結 実 3
〜緑青の腕〜

亮水瀬

「あ、ァ、あっひぃっっ…!」
 先端の太い部分を含まされたままぐりぐりと入口のあたりを掻き回されて、ハボックは甘い悲鳴を上げた。
「少し、我慢しろ。すぐに慣れる」
 背後から耳朶を甘噛みされ、びくんと肩を揺らす。
 ロイの言葉通り、柔らかい果肉を押し潰すように掻き混ぜられると、少し息が楽になった。だが溢れ出す果汁のぬめりに力を借りたそれは、ますます我が物顔で深部に侵入してくる。
「っひゃあっ!…あっアッッ…ン!」
 前立腺を内側から擦り上げられて、高い嬌声が上がった。ハボックは激しく身悶えてテーブルクロスを掻き毟った。籐籠が床に転げ落ち、ばらばらと緑の果実が辺りに転がっていく。
「そんなにこれの具合がいいのか?」
 ロイの声に、隠し切れない嫉妬が滲む。
「 ─── ぐ、ぅ……っ!」
 応えを返せぬままに激しく突き上げられて、ハボックは喘いだ。いきなり奥深くまで太い果実を呑み込まされ、狭い器官は破裂を恐れるかのように小刻みに痙攣した。
「………っ!……!!」
 体内で胞子嚢が作られた時と似た激痛が、下腹を襲った。ハボックは何とか苦痛を遣り過ごそうと身体の力を抜こうとしたが、さすがに限界だった。
「い、いたっ……痛いっ…やだぁっ…っ」
 滑らかな頬を伝って、苦痛の涙が後から後からテーブルに零れ落ちる。
「………苦しいか?…苦しいだろうな…」
 どこか熱に浮かされたような声で囁きながら、ロイは残酷な行為を続ける。
「ぅ、う、あっ!…あああっ!」
 目の前が真っ赤に染まったような錯覚に陥って、ハボックは苦しげに身を捩った。だが受け入れる事に慣らされた躯は、やがて苦痛の中に無理矢理快楽の芽を見出してしまう。激痛に痛めつけられた神経は、縋るようにその快楽に溺れた。
「……ひっ…ひぃっ……やぁあっ…!」
 びくびくと身を仰け反らせて目を瞠り、彼は再び甘い悲鳴を上げ始める。
 牡の形の果実を躯の奥深く呑み込み、突起にぐちぐちと内部の果肉を掻き混ぜられる度にあられもない嬌声を撒き散らして腰を振る ─── その様は、たまらなくいやらしかった。
「あ、アァっ…っイくっ…!!」
 薄水色のクロスに白濁を撒き散らして、彼はまた果てた。だが狂乱は、一向に治まる気配がない。
「いゃあぁっ…!っ…なん、でっ…?!」
 引き絞るように内壁が蠢くと、まるで中に精をぶちまけられたように潰れた果実から白濁が溢れ出す。それは敏感な粘膜を熱く焼いて、更に懊悩を引き出した。
「ひぁあっ…!…けてっ…助けて、大佐っ…!!」
 緑色の異物にどんなに突き上げられ、掻き混ぜられても躯は満たされなかった。それどころか、病的な熱を孕んでどんどん昂ぶっていく。
「た、っ佐……たい、さっ…!」
 こんなに間近に愛しい人がいるのに、その背に縋ることさえ出来ないなんて。
 ─── ロイが欲しい。ロイの熱い楔で、狂おしく蠢く粘膜を何度も穿って欲しかった。こんなものではなく、彼の身体が作り出した命の証を最奥にたっぷりと注ぎ込んで欲しいのに ─── 綺麗に澄んだ空色の眸に情欲の色を溶かし込んで、ハボックは全身でロイに訴えた。
「……あんたので、犯してっ…!」
「…ハボック」
 振り向きざまにロイの手首を捉え、彼は挑むようにねめつける。気圧されて動きを止めた男の手を楔形の鞘から外し、自らそれに手を掛けた。
「…これ、……ゃだ……っ」
 みっちりと肉を食んだ凶器を、無理矢理そこから引きずり出す。入口の粘膜がいやいやをするように捲れ上がって、鮮やかな桃色を覗かせた。
「…ぐ、…うっ…あっ、ああああっ!」
 ハボックは続けざまに達して白濁を吐き出しながら、自らの内壁の動きに逆らって必死で異物を引き抜く。ロイは魅せられたように固まったまま、その様を凝視するしかなかった。
 カツンと硬質な音が響いて、床に果実が落ちる。濃い緑色のそれはぬらぬらとした白い粘液に覆われていて、実というより本当にいやらしい玩具にしか見えなかった。
 ハボックは粗い息のままちらりとそれを一瞥すると、身を返して大きく脚を開き、白い果汁を滴らせた饒舌で小さな蕾をロイの目に曝した。すぐに勢いを取り戻した若い楔も引き締まった下腹も、自身の吐き出した欲に塗れてべとべとだ。
「大佐、俺ン中に来てっ!…あんたので、俺をぐちゃぐちゃにして…っ」
 甘やかな誘惑。
「お、まえは……っ…!」
 くらりと目眩を覚えながら、ロイはその若木のような肢体にむしゃぶりついた。

「ひぁっ…あ、あぁあんっ!」
 漸く与えられた生身のロイに歓喜の声を上げながら、ハボックは自ら腰を振った。詰め込まれた丸い実はまだ半分もその形を残していたから、軽く突き上げられるだけで後から後から快楽の波が押し寄せる。
「っあ、…ハッ……ン! イイっ……!」
 ハボックは身も世もなく乱れて高い嬌声を上げ続けた。もう、白昼の居間で嬌態を曝している事を恥ずかしがる余裕もない。
「たいさっ、大佐ぁあっ……っ!」
 ロイの腰に両脚を絡めるだけでは足らず、踵でドンドンとその背を蹴ってしまう。
「ハボ……ハボックっ…!」
 いつになく激しいその反応に引きずられるように、男は急速に高みに登りつめる。きつく相手の背を掻き抱きながら、ロイはハボックの中に埒を明けた。
「ヒァアアアアアっ…!!」
 内にロイの熱い滾りを受け、それに呼応するようにハボックもまた相手の腹に己の欲をぶちまける。
 ─── 絶頂の瞬間、それまでずっと繋がっていたキメラとの微かな共鳴シンパシーがぷっつりと切れるのを、二人は感じた。

* * *

 ─── 緑青の腕は、長い眠りに就いた。
 10年の時を経て再びそれが目覚める時、ロイはその秘めた望みを拒めるのだろうか? それとも、また愛しい者の身体を差し出してしまうのか?

 温室の緑はさわさわと微風に揺らいだままその沈黙を保ち続けた。


−FIN−


もう、ドキドキしっぱなしでしたーっ!ちゃんと緑青の腕も眠りに着かせて頂いて、これがあってようやく全編終了て感じですね。実はこの後オマケもあるのでまだ暫くワクワクですv