堕天使の目覚め

by 待宵楓


 自分の寝室で、ハボックは熱っぽく潤んだ視線を、手に持っているモノに落とす 。 先日ロイにプレゼントだと言って手渡されたそれは、リングと数本の紐だけで作 られた…本来の用途を成さない下着、だった。

「大佐が帰って来る前に済ませないと…」

 1人ポツリと呟き、熱っぽい吐息を吐き出してから、ハボックはそっとベッドか ら立ち上がる。 その身体は何も纏っていない。更にその中心は、何もしていないにも関わらず、 期待に勃ち上がり始めていて、苦笑を溢しながらもハボックは躊躇う事なくそっ と下着とは言えない代物に足を通していった。

「ん…ぁぁ、凄…っ」

 少しきつめのリングで自身を戒める感覚に、ハボックはどうしようもなく興奮し ていた。 リングを自身の根本まで導き、自分で下着の紐を尻に食い込むようにしてから、 先日ロイに行われた淫行の記憶を辿るように、射精を制限された性器をやわやわ と握っては、もう片方の手を尻へ回して紐を引く。 そうすれば、袋を押さえつけられると共に与えられる記憶通りの快楽に、ハボッ クは待ち望んでいたかのように蕩けた笑みを浮かべた。

「ぁ、…はぁ、ッ……どうしよ…俺…」

 ぐいぐいと夢中で下着の紐を引き、自身の先端を責めて喘ぎながら、ハボックは どこから見ても変態でしか無い自分の行動が、ロイに気付かれてしまったら、と 言う不安と、多大な興奮に支配されていた。 今日は遅くなる、そう言ってハボックに先に帰るように指示したロイの事を思い 出して、ハボックは何度目かの熱い吐息を溢した。

「たぃさ…たいさぁ…っ、な…で、俺…ッ…んなに、こ…ふん…して…っ」

 この場にロイが居ない事は承知していたが、ハボックは無意識に恋人へ問いかけ てしまう。 当然のように返答がないそれに、ハボックは熱に喘ぎながら、こんな時ロイなら ば何と言うだろうかと想像してみる。

『よっぽど拘束されて苛められるのが気に入ったのだな、ハボック。…気持ち良 いか?』

 そうすれば、想像ながらもしっかり頭の中に響いて来た恋人の情欲入り交じる心 地良い低音に、ハボックはコクコクと頷いた。

「ぁ、ん…スキ…っ! 俺…っ、これ…すき…!」

 すっかり自慰に夢中になって、声を上げて返事を返せば、想像上のロイは喉奥で 意地悪に笑いつつ返答して来る。

『それほど気に入ったなら、また軍に着ていけば良い。…大好き、なのだろう? 』
「ふ…ぁぁッ…、すき…ス…けど…っ、…仕事…出来なくなる…っ」

 ロイのその問い掛けに、瞬間甘い快楽を感じてしまったハボックは愕然とした。 ロイの言葉と言っても、その言葉を想像しているのは他ならぬハボック自身なの だ。…と言うことはつまり、心の底で自分はそれを望んでいる事になる。 そこまで考えて、慌てて自分の想像を否定するように首を振って答えたハボック に、想像上のロイは更に言葉を続けてきた。

『まあいい。…それよりまだ物足りないだろう? 後ろにも欲しいんじゃないか ?』
「ッ…それ、は…」

 今まで何度もロイと身体を重ねてきたハボックは、すっかり後ろでの行為に慣れ きってしまっていた。 戸惑いを言葉に乗せはしたものの、身体が疼いてどうしようも無いのは確かで、 ハボックは小さく息を詰めて、下着の紐を弄ぶ指先を自身の内部に沈み込ませて 行く。 そうすれば、『イイコだ』とロイが行為時の艶っぽい低音で笑ったような気がし た。

「ん、ああ…っ」

 内部は、熔けそうな程に熱くハボックの指先を迎え入れた。 柔らかいながら指をきゅっと食んでくると同時に、甘い疼きが快楽の火種に変わ っていく感覚、そして普通なら自慰で弄る事のない部分で感じてしまう背徳が相 まって、ハボックは抑え切れない喘ぎ声を漏らす。

『厭らしいな、ハボック。…お前が自慰でこんなことをしているとは、思わなか ったよ。』
「っ…!!」

 自分のこんなはしたない姿を見られたら…そう考えたのと同時に、ハボックの頭 の中で想像上のロイが先程とは違う雰囲気で笑った。 自分の考えにも関わらず、本当にロイにそう言う風に詰られた気がして、ハボッ クはビクリと身体を震わせる。

