すきスキ好き
「ねぇ、お買い得だと思いますよ。ちょっと試してみてもいいじゃないっスか。」
司令部の廊下を歩くロイの後ろからハボックが言う。
「大佐ってば。」
「お前もしつこいヤツだな。」
司令室を横切り、執務室に入るロイに続いて部屋の中へ入るとハボックは扉を閉めた。
「だって、大佐がなかなか頷いてくれないから。」
「ハボック…。」
ロイはどさりと椅子に腰を下ろして背の高い部下を見上げた。
「何度も言うが、私はお前と付き合う気はない。」
「何でですか?」
「お前を恋愛対象としてみることは出来ないからだ。」
「だから、何でですか?オレが男だから?」
机に手をついて圧し掛かるようにしてそういうハボックにロイはため息をついた。
「大体、お前、ボイン派だとか言ってなかったか?」
「そうっスけど。」
「私にはそんなものついてないぞ。」
「ついてたら気持ち悪いっスよ。」
「お前な…。」
がっくりと机に突っ伏すロイにハボックはくすりと笑った。そうしてそのさらりと癖のない黒髪に手を伸ばすとそっとその髪
を梳く。毛を撫でられて寛ぐ猫のように気持ちよさそうに半眼になるロイを見つめながらハボックは囁いた。
「大佐だから好きなんスよ…。」
髪を梳く手の心地よさに、振り払うことを忘れていたロイはハボックの言葉にがばりと身を起こした。
「ハボック、私は―――」
コンコン。
何か言おうとして口を開いたロイはノックの音に口を噤んだ。一拍置いて入室を許可する言葉を呟けば、ホークアイが
書類を抱えて入ってくる。二人の間に漂う微妙な空気に僅かに目を見開いて、ホークアイは小首を傾げた。
「後にしたほうが宜しいですか?」
そう言うホークアイにロイは慌てて答える。
「いや、もう話は済んだ。急ぎの書類か?」
そう言ってワザとらしくホークアイと向き合うロイをハボックは苦々しげに見つめた。それから足音も荒く執務室を出ると
叩きつける様に扉を閉めた。
「大佐、みーつけっ!」
屋上の片隅の給水タンクの上のそのまた陰で転寝するロイを見つけてハボックが言った。自分を見下ろす長身の部下
を見上げてロイは思い切り顔を歪める。
「…なんでお前はすぐ私の居場所がわかるんだ?」
ここなら見つからないだろうと、せっかく見つけたサボリ場所をことごとく看破してのけるハボックに、ロイはウンザリと
言った。
「そりゃオレが大佐のことが好きだからに決まってるじゃないですか。」
へらりと笑ってそう言うハボックをロイは睨みつける。
「冗談も大概にしろ。」
ロイはそう言いながら肘をついて身を起こそうとした。だが、それより早くハボックが屈みこんで覆いかぶさるように
ロイの脇に手をつく。
「冗談なんかじゃないっスよ。」
間近に迫った顔に思わず身をひくロイに圧し掛かるようにしてハボックは囁いた。
「アンタが好きです…」
近づいてくるハボックに身動きが出来ずにいたロイは、次の瞬間ハッとするとハボックを突き飛ばした。
「よせっ!」
どきどきと脈打つ鼓動をごまかすように乱暴な仕草で立ち上がると、ロイはハボックを置いて給水タンクから飛び降りる。
ちらりと振り向いたロイは食い入るように自分を見つめるハボックと目が合って、逃げるように屋上を後にした。
「ね、大佐。オレとデートしましょうよ。」
ある日の終業間際、執務室に入ってきたハボックがロイの肩に手を回すとその耳元で囁いた。ロイはその手を振り
ほどくと言う。
「悪いが先約がある。」
「じゃあ、先約のない日ならいいんスね?」
ハボックの言葉にロイはため息をつくと机に手をついてロイを覗き込むように見つめるハボックに言った。
「何度言ったら判るんだ。私はお前と―――。」
「何度でも言いますよ。アンタが好きです。オレと付き合ってください。」
青い瞳が真っ直ぐに見つめてきて、ロイは言葉に詰まる。ロイは決まり悪そうに視線をそらすと呟くように言った。
「私はこれからデートだ。」
「たいさ…」
ハボックの縋るような視線を振り切って立ち上がると、ロイはコートを掴む。背中に痛いほどの視線を感じながらロイは
執務室を後にした。
「おい、もういい加減にしとけよ。」
ブレダがハボックの手からグラスを取り上げて言った。執務室から出てきたハボックに「付き合え」と半ば強引に連れて
