only you



 仕事帰りにハボックのアパートに寄ったロイは窓際に置いたフォトスタンドを見つけて手に取った。そこには釣竿片手に満面の笑みを浮かべる数人の少年の姿が写っている。少年の姿の中に見知った面影を見つけてロイはハボックに話しかけた。
「おい、この写真に写ってるの、お前か?」
 そう言われてハボックはキッチンから顔を出した。
「はぁ?…ああ、それ。そう、オレっスよ。なんか、お袋が写真が出てきたとか言って送ってきたんです」
 懐かしくて思わず飾っちゃいました、とか言うハボックの言葉を聞きながらロイは改めて写真を見る。
 10歳前後の少年達がそれぞれ釣竿やら魚籠やらを手に嬉しそうに笑っている。昔から可愛かったんだなぁなどとだらしなく頬を緩めながら写真を見ていたロイは、ハボックの隣に写っている少年に気がついて写真を手にキッチンへ入っていく。
「この太目のヤツ、もしかしてブレダ少尉か?」
 コーヒーを淹れていたハボックは砂糖の蓋を開けながら写真を覗き込んだ。
「ああ、そうっス。こうやって見るとブレダもあんまり変わってないっスね」
 砂糖とミルクを入れてロイ好みにコーヒーを整えると、ハボックは自分の分のカップと合わせてもってロイをリビングへと促した。
「こんな子供の頃から知り合いだったのか」
「ブレダとは幼馴染なんスよ。生まれた時から一緒。家、近かったからしょっちゅうつるんで遊んでました」
「士官学校時代の同期だと思っていたが」
 ロイは差し出されたコーヒーを受け取ると口を付けた。
「アイツとは腐れ縁っていうか、なんだかずっと一緒なんスよねぇ」
 懐かしそうに笑うハボックにロイは何となくもやもやとしたものを感じながら写真をハボックに渡した。
「どんな子供だったんだ?」
「オレ?それともブレダが?」
「ブレダ少尉のことを聞いてどうする」
 ムッとして言うロイに苦笑してハボックは答えた。
「そうっスねぇ、まぁ、いっつも走り回ってましたよ。釣りもしたし、木に登ったり、川で泳いだり、じっとしてなかったスね。毎日、駆けずり回ってました」
 ハボックはコーヒーを一口すすると思い起こそうとするように天井に目をやった。
「このときは確か、みんなで誰が一番大物を釣るか、勝負したんですよ。前の日から自分でせっせと仕掛けを作ったりして…。そうそう、一番勝ったヤツの言うことを何でも聞くとかいう賭けをしたときだ」
「賭け?」
「ええ、確か」
「…誰が勝ったんだ?」
「…誰だったかな、オレじゃなかったのは覚えてるんですけど」
 真剣に首を捻っているハボックを見るロイは不愉快そうに眉間に皺を寄せた。まったくこいつは、と思う。つい先日、小隊の連中とやっぱり似たような賭けをやっていた。気がついたロイが賭けに乱入して事なきを得たのだが全くもって自覚が足りない。子供の時からこんな調子だったのならこれからはますます注意して見ておかないと、等とロイが考えていると、
「あ、思い出した。確か負けたやつ全員素っ裸で川で泳げってことになったんだ」
 いや、アレは恥ずかしかったっスねぇ、などとのんびり言うものだからロイは怒りのもっていきようがなくて拳を握り締めた。
「大佐?」
 流石に不穏な空気を感じたのかハボックは首を傾げるがロイが何も言わないので困ったように笑って見せた。
「ガキの頃は結構バカなことやってましたね」
 コーヒーをすすりながら昔に思いを馳せてハボックは言葉を続けた。
「肝試しみたいのもよくやったな。田舎だから夜はホント暗いんですよ。二人一組で廃屋に置いたメダル取りに行くんですけど、いきなり飛びかかられるとマジ飛び上がりましたもん」
