我慢くらべ  後編



「シテほしい時ってなんていうんだろ…」
 ブレダと2人で休憩所で煙草をふかしていたハボックはぽつりと呟いた。
「はあっ?」
 うっかりその呟きを聞いてしまったブレダはぽとりと煙草を取り落としてしまった。ブレダの素っ頓狂な声にハッとしてブレダを見たハボックは、ブレダが目を丸くして自分を見つめているのに気づいて、みるみるうちに真っ赤になる。
「…今の聞こえた?」
「あいにくとバッチリ」
「きっ、聞かなかった事に…」
「もう聞いちまったよっ」
 聞きたくなんてなかったけど、と言うブレダにハボックは真っ赤になって俯く。そんなハボックを見て、ブレダはため息をついた。
「ケンカでもしたのかよ」
「いや、そういうわけじゃないんだけど…」
「だったらシテって言えば?」
「い、言えるかっ」
 ハボックは真っ赤になってブレダを睨みつける。ブレダはやれやれと言う顔をすると言った。
「あの大佐なら頼まなくてもヤリまくりそうだけどな」
「いや、それはその…」
 ハボックはとても理由を言えなくて、しどろもどろになった。そんなハボックを見ていたブレダはふと思い出したように言った。
「そう言やこの間、彼女にエプロン姿で迫られたって言ってたヤツつがいたな」
「エプロン?」
「そ。裸で」
「はっはだかっ?!」
「やるなよ」
「するかっ、ばかっ!」
 よりによって何を言い出すんだとハボックはスパスパと煙草を吸う。そんなハボックをブレダは見つめて呆れたように言った。
「なあ、なんでお前ってそう素直じゃないわけ?」
「なんだよ、突然」
 ムッとして答えるハボックにブレダは続けた。
「だって、好きなんだろ、大佐のこと」
 面と向かって言ってくる友人に、ハボックは言葉に詰まって頬を染めた。
「お前がはっきり態度で示さないから大佐も無茶すんじゃねぇの?」
 言われてハボックは目を見開いた。
「いくら好きでも伝わってなきゃ言ってないのと一緒だぜ」
 ブレダはそう言うと煙草を消して立ち上がり、「お先に」と戻ってしまった。


 今日は午前勤務のハボックは一人家に帰ると軍服を脱いでTシャツとジーンズに着替える。脱いだ軍服をクローゼットにかけようとして、ふと引き出しを開けると中に入っているエプロンを見た。
「…気色悪ぃって」
 ハボックはそう呟いてぱたんを引き出しを閉める。そのままのこつんと棚に頭をつけるとため息をついた。
『はっきり態度で示さないから大佐も無茶すんじゃねぇの?』
 ハボックの耳にブレダの声が蘇る。
『いくら好きでも伝わってなきゃ言ってないのと一緒だぜ』
 それと一緒にこの間ロイに言われた言葉も浮んできた。
『お前ときたらいつもダメだの、イヤだのばっかりじゃないか』
 ハボックはぎゅっと目を閉じる。
「んなこと言っても…オレがあの人にやたら好きとか言ったって気持ち悪いだけじゃん…」
 軍人としての自分にならそれなりに自信もあれば自負もある。だが、恋人として、と言われたらハボックにはからきし自信がなかった。ロイの周りはいつでも華やかな女性達が取り巻いていた。綺麗でしっとりとして、男だったら絶対欲しくなるようなそんな女性ばかり。それに比べて自分はどうだろう。そもそも何故ロイが自分を選んだのかがハボックには判らなかった。
「オレも大佐みたいにカッコよけりゃなぁ…」
 そう呟いてハボックは大きなため息をついた。


