ワガママなくちびる
「それで、話というのは何だ?」
リビングのソファーに腰掛けながらロイは聞いた。司令部からロイを送ってきたハボックが話したいことがあると言い
出したのはロイが玄関の扉を閉めようとした直前で。ひどく緊張した面持ちでそう言ったハボックに、半ば気おされる
感じでロイはハボックを家に上げた。リビングに入ってきたものの、ハボックはうろうろと視線を彷徨わせるばかりで
何も言おうとしない。
(いつもは腹が立つほどふてぶてしいくせに一体何だというんだ…っ)
ロイのさして長くもない気が尽きようかという時になって、やっとハボックが口を開いた。
「あ、あのっ」
「なんだ」
即答で返事が返って、ハボックはまた、うっと詰まってしまう。だが、流石にロイにじろりと睨まれて何度か唾を飲み
込むと、必死の面持ちで告げた。
「ア、アンタが好きですっ!オレと付き合ってくださいっっ!」
一息でそう言うとぺこりと頭を下げる。かちんこちんに固まってしまったハボックをロイはまじまじと見つめる。気まずい
沈黙が部屋を満たし、ハボックはそっと顔を上げてロイの様子を窺った。すると、じっと無表情で己を見つめるロイと
視線が合ってしまい、ハボックは慌てて目をそらした。答えてくれないロイにハボックは居た堪れなくなって、体を
起こすと頭をかきながらへらりと笑ってみせた。
「あはは…こんなこと言われたって迷惑っスよね…。何言ってんのかな、オレってばっ!いやもう、今言ったことは
忘れて―――」
「いいぞ。」
「忘れてくれちゃっていい…へ?」
「付き合ってやってもいいぞ。」
「………え?」
すっかり呆けてしまっているハボックにロイは苛々と言った。
「自分と付き合って欲しいと言ったんじゃないのか?」
「そうっスけど…」
「だから、付き合ってやってもいいと言ってるんだ!」
「…え?…マジっスか?」
「嫌なら別にそれでも構わんが…」
「いえっ!付き合ってくれるってんなら、それはもう、最高で…っ」
「なら、決まりだ。」
にやりと笑うロイにハボックは目をまんまるに見開いた。それから何度か瞬くとぎゅっと拳を握り締めて。
「やったあっっ」
ハボックは感激の雄たけびを上げたのだった。
感動して騒ぎ立てるハボックを宥めすかして帰すとロイはソファーにどっかりと座り込んだ。ハボックがいた時には
殆んど無表情を装っていた顔が今ではすっかり緩んでいる。ぱしぱしと両手で頬を叩いて、そのまま両手を頬に
あてて、腿の上に肘をついた。
「…ったく、一体どれほど待たせれば気が済むんだ。」
ハボックの告白に仕方なくつきあってやるという風を装っていたロイだったが、実の所、ロイもずっとハボックのことを
憎からず想っていたのだった。好きになった時期からいったら、もしかしたらロイのほうが先だったかもしれない。
だが、自分の方から告白するのなんてとんでもないと思っていたロイは、ハボックも自分を好きらしいと判った時点で
ハボックの方から言ってくるように仕向けようと、いろいろ手を打ってみた。二人きりの時間を作り、それとなく話題を
振ったりもした。しかし、ハボックときたら、あーだのうーだの言うばっかりでちっとも埒が明かない。いい加減焦れて
こっちから押し倒してやろうかと思った矢先の告白だったのだ。
ロイの顔がまたふにゃりと緩む。普段のロイを知る人なら信じられないだろうが、ロイにしてみれば散々待たされた
のだから顔が緩んでも仕方がないというものだ。もっともそんな顔を誰かに、ましてハボックに見せるつもりなど
さらさらないのではあるが。
「シャワーでも浴びるか…。」
ロイはひとつ伸びをすると鼻歌交じりに浴室へと向かうのだった。
「大佐、この書類にサイン下さい」
ノックもそこそこに執務室に入ってくるなりハボックが言う。ロイがあからさまに嫌そうな顔をすれば、ハボックはずいと
書類を突き出した。
「急ぎなんスよ、大体、大佐が書類止めとくのがいけないんでしょうが。」
そう言われてしまうとロイとしても反論できず、しぶしぶと書類を受け取ると目を通した。上目遣いにハボックの様子を
窺えば煙草を取り出して火をつけている。その煙草を咥えた唇に視線が引き寄せられて、ロイは無理矢理書類へ目を
向けた。
(キスしたい…)
唐突に湧き上がった感情にロイは慌てて首を振った。そんなロイをハボックが怪訝そうに見つめる。
「どうかしたんスか、大佐?」
問われて思わず上げてしまった顔が、普段とはうって変わって幼い表情を浮かべている事にロイは気づかず、ハボック
は、そんなロイにまたひどく動揺した。
(オレっ、ヘンなこといったかな?)
