| chapter 19 |
| 司令室を飛び出したハボックはだが、実際には用事があるわけではなくあてもなく司令部の廊下を走っていく。駆けていく足はゆっくりとスピードを落とし、やがてハボックは立ち止まった。ぼんやりと外を見れば雲の隙間から陽が射している。ハボックは近くの扉から外へ出ると司令部の一角を占める中庭へと向かった。ロイが脱走してはよく昼寝をしている木のところへ来るとその幹に背を預ける。見上げれば緑の葉を通して日光が透けて見えた。 ロイの声を聞くのが好きだった。その意志の強い黒曜石の瞳が好きだった。ロイが目指すものの為になら自分の命を捧げてもいいと思い、その傍らでほんの僅かでもいいから役にたちたいと思っていた。 「たいさ…」 ハボックはそう呟くと目を閉じる。例え想いが叶わぬまでも傍にいたいと思いもしたが、やはり恋人同士となったロイとホークアイの傍にいるのは辛すぎる。それにどうせ自分はもう護衛としても彼の役には立つことは出来ないのだ。 「辞表、出さなきゃ」 いっそロイの焔で跡形も残らぬように燃やしてもらえたらどんなに幸せだろう。そんな叶いもしない願いを思い浮かべてハボックは緩く首を振る。こんな自分は役立たずどころかロイの足を引っ張りかねない。ハボックは手を握り締めると辞表を出す為に建物の中へと戻っていったのだった。 2008/06/30 |