「飛び掛られた?」
「そう、後ろからガバッと圧し掛かられたり、ペア組んでたヤツにびびってしがみ付かれてそのまんまぶっ倒れた時は頭ぶつけて一瞬気が遠くなったこともありましたよ」
「…おまえなぁっ」
 普通、肝試しで驚かすのに圧し掛かってこないだろう、他の意図を察しろとロイが心の中で怒鳴っているとハボックがさらりと言ってのけた。
「そういえばブレダとキスしそうになったことが…」
 ガチャンっとすごい音を立ててロイがカップをテーブルに叩き付けたのでハボックはびっくりして言葉を切る。
「…してませんよ?」
「あたりまえだっ!」
 どうもさっきから自分の言うことにロイが腹を立てているようなのは判るのだが、どこにそんなに引っかかるものがあるのか、ハボックには皆目見当が付かない。コーヒーに口を付けながら上目遣いにロイを見ると眉間に深い皺を刻んでこちらを睨んでいるロイとバッチリ目が合ってしまった。慌てて目を逸らすハボックにロイは、全然判ってないなと実感する。仕方なくため息をついて話の先を促した。
「…なんで、そんな事に?やっぱりしがみ付かれたのか?」
「ええ、アイツ昔から太ってたから支えきれなくて一緒にぶっ倒れたら、オレのほっぺたにブレダがくっついてて」
 アレは危なかったっス、とにっこり笑うハボックにロイは眩暈がした。よくここまで他のヤツに押し倒されずに来たものだ。
「ブレダとはホント、いろんなことやりましたよ。オレがガキの時のことでアイツの知らないことなんて、ないんじゃないかな」
 ハボックのその言葉にロイの機嫌が再び急降下した。
「気に入らん」
「は?」
「私の知らないお前をブレダ少尉が全部知っているなんて、全くもって気に入らん!」
「いや、そんな事言ったって、幼馴染なんだし…」
 仕方ないっスよ、というハボックにロイはますます眉間の皺を深くした。
「私にも洗いざらい全部話せ」
 そう言ってハボックにずいと迫る。
「そんなの、ムリっスよ」
「ムリでも何でも全部話せ」
「たいさ〜」
 漆黒の瞳に嫉妬という暗い焔を乗せて迫ってくるロイにハボックはどぎまぎした。そうして、そんな無茶を言うロイをなんだか嬉しく思う自分に気づいて照れたように笑った。
「ハボック?」
「ブレダが知ってることなんて、オレのガキの頃を知ってるヤツならみんな知ってることっスよ」
 そう言ってソファに座る自分に圧し掛かるように顔を寄せているロイの腕にそっと触った。
「でも、アンタが知ってるのは、アンタしか知らないことでしょ?」
 そうでしょ?と囁くように言うハボックにロイの気持ちが和いで行く。ニヤリと笑うとロイはハボックの頬に掌を当てた。
「例えば、どこが一番感じやすいとか…?」
 そういいながらハボックの耳元に唇を寄せた。びくりと体を震わせて赤くなったハボックがやんわりとロイを押しやる。
「そう、だからいいじゃないっスか…」
「…もっと知りたい。私しか知らないお前を」
「え…っ、ちょ…、たい、さ?」
 気がつくとソファの上に押し倒されてロイに真上から見下ろされていた。真剣な瞳にかあっと頭に血が上る。
「ちょっと、待って、たい…んんっ」
 押し留める間もなくロイに唇を塞がれてしまう。あっという間に割られた足の間に体を入れられてハボックは身動きが取れなくなってしまった。
「たいさっ」
 耳に舌を這わされてぞくぞくと背筋を快感が這い上がってくる。気がついた時には、既にシャツの前をはだけられてロイの熱い掌が肌を這い回っていた。胸の突起を捏ね上げられてびくりと体がはねる。ロイが耳元で囁いた。
「ここを弄られて感じるってことを誰か知ってるか?」
