(ボタン)


「大佐、ボタン、取れそうですよ」
「え?」
 ハボックに言われてロイは自分のシャツを見下ろした。すると確かに上から3つめのボタンが緩んで垂れ下がっている。
「ちっ、着替えるの面倒だな…」
 とロイは呟いたが、やはりロイ・マスタングともあろう者がボタンの垂れ下がったシャツを着ているなんて自分でも許せない。ロイは仕方なしに着替えをしようと立ち上がった。
「付け直しましょうか?」
 ハボックがそう言うのにロイは「ああ」と頷いてシャツのボタンを外し始めた。
「いいっスよ、着たままで」
「え?」
「ちょっと待ってて下さいね」
 ハボックはそう言うとリビングを出て行く。暫くして裁縫箱を持って戻ってくるとさっきと同じ格好で立ったままのロイを見て言った。
「そこ、座ってください」
「…ああ」
 そう言われてロイはぽすんとソファーに腰を下ろした。ハボックは裁縫箱の中から糸と針を取り出すと、針に糸を通し適当な長さで切った。
「じっとしててくださいね」
 ハボックはそう言って糸のお尻に玉を作るとロイのシャツに顔を寄せた。取れかかったボタンの糸をちょうど良いようにひっぱると、その上から新しい糸を通していく。動くなと言われたロイはソファに手をつくような体勢でハボックがボタンをつけるのを見下ろしていたが、正直かなりヤバイ状況に陥っていた。
(髪がさわさわとあたって…というか、私の胸に吐息をかけるのをやめてくれっ)
 ハボックにしてみれば全く意識の外の行為であるのだが、実際の所ハボックの柔らかい金髪に首筋を撫でられ、ボタンを止める為に近づけた唇から漏れる吐息に胸をくすぐられているロイにしてみれば堪ったものではない。そんなロイの気持ちを知ってか知らずか、ハボックはきゅっと糸を引っ張ると針の根元にぐるぐると巻きつけ、ボタンが動かないように糸を止めた。それから糸の根元に口を近づけるとプチッと歯で噛み切る。
「はい、出来ました」
 ハボックはにっこり微笑むと、付け直したボタンの上をぽんと叩いた。そうして針を裁縫箱に戻すと蓋を閉める。その時になってやっと、ハボックはロイの様子がおかしい事に気がついた。
「大佐?どうかしましたか?」
 針でもさしてしまったろうかと不安そうに見上げるハボックの空色の瞳に、ロイは今まで我慢していたものがブツリと音を立てて切れるのを感じた。
「ハボックっ」
 ガバッといきなり抱きつかれて、ハボックは受けきれずにソファに倒れこむ。
「た、たいさっ?」
 驚いて見上げてくるハボックににんまりと笑ってロイは囁いた。
「ボタンをつけてくれたお礼をしてやる」
「はあっ?そんなの、いりませんよっ!」
 お礼だなんて言っているがどう考えてもこの状況は自分にとって歓迎できるものとは思えない。ハボックはなんとかロイの下から抜け出そうと必死にもがいた。
「たいさっ、どいてくださいよっ」
「散々私を煽っておいてその言い草はないだろう?」
「いつ、オレが煽って…ああっ」
 シャツの裾から忍び込んだ手に乳首を摘まれてハボックは悲鳴を上げた。ロイはシャツを捲り上げると舌先で堅くなった乳首を愛撫する。たっぷりと唾液を塗してくりくりと舐めまわし、もう片方も空いた手でつぶすようにこねればハボックがびくびくと体を震わせた。
「やだっ、やめ…っ」
「お前のココはやめて欲しいと言ってないようだが?」
 ロイは意地悪く囁くと、ハボックの中心を布の上から撫でる。ソコは既に熱く滾って窮屈そうに布を持ち上げていた。
「ちがっ…」
「素直じゃないな」
 ロイはそう言ってハボックのズボンを下着ごと剥ぎ取ってしまう。柔らかい午後の陽射しの降り注ぐ明るい室内で恥ずかしい部分を曝け出されて、ハボックは羞恥に顔を赤らめた。ロイの指がハボックの中心に絡みつきゆっくりと擦り上げていく。ハボックは恥ずかしさのあまり腕で顔を覆ってしまった。
「ハボック、腕をどけろ」
 そんなハボックにロイは容赦なく言い放つ。だがふるふると首をふって腕をどけないハボックにロイは強く言った。
「少尉、腕をどけたまえ」
 ロイの言葉にぴくんと体を震わせてハボックが腕の間からロイの顔を見上げる。
「少尉」
 再度言われて、ハボックはおずおずと腕を開いた。
「感じてるところを全部私に見せろ」
 ロイが楽しそうにそう言うのに、ハボックは目元を染めてロイを睨みつけた。
「悪趣味…っ」
 そう呟く勝気な空色の瞳にロイは嬉しそうに笑う。ロイがハボックの中心を擦り上げる指の動きを徐々に早めていくとハボックの唇から漏れる吐息も温度を上げていった。
「あ…も、イく…っ」
 顔を覆い隠したくて、でも許してもらえなくて、ハボックはどうしてよいか判らずにロイのシャツを握り締める。
「あ、あ、あ…っ」
 ぎゅうっと千切らんばかりにシャツを握り締めてハボックはロイの手の中に熱を吐き出した。
「あああっっ」
 びくびくと体を震わせて数度に分けて吐き出すと荒い息をつく。ロイはそんなハボックの頬にキスを落とすと囁いた。
「可愛いな。可愛くて色っぽくて」
そそる、と耳元で囁かれてハボックの体がびくんと跳ねた。ロイは手の中に吐き出されたものをハボックの蕾に塗りこめると、ゆっくりと指を沈めた。ぐちぐちとかき回しながら、沈める指を2本、3本と増やしていく。ハボックはぴくぴくと体を震わせながらロイの胸に縋りついた。
「た、いさっ…も、うっ…堪忍してっ」
 これ以上こんな明るい場所で醜態を晒したくなくて、ハボックはロイに哀願する。だがロイはそんなハボックをうっとりと見下ろすと沈めていた指を引き抜き、滾る自身を押し当てた。
「たいさっっ」
 悲鳴のようなハボックの声を無視して、ロイはハボックを一気に貫いた。
「うあああああっっ」
 無意識にずり上がって逃げようとする体を引き戻して、ロイは乱暴にハボックを突き上げる。ロイのシャツを握り締めたままもがくハボックの最奥を突いてやればハボックの中心から白濁が迸った。ロイはそんなハボックを満足げに見下ろすと、ハボックの中へたっぷりと熱を注ぎいれた。