『本当は、私に恥ずかしい事をされるのも大好きだったのだな? …今だって、 私に見られるのを想像してこんなに悦んでいるのだからな…違うか?』
「っ…た…さぁ…、も…赦して…ッ、嫌わな…で…」

 続くロイのあんまりな言葉にハボックは嗚咽を漏らす。しかし、自慰は止まるど ころか激しさを増していく。 こんな事を言われて、今まで以上に興奮している自分にハボックははしたなく喘 ぎながら涙を溢した。


 ――…一方、ハボックに「遅くなるから」と言って先に帰宅させたロイは、結局 ハボックの居ない職場での仕事が捗らず、中尉に無理を言ってハボックが帰って 少ししてから、後を追うように帰宅していた。 帰宅した事を伝えようと、ハボックの部屋を覗けば、ロイは例の恥態と遭遇して しまう。 普段はあまりにつれない恋人の信じられない姿を暫く呆然と眺めていたが、喘ぎ の合間にロイを呼ぶ声が耳に入って来て漸く我に帰り、ロイは口角に笑みを浮か べてそっと室内に入り込んだ。

「ふ…あ、ぁ、…ッ、ん…」

 自慰に夢中になっているハボックは、信じられないことに室内に足を踏み入れた ロイの気配に気付かない。 それを好都合に思いながら、ロイはハボックの淫らな姿を鑑賞させて貰おうと、 四つに這うハボックの尻側に音を立てずに近づいた。 嗚咽を漏らし赦してと懇願しながらも、快楽に夢中になっているハボックは、今 まで見てきたどんな恥態よりいやらしく、男を誘う色香を放っており、しかもそ の身体は、先日ハボックに強引に履かせた下着を纏っている。 日に焼けていない引き締まった白い尻を、下着の紐が何とも卑猥に彩っていた。 更に、紐とリングだけの下着で戒めるだけでなく、その手は前と後ろに回されて いて。特に真後ろから見ているロイにとって、ハボックが後孔から指を出し入れ する度に熟れた肉壁がチラチラと見え隠れするその情景は、経験豊富なロイでさ えをも興奮させ、無意識に生唾を飲み込ませたのだった。

「ぁぁ…ッ、も……ダメ…っ…から…」

 背後に気配を消した恋人がいるなんて全く考えていないハボックは、自分の言葉 とは裏腹に内部をぐちゃぐちゃに掻き回し、戒められている前を夢中で扱き、先 端を捏ねては誘うように尻を振る。 そうすれば、高められていくにも関わらず、射精を制限されている為に身体は逆 流する快楽を延々と受け止め続けるしかなくなっていく。

「ぁ…ぁっ、た…さぁ、たいさ…ぁ!!」

 ハボックの手は、無意識にロイとの淫行を再現するかのように動いていた。 この前も、こうやってどうしようも無くなるまで高められ、喘がされて……そして、そして。

『――言え、ハボック。…ちゃんと言えれば、お前の望むようにしてやろう。』

 淫行の時に問われた言葉が、ハボックの頭の中で寸分違わずに響いた。 その指示に従った時の快楽をハボックは知っている。ロイの熱いモノでぐちゃぐ ちゃに掻き回されて、夢中で歓喜に喘いだ記憶が身体の隅々にまで刻み込まれて いる。 自慰なのは分かっていても、欲しくて欲しくて…もう止める事は出来なかった。

「…も、欲し…ッ! たぃ…さ……を、…お…れの、俺の…奥…に、ッ」
「――奥で、どうするんだ?」

 絶頂と言う名の解放を制限され、思考に快楽の霞が掛かり始めていたハボックは 、今まで頭の中で響いていた声が、急にリアルになった事に気付くことなく、… ただ問いかけられるがままに、口を開いていた。

「…奥ッ、か…き回して、…熱い…ので、…いっぱ…に…!」
「……『お願いします』、は?」

 ロイは、ハボックが自分で後ろに含ませていた指を少々強引に引き抜く。 素早く自身のズボンを寛げ、ハボックの下着の紐が邪魔にならないように引いて から、勃ち上がった熱を相手の蕾に擦り寄せる。 そうすれば、意識が蕩けきっているハボックは甘えた吐息を漏らして、ねだるよ うに腰を押し付けて来た。

