peeper --- not yet


「大佐っ!もう、起きてくださいよ!大体なんスか?人に資料探させといて自分は昼寝だなんて。ずるいっスよ、
 そんなの。」
ハボックは資料の分厚いファイルを抱えながらロイに言った。ロイは資料室の片隅に軍服の上着を敷いて寝転がって
いる。んー、と気のない返事をしただけで起きようとしないロイにハボックは垂れた眦を思い切り吊り上げた。
「たいさっ!マジ、起きてってば!もう…起きないとチューしますよ?!」
ハボックの言葉にロイはぱちりと目を開いた。
「チューしたいのか?」
「えっっ」
黒い瞳にまっすぐ見つめられてハボックはうろたえた。
「いや、論点はそこじゃなくて…」
顔を赤らめてしどろもどろに言葉を紡ぐハボックに、ロイは面白くなさそうに背を向けると目を閉じる。
「たいさっ」
ロイは背後でおたおたするハボックに内心腹を立てていた。
(する気がないならチューするとか言うな…っ)
ロイはムカムカしながらそう思った。それから、もしこのまま寝入ってしまったフリをしたらハボックはキスしてくれる
だろうか、とも。いつの頃からかロイは年下のこの部下のことが気になって仕方がなかった。ヤニ臭いし、言うことは
可愛くないし、自分よりデカクて、それになにより自分と同じ男だし。それでも、ロイは気がつくとハボックの姿を目で
追っていた。時折自分に見せてくれる優しさとか、さり気ない気遣いとか、そう言うものを誤解したくなってしまうほどに
ロイはいつしかハボックに惹かれていた。
(キス、してくれたらいいのに…)
ロイはぎゅっと体を丸めると唇を噛み締めた。
一方、そんなロイを見てハボックはうろたえていた。ついうっかり「チューする」などと言ってしまって、きっとロイは怒った
に違いない。当たり前だ。男の、こんなゴツイ部下にそんなことを言われて気を悪くしないはずなどない。でも…。
転寝するロイは思わず抱きしめてしまいたくなるほど可愛くて、以前からロイを見るたびざわざわと落ち着かない気持ち
を抱えていたハボックは、突然自覚してしまったのだ。
(オレ、たいさのこと、スキかもしんない…)
キスしたい、と思った。抱きしめてキスして、その黒髪に触れたいと思った。
(でも、オレ、男だし…)
名うての女垂らしのロイに相手にされるはずがない。ハボックは自分の気持ちに気づくと同時に叶わない恋にがっくりと
ため息をついた。

「…あと、5分。そしたら起きるから。お前は先に帰ってくれていい。」
ロイはハボックに背を向けたままそう言った。もう、これ以上ハボックにここにいられたくない。ロイはそう思いながら
膝を抱える腕に力を込める。そのままハボックが行ってしまうのを期待していたロイに、ハボックは近づくと床に本を
下ろして言った。
「そんな格好で寝てたら痛いでしょ?ほら、膝、貸したげますから。」
ハボックは床に腰を下ろすと脚を伸ばして太ももの辺りをぽんぽんと叩いた。
「…なんで私が男の膝枕なんかで寝なきゃいけないんだ…」
「案外気持ちいいっスよ。」
ハボックはそう言うと自分に背を向けて縮こまるロイの体を「うんしょ」とばかりに引き寄せた。
「なにを…っ」
強引にハボックの脚の上に頭を載せられてロイはハボックを睨んだ。だが、真上から優しく見下ろす青い瞳にばつが
悪そうに目を逸らす。
「5分たったら起こしますから。」
優しいその声にロイはゆっくりと目を閉じた。

