焼餅



 どっと笑い声があがるのが聞こえ、思わずそちらの方へ足を向けると、休憩所のソファに座るハボックの姿が見えた。周りにいるのはアイツの同期の連中だ。何を話しているのかひどく楽しそうに笑っている。アイツはいつも笑っているが私の側にいる時とは違う笑い顔に何となく面白くない。見ていたところで不愉快になるだけなので、早々に立ち去ろうとしたその時。ハボックの隣にいた男がハボックの肩に腕を回してその耳元に何か囁いた。くすぐったそうに聞いていたハボックはくすくすと笑うと今度はそいつの耳元に口を寄せて何か囁くと二人して大声で笑っている。そんなハボックの姿にふつふつと心の奥底から何か黒いものが湧き上がり、それが何かを認識するより早く、足音も荒くソファに近づいて行った。
「ハボック少尉」
 かけた声は内心の暗いものを感じさせない穏やかなもので。
 突然現れた私にハボックの肩に手を回していた男が慌てて体を離すと居住まいを正した。他の面々も上官の登場に身を硬くして成り行きを見守っている。
「大佐」
 唯一人、ハボックだけがへらりといつもの調子で笑うと、「なんスか?」と間の抜けた返事をした。
「休憩中悪いのだが、ちょっと来て貰えるか」
 そういう私に僅かに目を瞠って、ハボックはソファから立ち上がった。休憩所から出ようとして
「おっと、煙草…」
 とテーブルに置いたままの煙草とライターに手を伸ばそうとすると、ハボックの隣に腰掛けていた男が咄嗟にそれを取って、ハボックに手渡した。
「サンキュ」
 ニッと笑って言うハボックにその男は嬉しそうに笑って「またな」と囁いた。ハボックはソイツにひらひらと手を振ると私の後について廊下に出てきた。
「何か、用っスか?」
 そう聞いてくるハボックを顎で促して歩き出す。司令部の奥まで来ると、殆んど使われていない会議室にハボックを通して、後ろ手に鍵をかけた。
「大佐?」
 不思議そうに見つめてくるハボックを睨みつけて低く聞いた。
「あの男は誰だ?」
「あの男?」
「お前の隣に座っていたヤツだ」
「ああ、オコーネルのことっスか?」
「オコーネル?」
「ケヴィン・オコーネル。同期のヤツなんスけど、アイツがなにか?」
 ほわんとした口調で聞き返されて、一瞬言葉に詰まる。
「…燃やしてやろうかと思ったぞ」
「は?」
「あんなヤツに触れさせるな…!」
 思わず語気が荒くなる自分をハボックがポカンとして見つめる。
「え、だって、別に唯の同期だし」
「相手はそう思っていないだろう!?」
「へ…?まさか、そんなこと」
 有り得ないっスよ、とへらりと笑うハボックに眩暈がする。どうしてコイツは他人の好意に疎いんだ。ヤツの目を見ればどう思っているかなんて一目瞭然だろうが。そう怒鳴りつけようとして、ハボックのきょとんとした顔を見て一気に力が抜けた。がっくりと肩を落とす私にハボックが恐る恐る声をかけてくる。
「大佐?…大丈夫っスか?」
 そんなハボックを下から睨みつけた。
「いいか、ハボック。私以外の男に触れさせたり、笑いかけたり、ましてや二人きりになったりするな。でないと、何をするか判らんからな」
 こんな独占欲丸出しな事を言って、もしかして引かれるかもしれないと思いもしたが、もしそうなったとしても絶対に逃がしはしないとハボックを見つめた。ハボックは私の言葉にポカンとしていたが、次の瞬間、見る見るうちに首まで真っ赤になって俯いてしまった。
「ハボック?」
 どうしたのかと問いかければ顔は俯いたまま、視線だけ上げて恨めしそうに見つめてきた。
「…大佐ってオレのこと好きですか?」
「好きでなければあんなことはしないが」
