| 紫2 序章 後編 |
| 「ハボックはどこだ?」 「お部屋の方にいらっしゃいます」 「すぐ書斎に来るように言ってくれ」 「かしこまりました」 長期の出張からようやく戻ってきたロイは、自宅に着くなり苛々とノーマンに言った。ハボックが食事を取らなかった挙句、倒れたことはノーマンから聞いている。だが、その理由となると、ノーマンは「ご本人からお聞き下さい」の一点張りだった。そんなわけでロイは、ハボックとノーマンの両方に対して苛々を募らせる結果となり、家に着いた頃にはかなり機嫌が悪かった。 ロイはノーマンにコートを預けると書斎へと入っていく。大きなデスクの前の椅子に腰かけると、ぐるりと椅子を回して窓の外を眺めた。冬の空は青く澄んで、ハボックの瞳を思い起こさせる。ロイが暫くぶりに会うハボックに想いを馳せていると、遠慮がちに書斎の扉がノックされた。 「入りなさい」 ロイの声に扉がそっと開いて、ハボックが入ってくる。決まり悪そうに視線を俯け、ついでにすらりと伸びた背筋も俯けているハボックにロイは言った。 「ノーマンから何があったかは聞いている。だがその理由はお前に聞けと言われた」 ロイの言葉にハボックはうろうろと視線を彷徨わせる。 「ハボック。理由を言いなさい」 ぴしゃりと言われて、だが、ハボックは唇を噛み締めて話そうとしない。ロイは苛々として声を荒げた。 「ハボック!」 「ごめんなさいっ」 「私は理由を言えと言っているんだっ!」 バンッと机を叩く音にハボックはビクッと体を震わせる。水色の瞳いっぱいに涙を湛えて、ハボックはそれでも必死にロイを見つめた。そんなハボックにロイはほんの少し言葉を和らげる。 「私がどれほど心配したか判っているのか?」 ロイの言葉にハボックの瞳からぽろりと涙が零れ落ちた。 「お、おおきく、なりたくなくて…」 消え入りそうな声でそう呟くハボックにロイは首を傾げる。 「どうして?大きくならなかったら困るだろう?」 ハボックの言う意味を測りかねてロイは尋ねた。 「だって、オレ、たいさよりおっきくて、全然かわいくなくて…」 そこまで言うとハボックは一旦言葉を切る。それから思い切って大きな声で叫んだ。 「もう、抱いてもらえないって…っ!」 「…は?」 堰を切ったようにぽろぽろと涙を零すハボックをロイは目を見開いて見つめる。ハボックは手の甲で涙を拭うと囁く様な声で続けた。 「声だって、気持ち悪いし、背だって大佐よりデカくて可愛くなくて、こんなになっちゃったらもう、抱きたくないでしょう?オレなんかより、可愛い女の人のほうがきっとずっといいに違いないもの」 溢れる涙を何度も手の甲で拭った所為で、目元を紅く染めたハボックは堪らなく可愛かった。それなのに、そんな自分に気づきもせず、勝手にロイの気持ちを決め付けて泣くハボックがロイは愛しくてたまらなかった。 「こっちにおいで、ハボック」 ロイに呼ばれてハボックは机の前に立った。 「こっちへ」 そう言って手を差し出すロイに、ハボックは少し躊躇った後、机を回って窓際の椅子に座ったロイの側まで行く。ロイは手を伸ばしてハボックの腕に触れると、涙に濡れた空色の瞳を見上げた。 「誰かがお前にお前はデカくなったから可愛くないって言ったのか?」 そう聞かれてハボックはふるふると首を振った。 「では、どうして?」 「だって…本とか、テレビとか見ても男は小さくて可愛い女の人が好きだし…。そうでなくてもオレ、男でハンデあるのにこんなデカくて、声だって…き、気持ち悪いし…」 ハボックは自分で言っている内に、また悲しくなってきたようだった。ロイはそんなハボックの腕を何度もさすりながらハボックの名を呼んだ。 「ハボック…。」 そうしてハボックの空色の瞳を覗きこむ。 「たとえ幾つになっても、どれほど背が大きくなっても、お前が私にとって可愛くて愛しい存在であることには変わりはないよ」 それに、とロイは続けた。 