act.7 cigarette2


「おいっ、ハボっ?!しっかりしろっ!」
「少尉っ、しっかりして下さいっ!!」
 執務室からよろよろとでてきたと思った途端、鼻血を噴いてぶっ倒れたハボックに、ブレダたちはびっくりして駆け寄った。
「ティッシュ、ティッシュ!!」
「タオル持ってこい!」
 真っ赤な顔で倒れたハボックを、取り敢えず司令室のソファーに運ぶとブレダたちはハボックの顔を拭いてやり、鼻血が零れる鼻に詰め物をしてやり、冷たいタオルを当ててやる。
「いったいどうしたんでしょう?」
 訳のわからないという顔でブレダを見るフュリーに、ブレダも首を傾げた。
「さあな、執務室にそんな興奮するようなもん、あったか?」
 ブレダはそう言うとハボックの唇にまだ挟まったままだった煙草に気がついた。
「なんだ、危ねぇな」
 ブレダはそう言ってハボックの唇から短くなった煙草を取り上げる。そうしてタオルを絞る為に水を張っていた洗面器でジュッと火を消すと、手近のゴミ箱に放り込んだ。
「このままにしておいて大丈夫でしょうか」
 心配そうに言うファルマンにブレダはひらひらと手を振ると答える。
「大丈夫だろ。何があったか知らねぇけど、たかが鼻血だし」
 ほっとけ、と席に戻ってしまうブレダを見て、ファルマンとフュリーも自席へと戻り仕事を再開するのだった。

 暫くしてハボックはむくりとソファーの上に体を起こした。膝の上にぽろりと落ちた濡れタオルをぼんやりとみつめていたが、ハッとして口元に手をやるとそこに目当てのものがないのに気づいて慌てて辺りを見回した。
「ブッ、ブレダッ!オレの煙草知らないっ?!」
「なんだよ、人の名前を汚らしく呼ぶんじゃねぇよ」
「そんなことより、オレの煙草っ!咥えてただろっ!」
ブ レダは必死の様子のハボックを怪訝そうに見つめると答えた。
「何言ってんだよ、ぶっ倒れたヤツの咥えてた煙草なんて危ないから消したにきまってんだろ」
「その煙草、どうしたっ?!」
「どうしたって…その辺のゴミ箱に…」
「うそっっ!!」
 ハボックはソファーから飛び上がると手近のゴミ箱をひっくり返した。
「どこのゴミ箱だよっ?!」
「は?んなのいちいち覚えてるもんか」
「ちきしょうっ!余計なことすんなよっ!!」
 そう怒鳴って片っ端からゴミ箱をひっくり返すハボックをブレダは不機嫌そうに見つめる。
「なんだよ、危ないから消してやったのに」
 人がせっかく親切でやってやったのに余計なこととはなんだと、ブレダは必死の様子のハボックを放って書類へと戻ってしまった。そこら中にゴミを撒き散らして必死に探し回っていたハボックだったが、やがてぺたりと床に座り込むと呆然と呟いた。
「ない…そんな」
 ロイが咥えたあの煙草。絶対宝物にしようと思っていたのに捨てられてしまうなんて。
 両鼻にティッシュを詰め込んだ情けない顔を更に呆けさせてぼんやりと座り込むハボックを、司令室の面々は気味悪げに見つめるのだった。


2007/1/14