manifestness


「お前の字は本当に味があるな」
「は?」
 サインを貰おうと渡した書類をめくりながら苦笑混じりに言うロイにハボックが眉をしかめる。どうやら褒められた訳ではなさそうだと、ハボックは唇を突き出して答えた。
「どうせオレは字がヘタクソっスよ」
「ヘタクソだなんて言ってないよ、褒めてるんだ。いかにもお前らしい字だ。元気がよくて、お前の字だとすぐ判る」
 そう言いながら書類にサインを認めてロイはハボックに書類を差し出す。差し出された書類をひったくってハボックは言った。
「それって褒めてないっス」
「褒めてるさ」
「アンタは字が綺麗っスもんね」
 見上げてくる黒い瞳を睨んでハボックは言う。軍人であると同時に錬金術師でもあるロイの字は学者らしく整った綺麗な字だった。
「なあ、ハボック」
「サインありがとうございましたっ」
 宥めるように呼びかけてくるロイにハボックはそれだけ言って執務室を出てしまう。バタンと乱暴に閉じた扉に背を預けて、ハボックはハァとため息をついた。
「あー、またやっちまった……」
 こういう時、どうしても素直になることが出来ない。その理由が自分がロイのことを上官に対するもの以上の好意を持っているせいだとハボックは気づいていた。
(大佐……)
 一体いつからだろう、ロイの事が好きになったのは。軍人としての才があるだけでなく錬金術師としても超一流。見目麗しく、だからといって決して軟弱なイメージがあるわけではない。鍛えられた体と強い光をたたえる黒曜石の瞳は、彼を美しく強靱で魅力的な人物に見せて、それ故ロイは女性だけでなく男からも好意を寄せられることが多かった。
(かく言うオレもその一人だけどさ)
 男にもモテるからと言ってもロイが興味を示すのはあくまで女性だ。彼の周りには美しい女性がごまんといたし、万に一つロイが男に興味を抱いたとしても自分のようなかわいげのない大男には目もくれないだろう事を、ハボックは確信していた。
(こんな気持ちなくなっちゃえばいいのに)
 ハボックは手にした書類に認められたサインを見つめて思う。一つ大きなため息をつくと、ハボックは寄りかかっていた扉から体を離し司令室を出ていった。


 バタンと乱暴に閉じられた扉を見つめてロイはため息をつく。やれやれと椅子の背に身を預けて天井を仰ぎ見た。
「まったく、上手くいかんな……」
 あれはいつだったろう、ロイは自分が部下の一人であるハボックの事ばかり目で追っている事に気づいた。任務に当たる時の厳しい横顔、俊敏な動き。こちらが皆まで言わなくてもロイの意図を汲み取り行動する察しの良さ。そんな軍人としての能力を見せる一方、普段のまるでのんびりとして同僚や部下たちとじゃれあう様は、日だまりの中で楽しげに遊び回る大型犬のようでロイの笑みを誘った。そんなハボックに小隊の部下たちが親しげに話しかけ笑い、時に当然のようにじゃれあうのを目にするたび沸き上がる感情が嫉妬だと気づいた時、ロイは自分の中のハボックに対する気持ちが恋愛感情に他ならない事に気づいたのだ。
 それ以来ロイは何とか自分の気持ちをハボックに伝えたいと思っていた。ハボックは自分と同じ男だったがそんなことが気にならないほどハボックの事が好きだったし、例えハボックがボインの女の子が好きだとしても自分に振り向かせる自信があった────あったはずなのに。
(どうしてすぐ怒らせてしまうんだろう)
 これまで自分は人付き合いは上手いほうだと思っていた。例え心の中では大嫌いな相手であろうと、必要であればそんな本音など微塵も感じさせないどころか好意があるようにすら振る舞う事が出来た。相手の気持ちを感じ取り、自分の思うようにし向ける事などなんでもなかったのだ、これまでは。
(前はもう少し懐いていてくれた気もするんだがなぁ)
 以前はもっと自分にも笑顔を向けていてくれていた気がする。だが、最近は仏頂面でいることが多く、話しかけてもつっけんどんな答えが返ってくるばかりだ。
(どうにかならんもんか……)
 ロイは窓の外に広がるハボックの瞳と同じ色の空を見上げて深いため息をついた。


 仕事を終えてハボックはアパートに向かう通りを歩いていく。今日は結局あの後ロイと話をする機会はなかった。もっともあったところでまた愛想の欠片もない態度しかとれなかっただろうが。
「────」
 煙草の煙と一緒にため息を吐き出したハボックは、不意に聞こえた笑い声に足を止め通りに面した店に視線を向ける。そうすれば可愛らしい女の子が数人、ショーウィンドウを覗き込んでいるのが見えた。
「ねぇ、あのチョコレート、可愛いと思わない?どうかな?」
「でもあっちのチョコもいいんじゃない?フルーツが入ってるみたいよ?」
「あーん、どれにしよう!迷う〜〜っ」
 キャアキャアと楽しげに笑いながら話す女の子たちの向こうにバレンタインデーの文字。ハボックは頬を染めながら好きな相手に渡すチョコを選ぶ女の子たちから無理矢理視線を逸らすと、足早に歩きだした。
「嫌な季節……」
