「ハボック、ほら、これ」
「はい?」
 ハボックはロイに渡された包みを受け取ってそのラベルを見つめた。
「キャンディ?なんスか、コレ」
「それを食べると体から薔薇の香りがするようになるそうだ」
「はぁ?」
 ハボックは手にした包みに目を落とす。そう言われて見ると女性にうけそうなピンク色のラベルからは薔薇の香りが漂ってきそうな気がする。キャンディを渡された意図がわからず、ハボックはロイの顔を見つめた。
「で、どうしろ、と?」
「キャンディは食べるものだろ?」
 さらりと言ってのけるロイを見つめてハボックは眉を顰めた。
「それって、オレが臭いとかいうことっスか?」
 確かにチェーンスモーカーの自分はかなりヤニ臭いだろうと思う。外回りの仕事や訓練の後は汗もかくし、このデカイ図体からしていい匂いというイメージからは程遠いだろう。でも、汗をかいたらシャワーも使うし、毎日風呂だって入っているし、下着だってちゃんと替えてる。ロイのようにコロンをつけることはなくてもそれなりに気を使っているつもりなのだ。
「別にそうとは言ってないだろう」
 ロイはニヤリと笑ってそういった。その笑顔にハボックは思わず半歩下がってしまう。
(この人がこういう顔する時はぜっったいっ碌でもないことないこと考えてるんだよ!)
 これまでの経験値がハボックに警鐘を鳴らしている。ハボックはキャンディの袋を握り締めるととにかくこの場を去ろうと扉に向かおうとした。だが、ロイはニッコリ笑うと背後の扉へ ―― そう、ロイはしっかりハボックと扉の間に立っていたのだ ―― 体をもたせ掛ける。
「まだ話は終わっていないだろう」
「…キャンディなら後で食います。オレ、仕事あるんで」
 ハボックは眉を顰めてどうやったらロイの背後の扉を開けられるか頭を巡らせた。そんなハボックの手からキャンディの袋を取ると、ロイは一つ取り出し自分の口に放り込む。そしてハボックの首に腕を回すとハボックを引き寄せ口付けた。
「んっ」
 顔を背けようとするハボックの顎を押さえつけて固定すると、ロイは口に含んだキャンディをハボックの口へと押し込んだ。
「んーっ」
 いきなり口中に飛び込んできた甘い塊にハボックは慌てた。キャンディと一緒にロイの舌も入り込んでハボックの舌にキャンディを乗せるとぴちゃぴちゃと嘗め回す。
「ふ…っ、んんっ」
 甘い塊とそれに染まった甘い舌先で口中を弄られてハボックは息も絶え絶えにロイの腕に縋りついた。ハボックの唇から甘い唾液が零れ落ち、軍服の襟に染みをつけていく。キャンディがすっかり溶けてしまうと、漸くロイはハボックの唇を解放した。
「ア、ンタね…っ」
ハボックは唇の端を手の甲で拭いながらロイを睨みつけた。ロイはそのうっすらと赤く染まった目元を楽しげに見つめるともう一つキャンディを口に放り込んで言った。
「薔薇の香りのするお前を抱くのもいいかと思ってな」
「…っっ」
 忽ち真っ赤になるハボックに顔を寄せるとその中心を布の上からやんわりと握る。
「相変わらず感度がいいな」
 キスだけで感じ始めてしまったソコを指摘してにやにやと笑うロイをハボックは引き剥がそうとするが、むしろ顎を掴まれて再び唇を塞がれてしまった。
「う、ふぅ…っ」
 また口内に飛び込んできたキャンディに気を取られている隙にロイの素早い手がハボックのズボンを寛げて、その中へと侵入を果たす。やわやわと刺激を与えられてハボックの中心が瞬く間に硬度を増した。
「んーっ、んんっっ」
 ハボックは力なくロイの背中を拳で叩くがそんな仕草は却ってロイを喜ばせるだけだった。ロイは器用にハボックのズボンを片手と膝を使って半ばまでずり下げてしまう。冷たい空気に下半身を晒されて、ハボックの指先がロイの軍服の背に縋りついた。ロイはハボックの脚の間に膝を割りいれて、ハボックの脚を開かせる。ハボックの口中から小さくなったキャンディを取り戻すとそれを口から出して、開かせたハボックの脚の奥まった蕾へと押し入れた。
「ひっ、な、なにを…っ」
 ハボックはいきなり押し込まれた塊に身を竦ませる。それに構わずロイはぐいぐいとキャンディをハボックの奥へと押し込んだ。
「や、やだぁ…っ、と、とって…っっ」
