| chapter 22 |
| 辞表が受理されたわけではないから本来ならまだ司令部を離れてはいけないのかもしれない。だが、ぐずぐずといつまでも未練がましく留まれば離れ難くなるのは目に見えていて、ハボックは司令室を出ると足早に小隊の詰め所に向かった。とりあえず自分が隊長を辞する事を伝えて、新しい隊長が決まるまでの間軍曹に隊の事を預けておかねばならない。何か事が起きればすぐロイの手足となれるよう、それだけはきちんとしておきたいと、ハボックは詰め所の扉を開けた。 「あ、隊長」 ハボックが扉を開けるなり中にいた隊員達が口々に声をかけてくる。ハボックはそれに軽く手を上げて答えると、部屋の一番奥に居た軍曹に足早に近づいた。 「隊長」 近づいてきたハボックの表情を見た軍曹は椅子から立ち上がると、ハボックの腕を取る。パーティションの後ろにハボックを連れて行き声を潜めて言った。 「何かありましたか、隊長」 そう尋ねてくる軍曹の察しの良さにハボックは苦笑する。顔を近付けその耳元に囁けば、軍曹が目を見開いた。 「どういうことです?理由を教えてください、隊長」 睨むように自分を見つめてくる軍曹にハボックは口ごもる。まさかロイに失恋したからと言うわけにもいかず、キュッと唇を噛む若い上官に軍曹は言った。 「何があったかあたしには判りませんが、それ相応の理由がなければアイツらは納得しませんよ。勿論あたしも」 「軍曹……」 そう言われてハボックは困ったように視線を落とす。軍曹はそんなハボックに優しく言った。 「問題が片付くまで一時的に隊を預かる事はしましょう。でも、それはあくまで問題が片付くまで、です」 軍曹はそう言ってハボックの腕を叩く。 「どんな難関だっていつだって正面から向かっていったじゃないですか。逃げるなんて隊長らしくないですよ」 その言葉に、ハボックは俯いたままグッと拳を握り締めた。 2009/09/11 |