 何を突然言い出すんだ、このばか者は。いくら私でも、女ならともかく好きでもない男に手なんかだすか。
 返ってきた答えにハボックはますます赤くなった。
「大佐ってやっぱ、タラシだよ…」
「なんだと?」
 失礼なことを抜かすハボックに知らず声が低くなる。だが。
「だって、そんなこと言われたら…」
 すげぇ、嬉しいかも、というハボックに今度はこちらがきょとんとする番だった。
「それって焼餅ですよね?」
 そう言って嬉しそうに笑うハボックに不覚にもどきりと心臓が跳ねた。
「オレも大佐のこと、好きっス」
 ふわりと笑いながら告げられて、次の瞬間、ハボックを会議室のテーブルの上に押し倒していた。
「うわっ!ちょっ…、たいさっ?何するんですかっ?!」
「そんなこと言われたら、男だったら押し倒したくなるだろうが」
「何言って…っ!そろそろ戻らないと、中尉におこられ…っ、んんっっ」
 ぐちゃぐちゃと煩いことを言う口を強引に塞ぐ。口中を思うまま嘗め回し、舌を絡めてきつく吸い上げればハボックの体から力が抜けていった。軍服の前を寛げ、ズボンのベルトをはずしてジッパーを下ろすと中へ手を差し入れる。中心をぎゅっと握り締めるのと、ハボックがそれを止めようと私の腕に手をかけるのがほぼ同時だった。
「あっ…、やめっ…」
 手首を掴んでズボンの中から引き出そうとするが、それに構わず扱いてやるとたちまち硬度が増していった。
「ダメですって、たい、さ…っ」
 尚も私を止めようと無駄な努力をしようとするハボックのズボンを引き摺り下ろし、すっかり立ち上がって蜜を垂れ流しているハボック自身を指で弾いてやる。
「ひっ、あ…っ」
 喉を仰け反らせて喘ぐハボックのソレをわざと力を込めて握り締めた。
「ひぁ…っ、いたぁ…っ」
 空色の瞳からぼろぼろと涙を零しながら、それでも握り締めたソコはぐんと力を増した。
「痛くても感じるか…」
 イヤらしい体だな、と耳元に囁いてやると悔しげに睨んできた。だが、ゆっくりと愛撫を施すと唇を震わせて、瞳を閉じた。
「あ、はぁ…っ、はっ…。」
 中心に這わせた手の動きに合わせて、無意識に腰を揺らめかすハボックを見るうち、もっと啼かせたくなってくる。両足の付け根に手を当ててぐいと大きく開かせると、会議室のテーブルの上で腹に付くほど立ち上がったソレと垂れてきた蜜でしっとりと濡れている蕾が露わになった。
「や、やだ…っ」
 明るい光の中、しかも普段仕事をしている場所であられもない格好をさせられて、ハボックが羞恥に身を捩る。ふっと息を吹きかければたらりと蜜を垂れ流し、ひくひくと蠢く蕾を濡らしていった。
「いい眺めだな…」
 息が掛かるようにわざと間近で囁くとまた新たな蜜が零れた。
「あっ、んなとこで、しゃべんな、いで…っ」
「なぜ?」
 そう囁きながら、蕾の周りを指でぐるりと撫で回す。とめどなく零れてくる蜜で指を濡らすとつぷりと中へ差し入れた。
「いっ、あ…っ」
 ぐちぐちとかき回し沈める指を増やしていく。その度に零れてくる蜜はテーブルの上にも流れ出ていた。
「少尉、会議室のテーブルを汚してはいかんな…」
 意地悪く囁くとハボックは真っ赤になって唇をかみ締めた。ふと目を上げると、テーブルの上にホワイトボード用のペンが転がっている。腕を伸ばしてそれを取ると指を抜いてハボックの後ろにソレを宛がった。
「こんなに汚してしまって、お仕置きが必要だな…」
 そう呟いて、ハボックの中へとペンを沈めていった。
「ひぃ…っ、や、やだぁっ、なにを…っ」
 堅く冷たいものを差し入れられてハボックの体がすくみ上がる。それでもペンで中をぐちゅぐちゅとかき回すと、快楽に体が跳ね上がった。
