act.10  wall3


 ロイがホークアイに強制連行された後、ハボックは殆んど帰省本能だけで司令室に戻ってきた。自分の席につくと煙草も吸わずにぽけっとしていたかと思うと、自分の両手をぽやんと見つめていたり、はたから見るとかなり危ない状態の人物と化していた。
「少尉、どうしちゃったんでしょうか…?」
「ここのところ様子がおかしかったけれど、今日はいつにもましてヘンだね」
 フュリーとファルマンがこそこそ喋っているのも気がつかない。ブレダはウンザリした顔でハボックをみるとぼそりと言った。
「コイツがおかしいのなんて、どうせ大佐絡みだろ。ほっとけ」
 ブレダが書類に向かおうとした時、司令室の扉が開いてヒューズが顔を出した。
「よっ、みんな元気してる?」
「あれ、中佐、こっちに来てたんですか?」
 ブレダがそう言えばいつもの笑みを浮かべて中へと入ってくる。
「ま、ちょっとヤボ用でね」
 ヒューズはそう言うとぽやんと座っているハボックを見た。いつもならすぐ軽口を叩いてくる筈のハボックが自分がきたのにも気づかない様子なのを見て、首を傾げるとハボックへと近づいていく。そうしてハボックがぽーっと見つめている両手を自分の両手でぎゅっと掴んだ。
「お手」
 そうして軽く振るとハボックの金髪をなでなでと擦った。
「よお、どうしたよ、ワン…コ?」
 そう言って覗き込んだハボックが自分の手を見てぷるぷると震えているのに気がつく。
「おい、少――」
「なにすんだあああっっ!!!」
「どわあっ!」
 いきなり襟首を掴まれてヒューズは目を見開いた。
「なっ…お、おちつけっ、おいっっ」
「このやろおおっっ」
 そう怒鳴るとハボックはヒューズを投げ捨てた。
「いてえっ!」
「ちゅっ、中佐のばかやろおおおお〜〜っっ!!」
 涙ながらに叫んだハボックがそのままドタドタと司令室の外へ駆け出していってしまうのを、投げられたヒューズもブレダたちも呆然として見送る。
「俺、なんかした…?」
「さあ…?」
 遠く響き渡るハボックの雄叫びに、司令室の面々は訳がわからぬまま顔を見合わせるのだった。


2007/1/18