act.16  nice build2


 医務室から飛び出したロイはばたばたと廊下を駆け抜け、暫く走ったところでようやく足を止めた。壁に手をついて、はあはあと荒い息を吐く。
「びっくりした…」
 ロイはたった今見た、ハボックの鍛えられた体を思い浮かべて頬を染めた。ハボックが軍人として、実戦部隊の長として日々鍛錬を積んでいるのはよく知っている。その体が無駄な筋肉の一つもない、賞賛すべきものであることも、上着を脱いでシャツ一枚になったハボックの体つきからよく判っていたはずだ。だが。
「いきなりアレは、反則だろう…」
 階段から落ちたハボックのことが気になって、会議を抜けて医務室に様子を見に行ったロイだったが、診察の為だろう上半身裸になったハボックの姿に、思い切りときめいてしまった。太い首から幅の広い肩へ。厚い胸板と逞しい腕と。
(抱きしめられたらどんな気持ちだろう…)
 ふとロイは思ってふるりと体を震わせる。今までだって、ハボックの体温を近くに感じることはあった。だがそれはただ側にいるというだけで、特別な意味合いは何一つないものだ。
(あの馬鹿…。一体いつになったら本気になるんだ)
 ただの部下であった筈のハボックをいつの間にか恋愛の対象としてみていた。そうして見つめるうち、相手が自分を見つめる視線にもそういった意味合いがある事に気がついて。だから一層想いを込めて見つめているのに鈍感なアイツは欠片も気づきやしない。痺れを切らして一生懸命粉をかけても、ロイがどういう意味でそんなことをしているかなど、全く考えやしないのだ。
「一度燃やしてやる…」
 そうしたら煮え切らないハボックも熱く煮えたぎるかもしれない。ロイは一つため息をつくとコツンと壁に頭を寄せたのだった。


2007/4/13