漸く想いを告げたばかりの相手にそんな顔で見つめられて、冷静でいられるほど人間が出来ていない。思わず抱き
しめてキスしたい衝動に駆られてハボックは知らずロイの頬に手を伸ばした。ハボックの指先が僅かにロイに触れた
途端、ロイの体がびくりと震える。そんなロイにハボックはハッとして手を引っ込めると慌ててロイから目を逸らした。
不意にそっぽを向いたハボックにロイは酷く傷ついた自分に気づき、そのことでハボックに理不尽な怒りが湧いてくる。
ロイはサインをした書類を突きつけるとハボックを睨みつけた。
「ほら、これでいいんだろう。」
そういうと、すぐ他の書類に視線を落としてしまう。なんだか急に機嫌の悪くなったロイにハボックはどうしてよいか
判らず、逃げるように執務室を飛び出した。
(なんで、あそこで目を逸らすんだっ?!あそこはどう考えたってキスのタイミングだろうがっ!)
ロイはハボックが出て行った扉を剣呑な眼差しで睨んだ。
(好きだと言ったんならとっととキスのひとつもしてこいっ、あのバカ犬っ!)
心の中でハボックを罵りながらロイはそっと自分の唇に触れる。途端にハボックの煙草を咥えた唇を思い出し、ロイは
赤くなって手にした書類をくしゃくしゃに丸めてしまった。
バタンと執務室の扉を閉めてハボックはため息をついた。普段見たことのないロイの表情に思わず手を伸ばして
しまった。ロイにしてみれば酷く嫌だったのかもしれない。途端に機嫌が悪くなってしまったのはきっとそうに違いないと
ハボックは思う。
(オレが突然好きだなんて言ったから、つきあってもいいなんて言ったけど、大佐にしてみればきっとオレを哀れに
思ってオッケーしてくれただけなんだろうし、その相手にいきなりあんなふうに触られたらそりゃ、怒るよな…)
ハボックはそのままずるずる座り込みそうになる体を引き摺って自席に戻ると、急ぎの書類を握り締めたまま机に
突っ伏してしまった。
「あの、大佐…。」
「なんだ。」
あと30分ほどで終業時間となる頃、ハボックは執務室で漸くロイが1人になったところを見計らって顔を出すと言った。
だが、感情の窺えない視線で見返されて、途端に言葉に詰まってしまう。
「なんだ、と聞いているんだが?」
畳み掛けるように聞かれてハボックは唇を舐めるとなんとか言葉を搾り出した。
「えと、今夜は何か用事とかあるんスか?」
「特に何もないが。」
「あー、だったら一緒に食事でもっ、その、そんなにいいとこには連れて行けませんけど…」
ハボックはそう言ってロイの顔色を窺う。そもそも少尉の自分が大佐を食事に誘うなんて、財布の中身を考えたら
酷く無謀な気もするが、でもやっぱりデートの真似事でもしてみたいわけで。だが、なかなか答えないロイに、やっぱり
無謀だったかと諦めようとした頃、やっとロイが口を開いた。
「それなら、私の家で食べよう。」
「え…?」
「お前、料理が得意だと前に言っていたろう。何か作って食べさせろ。」
そう言って真っ直ぐ見つめてくるロイにハボックの顔が明るくなる。
「いいっスよ!じゃあ、材料買って大佐の家に行きますから…」
嬉しそうに言うハボックにロイは鷹揚に頷いてみせる。
「大佐、何か苦手なものとかないっスか?逆に食べたいものとか?」
「特にない。お前が得意なものを作ってくれればいい。」
ロイの言葉にハボックは笑って頷いた。
「わかりました。じゃあ、後で!」
ハボックはそう言うと軽快な足取りで執務室を出て行った。
ロイは仕事を早々に終えると飛ぶように家に帰って来た。今日はハボックが家に来ると思うと嬉しくて仕方がない。
それも、手料理をご馳走してくれるというのだから嬉しさもひとしおというものだ。それに、とロイは思う。
(この間はキスもしてこなかったけれど、家で寛いだ雰囲気になればキスどころかそれ以上だって…)
そう考えて、ロイは1人で赤くなった。あからさまに期待する自分に戸惑わないと言えばウソになる。
(でも、ずっと好きだったんだ…)
漸く両思いになった相手とその先を望んだって罰は当たらないだろうと思う。ロイは時計を見ながらハボックがやって
来るのを今か今かと待っていた。
市場で買い物を済ませたハボックが漸く家にやってきて、キッチンへと通すと早速料理を始める。その手際のよさに
驚いたように見つめるロイを、ハボックは邪魔だからとリビングへ追いやってしまう。本音を言えば、ロイの黒い瞳に
じっと見つめられると手元が狂いそうで、側にいてほしくなかったというところなのだが。だが、ロイはキッチンから
追い出されて不満げにソファーに腰を下ろした。
(普通、側にいて欲しいとか思わないか…?)