「そんな事を言ったら、私のほうが年をとってオジサンだと言われかねない」 「大佐は幾つになったってカッコいいもの!オジサンなんかじゃないよっ!」 即座に言い返すハボックにロイはくすくすと笑う。 「だったら同じことだろう?私にとってのお前も幾つになっても変わらないよ」 カワイイ、と囁かれて、ハボックは真っ赤になった。ロイはそんなハボックの腕を引いてその身を引き寄せる。引き寄せられるままにハボックはロイの肩に手を置いてロイの黒い瞳を見つめた。ロイは腕を伸ばすとハボックの頭を抱き寄せて囁く。 「愛してるよ…。これまでも、これからも、ずっと…」 その言葉にハボックは目を瞠って、次の瞬間顔を歪めた。そっと重なってくるロイの唇を受け止めてぴくんと体を震わせる。ロイはハボックの顔を間近に覗き込みながら意地悪く囁いた。 「そんなに私に抱かれたいか?」 聞かれて真っ赤になって俯くハボックの耳元に唇を寄せてロイはその名を呼ぶ。 「ハボック…?」 ぞくりと体を震わせてハボックはロイの肩口に顔を埋めると答えた。 「だって…大佐がすきだから…」 触れて欲しいし、抱いて欲しい。ハボックはいつだってそう思っていた。ただ、口に出したら はしたないと詰られるような気がして言えないだけで。紅く染めた顔を肩口に埋めるハボックが可愛くて、啼かせてやりたくて、ロイはハボックの体を押し返すようにしてたちあがった。不安そうに見つめてくるハボックに軽く口付けて、ロイはハボックの体を抱き上げた。 「た、たいさっ?!」 突然の事にハボックは驚いてロイの腕の中で身を捩る。 「やだっ!下ろしてっ!」 「暴れると落ちるぞ」 そう言ってふっと腕の力を抜いて見せるロイに、落ちると錯覚したハボックは慌ててロイの首にしがみ付いた。その様子にくすりと笑ってロイは、ハボックを抱えなおすと書斎を出て寝室へとハボックを連れて行った。ベッドの上に下ろされてハボックはベッドに腰かけたまま、うろうろと視線を彷徨わせる。 「たいさっ…まだ昼間…っ」 「だから?欲しいと思う気持ちに時間なんて関係ないだろう」 「だって、まだ明るいしっ」 実際、寝室の中は明かりを灯してあるわけでもないのに窓から差し込む光で十分に明るかった。 「お前の全てが見えて丁度いい」 「たい…っ」 ロイはそう囁くと強引にハボックの唇を塞ぐ。深く貪りながらハボックのズボンに手をかけると、下着ごと剥ぎ取ってしまった。 「やだっ」 向かい合ってベッドに腰を下ろしたロイに大きく膝を割られて、ハボックは悲鳴を上げる。しどけなく開かされた脚の間に手を差し込まれて、ハボックはびくんと震えた。 「もう感じ始めてるじゃないか」 そう言ってロイが触れたハボックの中心は既に緩く立ち上がり始めていた。ロイに指摘されてハボックは恥ずかしそうに瞳を伏せる。ロイは中心から垂れてきた蜜をハボックの蕾に塗りこめるようにして、くっと指を中へ沈めた。 「あっ」 慌てて膝を閉じようとするハボックの脚の間に体を入れると、ロイはぐちぐちと蕾をかき回す。2本目の指を沈めるとロイは中をかき回しながらハボックに言った。 「ほら、もう、2本も入った。見てごらん」 ロイに言われてハボックは逆らうことが出来ずにロイの指を咥えこむソコへ目をやった。いやらしく口をいっぱいに開いて、ロイの指を根元までくわえ込んで、ひくつくソコは酷く淫猥だった。 「3本目も簡単に入るぞ」 そう言ってロイはハボックが見ている先で3本目の指をずぶりと差し込んだ。 「うっ…くぅん…」 3本の指を中でばらばらと動かされてハボックは唇を震わせた。後ろを弄られてハボックの中心はすでに高々とそそり立ち、とろとろと蜜を流している。暫くぶりにロイに触れられたこともあって、ハボックの体はどんな小さな刺激をも逃すまいとしているようだった。 「ア…はあっ…も、ダメッ」 乱暴に中をかき回され、ロイの指がハボックの感じる部分を容赦なく刺激する。