来られた飲み屋で、浴びるように酒を飲み続けるハボックを見て、ブレダは本気で心配になった。元々酒は強い方だと
は言え、こんな飲み方をしていいはずがない。
「いいんだよっ、グラス返せっ」
ハボックはブレダの手からグラスを奪い返すと、ボトルから酒をなみなみと注ぎ、一気に飲み干す。
「一体どうしたんだよ、お前らしくもない…」
いつもは明るいこの男がこんな酒の飲み方をするなんて、とても信じられない。一体何がハボックをここまで苛つかせて
いるのかと、ブレダは首を捻った。
「別になんでもねぇよ…」
理由を言おうとしないハボックにブレダはため息をついて、もう一度ハボックの手からグラスを取り上げる。
「なんでもないなら、もうやめとけ。そんな飲み方して体にいい訳ないだろう。」
ブレダはハボックの肩を叩くと店の主人に清算してくれるよう声をかけた。
「ほら、今日はもう、帰って寝ちまえ。な?」
金を払うとブレダはハボックに肩を貸して店を出る。店を出たところでハボックはブレダの腕を振りほどいた。
「…1人で帰れる。」
「…気をつけて帰れよ。」
心配そうに見送るブレダに手を振ると、ハボックはゆっくりと歩き出した。
ブレダと別れて歩き出したハボックは煙草を取り出して火をつけた。いつもなら煙草を吸えばささくれ立った気持ちも
少しは落ち着いてくれるのだが、今日はどうにも苛々するばかりだ。ハボックは煙を吐き出しながらロイのことを思い
浮かべた。一体、いつからだろうか。女にしか興味がなかったはずの自分が、気がついたときには目が離せなくなって
いた。最初はその志の強さに惹かれた。部下として彼が高みを目指す手助けが出来ればと、一生を捧げてついて
行ける相手にめぐり合ったと喜びもした。だが、傍らで過ごすうち、彼の人となりを知るにつけ単なる部下としてではなく
ロイに惹かれている自分に気づいた。そうして気づいたときにはもう、ロイが欲しくて欲しくて。どうにも止められない
ままにロイに囁き続けたのだ。好きだと。そう囁く自分に、ロイはその気はないといいつつも距離をあける訳でもない。
側においたまま、ハボックに好きだと言わせるロイは一体自分をどう思っているのだろう。ハボックは短くなった煙草を
揉み消すと、新しいものを取り出し火をつけた。そうして、無意識の内にロイがよくデートで使うレストランのある方へと
歩き出していた。
何本目かの煙草に火をつけて、視線を上げた先に見えたレストランにハボックは思わず唇を歪めた。
(なんで、オレ、こんなとこに来てんだろ…)
今頃、綺麗な女性と楽しい時を過ごしているのだろうと思うと、胸の内にどす黒いものが広がる。唇を噛み締めた
ハボックが踵を返そうとした時、レストランの扉が開いて見慣れた黒髪が現れた。にこやかに女性をエスコートする
その姿を目にした時、ハボックの中で何かがはじける音がした。ハボックは通りを横切るとロイに近づいていく。
足音も荒く近づくハボックに気がついたロイは目を丸くして立ち尽くした。
「デートっスか、たいさ。」
ロイの前に立つとハボックはにやりと笑って言った。酒臭い息にロイは顔を顰める。
「酔ってるのか、ハボック。悪いが今はお前と話している暇はない。」
そう言ってロイは傍らの女性を促して立ち去ろうとする。そんなロイの腕を掴むとハボックは言った。
「なんで、女なんかとデートしてるんスか…?」
酒臭い息を吐いて絡んでくるハボックをロイは振りほどいて睨みつける。
「酔っ払いめ、いい加減にしろっ。」
そんなロイを無視して、ハボックはロイの傍らで立ち尽くしている美女にへらりと笑って言った。
「びじんのおねえさん、この人、オレのなんで、手、出さないでもらえます?」
「ハボック?!」
「わかる?オレのこ・い・び・と!いっつもオレの下で腰振って喘いでんの。」
「ハボック!!」
その瞬間、ロイの拳がハボックの頬を殴った。よろよろと後ずさって尻餅を付くハボックをロイは怒りに目を煌めかせて
見下ろしていた。
「人を侮辱するのもいい加減にしろっ!」
そんなロイをハボックはうっとりと見上げた。怒りにきらきらと黒い目を輝かせるロイはとても綺麗だと思う。そうして、
