改訂版 たたかう少尉さん


「え…?見合い?」
「そうだ。どうもお前の言ってることを聞いていると聞き捨てならないからな。ここで1つ素敵な女性を紹介してやろう。」
ムダに自信を漲らせてそう言うロイをハボックはまじまじと見つめた。
「素敵な女性…っスか?」
「そうだ。お前の好みにバッチリ合うようなレディを紹介してやるからな、楽しみにしておけよ。」
そう言って、ははは、と笑いながら執務室を出て行ってしまったロイの背をハボックは絶句して見送っていた。
(素敵な女性って…。オレと大佐って付き合ってると思ってたのに…)
自分ひとりが勝手に盛り上がっていただけだったのだろうか。
「そりゃ、オレ、いろいろ言ったけどさ…」
でもそれは裏を返せばやたらとモテるロイへの、不安というかロイに優しくして貰ってる女性達への焼餅というか、そう
言うものであって、決して本気で女性を紹介してほしいということではなかったはずだ。
「これって大佐はオレのことどうでもいいってこと…?」
もし万が一お見合いが上手くいってしまったら、ハボックはその女性と結婚することになる。それが判っていて見合い
を持ってくるというのなら、ロイの気持ちはそれまでということだ。
「それともオレなんて絶対相手にされないと思ってるのかな…」
それはそれでムカツク話だ。
「くそーっ、見合いでもなんでもしてやろうじゃないかっ!」
ハボックはそう呟くと執務室をでて訓練へと向かうのだった。

見合いの相手は可愛かった。
以前のハボックなら直球ど真ん中ストライク。
筋肉少佐の妹であることを除けば家柄も申し分なく。
今の自分には過ぎた相手と言えるくらい120%自分好みの相手だった。
相手だった…。
だがしかし。
『ごめんなさい、私、お兄様みたいな方がいいの。』
少佐と睫がそっくりな怪力自慢の見合い相手はそう宣うたのだ。
かくしてハボックは全く歯牙にもかけてもらえず玉砕。冷たい秋風が身にしみる結果となったのだった。

「ハボック少尉、大丈夫でしょうか?」
「アレはかなり大ダメージでしょうからな。」
「まあな…」
司令室の片隅でフュリーとファルマン、ブレダの3人はほけらっと机に突っ伏したままのハボックを見やってこそこそと
言葉を交わした。
ロイが持ってきた見合い話を「こんなにおいしい話はないから是非とも行ってこい」と送り出した3人だったが、蓋を
開けてみれば相手は極度のブラコンで、ハボックは敢え無くフラれて戻ってきたのだった。
「あの少佐に負けたと思えばかなりショックだろうからな…」
ブレダはそう言って、傷ついた友人の心中を思う。少佐は確かに好人物ではあるが、その性癖にかなり問題のある
人物だとも言え、その人物より魅力がないと言われたのだとしたら、もし自分がその立場にあったとしたら。
「落ち込みますよね、やっぱり。」
「ですな。」
そう言って3人は顔を見合す。どうやってハボックを元気づけたらいいか3人が額をつき合わせて相談していると、
かちゃりと音がしてしてロイが司令室に入ってきた。すたすたとハボックに近づくと声をかける。
「ハボック、昨日は残念だったな。まさかこんな結果になろうとは、私も悪かったと思っているのだよ。」
いきなり核心をつく言葉に他の3人がひぃっと息を飲んだ。だがハボックは机に頬を載せたままちらりとロイを見上げた
かと思うとふいと反対側を向いてしまう。その態度にロイはムッとして言葉を続けた。
「なんだ、私にいいたいことがあるのならはっきり言ったらどうだ?」
「…別に言いたいことなんてないっス。」
ロイに言われてハボックが答える。
「どうせ、オレなんて誰からも相手にされないんスから、ほっといて下さい…」
「な…おい。」
いじけるハボックにロイは一瞬躊躇して、だがすぐに伸ばした指の先で、ハボックがいきなりガタリと席から立ち
上がった。驚くロイをぼーっと見下ろすとはああ、とため息を零しとぼとぼと司令室を出て行く。パタンと扉が閉まって
暫くしてからハッとしたロイは、バッとブレダたち3人を振り返って言った。
「おいっ、一体なんなんだ、アレはっ!」
「何なんだ、ってねぇ」
ブレダはやれやれというようにロイに答えた。
「傷ついてるに決まってるじゃないっすか。いくらアイツの神経がワイヤーロープ並みでも昨日のアレにはへこみ
 ますって。」
そう言うブレダに他の2人もそうだとばかりに頷く。ロイは3人の様子にむっと口を曲げると執務室にはいってバンッと
思い切り扉を閉めてしまった。
「なんで大佐、怒ってるんでしょうか?」
「さあな、あの人の思考回路は俺には理解できねぇよ。」
フュリーの問いにブレダは答えて、仕事しようぜと席につく。結局は他人事と、他の2人もそれにならって席につくと
仕事を始めるのだった。