 好きな相手にチョコレートを送って自分の気持ちを伝えるバレンタインデー。今年もロイは女の子たちから沢山のチョコを貰うのだろう。去年まではその誰ともつきあう事はなかったが、もしかしたら今年は沢山のチョコの中から一つを選ぶのかもしれない。
「ッッ!」
 ふと浮かんだそんな考えにハボックはギュッと唇を噛みしめる。足を止めさっき通り過ぎた洋菓子店を振り返った。
「────ッ」
 ハボックは地面を蹴って走り出すと洋菓子店に駆け戻る。びっくりする女の子たちを後目に手近のチョコの包みを引っ掴み、無言のままレジの店員に差し出した。
「あ、ありがとうございます」
 ムッと唇を引き結んだハボックの迫力にビクつく店員に金を払ってチョコの包みを受け取ると、ハボックは店を飛び出しアパートに向かって一直線に駆けていった。


「おはようございます!」
「おはよう、今日も元気だな」
 司令室の扉を開けた途端飛び出してきた元気のよいフュリーの声に、ロイは笑みを浮かべて答えを返す。元気だと言われて、フュリーは眉を下げて答えた。
「空元気ですよー、今日はバレンタインデーですからねぇ。どうせ貰えるのは義理チョコばっかでしょうから」
 そんな風に言うフュリーにロイは苦笑して執務室の扉を開ける。大振りの執務机の上にドンと置かれたチョコの入った段ボールを見て、ロイは眉を寄せた。
「ああそれ、受付に届いてた分だそうです。朝からすごいですね、大佐」
「私のこれだって義理チョコと変わらんよ」
「えーっ、そんな事ないでしょう?手紙だってついてますよ。ラブレターでしょう、これ」
 段ボールを覗き込んでフュリーが言う。ロイは肩を竦めて段ボールを床に下ろした。
「きっとまだまだ届きますよ。ホント羨ましいなぁ」
 心底羨ましそうに言って、フュリーは席に戻っていく。パタンと扉が閉まると、ロイは小さくため息をついた。
(好きな相手以外からのチョコなんて義理チョコと変わらん)
 もしこの中にハボックからのチョコレートがあったならどれほど幸せだろう。そんな事を考えて、ロイは段ボールのチョコに手を伸ばす。一つ二つと取り出して差出人の名を確かめたロイは、手に持ったチョコを乱暴に段ボールに戻した。
(あるわけがない)
「馬鹿だな、私は」
 自嘲気味に呟いて、ロイは書類を手に執務室を後にした。


「おはよう」
「おはようございます、ハボック少尉」
 片手をポケットに突っ込んで司令室に入ってきたハボックは、もう書類を広げているフュリーに向かって言う。チラリと執務室に目を向けてさもなんでもないように尋ねた。
「大佐は?」
「朝一番で会議だそうです。さっき出ていかれましたよ」
 フュリーはそう答えると、広げていた書類を束ねて司令室を出ていく。その背を見送ったハボックは急いで主のいない執務室へと入ると扉を閉めた。扉に背を預けてハボックはポケットから手を出す。その手には昨日買ったチョコレートの包みが握られていた。
 女の子たちがチョコを選ぶ姿を見ていて浮かんだ今年こそロイが沢山のチョコの中からどれか一つを選ぶかもという考え。そう思えば例え選んで貰える可能性がなくても想いだけは伝えたいと矢も楯もたまらなくなった。「好きです」と小さなメモにありったけの気持ちを込めて認めて、そのくせどうしても名前を書くことは出来なかった。
(どうせ叶うはずのない想いなんだから)
 ロイが誰か一人のものになる前に伝えたいだけ、そんな一方的な想い。それならば名前を書く必要もないだろう。
 名前を書けない意気地なしをそんな風に言い訳して、ハボックは扉から背を離すとゆっくりと段ボール箱に近づき、詰め込まれたチョコの山の中に手にしたチョコをそっと紛れ込ませた。
(これでもうなしにしちゃうんだ、こんなどうしようもない気持ち……)
 ハボックはギュッと手を握り締めると想いを断ち切るように執務室を後にした。


「ほら!もっと気合い入れろッ!たるんでるぞ、お前ら!」
 広い演習場にハボックの声が響きわたる。その声に答えるように組み手の相手に拳を突き入れながら、マイクはその相手に囁いた。
「今日の隊長、なんだか荒れてんな」
「そうだな」
 マイクの言葉に頷いてベンは少し離れたところに立つハボックをチラリと見る。すると二人の隣で組み手に取り組んでいたロジャースが言った。
「なあなあ、それよりちゃんとやってるか?例のこと」
「バレンタインだからって隊長にチョコを渡そうとする奴らを寄せ付けないんだろ?当たり前だ、ハボック隊全員で隊長をよからぬ奴らから守るって決めてんだ」
「おうよ、隊長は俺たち全員の隊長だから、なッ!」
 マイクの言葉に頷いたベンが足を蹴り上げながら同意する。そうすれば演習場のあちこちから低く賛同の声が上がった。


(苛々する……)
 部下たちに混じって組み手を行いながらハボックは思う。執務室に置かれた段ボールに詰め込まれた沢山のチョコレート。今頃はもっと数が増えているに違いない。その中の一つをロイが選ぶかもと思えば苛立ちが募って、ハボックは思い切り組み手の相手を蹴り上げた。
(なしにするって決めたばっかなのにっ!)
