禁断症状



「ん〜っ」
 ハボックはベッドの上で思い切り伸びをした。次いで大口をあけて欠伸をすると床へと足を下ろす。
「あー、よく寝た」
 がしがしと頭をかいて洗面所へ向かうとヒゲを剃ってざばざばと顔を洗った。がらがらと口をゆすぐとタオルで顔を拭きながら階下へおりてキッチンへと入っていく。コーヒーをセットしてパンをトースターに放り込むとダイニングの窓を開けた。
「あー、やっぱ大佐がいないとゆっくり寝られていいや」
 ロイが聞いたら怒りそうなことを呟いて新聞を取ってくるとハボックはダイニングの椅子に腰掛けてそれを開いた。昨夜はロイは夜勤でハボックは久しぶりに一人でのんびりと過ごしていたのだった。
 チンとトースターが止まる音がして、ハボックは立ち上がるとトーストを皿に乗せ、コーヒーとジャムの瓶を持って椅子に戻った。
「メシも手抜きできるし、偶にはこういうのがないとやってらんねぇ…」
 ロイと過ごすことも食事の用意をすることも決して嫌なわけではないし、むしろ楽しい。だが。
「大佐がらみだとどうも何でも内容が濃くってなぁ…」
 何でもかんでも100パーセントどころか120パーセント目いっぱいやられたのでは体力的にも精神的にも持ちやしない。
「加減ってものを知って欲しいよね、いい大人なんだし」
 ハボックはぶつぶつ言いながら食事を済ますとさっと食器を片付け、軍服に着替える。そうして戸締りをすると司令部へ向かうべく家を後にした。


「おはよーっス」
 司令部の扉を開けて中へ入っていくと既に来ていたフュリーが顔を上げてにっこりと笑った。
「あ、おはようございます、少尉」
「大佐は?中?」
 そう聞きながらハボックが執務室の扉を指差せばフュリーが頷く。ハボックはポケットから取り出した煙草を咥えながら執務室の扉をおざなりにノックして返事を待たずにドアを開けた。
「はよーございまーす」
 気の抜けた挨拶をしながら中へ入っていけばぐったりと椅子に座ったロイが視線だけ向けてきた。
「ああ、ハボックか」
 なんだか元気のないロイにハボックは眉を顰める。
「どうしたんスか、何か元気ないっスね」
 そういいながらロイの額に手を当てる。ロイは上目遣いにそんなハボックの様子を見ていたが何も言わずため息をついた。
「昨夜は忙しかったんスか?」
「いや、そうでもなかった」
「もう、引継ぎは済んだんですか?」
「ああ」
 夜勤明けだとしても妙に覇気のないロイにハボックはだんだん心配になってきた。
「だったら早く帰って休んだ方がいいっスよ。誰か警備兵に車出させて…」
「お前が送ってくれ、ハボック」
 椅子に沈み込んだままロイが言う。ハボックはそんなロイを見ながら言いにくそうに言った。
「申し訳ないんスけど、大佐。オレ、いま来たばっかですし、午前中演習が入ってるんスよ」
 だから警備兵を探して、と言うハボックにロイは疲れたような声で答えた。
「ハボック、私は疲れていて一刻も早く家に戻りたいんだ。すぐ捉まるかわからない警備兵を探すより、お前に送ってもらった方が早く帰れる」
 ロイの様子にハボックは困ったように口を噤んだが、しょうがないとばかりに息を吐いて執務室の扉を開けた。
「フュリー」
 その声に振り向いたフュリーにハボックは言葉を続けた。
「オレ、ちょっと大佐を家まで送ってくるわ。悪ぃけどすぐ戻るからって中尉に言っといてくれるか?」
「構いませんけど、誰か警備兵を頼めばいいんじゃないんですか?」
「なんか疲れてるみたいで早く帰りたいんだとさ」
 そう言ってハボックは執務室のロイを振り返る。
「大佐、行きますよ」
 のろのろと立ち上がったロイに眉を顰めるとハボックはフュリーに言った。
「じゃ、悪いけど頼むわ。大佐、車回してきますから玄関に来てくださいね」
そう言ってばたばたと司令室を出ていく。フュリーはそんなハボックの背を見送るとロイを振り返った。
「大丈夫ですか、大佐」
「ああ、別に大したことない」
 そう言ってゆっくり部屋を出ていくロイにフュリーは首を傾げてポツリと零した。
「珍しいこともあるんだな…」