「ん…ぁ、お願…しま、す…」

 すっかり現実と想像が混濁しきっているらしいハボックに、何より自分でさえあ まり目にしない…行為に従順なその姿に、ロイは小さく笑みを浮かべ、膝でベッ ドに乗り上げてから、勢い付けてハボックの内部に自身を突き挿れた。

「ひ、ぁあああああ…!!」

 びくびくと震えるハボックの狭い内壁の締め付けは、まるで絶頂時のそれで、ロ イは吐精を堪えるために思わず息を詰めた。 事実、ハボックからは戒め切れなかった白濁がトロトロと際限なく滴って行く。

「…私が居るのに、隠れて遊んでいるなんて悪い子だな、ハボック?」
「ゃ…あぁ、っ、そ…な、つもり…じゃ……ぁ、も…ソコ…ばっかり…!」

 絶頂が収まっていないにも関わらず、的確に弱い所を犯しながら詰ってくるロイ に、ハボックは涙をボロボロと溢しながら首を振る。

「…おや、嫌なのか? こうされる事を望んでいたのはお前だろう?」
「ん、っぅ……そ、れ…は…ッ」

 違う、とすぐに返すことは出来なかった。事実、ハボックはこうされる事を望み 、それを想像して自慰を行っていたのだから。 返答に迷っているハボックに、ロイはうっそりと笑う。ベッドに這う背に覆い被 さりながら、汗ばむ項に所有印を刻むように口付けてやる。

「…まだ足りないだろう? 私なら満たしてやれると思うのだが……それに、我 慢するなんて、勿体ないと思わないか?」

 好きなだけ快楽を貪れば良い。…ロイのその魅惑的な囁きに、ハボックの身体が ぴくりと反応して、…暫くしてから、小さな頷きが帰ってきて、ロイも満足気に 頷いた。

「そうと決まれば、たっぷりと味わわせてやらんとな。……癖になる位に」
「…ぇ? ひっ、ぁ…! ぁ、ッ…あ、んぁ、ぁぁぁ…!」

 最後の言葉が聞き取れず、不思議そうな顔をしたハボックに気付かないフリをし て、ロイは再び律動を早めて行く。 戒めのせいで快楽が解放されない身体はあっさりと高みに追い上げられて行き、 勢いのない白濁を垂れ流し続けるハボックの内部に、ロイは求められるがまま灼 熱を放ったのだった――


「…さて、と。」

 ぐったりと気を失ったハボックから、ロイは漸く自身を抜いていく。 今しがたまでロイを含み続けていた蕾はだらしなく開き、ロイが注ぎこんだ白濁 を溢れさせていく。そんな情景に再び興奮して来そうになる自身に、ロイは思わ ず苦笑した。

 結局、散々行為を行ったにも拘らず、ロイがハボックを解放させてやることは無 かった。最後にはロイの名前を譫言のように呼んでいたハボックに優しく口付け てやってから、ゆっくり下着を外してやる。

「ん、ッ……」

 そうすれば、2・3度びゅくびゅくと白濁が放たれた後に、すっかり勢いを無く した精液がハボックからトロトロと溢れ出す。 暫くそれを見ていたロイは、指先にそれを掬い、ゆっくりと甘美なそれを舌で味 わった。

「――これから、楽しい事になりそうだな…ハボック。」

 すっかり意識を失っているハボックに、その囁きが届く事はなく。
 徐にベッドサイドに腰掛けたロイが、タバコを一本取り、ハボックとのキスの味 がするそれにジッポで火を点けた音が、やけに大きく室内に響いた。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「性涼淫料水」の待宵楓さまからいただきましたv以前、日記で扱った下着ネタに凄いウケてくださって、その時にもネタを頂いたりしたのですが、さらにご自身でも例の下着を着けたハボの話を書いて下さいました!!や〜〜ん、もうv既にかなり躾けられている感のあるハボがロイとの行為を思い浮かべながらひとりエッチvステキーーーッvvロイの言葉攻めにグラグラしちゃいましたが、更に途中でリアルにすり替わるとこなんて、最高ッスね、楓さんッ!楓さんのロイの口調は大好きなので、言葉で苛められるハボなんて思いっきり大好物で悶え死にそうになりました(笑)でもこれ、絶対つづきがある感じなんですがッ!!楓さ〜ん、つづき考えてないよ、などと仰らず、是非お時間のある時つづきお願いしますねッvv
萌え萌えで激エロ可愛いハボとメチャクチャカッコイイ大佐を本当にどうもありがとうございましたっvv