 そう決めて踏ん切りをつけるためにチョコを置いてきた。それなのにこのうじうじとした気持ちはなんだというのだ。
(クソったれッッ!!)
 ハボックはロイへの気持ちをどうにかして振り払おうとするように無我夢中で拳を叩きつけ蹴りを入れ続けた。


(疲れた……)
 限界まで体を酷使して、ハボックはシャワーを浴びる。汗と汚れを落としてシャワーを止めると、タオルを手にブースを出た。滴を垂らしながら続きのロッカールームに向かうハボックの均整のとれた体を部下たちがチラチラと盗み見る。だが、そんな視線にはまるで気づかずハボックは新しいTシャツとボトムを身につけた。
「隊長?」
「仮眠室行ってくる。今日夜勤だし、少し休むわ。大佐にそう言っといて」
 ハボックはため息混じりにそう言うとロッカールームを出て仮眠室に向かう。ライトを落とした仮眠室に入ると、いつもここと決めて使っている一番奥のベッドにドサリと身を投げ出した。
(大佐……もうなしにしようって決めたのに)
 そう思えば思うほど溢れてくる気持ちをどうすることも出来なくて。ハボックは疲れきった体をベッドに横たえてそっと目を閉じた。


「まったく、会議会議でうんざりするな」
 ロイはうんざりとした様子で呟きながら司令室の扉を開ける。その音に「お疲れさまです」と顔を上げたフュリーが続けて言った。
「追加のチョコレート、届いたんで執務室に置いておきましたから。甘いもの食べたら疲れもとれるんじゃないですか?」
「……そうだな」
 ニコニコと悪びれた様子もなく言うフュリーに頷いてロイは執務室に入る。更に増えたチョコを前にがっかりと肩を落とした。
「ハボックからのチョコじゃなければな」
 どんなに沢山チョコを貰ったところで意味はない。ロイは段ボールに近づくと詰め込まれたチョコを手に取る。綺麗にラッピングされたチョコを見つめてため息と共に箱の中に放り込んだロイは、沢山のチョコに紛れてそっと置かれた包みに気づいて目を見開いた。
「これは」
 市販の、特にこれといって変わったところのないチョコの包み。だが、それに添えられた小さなメモに認められた字に、ロイは確かに見覚えがあった。
 「好きです」と一言だけ、差出人の名前はない。それでもロイはこのメモを書いた人物が誰なのか確信があった。
『お前の字は本当に味があるな』
 そう言えば思い切り眉をしかめた顔が思い浮かぶ。
『いかにもお前らしい字だ。元気がよくて、お前の字だとすぐ判る』
 自分は彼に対してそう言わなかったか。
「ハボック」
 自分がハボックの字を見間違えるはずがない。そうであればこのチョコはハボックの確かな気持ちであるわけで、自分とハボックは実は両想いだったという事だ。
「私としたことが」
 ハボックのつっけんどんな態度を取り違えていた。そんな自分の間抜けさ加減に呆れると同時にロイの顔に満面の笑みが浮かぶ。
「くそッ、どこだ、ハボック!」
 名前も記さずその想いを閉じこめてしまうつもりか。
「そんな事、させるものか!」
 ロイはそう言うと同時に執務室を飛び出す。勢いよく開いた扉に驚くフュリーに向かって尋ねた。
「ハボックはどこだッ?」
「えっ?少尉なら夜勤に備えて少し休むって連絡ありましたけど」
「仮眠室か!」
 そう聞いて、ロイは司令室を出ると仮眠室に向かってもの凄い勢いで廊下を駆けていった。


「確かいつもこの仮眠室を使っていると言ってたな……」
 ロイは幾つかある中からロッカールームにほど近い仮眠室の前に立って呟く。いつだったか同じ仮眠室の同じベッドでないとゆっくり休めないのだと言うハボックの、普段の様子からは思いもつかない繊細さを意外に思ったのを覚えている。ロイはそっと扉を開けると薄暗い仮眠室の中へと入った。細い通路を挟んでベッドが左右に並んでいる。どのベッドにも人がいるらしく、通路との間の薄いカーテンが引かれていた。ロイは足音を忍ばせて通路を一番奥まで進んでいく。薄いカーテンをそっとめくって中を見れば、小さく丸まって眠っている金髪が見えた。