誰も来ないような資料室の片隅のひんやりとした壁に背をもたせ掛けて、ハボックはぼんやりと目の前の書架を
見つめた。膝の上からはロイの規則正しい寝息が聞こえてくる。ハボックはゆっくりと視線を下ろすと向こうを向いて
眠るロイの項を見つめた。
(色、白いなぁ…)
唇を寄せて強く吸い上げたい衝動に駆られてハボックは首を振った。
(燃やされるっての)
それでも触れたくて思わず手を伸ばしかけた時。書架をはさんだ向こう側から人の声が聞こえた。
『どうせ、俺のことなんてどうでもいいんだろっ』
『そんなこと言ってないだろう』
『だったら何で…っ』
押さえた、でも激しく言い募る声に眠っていたロイが目を開く。
「…なんだ?」
「しっ!」
ハボックはロイを制止すると耳を澄ました。
『最近、ちっとも会ってくれないじゃないか』
『それは…』
『俺のことなんてどうでも…』
『違うって言ってるだろっ!歯止めがきかなくなっちまうんだよっ、お前の側にいると…っ』
『じゃあ…』
『…つらいだろ、体?会うたびシテたんじゃ…』
ロイはハボックの膝の上から体を起こすとハボックを見やる。ハボックも困惑顔でロイを見返した。
『辛くなんかないよ、スキなんだから』
その後なにやら囁く声が聞こえたと思うと、ぴちゃり、と濡れた音がしてハボックとロイは身を硬くした。
「…おい」
「…はい」
「拙いんじゃないのか、この状況は…」
「そんなこと言っても…」
ハボックとロイはこそこそと言葉を交わす。そうこうする内にも書架の向こうでは囁き交わす声が聞こえ、次にははっきり
と衣擦れとわかる音が聞こえた。
『あ…っ』
熱く濡れた声が聞こえてロイは思わずハボックの耳を引っ張った。
「どーするんだっ、おいっ」
「どうするって、今更出て行けないでしょうが。」
小声で怒鳴るという器用なことをしてのけるロイにハボックは情けない声を上げた。
「だが、このままでは…」
「出歯亀…スね。」
「私には他人の濡れ場を覗く趣味はないぞっ」
「オレにだってありませんよっ」
『あっあっ』
『なんだよ、もう、ぐちゃぐちゃじゃないか…』
『あ、ばかっ…』
ハボックとロイが言い合ううちにも書架の向こう側ではのっぴきならない状況になりつつあった。
「ハボックっ、なんとかしろっ」
「無茶言わんでください…」
『ね、口でシテ…』
『ヤラシイな、お前…』
くすくすと笑う声に続いてぴちゃぴちゃと淫猥な音が聞こえてくる。ハボックとロイはどうにもいたたまれず、お互い視線
を逸らすと、身を硬くした。
『あんっ…あっああっ』
『気持ちイイ?』
『あっ…イイっ』
(なんだってこんなトコでシテんだよっ)
ハボックは書架の向こうで絡み合っているであろうカップルに心の中で怒鳴った。際どいセリフと濡れた音に、嫌でも
鼓動が高鳴ってくる。ちらりとロイを見れば頬を染めて俯いていた。その横顔にどくりと心臓がなる。
(触りてぇ…)
ハボックがごくりと唾を飲み込んだとき。
『ああっ…イくっ…』
一際高い声が書架の向こうから聞こえて、ロイが真っ赤になった顔をハボックのほうへ向けた。
(カ、カワイイっっ)
そのあまりに無防備な表情にハボックの頭の中で何かがぷつんと切れる音がした。思わずロイに手を伸ばすと、その
しなやかな体を抱き寄せる。
「ハ、ハボック…?」
驚いたロイが目を見開いて見かえしてくるのをハボックはうっとりと見つめた。
「たいさ…」
ロイの髪に手を差し入れるとその顔を引き寄せて唇を重ねる。
「んっ、んーっ」
突然の事にロイは必死にハボックを押しやろうとするが、逆に圧し掛かられて床に倒れてしまった。
「ハボっ、待…っ」
『ああんっ、やだっ』
『解さないと入んないだろ』
ぎくりと強張ったロイの耳にあちら側の声が飛び込んでくる。ロイは身動きも出来ずに圧し掛かってくるハボックを
見上げた。
「たいさ…」
そう呟いて近づいてくるハボックの顔をロイは呆然と見つめる。ハボックの唇が自分のそれに触れた途端、ロイの体が
びくんと跳ねた。
「んん…ぅん…」
ハボックの舌が入り込んできてねっとりとロイの舌を絡め取る。ロイはどうしてよいか判らずにぎゅっと目を閉じた。
(キス…ハボックとキスしてる…)
ついさっき、キスしてくれたらいいと思った相手とキスしてると思っただけでロイの心臓はバクバクと大きな音を立てる。
「は…」
唇の間から甘い吐息が零れて、ロイはかあっと頭に血が上った。
ゆっくりと唇を離してハボックはロイを見下ろす。真っ赤に染まった顔がたまらなく可愛くてハボックは思わず囁いていた。
「たいさ…すき…」
「…え?」
そうしてハボックはロイの項に唇を寄せると強く吸い上げた。唇を離すと赤い印が浮かび上がる。ハボックはうっすらと
笑うとロイの衣服をはだけていった。
『ああ…んあ…』
『ほら、もう2本はいった…』
ぴちゃぴちゃと濡れた音と共に際どいセリフが聞こえる。ロイはどうしてよいか判らずに唇を噛み締めた。その時、
ハボックの指がぐりぐりとロイの乳首をこね回した。
「ひあっ」
思わず零れた声にロイは慌てて掌で口を覆う。くすりと胸元で笑う声が聞こえたと思うとハボックの舌がロイの乳首を
なぶった。
「んっ、んあっ」
「たいさ…」
ハボックはロイのズボンに手をかけると一気に引き摺り下ろした。大きく脚を広げられてロイは息を飲んだ。
(口でシテ…)
さっき聞こえた声がロイの頭の中によみがえる。思わず見下ろした視線の先でこちらを見つめるハボックの青い瞳と
目が合って、ロイはごくりと唾を飲んだ。ハボックがロイを見つめたまま、ロイ自身をゆっくりと口に含む。
「…あ」
ロイを見つめながらじゅぶじゅぶとハボックはロイ自身を唇で擦り上げる。ロイは目を逸らすこともできずにハボックの
行為を見つめ続けた。
「あっ…あんっ」
ハボックの濡れた口中でロイは中心にどくどくと熱が集まっていくのを感じる。高まっていく快感にロイはぴくぴくと体を
震わせた。
「あっ…ああ…っ」
「…気持ちイイ?」
ハボックの声が耳を犯す。ロイはハボックの金髪を掴むと無意識に呟いていた。
「あっ…イイっ」
ロイの言葉にハボックは嬉しそうに笑うと強く吸い上げる。ぞくりとロイの体を快感が駆け抜けて、次の瞬間、ロイは
ハボックの口中へ熱を放っていた。
「ああっ…イくっ」
びくびくと体を震わせてロイは言葉を吐き出す。それがさっき聞いたのと同じ言葉とは気づかずに。ハボックはごくりと
口中に吐き出されたロイの熱を飲み干すと、ロイの脚を更に押し開き、奥まった蕾へと舌を這わせた。
「あっ、やだっ」
咄嗟に逃げようとするロイの体をハボックはぐいと引き戻す。丁寧に濡らしていくと指を1本差し入れた。
「やっ」
くちゅりとかき回されてロイの体がびくびくと震える。ハボックはそんなロイを見つめてうっとりと微笑むと沈める指を更に
増やした。
「もう、2本入ってますよ…」
そう囁かれて、ロイはふるふると首を振った。ハボックの指がくちゅりとかき回すたび、そそりたったロイ自身からとろりと
蜜が零れる。ロイは恥ずかしくてぽろりと涙を零した。
「やだ…ハボックっ、も、恥ずかし…っ」
『もう、指はいいからっ』
突然聞こえてきた声にロイはびくりと体を震わせる。
『いれてっ』
ロイは耳に飛び込んできた言葉に目を見開いた。突然ハボックが指を引き抜くとロイの脚を抱え上げる。
「あっ」
熱く滾ったハボック自身がロイの蕾に押し当てられ。
ぐっっとその先端がロイを割り開いた。
「―――っっ」
ロイの唇から叫び声が迸る瞬間、ハボックの唇が下りてきてその声を呑み込む。ロイは苦しさのあまりハボックの背に
爪を立てた。
「んっ…んふっ…」
激しく揺さぶられて涙が滲む。ロイは必死にハボックに縋りつくとその腰に脚を絡めた。
「たいさ…っ」
「あっ…ハボっ」
『ああっ…あっあ』
『すげ…締まるっ』
「ああっ…い…あっああっ」
「は…たいさ…イイ…っ」
もう、聞こえてくるのが自分達が上げている声なのか、誰か知らぬカップルの上げているものなのか、ぐちゅぐちゅと
響き渡る水音がどこから聞こえてくるものなのか、ロイには全く判らなかった。ただもう、ハボックに揺すり上げられる
ままに、あられもなく声を上げ続ける。ロイはハボックに自分の中を濡らして欲しくて腰をくねらせた。
「あ、もうっ…」
『あっあ、はあっ』
『「はやく…っっ」』
無意識にロイはハボックを含んだソコを締め付けた。ロイに圧し掛かるハボックが微かに呻いたと思うと、ロイの最奥に
じわりと熱が広がる。そこから脳天を突き抜けるような快感が押し寄せて、ロイは白濁を迸らせた。

