act.25 misunderstanding2


「ハっ、ハボックっ!」
 ロイは休憩所で部下達と雑談していたハボックを見つけると声をかける。声の主がロイだと判るとハボックの周りにいた部下達が気を利かせて席を外した。流石にこの場から立ち去るわけにも行かず、ハボックは不満そうにロイを見る。煙草の灰を落とすとロイに言った。
「なんか用っスか?」
 とても上官に対しての言葉とは思えぬその物言いも以前ならなんでもなかったのに、今日はやけに冷たく聞こえる。ロイはどう切り出していいか言葉が見つからず、ウロウロと視線を彷徨わせた。
「用がないなら行きますけど」
「待てっ!」
 立ち上がろうとするハボックにロイは慌てて声を上げた。なんなんだ、と言いたげに見上げてくる空色の瞳を見つめて言った。
「あ、えっと…今まで色々と迷惑かけて悪かったな。その…書類溜めたまま逃げたり、会議サボった言い訳をお前にさせたり、訓練の邪魔をしたり…」
 ロイはじっと見つめてくる冷たい瞳に挫けそうになりながらも必死に己を叱咤して続ける。
「もう、そういうことはしないようにするからっ。いや、全くゼロにっていうのは難しいかもしれないけど、なるべくやらないように気をつけるから、だから…」
 ヒューズのところへは行かないでくれ、ロイがそう言おうとした時。
「もう、オレがいなくなるから嫌がらせの必要はなくなったってことっスか?」
 ボソリと呟くハボックの声にロイは驚いて口を閉ざした。ハボックはロイを見つめると言う。
「まあ、アンタがマジメに仕事してくれれば後に残る中尉やブレダも楽になりますからね、いいんですけど、でも」
 ハボックは煙草を灰皿に押し付けると立ち上がった。
「嫌がらせの我が儘はもうしないってわざわざ告げに来るほど、オレってアンタに嫌われてたんスね。まさかそこまで嫌われてるとは思わなかったな」
「ハボ…?」
 何を言われているのか咄嗟には判らずポカンとするロイをハボックは見下ろす。くしゃりと顔を歪めると吐き出すように言った。
「アンタが書類にサインしてくれたら、すぐにでも中佐んとこ行きますから」
 吐き捨てるようにそう言うと、ハボックはロイを押しのけて休憩所を出て行く。後に残されたロイは何がなんだか判らず、ただ呆然とハボックの後姿を見送るしか出来なかった。


2007/12/15