いやじゃないでしょ、ここ弄られるの好きなくせに…。」
そう囁くとハボックはきゅうと両方の乳首を引っ張る。
「あああっっ」
胸を仰け反らせて喘ぐロイの耳元をきつく吸い上げると、ハボックはロイのズボンに手をかけた。ベルトを外し
下着ごと膝の辺りまで引き摺り下ろす。
「やだぁっ!」
羞恥に体を震わせるロイの中心に手を這わせるとゆっくりと扱き出した。たちまちとろとろと蜜を零しだすソコを
緩急をつけて追い上げていく。
「あっ…んんっ…や…いやっ…ハボっ」
逃れようと腰を振るさまが却ってハボックを煽っている事にロイは気がつかない。ハボックはロイの中心を握り
閉めたまま体を下げると、奥まったところで密かに息づく蕾へと舌を差し入れた。
「ひ…っ」
逃げようとするロイの中心をぎゅっと握れば大きく体が震える。前と後ろを同時に弄られて、ロイは涙を零し
ながら喘いだ。
「ふ…ぅうんっ…あっ…ああんっ」
がくがくと脚が振るえ、正直握られた中心と差し込まれた舌で体を支えているような状態だった。ハボックは
ひくつく蕾にたっぷりと唾液を流し込むと顔を上げる。滾る自身を取り出すと、ぴたりと押し当てた。
「挿れますよ…。」
囁く声と共に熱い塊りが押し入ってくる。
「あ、あ、あ」
みちみちと押し開かれて、その圧迫感にロイは目を見開いて熱い吐息を零した。
「あっあああっ」
ぐんと最後まで押し込まれて、その衝撃でロイはハボックの手の中に熱を吐き出してしまう。ハボックは手の平
に受けたその熱を擦りこむように、達したばかりのロイ自身を乱暴にすりあげた。それと同時に入り口まで引き
抜いた自身を一気に最奥まで突き上げる。
「ひあああっっ!…あっ…やぁっ…ま、って…アッアア―――ッッ!!」
達したばかりで敏感な体を前と後ろから乱暴に弄られて、強烈な快感にロイは身悶えた。
「ひぃっ…あっあ…ヘンに、なるっ…あっ…やだあっ」
あられもない声を上げてロイは白濁を吐き出した。
「ひぅぅっ…や、も、はなして…っっ」
ロイが熱を吐き出してもハボックはロイの中心から手を離そうとしない。絶え間なく追い上げられてロイはなにが
なんだか判らなくなっていく。下半身がぐずぐずに溶けてそこから湧き出てくる快感しか感じられない。がつんと
突き上げられると同時に体の中に熱いものが広がって、ロイはびくびくと体を震わせた。
「ああ…は…」
体を内側から焼かれる快感にロイの中心から熱が迸る。
「たいさ…もっとホシイ…」
耳元で囁く声にロイの蕾がひくついてハボックを中へと誘った。
「あっ…ハボっ…」
「キモチいいの…?」
吹き込まれる声にロイは夢中で頷いた。その途端、ロイの中に埋め込まれたハボック自身が嵩を増し、ロイは
圧迫感に喘ぐ。ぐいと肩を引かれて体を起こされたと思うと、次の瞬間、ハボックに後ろから抱え込まれた
ままハボックの上に座り込んでいた。
「あ…っ」
ずぶと奥深くまで押し込まれて、ロイは目を見開いて喘いだ。ハボックはロイの脚を開くと、ロイの右手をとり、
その中心を自分の手と重ねて包み込む。二人の手でゆっくりと中心を扱くとロイがいやいやと首を振った。
「やっ…やだっ…あっこんなっ」
自身の熱を自分で確かめさせられてロイがふるふると首を振る。ハボックが乳首に指を這わせると、びくんと
体が震えた。
「このまま弄ってて…。」
ハボックはロイの手を自身に添えさせたまま手を離すと、ロイの片脚をズボンから引き抜いてしまう。ロイの
脚を更に開かせると、ハボック自身を咥えこんだ入り口に指を這わせた。
「あっ…っやああ…っ」
ロイはハボックの肩に頭を預けながら喘ぎを零した。もう、ハボックの手が添えられていないのにも係わらず
ロイの手は自身を握り締め、無我夢中で扱いていた。ハボックは淫らに乱れるロイの姿にうっすらと笑うと
入り口に這わせた指をゆっくりと埋めていく。
「ひぃっ…そ、んなっ…ムリっ」
裂けちゃうと悶えつつ、ロイの手は休む気配がない。くわえ込む入り口の内側をそろりと撫で上げれば、ロイの
中心から白濁が迸った。
「いやああああっっ」
自身の手を熱で濡らしながら身悶えるロイの最奥を穿つと、ハボックは熱い液体をたっぷりと注ぎ込んだ。
ぐったりと気を失ったロイの服を整えてやるとハボックはロイの体を抱えあげた。ゆっくりと歩き出しながら
どうしたものかと首を捻る。
「このまま帰ったら、後で大佐とビリーと、2人から殴られるだろうな…」
どう見ても情交の後が色濃く残るロイを見下ろしてハボックは苦笑した。
「大体、父さんと母さんに見られたら…」
その後の騒動を思い浮かべてハボックはぶるりと身を震わせる。
「やっぱ拙かったかな…」
そう呟いたハボックは腕の中で幸せそうな笑みを浮かべて眠るロイを見て微笑んだ。
「ま、いっか。」
ハボックはそう言うとロイの目蓋にそっとキスを落とし、夜の道を歩いていったのだった。
2007/3/6
拍手リク「ハボの実家に行くハボロイ話が読んでみたいです。設定的にはリクssの横恋慕ビリーがおいしかったので、それから数ヵ月後に、
ハボの身内か友人の結婚式が故郷で行なわれるのにロイも出席…とかは無理でしょうか。ビリーの横恋慕というかビリー→ロイみたいなのは
必ず欲しいです!ハボがきっと また大変ですが」でした。どうも最近話が長くなりがちというか、実家に行くまでが既に長かったですねぇ…。
きっとこのあとロイは家に帰りつく前に目が覚めたと思います〜。それから、ビリーは絶対にハボに自分が負けているとは思っていないので、
きっとリベンジしてくることでしょう。troublemaker returnsとかいって(笑)遅くなりましたが、お楽しみいただけたら嬉しいです。