 後部座席に深く沈みこんで目を閉じているロイをルームミラーで窺うと、ハボックは小さくため息をついた。なるべく静かに車を走らせ家にたどり着くと、ハボックは素早く車を降りて後ろのドアを開けた。
「大佐、着きましたよ」
 ハボックの声にロイが目を開けてゆっくりと外へ出てくる。ハボックはロイを家の中へ通すと、取りあえず邪魔にならないようにと車を裏へ回し家の中へ入った。リビングでぼんやり立っているロイに顔を顰めるとハボックはロイに近づいていく。
「何か食べますか?それとも先に休みます?」
「シャワーを浴びたら休むよ」
 そう言ってバスルームへ向かうロイを心配そうに見やって、ハボックは寝室へいくとクローゼットの中から着替えを取り出し、脱衣所へ置いておく。ロイの脱いだ服を拾い上げて洗濯するものとそうでないものとに分けて、軍服をハンガーにかけた。キッチンへ行って少し考えると温かいココアを入れる。それを持って2階に上がるとちょうどロイが出てきた所だった。
「甘いものでも少し口にすると元気になりますよ」
 そう言って手にしたココアを差し出せば受け取ったロイはそれを啜った。
「それ飲んだら休んでくださいね」
 寝室へ入ってカーテンを引き、軽く寝具を整えると後からついて来たロイを振り返った。
「それにしても珍しいっスね。夜勤明けにそんなに調子悪いの」
 忙しかった訳でもないんでしょ、と言うハボックにロイは薄く笑った。
「まあな」
 そう言ってベッドサイドのテーブルにカップを置く。
「原因はわかってるんだ」
 ベッドに腰掛けながらロイは言った。その言葉に問いかける視線を投げるハボックを手招く。呼ばれるままに近寄ったハボックの腕を引くとベッドに押し倒した。
「たいさっ?」
 驚いて空色の目を見開いて見上げてくるハボックにロイはニヤリと笑いかけた。
「要するに禁断症状だな」
「はあっ?」
 言っている意味が判らず間抜けに見返してくるハボックにロイは圧し掛かっていった。
「一晩も触れられなかった」
 そう言ってハボックの軍服のボタンを外していく。一瞬ロイの言っている意味が判らずポカンとしたハボックは次の瞬間ハッとなってロイの手を止めようとした。
「何言ってるんスかっ!ちょっと、やめてくださいよっ!」
 なんとかロイを押し戻そうともがくハボックの抵抗を封じ込めるとロイはシャツの中へ手を滑り込ませた。
「た、いさっ!」
 乳首を摘みあげられてハボックの言葉が不自然に途切れた。シャツを捲り上げて舌で舐ると面白いようにハボックの体が跳ねた。
「ちょっ…やめっ」
 ロイの髪を掴んで引き剥がそうとするハボックは堅くしこるソコを甘く噛まれてびくりと体を仰け反らせた。
「あっ…」
 その声に気をよくしてロイは一層強く愛撫を加える。色づいてぷくりと立ち上がったそれは小さな果実のようで、ロイの食欲をそそった。舌で嘗め回してはきつく吸い上げ軽く歯を立てる。ハボックの軍靴が床を蹴って音を立てた。
「ひあっ…や、めてくださっ…」
 強すぎる刺激に薄っすらと涙を浮かべるハボックにロイはうっとりと笑いかけると深く口づけた。
「ん、ん――っっ」
 遠慮会釈もなく口内を蹂躙するロイの舌にハボックの体から力が抜けていく。ロイはその隙に体を離すと、ハボックの靴とズボンを剥ぎ取り、その体を乱暴にベッドの上へ引き摺り上げた。
「たいさっ」
 ぼすんと投げられるように沈められた体にハッとなったハボックが再び圧し掛かってくるロイを押し返す。
「オレっ、これから仕事が…っ、演習あるんスよっ」
「明日に回せ」
 平然と言ってのけるロイをハボックは信じられないように見つめる。中心に下りてきた手にギョッとなってハボックはロイを押し返した。
「冗談は…っ」
「冗談なものか」
 暴れるハボックを押さえつけてロイは言ってのけた。
「禁断症状なんだ。さっさとお前をよこせ」
「ばっ…」
 下りてきた唇に言葉を奪われてハボックは暴れた。だが、ロイはそんなハボックの抵抗を物ともせず、ハボックの中心へと指を這わせていく。柔らかい先端をぐにぐにと刺激され硬くなった棹を上下に擦られてハボックの唇から熱い吐息が零れる。
「やだっ…たいさっ」
「私が禁断症状でおかしくなったらどうしてくれる」
 しゃあしゃあとそういうロイをハボックは睨み上げた。
「もう、十分おかしいでしょうがっ」
 ロイの手を引き剥がそうとするハボックをロイはムッとして見下ろしたが、次の瞬間ニヤリと笑った。
「そうだな、もうおかしくなってるから仕事だと言う部下を押し倒してもなんとも思わない」
「なっ…きったねぇっ」
 人の言葉の揚げ足を取るような真似しやがってと喚くハボックの唇を己のそれで塞ぐと、ハボックの中心を扱く手に力を込めた。
「んんっ…んーっっ」
 乱暴な愛撫にハボックの目尻に涙が滲む。それでもそこから湧き上がる快感にハボックは身悶えた。爪を立てるようにして先端を刺激されて、ハボックはぶるりと体を震わせると白濁した液を吐き出した。
「あ、あ、ああっ」
 荒い息を吐くハボックの脚を大きく広げるとロイはたった今ハボックが放ったものをひくひくと戦慄く蕾へと塗りこめる。そうしてつぷりと指を沈めるとぐちぐちと中をかき回した。
「ひっ…やあっ…」
 びくびくと体を震わせるハボックを楽しげに見つめて、ロイは沈める指を増やしていく。後ろへの刺激で熱を放ったばかりのハボックの中心は瞬く間に勢いを取り戻して高々とそそり立ってとろとろと蜜を零した。
「お前だって欲しかったんだろう?」
 こんなにぐちゃぐちゃにして、と耳元で囁かれてハボックが悔しそうにロイを睨みつけた。だがぐいと指が突き入れられて悲鳴を上げる。全ての神経がそこに集まってしまったかのように、後ろに差し込まれて好き勝手に動き回るロイの指だけを感じて、ハボックは熱い息を吐いた。
「やだ、もう…っ、たいさっ…」
 なんとかそこから意識をそらそうとハボックはゆるゆると首を振った。だが執拗に中をかき回す指に心もかき回されてハボックは身を捩った。
「も、やめ…てっ…」
 そんなハボックの様子にロイは笑ってハボックの中心に指を這わせた。堅くそそり立つ棹をぐちぐちと扱き上げ、蜜を零す先端を優しく捏ね上げる。それと同時に後ろに沈めた指を乱暴にかき回せばハボックの唇から絶え間なく喘ぎ声が零れた。足を突っ張って必死に射精感と戦うハボックを嘲笑うようにロイは加える愛撫の手を激しくする。抵抗も空しくハボックは大きく体を震わせると滾る熱をどっと吐き出した。
「あああっっ」
 熱を吐き出して荒い息を吐くハボックの脚を抱え上げると、ロイは息づくハボックの蕾へ己を押し当てた。ハボックが体をずり上げて逃げようとするのを押さえ込んで、ロイは一気にハボックの中へと身を沈めた。
「あああ―――っっ」
 ハボックの空色の瞳が大きく見開かれ、ぼろぼろと涙が零れる。ロイは唇でそれを拭うとハボックの脚をその胸に着くほど折り曲げて思い切り突き上げる。信じられないほど奥を犯されて、ハボックは悲鳴を上げた。
「やあっ…たい、さ…もうっ…やめっ…」
 だが、ハボックの言葉と裏腹にロイを含んだソコはいやらしくロイ自身に絡みつき、奥へと誘おうとする。快感に支配されていく心と体を持て余して、ハボックは泣きじゃくった。
「もう、やだっ…ゆるし…てっ」
 乱れるハボックを満足げに見下ろしてロイが笑う。ハボックの両脚を押し広げ一際奥を突き上げると同時に、その熱でハボックの内側を焼き尽くした。