「────」
 ゴクリと唾を飲み込んで、ロイは素早くカーテンの内側に入る。ベッドにかがみ込んだロイはきつく眉を寄せて眠るハボックの顔を見て笑みを浮かべた。
「ハボック」
 金色の睫を濡らす涙の滴に気づいて、ロイは指先でそっと拭ってやる。目元に触れる指先にハボックがむずかるように緩く首を振った。
「ハボック」
 囁いてロイは目元に優しくキスをする。頬に鼻にキスを落とし、最後に薄く開いた唇に唇を重ねた。チュッチュッと軽く啄み最後に深く口づける。ベッドに片脚を乗せのし掛かるようにして深く口づければ、ハボックが小さく身じろいだ。
「ん……」
 金色の睫が震えてゆっくりと瞼が開く。ロイは間近から愛しい空色をじっと見つめた。
「大……さ?」
 無防備に見上げてくる様が堪らずロイは再び深く口づける。そうすれば驚いたハボックが逃れようとしてもがいた。
「や……ッ、なにするんスかッ?!」
「キスしてる」
「なんでッ?!」
 突然の事に半ばパニックを起こしてハボックが声を張り上げる。その唇にロイは人差し指を押し当てて言った。
「仮眠室だぞ?そんなに大きな声を出したら他の連中が起きてしまう」
「────アンタが訳の判らん事をするからっしょ!」
 言われて一瞬押し黙ったハボックが低い声で言う。睨んでくる瞳の前にロイは手にしたチョコの包みを差し出した。
「これはお前が私にくれたんだろう?」
「ッッ!!────な、なに言ってんスか、なんでオレが」
 ギクリと身を震わせて、だがハボックは引きつった笑みを浮かべながらもそう言う。フイと目を逸らすハボックをじっと見下ろしてロイは言った。
「メモがついていた。好きです、と。お前の字だ」
「な、名前っ、書いてないんでしょっ!オレの字だなんて、どうして言えるんスかッ!」
「お前の字だ。名前なんてなくたって判る。言っただろう?元気がよくてお前らしい字だと。私が間違えるはずがない、これはお前の字だ、ハボック」
「────」
 きっぱりと断言されてハボックは否定の言葉を口にすることも出来ず唇を震わせる。大きく見開いた瞳を見つめて、ロイは優しく微笑んだ。
「このチョコを見つけた時は驚いたのと同時に本当に嬉しかった。息が止まりそうなほど嬉しくて……。ハボック、私もお前が好きだよ」
「────え?」
「私もずっとお前が好きだった。伝えたくて、だがお前ときたら話すたびいつも不機嫌で、どうしたらいいのかさっぱり判らなくてな。あれは照れ隠しだったんだな?」
「ちっ、違……ッ!オレはアンタにチョコなんて渡してな────」
「本当に?」
「ッッ」
 否定しようとした言葉を途中で遮られてハボックは息を飲む。真剣な表情でまっすぐに見つめてくる黒曜石に、ハボックの顔が泣きそうに歪んだ。
「ウソだ……アンタがオレを好きだなんて」
「ウソなもんか。私はお前が好きなんだ」
「だってアンタ、男は真っ平ごめんだって言ってたっしょ!チョコだって沢山貰ってたじゃん!」
 ハボックは言って腕で顔を隠してしまう。そんなハボックにロイは笑って言った。
「今だってお前以外の男は真っ平ごめんだ。それと、私が本当に欲しかったチョコはこれだけだ」
 ロイは手にしたチョコの包みを嬉しそうに見つめる。空色のリボンを解き蓋を開けてチョコを一つ摘み上げた。
「お前の気持ち、受け取ったよ。私の気持ちも受け取ってくれ」
 ロイは摘んだチョコを口に放り込みハボックの腕を掴む。顔を隠そうとするハボックの腕を開かせると、泣きそうな顔で見上げてくるハボックに口づけた。
「んッ、んん……ッ」
 重なった唇から押し込まれるチョコにハボックは目を見開く。チョコと一緒に忍び込んできたロイの舌先に舌を絡め取られきつく口づけられて、ハボックは震えながらロイに縋りついた。