ロイがぶすっとした顔をしていると、目の前にちいさなグラスが差し出された。
「これでも飲んで待っていてください。」
そう言ってハボックが置いていったのは食前酒が入ったグラスで。一口含めば爽やかな甘みが広がって、苛々とした
気持ちを宥めていく。ロイはうっすらと笑みを浮かべて、ハボックがいるはずのキッチンを見やった。
ハボックが作ってくれた料理はどれも絶品だった。料理が得意とは聞いていたが、ここまでとは思わなかったロイは
素直に賞賛の言葉を口にする。
「美味いな、まさかこれほどとは思わなかった。」
「そう言ってもらうとうれしいっス。」
にっこり笑って言うハボックにロイはドキリとする。その心の揺れを隠すようにロイはむっと口を引き結ぶとワインの
グラスを手に取った。食事と一緒にかなりの量の酒も消費していたロイの頬はうっすらと赤みを帯びている。ハボックは
艶やかなロイの様子に目のやり場に困ってガタンと立ち上がった。
「ハボック?」
「あ、えと、デザートも作ったんスよ。リビングでコーヒーでも飲みながらどうっスか?」
慌ててそう言うハボックをロイは怪訝そうに見つめた。ハボックはそんなロイをリビングへ追い立てると手早く片づけを
しながらデザートの用意をする。二人分のデザートを持ってリビングへ入ったハボックは、ロイの姿をみてドキリとした。
お腹がいっぱいになったのと、酒を飲んだ所為だろう、ロイはクッションを抱きしめたままソファーでうとうととしていた。
うっすらと開いた唇と赤く染まった目元と。ハボックはテーブルにデザートのトレイを置くと、ロイの唇にそっと自分の
それを寄せた。柔らかいそれに触れた途端、もっと味わいたくて深く口づけていく。舌を差し入れた時、ロイの体が
大きく揺れてドンと突き飛ばされた。ハッとしてロイから身を離したハボックはロイが真っ赤になって睨みつけてくるのと
目が合って、途端に動揺した。
「すっ、スミマセンっっ!オ、オレ…っ」
ハボックは突然立ち上がるとロイに頭を下げる。
「スミマセンっ!オレ、帰りますんでっ!!」
そう叫ぶとあっという間に飛び出して行ってしまったハボックが開け放った扉を、ロイは呆然と見つめる。それから
怒りに顔を歪めると抱きしめていたクッションを扉に投げつけた。
「ばかっっ!!!なんでそこで帰るんだっっ!!!」
もうとっくに姿が見えないハボックに向かってロイは怒鳴る。
「バカ犬っっ!!なんで…逃げるんだ…っ?!」
今日こそはと思っていただけにハボックの態度はショックだった。気がついたら唇を塞がれていて、びっくりして突き
飛ばしてしまったが、普通ならそこで逃げたりしないだろうと思う。
「私が男だからか…?」
だが、好きだと言ったのはハボックだ。それにキスだってしてきたのに。ロイはハボックの気持ちが判らなくて、
膝を抱えて座り込むと唇を噛み締めた。
逃げるようにロイの家を飛び出してきたハボックはとぼとぼと家への道を歩いていた。
(なんで、キスなんてしちゃったんだろう…)
きっとお情けで付き合ってくれているであろうに、思わずキスをしてしまって、あそこで突き飛ばされなければ何を
していたかわからない自分に動揺する。
(一緒にいてくれるだけで満足しなきゃいけないのに…)
少しでもロイの気紛れが続いて側にいられるよう、ロイは男である自分に触れられるのなんてきっと嫌だろうから
側にいられるだけで満足しなければと思っていたのに、ロイの艶やかな様に思わず手を出してしまった。
(もう、付き合えないって言われちゃうかも…)
そう思うと涙が出そうになる。ハボックはぐすっと鼻をすすると明日にでも謝らなければと思うのだった。
「あれ?大佐は?」
「もう帰ったぜ。なんかすげぇ急いでたけど。」
デートじゃないの?というブレダにハボックは内心動揺する。
(もう、見限られちゃったのかな)
言い訳の機会すら与えてもらえないのかとハボックはがっくりとうな垂れた。