 そういいながらぐりぐり捏ね回されて、ハボックはびくびくと体を震わせた。
「あ、アンタだけに、き、まってる…しょ…」
 自分を睨みつけるようにして答えるハボックにロイはうっすらと微笑んだ。ゆっくりと唇を滑らせてハボックを喘がせると鍛え上げられた脇腹の辺りに歯を立てる。
「いっ…、やめ…っ」
 びくんと跳ねる体にほくそ笑んでロイはハボックのズボンを下着ごと引き摺り下ろした。長い脚を開かせると奥まった蕾に指を這わせる。ゆっくりと沈めていけばハボックが息を呑むのがわかった。かまわずぐちゃぐちゃと音を立ててかき回すとハボックの唇から熱い吐息が零れる。沈める指の数を増やして行き、ハボックの悦いところを何度も突いてやりながら尋ねた。
「ここがイイってことは…?」
 知ってるのは私だけか、と意地悪く続ける。
「は…っ、やぁ…っ、あ、ああっ」
「ハボック?」
 ロイの指の動きに翻弄されて答えることの出来ないハボックに畳み掛けるように言えば、ぎゅっと引き瞑っていた目を開けてハボックが答えた。
「あ…たりま、え…っ」
 その答えにロイは伸び上がるようにして涙の滲むハボックの目元に口付けた。指を抜いて、熱く滾った自身を取り出すとハボックの脚を抱え上げるようにしてハボックの中へと沈めていった。
「あ、あ、あ…っ」
 ハボックが堪らずしがみついて来るのを優しく抱きとめると、ロイはゆっくりと抽送を始める。熱く濡れた襞がロイ自身に絡みつきロイの熱を煽っていく。
「お前のココがこんなにイヤらしく絡みついてくるのを知ってるのは…」
 そう囁きながらハボックの唇に舌を這わせれば誘われるようにハボックの舌先がロイのそれに絡みついてきた。
「は…ぅ、ん…」
「ハボック…」
 答えて、とロイが強請るように呟けばハボックのそこがロイ自身をきゅっと締め上げた。
「ふ…は、…た、いさ、だけ…っ」
 搾り出すように答えるハボックに、ハボックの中に埋め込まれたものがぐぐっと体積を増した。
「あっ、やぁ、もう…っ」
 ふるふると首を振るハボックにロイは口付けると、ハボックを追い上げるべく激しく腰を打ち付けていった。


 ぐったりとソファに沈み込むハボックの濡れた前髪を掻き揚げて、ロイはその額に唇を落とした。ハボックはロイの纏う空気が穏やかになったのにホッとして瞳を閉じる。その空色の瞳が見えなくなったことが気に入らなくてロイはハボックの名を呼んだ。
「なんスか…?」
 うっすらと目を開いて答えるハボックの声は気だるげだ。その声にロイはぞくりと背筋を這い上がるものを感じて目を眇めた。
「…また、煽る気か?」
 悔しげに言うロイにハボックはきょとんとした顔をする。わかってないハボックにロイはため息をついてその瞳を覗き込んだ。
「くだらん賭けをしたり、私以外の男と二人きりになったり、そんな顔を見せたり声を聞かせたりするな。」
 鈍い恋人に一つ一つ具体的に上げ連ねて説明しても、ハボックには今ひとつぴんと来ないようだ。ロイはもう一度ため息をつくと言った。
「まだ自覚が足りないようだからじっくり教えてやろう。お前は私のものだってことをな」
 そうしてロイはハボックの上にゆっくりと覆いかぶさっていった。


2006/6/19


ロイが何に対して怒っているのかがどうも曖昧になってしまって、お題消化しきれてないですよね〜〜〜。しかも、「ハボロイサイト」とか言ってるのに「ロイハボでもいいですかっ」と強引にリバにしてしまったのは私…。nekoさま、ごめんなさい、せっかくリクくださったのにこんなのになってしまいました(汗)愛と感謝を込めてnekoさまにささげます。…返品可能です…。