| chapter 4 |
| 「どうしたんだ、それ」 ロイは肩にでかい桜の枝を背負ったハボックを見て、目を丸くして言った。 「ちょうど公園通りかかったら、折れた枝を処分するっていうんで思わず貰ってきちゃったんです」 ロイに聞かれてふわりと笑って答えるハボックにロイは心臓がとくんとなるのを感じる。だがそれを顔には出さずに桜の花に手を伸ばすと聞いた。 「で、どうするんだ、コレ」 「そっスねぇ…」 貰ったはいいがどうするかまでは考えていなかったようで、ハボックは困ったように首を傾げる。 「いっそ司令部でお花見でもするか?」 ロイがそう言えばハボックが苦笑した。 「中尉に撃たれますよ?」 「お前が提案すれば平気だろう?」 ロイが半ば本気でそう言えば、ハボックが笑みを深くする。ロイはふと、ハボックの髪に花びらがついている事に気がついて手を伸ばした。桜のほのかな香りとともに、ハボックの匂いがしてロイは微かに目を瞠る。そうして花びらを取るフリをしてハボックに近づいた。 「たいさ?」 突然近づいてきた端正な顔に、ハボックがびくりと体を震わせる。ロイは構わずハボックの髪を飾る花びらに手に取ると、そのままハボックの肩の上の桜に顔を寄せた。 「いい香りだ」 「ちょっ…たいさっ」 あまりの近さにハボックが顔を赤らめて身を引こうとするのを、桜の枝を掴むようにして更に身を寄せた。鼻腔をくすぐる甘い匂いにロイが頭の中が霞むような錯覚を覚えた瞬間、ハボックがするりと身をかわした。 「執務室にも少し飾っときますから、香りならそこで楽しんでくださいっ」 そうしてわさわさと桜の枝を揺すりながら走り去ってしまうハボックの背を、ロイは甘い香りに包まれたまま見送ったのだった。 2007/4/12 |