ハボックは向かい合って座るロイの肩にしがみ付くと必死に唇を噛み締めた。ロイが空いた手でハボックの顎を掴み仰向かせると噛み締める唇を舌で舐める。そのままハボックの顔を覗き込むながら、ロイは沈めた指をぐんと突き上げた。 「んああああっっ」 びくびくと体を震わせてハボックは熱を吐き出した。ハボックがイく瞬間の顔をうっとりと見つめていたロイは、ゆっくりと沈めていた指を引き抜く。その刺激にもひくひくとひくつく体を引き寄せてロイはハボックに口付けた。 「可愛いな、ハボック…」 そう囁けばハボックがいやいやと首を振った。 「オ、オレっ…指だけで…っ」 自身に触れられたわけでもなく、ロイを受け入れたわけでもなく、ただちょっと指で弄られただけであっけなくイってしまったことが、ハボックにはショックだった。自分が酷く淫乱になった気がして恥ずかしさのあまり涙が滲む。だがロイはくくと笑うとハボックの顎を掴むと囁いた。 「そういう風に仕込んだからな」 言われてハボックは視線を上げる。 「もともと感じやすい体だったが、抱かれることを覚えこませたのは私だ。感じて当然だろう」 なんでもないようにさらりとそう言われて、ハボックは返す言葉が見つからずに口をぱくぱくさせた。そんなハボックが可愛くてロイは軽く口付けるとハボックの腰を引き寄せた。 「おいで」 そう言ってベッドに座る自分の上にハボックを跨がせる。隆々とそそり立つ自身に蕾を宛がうとずぶずぶと埋めていった。 「あっ…ア―――ッ!!」 熱い塊りで一気に貫かれてハボックは背を仰け反らせて悲鳴を上げた。衝撃でどくんと熱を吐き出したハボック自身をロイはぐっと握り締めると擦り始める。ずんずんと突き上げられ、吐き出した熱を塗りこめるように中心を擦り上げられてハボックは見開いた瞳からぽろぽろと涙を零しながら喘いだ。凄まじい快感にそれ以外のことを感じることができない。 自分を貫くロイの熱と、自身を包み込んで愛撫するロイの掌だけが全てで、自分の体が快楽だけで作り上げられているような気がする。あまりにキツイ快楽にハボックは気が狂いそうになった。 「ああっ…ひっあっ…も、いやっ…ヘンになるぅ…っ」 身悶えるハボックを容赦なく追い立てて、ロイはうっすらと笑った。このまま発狂するまで抱くのもいいかもしれない。ベッドの上に縛り付けて自分の与える快楽だけを求めるようにさせるのも、また一興かもしれないとも思う。だが、恥ずかしそうに微笑むハボックもむくれて頬を膨らませるハボックも、ロイにとっては大切で愛しい。ロイはハボックの体を引き寄せると深く口付けた。そのままガンガンと突き上げてやれば、ロイの口中に熱い吐息が零れ落ちてくる。 「ハボック…」 「あ、んっ…んううっ…たいさ…ぁ」 最奥を貫かれてハボックは何度目になるか判らない熱を吐き出した。ぎゅうっと締め付けてくるソコに、ロイも逆らわずに熱を叩きつける。 「んああああっっ」 体の奥を焼く熱に身も心も満たされて、ハボックは意識を手放した。 気がついたときには部屋の中はだいぶ暗くなってきていた。ハボックは温もりを求めて伸ばした手が空しくシーツを掴むのに、慌てて身を起こした。入日の残照に暗く沈む部屋にはロイの姿はなく、ハボックは不安に駆られてベッドを下りる。 「あ…」 力の入らない体がくずおれそうになるのを必死にささえてハボックは寝室を出た。 「ハボック様?」 途端にノーマンの声がしてそちらを振り向けば、ノーマンが慌てて階段を駆け上がってくる。 「たいさ、どこ?」 情事の後の気だるさの残る体を惜しげもなく曝け出して、ロイを求めるハボックにノーマンは眩暈がした。 「今、お電話中です。すぐお戻りになられますから」 ノーマンの言葉に安心したのか、ハボックの体から力が抜けて倒れそうになるのを、ノーマンは慌てて支えた。ハボックを抱き上げようとしたノーマンは後ろから伸びてきた手にハッとして顔を向ける。 「後は私がやる」 ロイに言われてノーマンは立ち上がると階下へと下りて行った。