| act.23 transfer2 |
| 『どういうことだっ、ヒューズ!貴様、私のところからハボックを引き抜こうとでも言うのかっ!!』 「おい、ちょっと落ち着けって、ロイ…」 『自分のところに優秀な人材がいないからって、人の物に手を出そうなんて見損なったぞ、ヒューズっ!』 「いやだから俺の話…」 『大体どうやってハボックに頷かせたんだっ?!煙草かっ?酒かっ?まさか女とか言うんじゃないだろうなっ?!』 人の話になど全く耳を貸す気配もなく電話の向こうでギャンギャンと喚きたてる親友に、ヒューズはウンザリとしたため息を零す。直接面と向かって話し合っているのであればそれこそ頬の1つもひっぱたけば黙らせることも出来るだろう。だが、電話越しでは一方的に怒鳴られるばかりだ。ヒューズは眉間の皺を揉むと受話器を口に当てて思い切り空気を吸い込んだ。 「うるせぇぇぇっっっ!!!」 ビリビリとガラスが震えるほどの大声で怒鳴れば流石に電話の向こうが沈黙する。ヒューズはひとつ息を吐くと、きっと執務室の外では部下達が魂消ているだろうななどと思いつつ話し出した。 「ロイ。俺はお前の大事なワンコを取り上げようなどと思ったことはないぞ」 ヒューズはゆっくりとそう言うとちょっと間を置いて言う。 「聞いてるか?ロイ」 「…鼓膜が破れるかと思った」 「それはこっちのセリフだ」 見えるはずはないのだがそれでも思い切り顔を顰めてそう言うとヒューズは続けた。 「言っとくがな、この異動の話は俺が言い出したんじゃない。ワンコから俺に言ってきたんだ」 そう言えば受話器の向こうで息を飲む音がする。少しして搾り出すように小さな声がした。 「どうして?」 「さあな」 そう答えれば沈黙する相手にヒューズはため息をつくと言う。 「お前達の間に何があったか知らんが、ロイ。意地張ってたりカッコつけたりしてっと大事なもの、なくすぜ」 「ヒューズ…」 「アイツはお前のことが嫌いになって側を離れようとしてんじゃない。側にいることは出来ないけど、それでも少しでもお前の役に立ちたいからって俺のところに来られないか聞いてきたんだ」 「側にいることが出来ないって、どうしてなんだ?」 縋りつくような声にヒューズは素っ気なく答えた。 「知るかよ。それこそ自分で確かめるんだな」 その言葉に黙り込むロイにヒューズは言う。 「俺が言ってやれるのはここまでだ。この後どうするかは自分で決めろ、ロイ」 そう言ってヒューズはガチャリと受話器を置いた。遠い東の空の下、大切な親友が幸せになれるよう、そう祈りながらヒューズは青い空を見上げたのだった。 2007/11/28 |