どうしてもそんなロイが欲しくて、凶暴な想いが湧き上がってくるのをハボックは止められなかった。
「あ、あのっ」
二人のやり取りを呆然と見つめていた女性が声を振り絞るようにして口を開く。
「私…今日はもう、帰ります…」
そう呟くように言うと、身を翻すようにして走り去ってしまった。引き止めることも出来ずに呆然と見送るロイに、ハボック
はくすくすと笑う。
「あ〜あ、逃げちゃった…。名うての女誑しも形無しっスね。」
座り込んだまま肩を震わせて笑うハボックをロイは思い切り睨みつけた。
「ハボック、貴様…っ」
「何、怒ってんです?」
「何を、だと?!あんな根も葉もないことを、よくも…っ」
「…根も葉もないから怒ってんだ…」
そう呟くとハボックはふらりと立ち上がった。
「だったら根でも葉でも作ってあげましょうか…?」
「…なに?」
その暗く沈んだ青い瞳に絡め取られたかのように動きを封じられて、ロイは一瞬反応が遅れた。逃げる間もなくハボック
に腕を掴まれるとぐいぐいと引き摺られるようにして歩き出す。
「離せっ!」
「振りほどけば?」
くすりと笑うハボックにカッと頭に血が上る。何とかハボックの手を引き剥がそうとするが、そんな努力も空しくぐいぐいと
転びそうになりながら腕を引かれ、気がついたときにはロイはハボックのアパートの前に立っていた。訳がわからない
という風にアパートを見上げるロイにハボックは微かに笑うと、次の瞬間ロイを横抱きに抱え上げた。
「なっ…」
あまりの事に瞬間、抵抗を忘れるロイを抱えたまま、ハボックは階段を上がった。自分の置かれた状況に気づいたロイ
がハボックの胸を叩いて暴れる。
「おろせっ!」
「暴れると危ないっスよ。」
ハボックは苦笑するとポケットから鍵を取り出した。3階の自宅の前に立つと、ロイをしっかり抱えたまま鍵を開ける。
足で扉を蹴りあけるとリビングを横切り寝室へと入っていった。どさりとベッドに投げ出され、慌てて起き上がろうとする
ロイをハボックは素早く押さえつける。
「オレと何でもないのにあんなこと言われてイヤだったんでしょ?だったら本当にしちゃえばいいんスよね…」
そう言って首筋に口づけて来るハボックにロイは身を竦めた。
「やめろっ」
「たいさ…好きっス…」
「ハボっ」
引きちぎるようにしてシャツの前がはだけられ、ハボックの手が滑り込んでくる。きゅっと乳首を摘まれて、ロイの背が
跳ね上がった。
「ひっ…」
そのまま捏ねる様に回されて、ジンと痛みとも快感ともつかぬ物が広がっていく。ハボックの舌が滑り降りてきて
ぺろりと舐められるとひくんとロイの喉が鳴った。
「好きだ…」
乳首に舌を這わせながらハボックが囁く。呟く声と一緒に熱い吐息が零れて濡れた乳首を掠めていって、ロイはぴくり
と身を震わせた。ハボックは体をずらすとロイのズボンに手をかけ、下着ごと剥ぎ取ってしまう。あ、と思った瞬間には
大きく脚を割り開かれて、ロイは悲鳴を上げた。
「いやだっ!」
身を捩ろうにも強く押さえつけられて身動きが出来ない。ぺろりと棹を舐め上げられてロイの体が震えた。
「ひあっ」
「好きです…アンタの全部が欲しい…」
そう囁いてハボックはロイ自身を口に含む。じゅぶじゅぶと唇で擦り上げられて、ロイ自身からとろとろと蜜が零れた。
「んんっ…んあっ…」
高まる射精感にロイは身を強張らせて堪えようとする。だが、強く吸い上げられて堪え切れずにハボックの口中へと
熱を放ってしまった。
「あああっっ」
ごくりと、音を立てて全て飲み込むと、ハボックはロイの顔を覗き込んだ。薄っすらと涙を滲ませて荒い息をつくロイに
ハボックの中心に熱が集まっていく。ハボックはロイの髪を優しくなでるとそっと口付けた。
「好きです…アンタが好き…たいさ」
そう呟いて何度も口付ける。ロイは何度も好きだと囁くハボックをぼんやりと見上げた。どうして、この男は自分を好き
だと言うのだろう。あれほどその気はないと言っても、飽きずに何度も好きだといい続けて。そして、どうして自分は
そういい続けるコイツを側に置いておくのだろう。よく判らない感情にロイはふるふると首を振った。