 ずるりと抜き出される感触にハボックが微かに呻いた。目を閉じて息を整えようとするハボックを愛おしそうに見下ろしたロイは、ハボックにしがみ付かれて皺になったシャツのボタンが外れそうになっているのに気がつく。
「お前が引っ張るからまたボタンが外れそうだ」
 そう呟くと、ロイはハボックの顔を覗き込むようにして言った。
「わざとか?」
 そんなにお礼がうれしかったのかと、しれっとして言い放つロイをハボックは思い切り押し返した。
「バカな事言わんで下さいっ!」
 もがくハボックをロイは優しく抱きしめる。
「もう、絶対ボタンなんてつけてあげませんっ!」
 ロイはつれないことを言う唇をそっと塞ぐ。それからハボックの耳元に口を寄せると囁いた。
「そう言うな、サービスしてやるから」
 ロイの言葉に一瞬動きを止めたハボックは次の瞬間猛烈に暴れだす。ロイはそんなハボックの抵抗をやんわりと封じ込めて抱きしめると、優しく唇を合わせた。


2006/10/19


「調理法」を読んだ方から「ハボってお裁縫できるんですね、大佐のボタンをつけてあげたりしたら萌えます」とのメッセージを頂戴し、思わず書いてしまったのがコレです。大佐の為に色々してあげようとするのに、どうもそれが自分にとってあんまりうれしくない方向で返ってくるのが、うちのハボの可哀相なところ(?)でも、結局はバカップルなんですけどね(苦笑)