chapter 7


「もう、どこ行っちゃったのかな」
 ハボックはロイの姿を探して司令部の建物の中を歩き回っていた。今日のロイは手強い。いつもならわりとすんなり見つかるのに、今日はもう15分も探している。
「なんか、ムカツクなぁ…」
 ロイのことなら結構色々知っていると思う。食べ物の好みとか飲みものの好みとか。こんな日はどこで昼寝しているだろうかとか、コレくらい仕事をしたら休憩を取りたくなるだろうとか。少なくとも司令室の人間の中では一番判っていると思っていたのに。
「くそ〜、絶対に見つけてやるっ!」
 ハボックはそう呟くと、脚を早めてロイがいそうな場所を探して回るのだった。

「やっと、いた…」
 あれから更に30分、探しに探してやっと見つけたロイがいたところは、司令室のすぐ隣の会議室だった。
「オレ、一番最初にここ、探したと思ったんスけど」
 一体どうやって、とぼやくハボックにロイはにんまりと笑う。ロイはため息をついて自分を見下ろす空色の瞳をうっとりと見上げると言った。
「お前がなかなか来ないから寝すぎたじゃないか」
「うわあ、なんかムカツクーっ」
 ぶうぶうと文句を言うハボックに笑うと、ロイは手を伸ばす。
「手を貸してくれ」
 言われて伸ばされる手を、ロイは思い切りグイと引いた。
「うわっ!!」
 思いがけないロイの行為に、ハボックは体を支えきれずにロイの上に倒れこんでしまう。
「わわっ、ごめんなさいっ!」
 慌てて身を起こそうとするハボックの背に手を回すと、ロイはすっと身を寄せた。
「ハボック…」
 耳元でそう囁けば、ハボックの体がはねる。ハボックは耳を押さえると、真っ赤になって後ろに跳び退った。首まで赤くなってぱくぱくと口を開くハボックにロイにんまりと笑う。
「どうした」
「あ、いや、だって、そのっ」
「手を貸してくれないのか?」
「用事を思い出しましたっっ!!」
 そう言って会議室を飛び出そうとしてハボックは扉のところで振り向くとロイにいった。
「早く来てくださいね、たいさっ」
 そう怒鳴ってバタバタと走り去るハボックにロイはくくくと笑う。
「初心
(うぶ)だなぁ、ハボック…」
 きっと色々と教え込むのはさぞ楽しいだろう。ロイは近い将来そうなることを願いながらゆっくりと身を起こすと会議室を後にしたのだった。


2007/4/13