「おい、どうしたよ?」
そんなハボックを見て不思議そうな顔をするブレダにハボックは曖昧に笑うと司令室を出て行った。
「よお、ロイっ!」
駅のホームできょろきょろと視線を巡らせるロイに能天気な声が掛かる。
「ヒューズ!」
にやりと笑うヒューズにロイは剣呑な視線を向ける。
「おい、大佐どのともあろう人が警護もなしでいいのかよ。」
「そう言うお前だって似たようなものだろうが。」
返すロイにヒューズは肩を竦めた。
「なんで突然出てきた?」
睨みつけるように言うロイの肩を叩くとヒューズは駅の外へとロイを促す。
「ま、ここじゃなんだから、お前さんの家に行くとしようぜ。」
そういうヒューズに反論する理由が思い浮かばず、ロイは頷くと足早に歩き出した。
「で、なんでわざわざ?」
ロイの家のリビングに酒とグラスを持ち込んで、ヒューズと向かい合わせに座ったロイは駅で聞いた質問を繰り返した。
「んー、だってお前の様子が変だったからさぁ。」
ヒューズはグラスに氷と酒を注ぎながら答える。
「ちょっと前に、やっと好きだと言ってきたと嬉々として電話で言ってたのによ、昨夜の電話じゃ随分へこんでたみたい
だからさ。」
「…そんなことでわざわざセントラルから出てくるな。」
「なんだよ、親友思いの俺様にそれはないんじゃないの?」
それにどうせ、近々来るつもりだったしなとヒューズはぐびりと酒を飲んだ。
「で、百戦錬磨のロイちゃんが一体どうしたっていうんだ?」
優しい視線で促されて、ロイはグラスを握り締めた。
「…好きだって言ったくせに何もしてこないんだ。」
「なんだよ、そんなの、いつもお前の方から仕掛けてんだろ。さっさとキスなりなんなり、すりゃいいじゃないか。」
何を今さら言ってるんだといわんばかりのヒューズにロイはムッとして答える。
「なんで私からハボックに…」
そう言いかけてロイはハッとして口を噤んだ。恐る恐るヒューズを窺えば、案の定目を丸くしてこっちを見ている。
「おい、今なんて…」
「もういいから、今回のことは忘れてくれ。」
そういって立ち上がるロイの腕を引いて、ヒューズはロイを座らせる。
「そう言うわけにいかないだろう。」
ヒューズはロイの顔を見つめて言った。
「ちゃんと話せよ。相手はあのワンコなのか?」
真剣な瞳を向けてくるヒューズにごまかしは聞かないと悟って、ロイは渋々口を開いた。
「ずっと、好きだったんだ。この間やっとアイツから好きだと言ってきたのに、何にもしてこないんだ…」
一度喋りだしてしまえば後はもう止まらなかった。
「やっとキスしてきたかと思うと逃げ帰ってしまうし、やっぱり私が男だからか?でも、アイツからスキだって言ってきた
んだぞ。それなのに、こんなことって…っ」
泣き出しそうな表情を浮かべている事にきっと気づいていないであろうロイの髪をヒューズはくしゃりとかき混ぜて笑った。
「ローイ。お前って昔から変わんないな。」
そう言えばロイが問いかける視線を向ける。
「どうでもいい相手にはいくらでも愛想が振りまけるくせに、いざ本命の前になるとどうしてそう突っ張るのかね。」
ヒューズの言葉にロイは相手をにらみつけた。
「お前、一度でもワンコに『好きだ』って言ってやったか?キスを強請ってみたか?」
「なんで私がそんなこと…っ」
「ロイ、言葉にしないと伝わらないこともあるんだぜ。」
ヒューズの言葉にロイは絶句する。
「好きなんだろ、素直になれよ。」
俺は毎日グレイシアに愛してるって言ってるぜ、とおどけて言うヒューズにロイは苦笑した。つまらない意地を張って
せっかく手に入れたものをなくしてしまっては元も子もない。ヒューズの言葉にロイは自分の中で何かがゆっくりと
解けていくのを感じた。
嵐のようにやってきたヒューズが「いつの間にやってきたんだ?」と驚く周囲を物ともせず、即行で仕事を済ますと再び
嵐のように去っていった次の日、ロイはハボックに声をかけた。
「ハボック、今夜は用事があるのか?」
