おやつなふたり



「あっ、これ、今話題のケーキ屋のケーキじゃないっスか!」
 リビングに入るなり、上着を脱ぐのも忘れてハボックが机の上の箱を手に取る。
「どうしたんスか、これ」
「夕方来た客人が置いていったんだ。中尉がお前が喜ぶだろうと持たせてくれた」
 ロイがそう言えばハボックが嬉しそうに笑った。
「さすが中尉っ!食べてみたかったんスよね、ここのケーキ」
 そう言うと、ハボックはドサリとソファーに座り込み箱を開け始める。中を覗いた途端、ぱあっと顔を明るくするハボックの様子にロイはくすりと笑った。
「食ってもいいっスか?」
 それでも一応お伺いをたてるあたりが可愛らしい。ロイは向かいのソファーに腰をかけると言った。
「せめて手ぐらい洗って来たらどうだ」
「あ…そか、そうっスよね」
 ハボックはそう言うとテーブルに箱を置いてバタバタとリビングを出て行く。あっという間に戻ってきたかと思うとソファーに神妙に腰掛け、箱を前に置いたままロイの顔を上目遣いに見た。その様子が待てをされている犬のようで、ロイは笑い出しそうになるのを必死に我慢すると鷹揚に頷いてみせる。パッと顔を輝かせると箱に手を伸ばし、ハボックは箱の中のケーキを真剣に物色し始めた。
「どれにしようかな…このチョコのも旨そうだけど、こっちのフルーツのも捨てがたいし…あ、でもやっぱり最初は生クリームのが王道かな」
 散々迷った末、ハボックはチョコスポンジの間にチェリークリームを挟んで、その上に生クリームをたっぷり載せたサクランボの飾りも可愛らしいケーキを手に取る。目を輝かせて目の高さに上げたケーキを見ると、「いただきます」と言って大きく口をあけた。パクリと一口かぶりついて、味わうように噛み締める。
「うまいーっ!大佐、すげー、美味いっス、ここのケーキっ!!」
 そう言って嬉しそうに笑うハボックの頬についた生クリームを見ると、ロイは立ち上がってハボックの隣りに腰を下ろした。
「大佐も食べてみてくださいよ、すげー、美味いから」
 ハボックがそう言えば、ロイは手を伸ばしてハボックの顔を掴む。
「どれ」
 ぺろりと頬を舐められてハボックが真っ赤になる。慌ててソファーの上を後ずさるハボックにロイはにんまりと笑うと言った。
「確かに、なかなか美味いクリームだ」
「なっ…そんなとこ舐めないで下さいよっ!!ケーキなら他にもあるでしょっ!!」
 真っ赤になって言うハボックの手元がお留守になって、今にもケーキからクリームが零れそうだ。
「ほら、持っててやるから上着を脱いどけ。今にもクリームがつきそうだぞ」
 ロイはそう言うと、ハボックの手からケーキを奪い取る。ハボックは手に残ったクリームをぺろりと舐めると言われるままに上着を脱いだ。
「たいさー」
「盗りゃせん」
 苦笑するロイの手からケーキを奪い返してハボックは再びケーキを口にする。満足そうなその顔に、ロイはムクムクと悪戯心がわきあがってきた。
「ハボック、私もケーキが食べたいな」
「まだいっぱいありますから好きなのをどうぞ」
 ハボックはそう言うとケーキの箱をロイの方へ押しやる。ロイははこの中を覗き込むとちょっと考えてシュークリームを取り出した。
「そういうシンプルなケーキもうまいっスよね」
 ハボックはもぐもぐとケーキを食べながらロイの選んだそれを見て言う。
「そうだな」
 最後の一口を放り込んだハボックの方をちらりと見て、ロイはシュークリームの上半分を割った。
「シンプルなケーキはシンプルなケーキなりの食べ方があるのを知ってるか?」
「へ?そうなんスか?」
 ロイの言葉にポカンとするハボックにロイはシュークリームを手に言った。
