chapter 13


「まったく、なんだって割れたカップの欠片を掴むような真似をしたんだね」
 ハボックの手に包帯を巻きながら軍医が呆れたように言う。ハボックは答えることが出来なくて肩を落としてうなだれていた。
「とにかく、暫く銃は使えんよ」
「えっ?!」
 包帯を巻き終わった軍医がそう言うのにハボックは仰天して目を瞠る。
「銃、使えないって、どうしてっスかっ?大した傷じゃないでしょうっ」
「後もう少し深かったら神経を傷つけてたんだぞ。大体手のひらを怪我してて銃を握れるわけがなかろうが」
「だって、オレっ、大佐の護衛…っ」
「当分は誰かに代わってもらうんだね」
 マスタング大佐には連絡しておくからと言われてハボックは呆然とした。明日も見せに来るようにという軍医の言葉を聞きながらハボックは医務室を後にする。俯いたままとぼとぼと廊下を歩いていたが、突然顔を上げると司令室目がけて走り出した。司令室に飛び込み中を走りぬけるとノックもせずに執務室の扉を開ける。
「たいさっ!」
 ハボックがそう叫べば、ロイはちょうど受話器を置いたところだった。
「たいさっ、あの…っ」
「医務室から連絡があったぞ。手のひらをざっくりやったそうだな」
「たいしたことないっス。護衛も出来ますからっ」
 怒鳴るようなハボックの言葉にロイが言う。
「だが銃を持てないだろう?」
「オレ、銃は両手使えます。左で撃てます」
 必死にそう言うハボックをロイはじっと見つめたが首を振ると言った。
「護衛はブレダ少尉に頼む」
「たいさっっ!」
「マイナス要因を抱えた護衛を連れて歩くわけにはいかんだろう。ブレダ少尉を呼んでくれ」
 ピシリと言われて返す言葉もなく、ハボックは執務室を出るとブレダにロイが呼んでいると伝えそのまま司令室を出ていく。
(護衛のクセにこんな不用意に怪我なんてして、もう護衛としても側に置いてもらえないんだ…)
 そう思った途端ハボックの空色の瞳からポロリと涙が零れて。ハボックは傷ついた手を握り締めると廊下を駆けていった。


2007/11/13