act.35 happyend??


 思い切り怒鳴りつけられてハボックは目を丸くする。度肝を抜かれてなにも返せないでいるハボックの胸倉を、ロイはむんずと掴んだ。
「お、ま、え、はーーーッッ!!人が夢現で口にしたことを勝手に解釈するなッッ!!バカがッ!!」
 グイグイと喉元を絞められた上に罵られてハボックはムッとする。ロイの手を振り解いて痛む喉をさすりながら言った。
「勝手に、って言うっスけどね、“嫌いだ”って言葉を他の何に解釈しろって言うんスかッ?“お前なんて嫌いだ”って言われたら、普通嫌われてるって思うっしょっ?!」
「だからお前はバカだと言うんだッ!」
「どうせオレはバカっスよ!だから側には置いておけないって言うんでしょうけどッ!」
「いつ私が側には置いておけないって言ったんだ?!」
「だってバカって言ったじゃないっスかッ!」
「だからそれはッ!!」
 一気に罵りあって流石に息を切らした二人がハアハアと肩で息をしながら睨み合う。ハボックはグッと唇を噛んで手を差し出した。
「もう、アンタがオレをどう思っていようがそんな事どうでもいいっス。その書類寄越して下さい」
 どうでもいいと言うハボックの言葉にロイの胸がチクリと痛む。泣き出したい気持ちをこらえてロイは手にした書類を背後に庇って言った。
「嫌だ。お前には渡さない」
 そう言って睨んでくる黒い瞳にハボックは悲しくなる。それほどまでに書類を早く回して自分を追い出してしまいたいのだろうか。
「そこまでオレを追い出したいんスか…っ?」
 ハボックが思ったままを口にした時、ロイが背後に隠した書類をハボックに突きつける。その書類が端からメラメラと燃えていくのを見て、ハボックは目を丸くした。
「たいさ……?」
「だからお前はバカだと言うんだ」
 燃え尽きてしまった書類の切れ端を吹き抜けた風がさらっていく。ハボックを睨んでいたロイの瞳が不意に揺らいだと思うと、ロイは唇を噛んで顔を俯けた。パタパタと俯いたロイの顔から雫が地面に落ちては吸い込まれて消える。ロイが泣いているのだと気づいた時、ハボックは考えるより先にロイの腕を掴んでいた。
「大佐?あの……?」
 何がなんだか判らずに、それでもロイが泣くのを見るのは辛くてハボックはロイをそっと抱き締める。その途端、腕の中からロイがハボックを睨み上げて言った。
「私がっ、この書類を見た時、どんな気持ちだったと思うんだッ、バカッ!」
「大佐?」
「いつまで待ってもちっとも打ち明けてこないしッ」
「…え?」
「人の気持ちに気づきもしないバカをバカと言って何が悪いッ!」
 そう言って睨んでくる黒い瞳にハボックは目を丸くする。ポロポロと涙を零す瞳を見つめていたハボックは、キュッと唇を噛んでそれからゆっくりと口を開いた。
「大佐、今からオレが言うこと、嫌だったらオレの事燃やしてくれていいっスから」
 そう前置きして、ハアアと息を全部吐き出し大きく息を吸う。ロイの腕を掴んでまっすぐに見つめると口を開いた。
「オレ、ずっと前から大佐の事」
 そこまで言って一度止める。
(全部言ったら燃やされるかも……。でも、それでも構わねぇ…ッ)
 さっきの書類のように燃やされたとしても本望だ。ハボックはそう思うとまっすぐに見上げてくる黒い瞳を見つめて口を開いた。



2010/04/18