書架の向こうの二人が身繕いを終えて出て行ってしまってからも、ロイはしどけない姿でハボックに寄り添っていた。
心地よい気だるさに動く気にもなれなくてロイはハボックの胸に顔を寄せると目を閉じる。
「あっ、あのっ」
頭の上で聞こえた声にロイはゆっくりと目を開くとハボックを見つめた。
「あのっ…言うのが遅くなっちゃたけど、あの…」
しどろもどろになりながら、でもじっと見つめてくる黒い瞳をしっかりと見つめて、ハボックは言った。
「オレっ、たいさのことが、ス、スキですっ!」
そう言って、ハボックはロイの様子を窺う。何も言わないロイにハボックはどうしてよいか判らずにおろおろと言葉を
続けた。
「オレは男だしっ、それに、たいさの気持ちも確かめないでこんなことしちゃったけど…」
ハボックはロイの目を見つめる。
「たいさがスキですっ」
必死になって告げた言葉に、だが何も返ってこない事にハボックの首がうな垂れていく。
(やっぱ怒ってる…よな…)
もうダメだと、ぎゅっと目を閉じたハボックの首にするりとロイの腕が巻きついた。ハッとして目をあけたハボックの目の前
にロイの黒い瞳があった。ゆっくりと目蓋が下りるとその唇がハボックのそれに重なる。呆然とロイを見つめるハボックに
ロイはくすりと笑った。
「早く言え、バカモノ…」
「たいさ…」
ゆっくりと寄り添ってくるロイの体を抱きしめて、ハボックは嬉しそうに笑った。


2006/9/21


慌てて書き上げました、一応リクに添った(ハズ)の「まだデキてない版」の出歯亀ハボロイです。絶対向こうのカプに聞こえてるよなぁ…。出歯亀してる
のか、されてるのか、なんか微妙…(汗)