「知りたいか?」
「え?ええ、まぁ」
 ハボックがそう答えればロイが指でちょいちょいとハボックを呼ぶ。ハボックは呼ばれるままにソファーの上を移動してロイの隣りに腰を下ろした。ロイは興味津々な体のハボックを見るとにやりと笑う。
「その食べ方と言うのはな」
「はい」
「こうだ」
 ロイはそう言うと手にしたシュークリームの生クリームをぺたりとハボックの頬につけた。突然のことにフリーズするハボックにロイは更にクリームをつけていく。首筋に垂らしそれからハボックのインナー代わりの黒いシャツを捲り上げるとその胸にもクリームをなすりつけた。殆んどクリームのなくなったシュークリームの皮をポンと放り投げると、首筋についたクリームをつーっと舌で舐めあげる。その感触にびくうと体を震わせたハボックはようやく我に返ると慌ててロイを押しやろうとした。
「ちょっ…アンタっ、何考えてるんスかっっ!!」
 ハボックはなんとかロイから体を離そうとするが、時既に遅し、しっかりとソファーに組み敷かれていた。
「食べ方を知りたいと言ったのはお前だろう」
「こんな食べ方、ケーキの食べ方じゃないでしょっ!」
「それはお前の思い込みと言うものだ」
「なにが思い込み…あっ」
 首筋を舐めていたロイが噛み付くように歯を立てる。思わず声を上げて、ハボックは慌てて唇を噛み締めた。
「ほら、美味いだろ?」
「美味いのはアンタだけ…っ…んうっ」
 垂らしたクリームが体温で溶けてゆっくりと流れていく感触にハボックはぞくりと体を震わせる。ロイは頬についたそれを指に取ると、ハボックの口元に差し出した。
「そんなことを言うなら舐めるか?」
 そう低く囁かれて、ハボックは目を見開く。ロイの黒い瞳にじっと見つめられて、まるで操られるようにハボックはロイの指に唇を寄せた。ぴちゃりと舌を出してロイの指についたクリームを舐める。
「ん…」
 ぴちゃぴちゃと舌を這わせるハボックにロイはくくっと笑うと聞いた。
「美味そうだな」
 ロイはそう言うとハボックの口の中にくっと指を押し入れる。ハボックの舌を押し、頬の肉をくるりと弄ればハボックが苦しげに鼻をならした。ロイは散々口中を弄ったあと指を引き抜くと、ハボックの唇に自分のそれを寄せる。唇についたクリームをぺろりと舐めるとそのまま深く口付けた。
「んふっ…ぅん」
 お互いの口中に残るクリームを唾液と共に混ぜあう。甘い唾液が唇の端から零れてハボックの首筋を流れていった。ロイは少し唇を離すと殆んど触れそうな距離でハボックに囁く。
「甘いな…」
「アンタこそ…」
 ロイの唇から零れる吐息も甘いクリームの香りがする。ハボックがその甘い匂いに眩暈がするように感じていると、ロイの手がハボックの乳首に触れた。
「あっ!」
 ビクッと体を震わすハボックにロイが囁く。
「さっきお前が食べてたケーキとそっくりだぞ」
「え?」
「ほら、クリームの上に美味しそうな実が載ってる」
 言われて視線を落とせば、自分の胸の辺りにクリームが塗りたくられている。そのクリームの中心にぷくりと立ち上がった乳首が覗く様は、まるで熟れた果実が載っているように見えた。
「やだっ」
 慌ててハボックが手でクリームを拭い去ろうとすれば、ロイの手ががっしりとそれを阻む。
「さっきのチェリーより熟れてるんじゃないか」
「なに馬鹿言って…っ」
「真っ赤に熟れてる」
 ロイはそう言うと、クリームの中から覗く乳首を摘んだ。
「流石にチェリーと違ってもぎ取れないか」
「あたりまえっ」
 摘んだまま離そうとしないロイの指をハボックは懸命に振り払おうとする。だが、しっかりと摘まれたそこは、ハボックが身動くたびくりくりとロイの指の間でこね回されるばかりだった。