その背を見送ってロイはハボックを抱え上げると、寝室に戻る。ハボックの体をベッドに横たえようとすると、するりと腕が伸びてきてロイの首に巻きついた。 「たいさ…」 その表情にも声にも、子供の頃の可愛さよりも艶かしい美しさが色濃く現れている事に、ロイは目を瞠った。 (確かに、可愛いとはもう、言えないのかもしれないな…) そうなるように育ててきたのは自分だが、そのことで要らぬ嫉妬に焼かれることになるであろう未来を想像して、ロイは微かに笑う。それからハボックの髪をかき上げると囁くように言った。 「こっちへおいで」 そうしてハボックの腕からするりとすり抜けるとベッドの脇に脚を下ろし、ハボックに手を差し伸べる。ハボックは不安そうな色をその空色の瞳にたたえながら、ゆっくりとベッドから脚を下ろした。ふらつく体をロイに支えられ、手を引かれるままに姿見の前に立つ。 「ごらん」 そう言われてハボックは姿見の中の自分を見つめた。散々にロイに愛された体はその証をくっきりと残していた。肌の上に散りばめられた無数の紅い花びらに、ハボックは恥ずかしさのあまり目を伏せる。 「見てごらん」 両肩を抱え込まれて鏡の方へ向かされて、ハボックは上目遣いに姿見を覗き見る。きっちりと服を着込んだロイとは対照的に何一つ身に纏っていない自分に目を伏せようとするハボックの顎を掴んで鏡の方へ向けると、ロイは口を開いた。 「綺麗な体だ。子供の時とはまた違って、若い獣のようだ」 ロイはそう言うとハボックの肌に指を滑らせる。ぴくんと震えるハボックの首筋にロイは唇を近づけると囁いた。 「お前はきっと大きくなるな。もっと胸板も厚くなって、背も伸びて。腕だって私より太くなるかもしれない」 首筋に舌を這わされてびくびくと震えながらハボックは呟く。 「やだ…そんなの…」 「どうして…?」 「だってっ」 だって、たいさに…と消え入るような声で囁くのを聞いて、ロイは鏡の中のハボックに向かって笑いかけた。 「お前はもっと知るべきだ。お前がどれほど他人を惹きつける魅力を備えているのかを」 「そんなこと…」 ロイの指先が肌を滑りハボックの胸の頂きをつまみ上げる。 「あっ」 びくんと震える体を抱きしめてロイはハボックの体に愛撫を加えていく。鏡の中でびくびくと震えながらピンク色に染まっていく自分の姿にハボックはふるふると首を振った。 「綺麗だよ、とても…」 「あっあっ…たいさ…っ」 「本当は誰の目にも触れないところへ閉じ込めておきたいが…」 囁きながらロイはきゅっとハボックの中心を握り締める。 「んあっ」 「17になったら士官学校に入るんだ。そこでこの家では学べないことを教わってきなさい」 ロイの指がハボックの後ろにぬるりと入り込んでぐちぐちとかき回しながら、もう一方の手で握り締めたハボック自身を追い上げていった。 「あっああっ」 「そうしていつか必ず私の背中を守ってくれ」 首筋にきつく歯を立てられると同時に後ろに沈められた指でクンといいところを突かれて、ハボックは背を仰け反らせるとロイの手の中に熱を吐き出す。 「あっアア―――ッッ!!」 ゆっくりと薄れていく意識の中で、ハボックはロイの瞳が優しく微笑むのを感じていた。 2006/12/6 2007/1/13 加筆修正 |
「紫」を書いた後、ミサさまから「成長してロイより大きくなっちゃったハボが『大佐よりデカくなったし全然可愛くねぇし、もう俺なんて抱いてくれないかも…』とか悩んだら可愛いでしょうね(腐)ロイの出張とかで暫く会えない内に一気に成長期を迎えたハボックがぐるぐる悩んでたらすごく萌えます」と言うコメントを頂き、思わず書いてしまいました。「紫」の続きを書く野望はまだ捨てていませんが、如何せん書きたいものが多すぎて、なかなか取り掛かることが出来ません…。でも、やっぱいいな、子ハボネタ。書いてて楽しいしv近い将来つづきを書くぞ! |