「え、いや空いてますけど…」
「なら、うちに寄って行け。」
それだけ言うとロイはさっさと執務室へ入ってしまう。ハボックは断ることも出来ずに呆然と執務室の扉を見つめた。
仕事が終わって、ロイを後部座席に乗せた車のハンドルを握りながら、ハボックはルームミラーでロイの様子を窺った。
(いよいよ別れ話かな…)
ハボックはそう思って小さくため息を漏らす。せめて部下としてだけでも側に置いてはくれないだろうかとそんなことを
考える内、車はロイの家へと着いた。ハボックはロイを先に家へとあげると車を裏へ回し、家の中へと入る。リビングに
行くと、ロイが上着を脱いでソファーに腰掛けていた。視線で促されて、ハボックは向かいの席に縮こまって座る。
そのまま何も言わないロイにハボックは耐え切れずに口を開いた。
「その、この間はスミマセンでした…いきなり、キス、なんて…」
「…なんで逃げ出した?」
何の感情も見せない瞳にハボックはしどろもどろになってしまう。
「いや、だって、嫌でしょう、男のオレにキスなんて…」
「私を好きだと言ったんじゃなかったのか?」
「そりゃそうっスけど…。大佐はそうじゃないでしょ?」
そういうハボックにロイは僅かに目を見開いた。
「なんでそう思うんだ?」
「だって、大佐、つきあってやってもいいとは言ったけど、オレのこと好きだとは言わなかったし、オレのこと哀れに思って
ちょっと付き合ってくれてるだけだろうから…」
それでもオレ、嬉しかったんでと、情けなくへらりと笑うハボックの胸倉をロイはいきなり掴んだ。
「お前はっ、私を何だと思っているんだ?!」
「え…?」
「哀れに思ったくらいで男とつきあってもいいなどと言うと思っているのか?!」
「でも…」
「バカにするのもいい加減にしろっ!!」
ロイはドンとハボックを突き飛ばすと立ち上がった。
「お前が好きだからに決まってるだろうっ!」
「へ…?」
「鈍い犬だな。」
ロイは呆けたハボックの上に圧し掛かると唇を合わせる。
「お前なら何をしてもいいんだ。」
目を丸くして見上げてくるハボックにロイは傲慢に笑った。
「私を好きだろう、ハボック?」
そういうロイに泣きそうな顔で笑ってハボックが答える。
「好きっス…」
そう言って圧し掛かるロイの顔を引き寄せて、ハボックは唇を重ねた。
「ふ…」
ベッドに沈み込ませた体に圧し掛かって唇を合わせると、ロイの口から甘い吐息が零れた。見上げてくる濡れた瞳に
煽られてハボックはロイの体に唇を寄せていく。ぷくりと立ち上がった乳首はすっかり色づいてハボックは誘われる
ままに強く吸い上げた。
「んあっ」
思わず漏れた声にロイの顔がみるみるうちに真っ赤になる。ロイは腕で顔を覆うと声を漏らさぬようにと腕に歯をたてた。
「んっ…んんっ」
ハボックの舌先の動きに、ロイの喉から声が零れる。どうにも止められなくてロイは必死に腕を噛んだ。
「たいさ…」
そんなロイに気づいて、ハボックはロイの腕を外させた。
「だめっスよ、噛んだりしちゃ…」
「あっ…やだっ…」
感じ入った顔を晒されてロイが泣きそうな声を上げた。目元を赤く染めて顔を背けようとするロイの顎を掴んで自分の方
を向かせると、ハボックは涙の滲んだ目尻に口付けた。
「声、聞かせて…?」
そう言って、再び乳首を愛撫する。思ってもいなかった箇所から得られる快感に、ロイは信じられずにゆるゆると首を
振った。
「あ…ああっ…」
胸を弄られるたび下肢へと熱が集まっていく。そそり立つそれをロイは無意識にハボックの腹へと擦り付けていた。
先端が擦れるたび堪らない快感が走りぬけ、ロイはイヤらしく腰をくねらせた。ハボックはそんなロイの様子に微かに
笑って、きゅっとロイ自身を握り締めた。
「ひあっっ…」
突然の事にロイの体が大きく跳ねる。ハボックはロイの脚を開かせるとくちゅくちゅとロイ自身を扱きながら、その奥の
蕾へと舌を差し入れた。
「ああっ…」