 あまりのことにハボックは頭を振って身悶えた。そんなハボックにくすりと笑うとロイはハボックの耳元に唇を寄せて意地悪く囁いた。
「取って欲しいのか…?」
 ロイの言葉にハボックはがくがくと頷く。
「壁に手を付いて尻を突き出せ」
 言われるままに壁に手を付いて下半身を突き出すハボックの姿にロイは満足げに微笑んだ。ロイはハボックの口元に自分の指を差し出す。するとハボックの舌がのびてきてぴちゃぴちゃとそれを舐めた。うっすらと涙を浮かべて必死にロイの指をしゃぶるハボックを見つめていたロイはその眦にキスを落とすとハボックの口から指を引き抜いた。
「いい子だ」
 そうして唾液にまみれた指をハボックの蕾へとゆっくりと沈める。くちゅくちゅとかき回せば甘い薔薇の香りが漂ってくる。ハボックの中に押し込まれたキャンディは、体温ですっかり溶けてしまったようだった。もう、塊がないのが判っていながら、ロイは指の数を増やしながらハボックの後ろを攻め立てた。とろとろと溶けたキャンディが甘い香りと共にハボックの内股を濡らしながら垂れていく。後ろへの刺激ですっかり立ち上がってしまった自身をもてあましてゆらゆらと腰を揺らめかすハボックの姿にロイは小さく笑った。
「入れてほしい?」
 後ろを弄る手を休めることなくロイはハボックの顔を覗き込んで尋ねた。ハボックはぎゅっと目を瞑って唇をへの字に引き結んでいたが、ロイの言葉に小さく頷く。ロイは指を引き抜くとズボンを寛げて自身を取り出し、突き出されたハボックの蕾へと一気に沈めていった。
「ひぁっ、あああああっっ」
 ロイはハボックの体を揺すり上げながら掌でハボックの口を塞いだ。
「バカ、あんまり大きな声を出すと外に聞こえるぞ」
 ロイの言葉にハボックの背がびくりと震える。何せこの小さな会議室の数メートル先には司令室の扉があるのだ。この部屋の方が奥にあるので、まず人が通るとは考えられないが、それでも可能性がないとは言い切れない。ロイはハボックの唇を掌で塞いだままゆっくりと抽送を開始した。
「んんっ、んくぅ…っ、う、ふ…っ」
 塞いだ指の間からハボックの吐息が漏れる。ロイの掌をハボックの瞳から溢れ出た涙が濡らしていった。激しくなる抽送にくだけそうになるハボックの腰を支えて、ロイはハボックを突き上げる。がくがくと震える体がぎゅっと縮こまったかと思うと、ハボックは白濁した液を吐き出していった。それを追うようにロイもハボックの中へと熱い精をたっぷりと注ぎ込んだ。がっくりと倒れこむ体を支えて、ロイはハボックの中から己をずるりと抜き出した。ハンカチを取り出すと精液にまみれたハボックの下肢をざっと拭いてやってズボンを整えてやる。壁に飛び散ったものもさっと拭うと、汚れたハンカチをキャンディの袋の中に詰め込んだ。
「大丈夫か?」
 床に座り込んだハボックを見下ろして言えば、空色の瞳が恨めしげに睨み返してきた。それに苦笑してロイはずいと顔をハボックに近づけると囁いた。
「可愛かったぞ」
 真っ赤になって何か怒鳴ろうとするハボックの口を素早くキスで塞いで、ロイはキャンディの袋をハボックに押し付けた。
「片付けておいてくれ」
 そう言ってさっさと会議室を出て行く。残されたハボックは甘いキャンディの上に汚れたハンカチを詰めこまれた袋を手に途方に暮れた。
(ブレダの目にだけ付かないようにしないと…)
 こんなものを手にしているのを見られたら絶対よこせと言われるのが目に見えている。とはいえ、おいそれとどこにでも捨てる訳にもいかない。ハボックは深くため息をつくとキャンディの袋をなるだけ小さく丸め込み、だるい体を起こしてそっと会議室の外へと出て行ったのだった。


2006/7/4


NHKの朝のニュースで香りの話をやっていたのですが、「食べると体から香りのするキャンディ」の紹介をしていたんですよ。残念ながら実物は見たことがなかったのですが、食べると薔薇の香りがするって…ホントかなぁ。しばらくたってから「おとこ香る」とか言うキャンディを味見で貰ったんだけど、これもなんかイマイチだったし、体から香りがするほどになるためにはよっぽど食べなくちゃなのではと思うのですが。しかし、相変わらずえげつない小道具の使い方をしてしまうわー、ヘンタイなロイ(←おい)