| chapter 23 |
| 問題が片づくまでの間のことしかしらない、と言い張る軍曹に、結局当面のことしか指示できないままハボックは詰め所を後にする。もっとも手を怪我してからは実質訓練にも任務にも出ることは出来なかったから、正直ここ数日となんら変わりはなかった。 『逃げるなんて隊長らしくないですよ』 そう言った軍曹の声が蘇る。その声を振り払うように頭を振るとハボックは俯いたままとぼとぼと歩き出した。どうしたらいいのか、どこへ行ったらいいのか判らないまま階段を上り屋上へと出る。柵に身を預けるようにして寄りかかると、イーストシティの街を見下ろした。 「だって……オレにどうしろって言うんだよ」 逃げずにこのままロイの傍でロイが自分を選ばなかった不幸を嘆き、ロイとホークアイの幸せを見守れと言うのだろうか。二人を見つめ昏い嫉妬に身を焦がしながらロイの背を守れと言うのか。 「はは……そのうち嫉妬に狂って大佐か中尉の事撃ち殺しちまいそう」 そうなる前にいっそ自分の命をこそ断ち切ってしまった方が楽な気がする。捨てるにしても抱き続けるにしてもロイへの想いは大きすぎて。 ハボックは街並みを見つめていた視線を地面へと向ける。ここから飛び降りたならグシャリと潰れた体と一緒にロイへの想いも砕けて飛び散るに違いない。 『逃げるなんて隊長らしくないですよ』 「オレ……そんなに強くないんだよ……」 再び聞こえた軍曹の声に向かってそう呟くと。 ハボックは柵を掴む手にグッと力を込めた。 2009/10/22 |