何度もロイに口づけていたハボックはロイの脚を押し開くと、今度はその蕾へと唇を寄せた。ひくひくと震えるソコを
両手で割り開くと舌を差し入れる。
「ひいっ」
びくんと跳ねる体を押さえつけて、ぴちゃぴちゃと舌を這わせる。ロイの喉から零れる悲鳴のような喘ぎを聞きながら
ハボックは丁寧に蕾を解していった。後ろへの刺激でロイの中心は再び立ち上がりとろとろと蜜を零している。ハボック
の唾液と零れる蜜で、しっとりと解れたソコはまるで早く入れて欲しいというかのように蠢いていた。ハボックは身を
起こすとロイの脚を高く抱え上げる。ひくつくソコへ熱く滾る自身を押し当てるとロイの瞳が不安げに見開いた。小さく
首を振るロイの目尻に口づけてハボックはぐいと身を進める。途端に拒むようにきつく閉じようとするソコに、ハボックは
微かに呻いた。萎えかけたロイ自身に手をかけるとゆっくりと扱く。ぴくりと震えて微かに力が抜けた瞬間を見逃さずに
ハボックは一気にロイの中へ体を進めた。
「あああああっっ」
熱い塊りに押し開かれる衝撃にロイの唇から悲鳴が迸る。逃げようとする体を引き戻してハボックは強引に腰を打ち
つけた。
「あっああっ」
「たいさ…すき…すきだ…」
激しく突き上げながらハボックはロイの耳元で囁く。奥まったしこりを突かれて、ロイの体を快感が駆け抜けた。
「あっあっ、ハボっ」
「すきです…っ…たいさ」
「あっ…ぅんっ…ハボ…っ」
必死に縋り付いてくるロイを抱き返して、ハボックはロイを突き上げる。初めて感じる強烈な快感にロイはただハボック
に縋りついた。
「たいさ…たいさ…すき」
何度も何度も好きだと囁くハボックの声がロイの体に染み込んでいく。ハボックが与える快感に翻弄されながら、ロイは
ずるいと思った。こんな風に抱かれながら好きだと囁かれたら、自分も好きだと錯覚しそうだ。それともこれは錯覚など
ではなくて、いつの間にか好きになっていたのだろうか。
「はあっ…ああっ」
強く突き上げられて、もう考えることも出来ない。
「んあああああっっ」
体の最奥をハボックの熱が濡らすのを感じながら、ロイは熱を吐き出していった。
くったりとベッドに沈み込んだロイの髪をハボックは優しくかき上げた。ロイの目蓋がゆっくりと持ち上がって漆黒の瞳が
見つめてくる。責めるわけでも蔑むわけでもないその視線に、ハボックは口を開いた。
「謝りませんから、オレ。」
ロイを真っ直ぐに見つめて言う。
「アンタが好きです。オレじゃだめっスか?オレじゃどうしてもダメ?」
駆け引きも何もなしにただ真っ直ぐにぶつかってくる青い瞳を見つめて、ロイは小さく息を吐いた。
「たいさ…?」
「お前の努力次第だ。」
「え?」
「私のことが好きだというなら私をその気にさせてみろ。」
「たいさ…」
「お前の努力次第では考えてやる。」
ロイの言葉にぽかんとしていたハボックの顔にみるみる喜びの色が広がる。
「絶対、その気にさせて見せますっ!絶対!」
そう言ってハボックはぎゅっとロイを抱きしめた。
「アンタが好きっス。絶対オレのことスキだって言わせて見せます。」
自信満々に言うハボックにロイは笑った。
「楽しみにしておこう。」
「んじゃ、早速明日の晩、メシ作りに大佐んちに行ってもいいっスか?」
「…餌付けか?私の舌は肥えてるぞ?」
「オレ、料理得意なんスよ。」
「ソイツは楽しみだ。」
そう言うロイにハボックは嬉しそうに笑って唇を寄せる。ハボックの努力に頷いてしまう日も、もしかしたら然程遠くない
のかもしれないと思いつつ、ロイはハボックの口付けを受け入れた。
2006/9/13
拍手リクで「必死でロイを追いかけるけ ど受け入れてもらえなくて、ロイが女とデートしてるところに出くわして、理不尽な怒りで『この人オレのオンナなんだ』と
言ってしまってロイを激怒させてしまい、そのまま『さっきのこと、本当にしてやりますよ』とか言って部屋に連れ込むという内容が読んで見たいです。最後は
『考えておく』みたいな…?」でした〜。なんかもう、あっという間にほだされてしまいそうなロイですね(汗)しかし、これも一種の初物語では?多いなぁ、初物
リク。もう、ハボロイスキーな人の数だけ初物語がある気がいたしますよ。