「ああっ…あふ」
「イヤらしいヤツだな、自分でこね回すなんて」
「ちがっ」
「ふふ…ますます紅くなったぞ」
 ちらりと見たそこは確かにさっきより赤みが増しているような気がする。ハボックはロイの手を掴むと必死にそこから引き剥がした。
「なんだ、指は嫌か?じゃあ、こうするか。」
 そういった途端、ロイはハボックの乳首にしゃぶりつく。
「ヒアッ」
 胸を仰け反らせるハボックの熟れきったそこをロイは唇と舌とでこね回した。
「アッアッ」
 散々弄られた乳首はぷりぷりに張り詰めて、ほんの少し弄られただけでも痛いように感じる。ロイは身悶えるハボックの乳首を舌で掬い取ったクリームを塗りつけるようにして嘗め回した。
「あんっ…い、やっ」
「イヤじゃないだろう、こんなに乳首をを堅くして。舌を押し返すようだぞ」
「あっ…そ…なっ」
 快感を通りこした痛みに、ハボックはぽろぽろと涙を零す。もうこれ以上弄られたらおかしくなってしまいそうでハボックはロイに言った。
「おねが…も、やめ…っ」
「まだクリームが残ってる」
 ロイはそう言うとねちゃねちゃとハボックの胸をしゃぶりつづける。ようやくロイが唇を離した時にはそこは真っ赤に腫れ上がっていた。
「あ…は…」
 胸に顔を寄せたまま荒い息を零すハボックを上目遣いに見つめてロイが言う。
「凄く旨そうだ…食いちぎってしまいたいな…」
 ロイはそう言うと、紅く腫れ上がったそこに歯を立てた。
「アアッ…ヒィッ」
 びくんびくんとハボックの体が跳ね、その空色の瞳が見開かれる。
「あ…」
 呟いて真っ赤になってしまったハボックにロイはくすりと笑った。
「イったか」
 そう言ってロイは強張ったハボックの体からズボンを引き剥がす。露わにされたハボックの下着はべっとりと吐き出されたもので汚れていた。
「食いちぎられると思ったら感じたのか?」
「ちが…っ」
「べちゃべちゃだ」
「言うなっ」
 ハボックは真っ赤になった顔を腕で隠してしまう。ロイはくすくすと笑いながらべっとりと湿ったハボックの下着を剥ぎ取った。吐き出した熱でぬらぬらと濡れたハボックの中心は、だが既に半分立ち上がりかけていた。
「なんだ、イヤらしいな。もう勃ってきてるじゃないか」
「やだ…っ」
 小さく身を縮めようとするハボックにそれを赦さず、ロイはハボックの左脚をソファーの背にあげてしまう。手を伸ばしてテーブルの上のケーキの箱を取ると、半分残ったシュークリームを取り出した。
「少し冷やしてやろうか、熱いだろう」
 ロイはそう言うと手にしたクリームを半勃ちになったハボック自身にぺたりと塗る。
「ヒゥッ」
 ひやりとしたクリームの感触にハボックがビクッと体を震わせた。ぺたぺたとクリームで覆ってしまうとロイはハボックに囁く。
「どうだ、冷たくて、少しは熱が収まりそうか?」
「な、わけないっしょ…っ…早く取って…っっ」
 涙にくぐもった声でハボックが言うのにロイはクリームにまみれた中心を見下ろした。
「自分で流してるじゃないか」
 そう言って先端からとろりと蜜を零しているそこを指で弾く。
「とろとろとクリームを洗い流そうとしてるみたいだ」
 いい眺めだ、と笑うロイにハボックの瞳からぼろぼろと涙が溢れた。
「ばかぁっ!」
 ハボックがそう叫んでロイを蹴り上げようとすると、ロイはその脚を掴んで大きく割り開く。中心で蜜を零しながらひくつくそこに唇を寄せるとぺろりと舐めあげた。
「ひああっ」