身を捩ろうとするロイを押さえつけ、ロイの先端をくにくにと捏ねては棹を扱く。熱い襞に舌を這わせ、ぴちゃぴちゃと
中へ差し入れた。
「ふ、んっ…んんっ…んんんっっ…」
必死に耐えようとするロイは、しかし我慢できずにびゅくと白濁を放ってしまう。荒い息を繰り返すロイに口づけて、
ハボックは囁いた。
「気持ちよかった…?」
うっすらと開いた視線で睨みつけて、ロイはそっぽを向いてしまう。だが、薄紅に染まった頬や潤んだ瞳がロイの快感
を如実に伝えていてハボックは微笑んだ。
「たいさの中に入ってもいいっスか…?」
そう言うハボックの肩を力の入らない手で叩いてロイは言った。
「そんなこと、いちいち聞くな…っ」
ロイの言葉にハボックは嬉しそうに笑うとそっとロイに口付ける。そうしてロイの脚を抱え上げると、滾る自身をロイの
入り口に押し当てた。
「…っ」
びくりと震えるロイの頬を撫でてハボックは呟く。
「挿れますよ…」
途端に強張る体を押し開くようにして、ハボックはゆっくりとロイの中へ体を進めていった。
「あ…あ…」
「ちからぬいて、たいさ…」
ぎゅうぎゅうと締め付けてくるソコに、ハボックは進むことが出来ない。荒い息を零すロイの頬を撫でてやれば、ロイが
ゆっくりと目を開いた。
「たいさ、ちからぬいて…」
ハボックが囁いたがロイは微かに首を振る。ハボックはロイの中心に手をやるとゆっくりと扱き出した。
「あっ…はあっ…」
喉を仰け反らせるロイの体から僅かに力が抜けたのを見逃さず、ハボックは一気に体を奥へと進めた。
「あああああっっ」
ハボックは奥まで貫くと、休む間もなく入り口付近まで引き抜いて、また一気に突き上げる。乱暴な抽送にロイの
瞳からはぽろぽろと涙が零れ落ちた。
「あっあっ…ハボっ…」
必死に縋り付いてくるロイを抱き返して、ハボックはロイを突き上げる。最奥で捏ねるように腰を回せば、ロイの口から
悲鳴が上がった。
「やあああっ」
許してくれと泣きじゃくるロイをハボックは手加減なしに犯していく。繋がった部分でロイを攻め立てながら、休む間もなく
手にしたロイを扱けば立て続けに熱を吐き出した。
「ハボっ…も、ツライ…っ」
泣いて訴えるロイの姿は、ハボックを宥めるどころかむしろ煽るばかりで、漸く手にした美果から手を離すことが出来
ない。ハボックはぶるりと体を震わすと熱い飛沫でロイの最奥を濡らした。
ぐったりとベッドに沈み込むロイの姿に流石にやりすぎたかとハボックは青くなった。
「たいさ…あの…っ」
途端にロイに睨みつけられて叱られた犬のようにうな垂れる。
「ごっ、ごめんなさいっ、オレ…っ」
そう言った途端、ぼすんと枕を投げつけられた。
「なんで、そこで謝るんだ、お前はっ!」
「えっ、いや、だって…」
「謝るんなら二度とお前とはヤらん。」
「えっ?えーーっ?!」
そんなあ、と慌てるハボックにロイはこっそりほくそ笑む。鈍い恋人をこれからどうやって苛めてやろうかと考えて
ロイはうきうきとする心を押し隠した。
2006/9/5
拍手リク「ハボの告白からつきあいだしたハボロイ。ロイがOKしてく れたのは気まぐれだと思ってて、捨てられたくなくてロイに何もできないヘタレなハボと、実は前々からハボのことが好きでOKしたのに『何で何にもしてこないんだっ』(怒)とか思って悶々としたりするツンデレロイなお話」でございました。ツ、ツンデレ…
エライ難しいんですけどっ。どう書いたらツンデレになるのやらさっぱり判らず、なんだか女王なロイになってしまいました。すみません…。しかも、またやって
しまったよ、誘い受けなロイorzヒューズが「言葉にしなきゃ判らない事もある」といった瞬間、「しまったあああっっ」と思ったのですが、後の祭り…。も、うちの
ハボロイはこういうもんだということで(汗)
しかし、最近、初物語リクが多いですね。やっぱ初めてって萌えるのかしらっ///でも、そろそろネタ切れになりそう…。