ロイは執務室の中を苛々と歩き回っていた。ちょっと見合いを断られたからといって、一体あの態度はなんなんだと
思う。別に女の一人や二人なんだというのだ。そもそもハボックは自分と付き合っているのだから見合いを断られた
からと言ってどうってことはないはずだ。
「それなのに、あの馬鹿っ…!」
大佐、振られちゃいました、とでも言って泣きついてくれば慰めてもやるものを、あんなふにゃふにゃしやがって、と
そもそもの事の発端を作ったのは自分だということは綺麗さっぱり忘れ去って、ロイは心の中でハボックに罵詈雑言
をあびせかけるのだった。

「はああ…」
ハボックは屋上の隅にある給水タンクのそのまた片隅の、日の当たらないじめじめとした一角に座り込んでため息を
零した。付き合っていたと思っていたロイには見合いの相手を紹介され、その見合いの相手には全く相手にもされず、
それを知ったロイからは馬鹿にされ…。ハボックはもうすっかりしょげ返って何もする気が起きなかった。
「オレって相当カッコわるいよな…」
こんなんじゃロイに愛想つかれても仕方がないのかも、とハボックはもう1つため息を零した。考えてみればいつも
「好きだ」というのは自分ばかり。自分が言った数の何分の1も「好き」と言ってもらえただろうか。
「体よく厄介払いしたかったのかも…」
ハボックはそう呟くとずっしりと心に圧し掛かってきたものに耐え切れず、抱えた膝の間に顔を突っ込んでひたすら
思考の泥沼にどっぷりと沈んでいったのだった。

「ハボック少尉はどこです?」
ホークアイが主のいない机の側に立って綺麗な眉間に皺を寄せて言った。ブレダたちは顔を見合わせるとちらりと
執務室の扉を見やる。
「…原因は大佐ね。」
またか、とうんざりした表情を浮かべて執務室へ行こうとするホークアイにブレダは声をかけた。
「あー、中尉。」
「なに?」
射るような視線に一瞬怯みながらもブレダは友人を思ってなんとか自分を叱咤すると言葉を続ける。
「お見合いの話は聞いてますよね?」
「ええ、大体は。」
「アイツ、かなりショックだったみたいで…今日は大目に見てやってくれませんか?」
そういうブレダにホークアイは綺麗に片眉を跳ね上げた。
「そもそもは大佐のくだらない意地の張り合いから始まったのでしょう?大体少佐の妹さんが極度のブラコンって言う
 のは有名なんだから、お見合いが上手く行くはずないのよ。」
さらりとホークアイがいった言葉にブレダたちは目を丸くする。
「へっ?ゆ、有名って…。」
「可愛いお嬢さんなのに、って一部では有名なの。大佐も知っているはずよ。」
「んじゃ、なんでハボックに見合い…。」
「ちょっと虐めて自分に泣きつかせたかったんでしょう。ほんとに大人げないったらっ!」
そう言ってホークアイは執務室の前に立つと扉をノックして中へ入ってしまった。ぱたんと閉じた扉を見つめて、ブレダ
たちは開いた口が塞がらない。
「ハボ…お前…」
不憫なヤツっ!
3人はここにいないハボックに深く同情すると共に、心配した自分達が哀れに思えて仕方がなかった。