「イヤらしいヤツ…。こんなものでも感じるのか?」
 詰る言葉にハボックがぼろぼろと涙を零した。
「やだぁ…っ、あ、も、やめ、て…っ」
 あんまりだ、と泣きながら訴えてくるハボックに「でも、悦いんだろう?」と囁けばふるふると首を振った。そんなハボックの顔を見つめながらペンを奥まで差し入れて、感じるところを突いてやる。何度かきつく突いてやれば、耐え切れずに熱を放った。体液にまみれたペンを抜き取りテーブルの上に放り投げる。ハボックの顔を覗き込むと呆然と宙を見つめていた。涙に濡れた頬をそっと撫でるとゆっくりと焦点のあった目が私に向けられる。目が合った次の瞬間、猛然と暴れだしたハボックの体をテーブルに押さえつけた。
「離せよ…っ、最低っ、だいっ嫌いだ…っ」
 罵ってもがくハボックを全身で押さえつけて、その唇を奪う。
「ん…っ、ふ、う…っ」
 自身を取り出すとハボックの脚を抱え上げ、しっとりと解れたソコへゆっくりと埋めていった。
「あ、あ、あ…っ」
 しがみ付いて来る体を抱き返して、その耳元に囁いた。
「愛してるよ、ハボック…」
 びくんとハボックの体が震える。唇の横にキスを落とした。
「ハボック…」
「…ずるい…っ」
 手で顔を覆ってなじるハボックの腕を掴んで顔から外させると、顎に手をかけて正面を向かせた。
「お前が私を狂わせるんだ…」
 僅かに見開いた空色の瞳が見上げてくる。
「誰にも渡さない、お前は私のものだ」
 そう囁いてハボックの中に埋めたままだった自身で乱暴に突き上げた。
「ああっ!」
 絡み付いてくる襞を押し分けて最奥へと突き上げ、逃がすまいと締め付けてくる所をぎりぎりまで引き抜いてはまた強引に突き上げる。乱暴な抽送にハボックが喉を仰け反らせて喘いだ。
「うあっ…、ひっ、たい、さ…っ」
「ハボック…っ」
「あ、は…っ、たいさぁ…っ」
 ハボックが手を伸ばして顔を引き寄せるままに唇を合わせた。舌を絡ませあい、痛いほど吸い上げる。猛った牡でハボックをがんがんと突き上げて追い込んでいく。
「やぁ…っ、あ、イ、ク…っ」
 体を突っ張らせて震えるハボックを引き寄せて唇を塞いだ。達したハボックに締め付けられて追い上げられるようにハボックの中へと熱を吐き出した。


「…どうするんです、コレ…」
 取敢えず身支度を整えたものの、会議室のテーブルの上はかなり悲惨な状況だった。
「お前、どこからか雑巾もってきて、拭け」
「えーっ、オレがやるんスかっ?」
「お前のだろうが」
 そ知らぬ顔でそう言えば、ハボックが真っ赤になって睨んできた。
「アンタのせいでしょうがっ!」
 いい年して処構わず盛りやがって、とぼそりと呟くのを聞きとがめてその腕を掴んだ。
「まだ啼かせ足りないようだな」
 そう言ってずいと顔を寄せれば慌てて首を振る。
「オレ、先にシャワー浴びてきたいんスけど…」
 情けない顔でそういうハボックにニヤリと笑って
「そのまま入れとけ」
 といえば
「腹こわしたら、どうしてくれるんですっ?」
 と凄んでくる。
「それに、歩くと…」
「歩くと、何だ?」
 わざとらしく聞き返せば
「アンタ、意地悪っスね…」
と睨んできた。
「10分で戻ってきますから」
 それまで待ってて下さい、と言って気だるそうに会議室から出て行くハボックの背に
「中尉にはお前が言い訳しろよ」
 と言葉を投げれば思い切り嫌そうな顔をするのに、笑いかけて。
 気が狂うほどの恋も悪くないと思った。



2006/6/26


何か書けば書くだけロイがヘンタイ親父化していく気が…。ロイファンの方、ごめんなさい。でも、ロイはハボのこと溺愛してるんです〜〜っ(滝汗)