「ふ……ぁ……、たいさ……ァ」
「好きだ、ハボック」
 囁くと同時にロイはもう一度口づける。舌を差し入れハボックの口内に残るチョコを味わうように、ハボックの舌を絡めとり歯列をなぞり上顎や頬を舐め回した。
「ん……ん……」
 深くきつく口づけて漸く唇を離せば、ハボックがぼんやりと見上げてくる。トロンとした表情で見せるハボックに、ロイは堪らずハボックをベッドに押さえつけてのし掛かった。
「ハボックッ」
 Tシャツの裾を捲り上げれば目に飛び込んでくる薄桃色の胸の頂にむしゃぶりつく。ビクッと震えて身を捩ろうとするのを赦さず、ロイは乳首をきつく吸い上げ舌で舐りキチキチと歯で扱いた。
「アッ!やあッ!」
 胸に与えられる愛撫にハボックはロイを押しやろうとする。だが、その途端乳首に噛みつかれて、ハボックは悲鳴を上げて胸を仰け反らせた。
「ヒィッ!」
 抵抗する力が抜けた体からロイは顔を上げもう一方の乳首を口に含む。チロチロと舌で舐めながら、ロイは唾液に濡れた方の乳首についた歯形をなぞるように指先でこねた。
「あふ……やだァ……っ」
 嫌々と首を振ってハボックが涙声で訴える。チュウチュウと吸いついていた乳首から顔を上げたロイは、愛撫で紅く熟れた乳首を見て目を細めた。
「ふふ……真っ赤に熟れてとても旨そうだよ、ハボック」
「たいさっ」
 そんな事言う男をハボックは涙に濡れた瞳で睨む。それに構わずロイは両方の乳首を指で摘みキュウと引っ張った。
「アアッ!!」
 引っ張られるまま胸を仰け反らせてハボックが悲鳴を上げる。ジンジンと胸から沸き上がるのが痛みなのかなんなのかよく判らなくて、ハボックはゆるゆると首を振った。
「可愛いよ、ハボック」
 そんなハボックの姿にクスクスと笑ったロイはハボックのボトムに手をかける。前を弛めると下着ごと一気に剥ぎ取ってしまった。
「ッッ!!やだッ!!」
 下肢を剥き出しにされて、ハボックがカアッと顔を赤らめて身を縮めようとする。それを赦さずロイはハボックの両脚の間に体をねじ込むと、ハボックの膝裏に手を入れグイと持ち上げて大きく開いた。
「やだァッッ!!」
 恥部を大きく晒されて顔を真っ赤に染めてもがくハボックの股間にロイは顔を寄せると、男のものにしては色の薄い楔の先っぽをペロリと舐める。ハボックの体がビクッと震えると同時にクンと頭を擡げた楔を、ロイはクスリと笑ってじゅぶと咥え込んだ。
「ッッ!!」
 熱い粘膜に楔を包み込まれて、ハボックは目を見開いて身を強張らせる。ジュブジュブと唇で扱かれて、あっという間に追い上げられていった。
「い、イヤぁッ!ダメッ!やめて、大佐ッ!」
 ハボックは何とかロイを引き剥がそうとして黒髪を掴む。だが、巧みな口淫に力が抜けて、喉を仰け反らせて震える事しか出来なかった。
「やめて……ッ!やだ……っ、ダメぇッ、出ちゃうッッ」
 急激にこみ上げてくる射精感にハボックは激しく首を振る。堅くそそり立った楔の先端の小さな穴がパクパクと震えて今にも熱を吐き出しそうになった時、不意にロイが顔を上げてハボックは絶頂の寸前で放り出されてハッハッと浅い呼吸を繰り返した。
「たい、さ……っ」
 一瞬のし掛かっていたロイの気配が消えたと思うとそそり立った楔の根元に何かが巻き付く感触がする。浅く息を弾ませながら視線を下へと向けたハボックは、張りつめた楔が空色のリボンできつく戒められているのを見て目を見開いた。
「な……ッ?!」
「これならいくらイっても仮眠室のベッドを汚さないですむだろう?」
 ニッと笑ってロイはハボックの楔を握り込む。激しく扱き出すロイに、ハボックは慌てて激しく首を振った。
「やだッ!解いてッ、大佐ッ!」
「精液でシーツをグチョグチョにしてもいいのか?」
「だったらこんなとこでシないでッ!」
「折角両想いになったのに、今シないでどうするんだ」
「そんなッ!や……ッ!アッ、ヒィ……リボンがッッ!!」