「ただいま」
 夜になって帰ってきたロイは珍しくエプロン姿でキッチンに立っているハボックを見て目を瞠った。
「おかえりなさい」
 ちらりとロイを見たきり鍋に意識を戻してしまったハボックにロイはゆっくりと近づいていく。
「珍しいな、エプロンなんて」
「片付けしてたらでてきたんで」
 ハボックはそう答えたがロイの方を見ようとはしなかった。
「ハボック?どうかしたのか?」
 なんだか様子のおかしいハボックにロイは尋ねる。
「すんません、支度始めるの遅かったんで、もう少し時間かかり…」
「ハボック!」
 ロイはハボックの肩を掴むと自分の方を向かせた。ハボックの顔を覗き込むがハボックは視線を逸らせて目を合わせようとしない。
「一体どう…」
 そう言いかけてロイはふと掠めたハボックの下肢が熱くなっている事に気がついた。
「ハボック、おまえ…」
 ロイに気づかれたと知ってハボックの顔がみるみる赤くなる。昼間先に家に帰ってきたハボックは、何だかんだとロイのことで思い悩んでいる内、どうにもロイが欲しくて仕方なくなってしまった。と言って先日のように空しく自分を慰める気にもなれず、自分で自分を持て余している内にロイが帰ってくる時間になってしまい、結局目に付いたエプロンで自身を隠すしかなかったのだった。
「ご、ごめんなさいっ」
 あまりに浅ましい自分に嫌気がさして、ハボックはロイを振り払おうとする。だが、ロイはハボックをぐいと引き寄せるとその耳元に囁いた。
「私が欲しかったか、ハボック…?」
 びくりと震えるハボックの首筋に舌を這わせ甘く噛み付くとロイはハボックの体を反転させ、シンクに手をつかせた。そうしてハボックのズボンの中へ手を忍び込ませた。
「た、たいさっ」
「こんなにして…欲しかったんだろ」
 そっと取り出された自身をやんわりと握られて、ハボックは熱い吐息を零すと微かに頷いた。ほんの少し触れられただけでハボックのソコはみるみる内に頭をもたげ、エプロンにイヤらしい染みをつけていった。
「あ…たいさ…っ」
 びくびくと震える体を抱きしめ、シャツの裾から手を滑り込ませる。すでにぷくりと膨らんだ乳首をきゅっと摘みあげればハボックの背がしなった。
「あ…あ…た、いさ…」
 ぐちゅぐちゅと湿った音が響き、大きく染みの浮んだエプロンはもうそれと判るほど不自然に持ち上がっている。
「や…やあっ」
 ハボックはこみ上げる射精感にふるふると首を振った。
「た、いさっ…もうっ」
「もう、なんだ?」
「でちゃう…っ」
 びくびくと震えるハボックをロイは愛しそうに抱きしめる。
「いいぞ、達け」
「あ、だって…っ」
 必死に耐えようとするハボックの張り詰めた中心のちいさな穴を、ロイが指先で引っ掻けばハボックはもうそれ以上我慢できずに熱を迸らせた。
「んあああああっっ」
 ロイはハボックの熱を覆い被せたエプロンで受け止める。ぐっしょりと濡れてしまったエプロンを見て、ハボックは恥ずかしさのあまり、ぎゅっと目を瞑った。
「随分沢山出たな」
「だ、だって…っ」
 恥ずかしくて真っ赤に染まった首筋に舌を這わせながらロイはハボックに囁いた。
「私もお前の中にたっぷり出したい…」
「た、たいさっ」
 あからさまなロイの言葉にハボックは絶句する。だが、自分自身も本当はそれを望んでいるのだと気がついて、ハボックは肩越しにロイを振り向くと囁いた。
「シテ…」
 顔を真っ赤にしながらも情欲にその瞳を深い蒼に染めたハボックに、ロイはぞくりとしてその唇に強引に口付ける。苦しい体勢で口付けられながらもハボックは物欲しげに腰を揺らめかせた。唇を離すと、ロイはハボックの口元に指を差し出す。ハボックは夢中でロイの指をしゃぶり、そのイヤらしい様にロイはにんまりと笑った。たっぷりと指を唾液で濡らすと、ロイはハボックの口から指を引き抜きハボックのズボンを引き摺り下ろした。そうして濡れた指をハボックの双丘のあいだへゆっくりと沈めていった。
「ああ…」
 ハボックの唇から耐え切れぬ喘ぎが零れ、ロイの指を飲み込んでいく。ぐちぐちとかき回せば、ハボックが耐え切れずに腰を振った。
「ん…は…た、いさぁ」
 熱を放ったばかりのハボック自身はほんの少し後ろを弄られただけだというのにもう高々とそそり立ち、とろとろと蜜を零している。ハボックは濡れた瞳でロイを見上げると囁くように言った。
「も、いいから…挿れて…っ」
 言われると同時にロイが乱暴に指を引き抜いた。そうして自身を取り出すとひくつく蕾に押し当てる。期待に震えるハボックの体をロイの熱が一気に貫いたと同時にハボックは白濁を迸らせていた。
「アッ、ア――――ッッ!!」
 ハボックの背がしなり、シンクの淵を掴む指が小刻みに震える。ガンガンと容赦なく突き入れれば、熱い襞を擦られて湧き上がる快感にハボックはだらしなく開いた唇から、唾液を垂れ流した。
「ひあっ…いっ…ひっ」
「ハボ…ッ」
 じゅぶじゅぶという水音、肉が当たる音がキッチンに響き渡り、荒い息遣いと甘い喘ぎがその上に覆い被さっていく。もう、ロイもハボックもお互いの熱以外何も感じることが出来ず、互いの肉体に溺れていった。