「大佐。今すぐハボック少尉に謝って、ここに連れてきてください。」
「なんで私が謝らなくてはならないんだ。」
部屋に入ってくるなりそういうホークアイにロイはムッとしてそう答えた。
「なんで、ですって…?」
ロイの言葉にホークアイの目がすっと細くなる。辺りの温度が急に下がったような気がしてロイは思わず後ずさった。
「とにかくこのままでは仕事になりません。さっさと行ってハボック少尉を連れてきてください。」
びしっと言い切られてロイは言い返すことも出来ずに執務室を出た。途端に責めるようなブレダたちの視線に晒されて
ロイは思わず視線を泳がせた。
「大佐って随分酷い事するんですね…」
フュリーぽつりと呟いた一言にロイはうっと詰まる。そうだそうだと頷くブレダたちにロイはちっと舌打ちすると急いで
司令室を出た。しかし、探して来いといわれても、いつも探される方の身としては、ハボックがどこにいるのか皆目
検討がつかない。
「そもそもアイツが悪いんだ…」
アイツがぐちゃぐちゃ言わなければ自分だって見合いをセッティングしてやるなどとは言うこともなかったのだ。それに。
「上手くいくかもしれない見合いをセットして、万が一相手がその気になったらどうするんだ」
ロイはそう呟くとハボックの姿を求めて廊下を歩き出した。