 きつい愛撫で熱が溜まれば張りつめた楔にリボンが食い込んでくる。ハボックは激しく首を振って、ロイの腕にしがみついた。
「イヤ、お願い、大佐、やめてッッ!!は、破裂しちゃうッッ!!」
「大丈夫だ、ハボック。破裂したりしないから」
 クスクスと笑いながらロイは手の動きを速める。ハボックはロイの腕を握り締め、何度もシーツを蹴って絶頂をやり過ごそうとした、が。
「イけ、ハボック」
 低く囁く声と共に促すように先端を引っかかれ、次の瞬間ハボックは背筋を駆け抜ける快感に絶頂を極めていた。
「アッ────アアアアアッッ!!」
 高い嬌声を上げたハボックの躯が弓なりに仰け反りガクガクと震える。そそり立った楔の先端からじんわりと熱が滲み出て空色のリボンを濡らした。
「あ……ああ……」
 ビクビクと躯を小刻みに震わせたハボックの大きく見開いた瞳から涙が零れる。ロイは頬を濡らす涙を舌で拭ってハボックの躯を優しく抱き締めた。
「可愛いよ、ハボック……気持ちよかっただろう?」
「……たいさァ……」
 抱き締めてくるロイにハボックが泣きじゃくりながらしがみつく。吐き出すことの出来ないままの絶頂はハボックをその頂から降りる事を赦さず、ハボックは身の内を焼く熱にガタガタと震えてロイの背に回した手でシャツを握り締めた。
「ツライ……ッ、イかせて……ぇ!」
「ふふ……イっただろう?ちゃんと」
「イってないッ、出したいッ、たいさッ!」
 クスクスと笑うロイにハボックは激しく首を振って訴える。だが、ロイは涙に濡れた頬にキスをするとしがみついてくる躯をベッドに押し倒した。
「もう少し我慢な、ハボック」
「大……ッ、ヒャッ!」
 ロイはハボックの脚を開かせると双丘の狭間に寄せる。慎ましい蕾に親指を添えてグッと開くと舌を這わせた。
「ヒッッ!!嫌ッ!そんなとこ舐めんなッッ!!」
 ぬめぬめと蕾を這い回る濡れた感触にハボックが悲鳴を上げる。何とかロイを引き剥がそうとしたハボックは、蕾の中に舌先が潜り込んできたのを感じて大きく躯を震わせた。
「やだァッッ!!」
 潜り込んできた舌先が蕾の浅いところを這い回る異様な感触にハボックは激しく首を振る。そうすれば蠢いていた舌が離れてホッと息を吐いたハボックは、尻を押さえていたロイの長い指をグッと蕾に差し込まれて身を強張らせた。
「……ィッッ!!」
 グーッと指を押し込まれてハボックは目を見開く。ロイは押し込んだ指で狭い内壁を押し開くように掻き回した。
「ヒ……嫌ァ……ッッ」
「大丈夫だ、ハボック。痛くしないから」
 ロイは震えながらもがくハボックの顔にキスを降らせながら囁く。グチョグチョと蕾を掻き回しながら指の数を二本、三本と増やしていった。
「苦し……ッ、も、やめて……ッ」
「ハボック、ハボック」
 ハッハッと浅い呼吸を繰り返してやめてと訴えるハボックの名を優しく呼びながら、ロイは堅く閉ざされた蕾を解していく。押し込んだ三本の指がスムーズに動くようになってきたのを感じると、最後に大きく指を開いてグチョグチョと掻き回してから指を引き抜いた。
「アッ!!」
 衝撃にハボックが大きく身を震わせる。それでも秘所に押し込まれた異物の感触が消えて、ハボックはホッと息を吐いた。
「ハボック」
 これでもう終わったのだと安心した様子のハボックにロイは苦笑しながら己のボトムを弛める。その途端ブルンと勢いよく飛び出してきた楔を軽く扱いて、ロイはハボックの脚を抱えなおした。
「たいさ……?」
 ぼんやりと見上げてくる無防備な空色が愛おしい。ロイはハボックの脚を胸につくほど押し上げるとそそり立った楔をハボックの蕾に押し当てた。そして。
「挿れるぞッ、ハボック」
 興奮に掠れた声で囁くと同時に押し当てた楔をズッと突き挿れる。そのままズブズブと一気に根元まで押し込んだ。
「ヒッ────ヒィィィィッッ!!」