 ずるりと抜かれる感触にハボックは体を震わせると薄く目をあけてロイを睨みつけた。
「アンタって信じらんねぇ…っ」
「よかったろ、ハボック」
 図星を指されて答えに詰まるハボックはロイの肩に思い切り噛み付いた。痛みに顔を顰めながらもロイはくくっと笑う。
「随分情熱的だな」
「…っ、この、ヘンタイっ、エロオヤジっ」
 可愛くないことを言うハボックの唇を己のそれで塞いで、ロイは再びハボックの体に手を這わせていく。今日はハボックを解放してやるつもりなどさらさらないロイは、ハボックの抵抗を楽しげに封じ込めるとその熱い体に身を沈めていった。


 ハボックの部下に隊長が演習の時間になっても現れないと言われ、フュリーは途方に暮れた。すぐ戻ると言いおいて出て行ったきり、ハボックは一向に戻ってくる気配がない。どうしたものかとフュリーが思案していると司令室の扉が開いてホークアイが入ってきた。
「中尉!」
 これ幸いと声をかけるフュリーに不思議そうな顔をして事の成り行きを聞いていたホークアイは、全部聞き終えた頃にはその秀麗な顔にウンザリした表情を浮かべていた。
「まったく、迂闊だわ、少尉」
 ぼそりと呟いたホークアイはハボックの部下に今日の演習の中止と各自個人的に訓練するよう伝える。
「すぐ戻るって言ってましたよ」
 そう言うフュリーにホークアイは首を振った。
「今日、少尉は欠勤扱いにしておいてちょうだい」
 そう言うと不思議そうな顔をするフュリーにそれ以上説明せず、ホークアイはため息をつくと明日、ロイをみっちりとっちめると誓うのだった。


2006/8/17


中尉に「迂闊だわ」というセリフを言わせたいためだけに延々エロを書き続けたという…。中尉やブレダを二人に絡ませるの好きなんですv