act.28 stubborn


「大佐、こちらの書類はどういうことでしょうか」
 決済済みの書類の束を手にしたホークアイが中の一枚をロイに差し出して言う。ロイは机の上に置かれたそれを見もせずに答えた。
「見ての通り、ハボック少尉の異動申請書だ」
「少尉をセントラルへ異動させるんですか?そんな話、聞いておりません」
「いちいち君の許可を取る必要があるのか?」
 そう言うロイにホークアイは一瞬黙ったが答える。
「大佐である貴方が私の許可を取る必要などありませんが、補充もなしに彼を異動させるわけにはいきません。大体護衛はどうなさるおつもりですか?」
「護衛なんて必要ない」
「そういうわけには参りません。一体どうして突然異動なんて――」
「出て行くと言ったのはアイツだっ!!」
 バンッと机を拳で叩くロイにホークアイは目を見開いて押し黙った。その横顔がまるで寄る辺をなくした子供のようで、ホークアイは息を飲む。張り詰めた空気の中、暫くの間互いに口を開かずにいたが、ホークアイがゆっくりと息を吐くと言った。
「よろしいんですか?このまま出してしまって」
 そう言えばロイがハッとしてホークアイを見る。その優しい鳶色の瞳に唇を歪めると吐き捨てるように言った。
「出さない理由なんてない」
「…判りました」
 そう言うとホークアイは静かに執務室を出て行く。パタンと扉が閉まった途端、ロイの瞳からポロリと涙が零れ落ちた。


2008/2/26