 ぴちゃぴちゃと音を立てて舐めまわされて、ハボックはロイの髪を鷲掴む。思わず視線を落とした先で、ロイの紅い舌がクリームを塗りたくられた自身を這うのを見て、ハボックは全身の血が逆流したように感じた。
「アッ…ヒアッ…んあああっっ」
 ダメだと思う間もなくハボックは熱を吐き出してしまう。突然噴き出した白濁に顔を汚されて、ポカンとするロイにハボックは慌てて叫んだ。
「ごっ、ごめんなさい…っ」
 我慢できなかったとは言えロイの顔を汚してしまった事にうろたえるハボックを見上げて、ロイはくすくすと笑い出す。ハボックの中心に再び唇を寄せると囁いた。
「すごいな、クリームとお前の蜜でぐちょぐちょだ。なかなかいい味だぞ」
「たいさっ」
 じゅぶと咥えられてハボックがヒュッと息を飲む。舌と喉で締め上げられてハボックは泣きながら熱を吐き出した。
「も…やだぁ…っ」
 しゃくりあげるハボックはその頼りなげな様が余計にロイの嗜虐心を煽っている事に気がつかない。ロイはまだ残っていたクリームを指で掬うとひくつく蕾にずぶりと突き入れた。
「ヒアッ」
「ほら、こっちの口にも食わせてやろう」
「ヒッ…ヤッ…」
 指で掬ってはクリームを塗りこまれて、ハボックは目を張ったまま強張らせた体をびくびくと震わせる。浅い呼吸を繰り返しながらハボックは消え入りそうな声で囁いた。
「や…たいさ…やだ…やめて…っ」
 ぬるぬるとぬめるクリームの気色悪さにハボックは涙を零す。ロイはハボックの脚を抱えあげるとズボンの中から自身を取り出し、クリームでぬらぬらと濡れたそこに宛がった。ズッと押し入れば、ハボックが背を仰け反らせて喘ぐ。
「あ、あ、あ」
 ずぶずぶと押し入ったかと思うと、ずるりと入口まで引き抜き、一気に奥に突き入れる。激しい抜きさしに塗りこまれたクリームが溶けて白く泡立った。
「すごいな、ホイップされてるみたいだ」
 繋がった箇所を見ながらそう感想を零すロイにハボックは消え入りたい気持ちになる。恥ずかしくて堪らなくて、だが、甘ったるい匂いに快感を煽られてハボックはあられもない声を上げた。
「あっひっ…あんっ…ああんぅぅっ」
「…随分よさそうだな、ハボック」
「あ…ばかぁっ…んああっ」
 じゅぶじゅぶとイヤらしい音と共に甘いバニラの匂いが部屋を満たしていく。ハボックはロイにしがみ付くと自ら腰を揺らした。
「あっあっ…たいさぁ…っ」
「ハボ…」
「イくっ…も、イくぅ…っ」
 身悶えてそう口走るハボックの唇をロイは強引に塞いだ。
「んんっっ…ンン――――ッッ」
 ロイの頭を抱え込んで、ハボックがビクビクと体を震わせる。二人の間に白濁を吐き出したハボックの中へロイも熱を吐き出した。体の奥を焼かれて、ハボックはその熱さに意識を手放したのだった。
 ふわっと浮き上がった意識にハボックはぱちぱちと瞬いた。自分が一体どこで何をしていたのか、瞬時には思い出せずにぼんやりと宙を見つめる。
「おい」
その時視界に入ってきた顔をハボックは見つめて、次の瞬間ガバッと体を起こした。当然。
「うわっ」
「いてぇっ」
ガツンと額同士をぶつけてお互いに顔を抑える。ハボックは突っ伏したそこがロイの膝の上だと気づいて思い切りその腿を抓った。
「いたたっっ!!なにするんだっ!!」
「…よくもケーキを粗末にしましたね」
「…お前だって美味そうにしてたろう?」
「あのねぇっ」
「特にクリームの中から覗いてたチェリーが――」
 ロイがそう言った途端、ハボックが手近にあったクッションをロイの顔に投げつける。
「こ、の…ヘンタイっっ!!」
「お互い様だろう」
クッションの影からにんまりと笑うロイに、ハボックは当分ケーキは食べるまいと誓うのだった。


2007/6/19