 ズブズブと狭い肉筒を押し開き押し入ってくる熱い塊にハボックの唇から高い悲鳴が上がる。逃げを打つ躯を引き戻して、ロイは突き挿れた楔でハボックを揺さぶった。
「ヒィッッ!ヒアアッッ!!痛ァッッ!!」
 ハボックは悲鳴を上げてロイを押しやろうとする。だが、そうすれば逆にのし掛かってきたロイに一層深みを抉られて、ハボックは目を見開いて背を仰け反らせた。
「ハボック、ハボックッ!」
 張り詰めた楔を包み込む熱い感触にロイは激しく腰を突き挿れる。逃げようとする躯を引き戻すのに併せてガツンと奥を抉れば込み上がる快感に、我を忘れてガツガツと突き上げた。
「アヒィッ!ヒーッ!痛いッ、やめ……ッ、アアッッ!!」
 初めて男を受け入れる苦痛にハボックが泣きじゃくる。弱々しくもがく様は、だがかえって男を煽ってロイはハボックの脚を胸につくほど押し上げて激しく突き上げた。
「ああ……イイッ!!」
 ロイは呻くように呟いて突き挿れた楔をズルズルと入口ぎりぎりまで引き抜く。次の瞬間ガンッと一気に貫けば、ハボックが仰け反らせた喉から悲鳴を迸らせ見開いた瞳から涙を零す。拒むようにキュウウッと締め付けてくる蕾に耐えきれず、ロイはハボックの躯の奥底へ熱を叩きつけた。
「ッ、ッッ!!」
「くぅぅ……ッ」
 初めて躯の奥を男の熱に焼かれて、ハボックが声もなく躯を震わせる。仰け反った躯から力が抜けて、ハボックがベッドにがっくりと沈み込んだ。
「ハボック……ハボック」
 涙に濡れた頬を両手で包み込み、ロイはハアハアと弾む息を零す唇に口づける。掌で涙を拭い、汗で額に張り付いた金髪を掻き上げた。
「可愛いよ、ハボック、可愛い……」
 ロイは囁きながらチュッチュッとキスを落とす。恨めしげに見上げてくる空色に苦笑すれば、ハボックはプイと顔を背けた。
「ひどいっス……痛いって言ったのに……」
「お前があんまり可愛いから……それに」
 シレッとして言うとロイはハボックの股間に手を伸ばす。
「萎えてないな」
「ッッ!!」
 キュッと握られた楔は変わらず張り詰めたままだ。キチキチと空色のリボンが食い込んだままそそり立った楔を指先で弄びながらロイが言った。
「痛いのがイイのか?」
「違……ッ!!」
「ふふ……もっと悦くしてやろうな」
 真っ赤な顔で否定するハボックにロイは楽しそうに笑ってハボックの脚を抱え直す。埋め込まれたままだった楔がムクリ頭を擡げるのを感じて、ハボックは顔を引き攣らせた。
「ヤダッ、も、無理……ヒィィッ!!」
 無理だと言う間もあらばこそ、ガツガツと突き上げられてハボックは悲鳴を上げる。ロイは注ぎ入れた熱の力を借りてスムーズに動かせるようになった自身で、ハボックの中を探るように突き上げる。何度目かに突き上げた時、ハボックの躯が大きく震えて、明らかにこれまでとは違う甘く濡れた声が上がった。
「ここか」
 ロイはニヤリと笑うとその場所を執拗に突き上げる。突かれるたび背筋を駆け抜ける快感に、ハボックは背を仰け反らせて喘いだ。
「ひゃうッ、ひゃああんッッ!!」
 ガクガクと躯を震わせるハボックの唇から絶え間なく嬌声が上がる。身悶えるハボックの様にロイはゾクゾクしてハボックの脚を抱え込んで激しく突き入れ、グチョグチョと掻き回した。
「ヒィンッ!ひゃあッ!嫌ァッ!!」
「悦いの間違いだろう?こんなに締め付けて、絡みついてくるぞ。それに勃ちっぱなしだ」
「ッ!違……そんなんじゃ……ッ」
 二人の腹の間でリボンに戒められたままそそり立ち震える楔を指摘されて、ハボックがゆるゆると首を振る。その途端前立腺をグリグリと押し潰されて、ハボックは甘ったるい悲鳴を上げた。
「ヒィッ、ヒィィッ!!……アア、もう……ッッ!!」
 激しく突き上げられ掻き回されるたび戒められたままの楔に熱がたまっていく。吐き出したくてそれを赦されず、ハボックは泣きじゃくりながら訴えた。
「リボン、解いてェッ!イきたいッ!イかせてッ!!