 ずるりと抜き去られて、支えをなくしたハボックはずるずると床に座り込んだ。エプロンも中途半端に脱がされたジーパンも、2人が放った白濁に汚されて目も当てられない状況になっていた。だが、ハボックにはもう、そんなことに気をまわす余裕もなく、ぐったりと冷たい床に這いつくばっていた。ロイはそんなハボックのとなりに座り込んで、ハボックの金色の髪をゆっくりと撫でている。その穏やかな心地よさにハボックはぼんやりと身を任せていたが、ふと、鼻についた匂いに眉を寄せた。なんだろう、と思った次の瞬間、ハボックはガバリと身を起こす。
「鍋っ!」
 よたよたと立ち上がるとこんなことを始める前にかき混ぜていた鍋を覗き込む。それはすっかり焦げ付いて、一体何だったのか判らない物体と化していた。
「晩御飯、ダメにしちゃった…」
 大体、こんなに焦げ臭い匂いがしているのにそれにも気づかず行為に耽っていたのかと思うと、恥ずかしくて仕方がない。呆然と鍋を見つめるハボックをロイは後ろからやんわりと抱きしめるとその耳に囁いた。
「今晩はこっちを食べつくしたい…。」
 そう言われてハボックの顔に熱が上がる。
「ちょ…も、やめ…」
耳たぶをやんわりと噛んでくるロイを押しやろうとしてハボックはハッとして手を止める。そうしてロイの首に手を回すときゅっと抱きしめた。
「オレも…アンタがホシイ…」
 囁いた途端噛み付くように降ってくる口付けを、ハボックはうっとりと受け止めていった。


2007/1/20


40000打キリリクでくらげさまより「ロイハボで、大佐が珍しく我慢してたのに、欲求不満のハボのエプロンで…みたいなのをお願いできますでしょうか??御飯作っててぷちーんと来てそのまま台所エッチ突入でエプロンは付けたままで鍋は焦げ焦げ…みたいな…」でございました。す、すみませんっ!裸エプロンと仰られてましたが、か、書けませんでした〜〜〜っ!私にはこれがいっぱいいっぱいですー。このへんで勘弁してくださいー(涙)ロイハボの場合絶対我慢できなくなるのはハボのほうだと思うので、こんな形になりましたが、少しでもお楽しみ頂ければー。くらげ様に限りお持ち帰りオッケーでございますう。