「くそっ、どこにいるんだ、ハボックのヤツ…」
ぐったりと疲れきってロイは壁に寄りかかった。さっきからもう1時間も探し回っているがハボックの吐き出す煙すら
見つけることが出来ない。
「大体あのデカイ図体でどこに隠れてるんだ…っ」
ロイはそう呟くとぐるりと辺りを見回した。ふと屋上へ続く階段が目に入ってロイは壁から体を離すとそちらへと歩き
出す。屋上に出てハボックの姿が見当たらないのにふぅとため息をつくと、中へ戻ろうとしてロイはふと感じた気配に
視線を廻らせた。
「ハボック…?」
ロイは屋上の隅のほうにある給水タンクの方へと歩いていく。気のせいだったかと思った瞬間小さく縮こまるハボック
の姿を見つけた。
「ハボックっ」
ロイの声に顔を上げたハボックがなんとも情けない顔をしてロイを見つめた。しょぼくれた犬のようなその姿に思わず
苦笑したロイに、ハボックはますます傷ついた顔をして横を向く。その様子にロイはムッとして言った。
「なにをそんなところでいじけてるんだ、お前は。」
でかい図体して情けない、というロイをハボックは見やってぼそりと呟く。
「どうせ、オレは情けないっスよ。」
も、ほっといて下さいと膝の間に顔を埋めるハボックの髪の毛をむんずと掴むとロイはその顔を上げさせた。
「お、ま、え、はっ!!」
「いててててっっ!!たいさっ、いてぇっスよっ!」
「うるさいっ!大体お前はなんで私のところに来ないんだっ?」
「はあっ?なに言ってるんスか、オレのこと馬鹿にしてるくせに。」
「いつ私がお前を馬鹿にしたっ?」
ぐいぐいと髪をひっぱりながらそういうロイの手からなんとか逃れるとハボックは言う。
「大体、オレのこと嫌になったんなら見合いなんて手の込んだことしないで、そう言やいいじゃないっスか。」
「は?」
「それを見合いさせてフラれたの見て馬鹿にしなくたって…」
「馬鹿にした覚えなんてないぞ。」
「どうせ、オレは少佐ほどの魅力もない男っスから」
歯牙にもかけてもらえなかったし、といじけるハボックにロイは思わず言い放った。
「ブラコンの彼女に見合いを申し込んだんだ、フラれて当然だろう。」
「そう、ブラコンの…ってちょっと待って下さいよ。アンタ、彼女がブラコンだって知ってたんスか?」
しまったとロイが思ったときはハボックの顔が目の前に迫っていた。空色の瞳に睨まれてロイは思わず言い訳する。
「そもそもお前がぐちゃぐちゃとうるさいから…」
「最初っから振られるとわかってるお見合い、仕組んだんスか?」
「当たり前だっ!相手がお前を気に入ったらどうするんだっ!」
「…は?」
ロイが言い放った言葉にハボックは目を丸くする。そのまま身を翻して逃げようとするロイの腕を咄嗟に掴んでハボック
はロイを引き寄せた。
「なんか、アンタ、やってることと言ってることと、ムチャクチャじゃありません?」
「うるさいなっ、腕、離せっ!」
真っ赤になってそう言うロイの黒い瞳を覗きこんでハボックは小さく笑った。
「いやっスよ。オレ、アンタに見捨てられたわけじゃないってことっスよね?」
「知るかっ」
「ああもう、すげぇ虐められて、オレ、へこみまくってたんスからね。」
仕返ししてやりますよ、と呟いてハボックはロイに口付ける。押し返そうとするロイの体をぐっと抱き込んで深く口付け
ながら、ハボックはロイのズボンをくつろげると中へ手を滑り込ませた。
「あっ」
くちゅくちゅと上下に扱けばロイはビクビクと体を震わせる。
「や、やだっ…こんなところで…っ」
「オレ、すごい傷ついたんス。」
ハボックはそう囁くとロイのズボンを剥ぎ取ってしまった。
「ハボックっ」
「大きな声出すと誰か来るかもしれませんよ?」
そう言われてロイは慌てて辺りを見回す。そんなロイにくすりと笑うとハボックはロイを壁に手をつかせて立たせた。
そうして自分は膝立ちになると目の前の双丘を割り開き、奥の蕾へと舌を差し入れる。
「ひっ」
びくっと震えて腰を引こうとするのを許さず、ハボックはぴちゃぴちゃと舌を這わせた。
「んっ…あ…あんっ…」
ロイは壁に縋りつくようにして甘い吐息を零す。後ろを弄られてロイの中心はすっかりそそり立ってとろとろと蜜を
垂らしていた。ハボックは蕾を濡らしながら手を前に回すとロイの中心をぎゅっと掴んだ。
「ひあっ」
「後ろ弄られただけでこんなにしちまって…ヤラシイっスね、たいさ。」
くすくすと笑いながら言われてロイの頬に血が上る。ハボックはそんなロイを後ろから抱きしめると、その耳元に
囁いた。
「もっとぐちゃぐちゃにしてあげますよ…」
耳の中にそう吹き込まれてロイの背をゾクリとしたものが走り抜ける。ずぶりと熱い塊りが押し入ってきてロイは思わず
息を詰めた。
「あ、あ、あ」
みちみちと、狭い器官を押し入って入ってくるソレに、息をすることもままならなくなる。根元まで埋め込んだと思うと
ハボックは突然乱暴に抜きさしを始めた。
「ひあっ…ああっ…あああっ」
奥まったしこりを突かれて、ロイは熱を迸らせた。いつの間にか入り込んだハボックの指がロイの乳首を弄り、ロイの
中心が瞬く間に熱を取り戻していく。
「ああっ…や、ハボ…っ…ああんっ」
「たいさ…かわいいっスよ…」
容赦なく突き上げられてロイは涙を零しながら喘ぐ。ハボックの熱に犯されて、ロイは何もかも忘れて乱されていった。


2006/11/14


拍手リクで「できましたらアニメの『ハボ、お見合いをする』の巻(正確には『戦う少尉さん』でしたか?)に 絡んだハボロイなお話とか…。キャスリンのせい
でハボが腑抜けてるのが気に食わない天邪鬼ロイと、ロイとはおつきあいをしてると思ってたのに率先して女を紹介されたことがショックなハボ。最後は
勿論ラブエロハボロイで(≧-≦)」でした。『戦う少尉さん』のパロなのに実はアニメ、見直してません…。いや、見直そうとは思ったんですけどね、何度も。
でもやっぱりあの話は鬼門なもんで〜。記憶だけで書いたので凄くいい加減…。書いててなんだかよく判らなくなっちゃったし…。それと大佐はブラコンだと
知ってた事になってますが、オリジナルは多分違いましたよね…。話の都合上知ってた事にしちゃいました、捏造ってことで(汗)
お待たせしてこんなんでスミマセンですぅ(滝汗)