「いいぞ、イって。そのままイってごらん」
 優しく頬を撫でてロイが言う。その言葉に目を見開いて、ハボックがふるふると首を振った。
「やだ……壊れちゃうッ、お願い、解いてッ!」
 ポロポロと涙を零しながらハボックが訴える。その幼く頼りなげな様にロイは興奮して一層激しく突き上げた。
「ヒャアアッ!!ヤダァッッ!!イきたくないッッ!!お願い、解いてェェッッ!!」
 込み上がる射精感にハボックが怯えて激しく首を振る。解いてくれと必死に訴えるハボックに、ロイはククッと笑って言った。
「じゃあ言ってごらん?痛くされるのが好きだって。尻をグチョグチョにされると堪らなく気持ちイイって」
「あ……」
「ほら、イきたいんだろう?思い切り吐き出してイきたいんだろう、ハボック?」
 耳元に囁かれてハボックが涙に濡れた目を見開く。何度も唾を飲み込んでハボックは震える唇を開いた。
「痛いの……好きっス、尻をグチョグチョされるの、き、気持ちイイッッ!!────ヒャアアッッ!!」
 言うと同時にガツンと抉られてハボックの唇から嬌声が迸る。
「言ったッ、言ったっス!アアッ!尻、気持ちイイッ!!もう、イかせてッ!!」
 ヒィヒィと泣きじゃくりながらハボックは身悶える。もう何がなんだか判らず、ただ躯を支配する強烈な快感にあられもない声を上げ続けた。
「たいさッ、たいさァッッ!!」
「ふふ……中にたっぷり出して欲しい?」
「出してッ、オレん中出してッ!──痛いッ、破裂しちゃうッ!解いて、イかせてよぅッ!」
 えっえっと子供のように泣きながらハボックが訴える。ロイは涙に濡れる目元をペロリと舐めて言った。
「じゃあ一緒にイこうか?中に出されながらイきたいんだろう?」
 そう聞かれてハボックがコクコクと頷く。
「それならそう口に出して言うんだ」
 その言葉に大きく目を見開いたハボックをロイは促すように軽く揺さぶった。ビクビクと震えてハボックはロイの腕を掴む。何度も口を開いては閉じたハボックは最後に大きく息を吸い込んで言葉を吐き出した。
「オレん中いっぱい出してッ!中に出されながらイきたいッッ!!」
 仮眠室に響き渡る大声でハボックが強請る。そんなハボックにニヤリと笑って、ロイはハボックの額にキスを落とした。
「イイ子だ」
 ロイはそう言うなりガツガツと激しく突き上げ始める。切れ切れの悲鳴を上げて身悶えるハボックの最奥をガツンと抉ると同時に、楔を戒めていたリボンを解いた。
「────ア」
 キチキチと締め付けていたリボンを振り解こうとするように楔が膨らんでいく。次の瞬間そそり立った楔からビュルビュルと熱が迸った。
「────ッッ!!!」
 ハボックは声もなく仰け反らせた躯をビクビクと震わせる。キュウキュウと締め付けてくる蕾に、ロイはハボックの躯の奥底へ熱を叩きつけた。
「ア……アア……」
 長い射精と躯の奥を焼く熱に目を見開いて背を大きく仰け反らせたハボックは、強すぎる快感に意識を手放した。


 バタバタと廊下を走る荒々しい足音に続いてバンッと小隊の詰め所の扉が開く。中にいたハボック隊の隊員達が驚いて顔を上げて、飛び込んできたマイクを不思議そうに見た。
「どうした、マイク?血相変えて」
「た……大変だ……隊長が……ッ」
「「えッ?!」」
 隊長という言葉に隊員達が弾かれたように立ち上がる。何があったと詰め寄ってくる仲間達を見回したマイクが、ガックリと膝をついた。
「昨日仮眠室で……マスタング大佐が隊長を……ッ」
「大佐が隊長を……?おい、まさか……?」
「────ヤられた……ッッ!!」
 うずくまるマイクが絞り出すように口にした言葉に部屋の中が凍り付く。次の瞬間、獣のような雄叫びが隊員達の口から迸った。
「そんな馬鹿なッッ!!」
「どうしてそんな事にッッ!!」
「レイプかッ?あのクソ大佐が上官であるのを笠に着て無理矢理ヤったのかッ?」
 ベンが叫んでマイクの肩を揺さぶる。だが、その言葉にマイクは力なく首を振った。
「いや……その時仮眠室で一部始終を聞いていた奴らが言うには同意の上だったらしい……」
「同意の上ッ?そんな馬鹿なッ!!」
 そんな事はあり得ないと部屋のあちこちから声が上がる。絶対無理矢理に違いないと隊員達が口々に言い合っていると、ガチャリと部屋の扉が開いた。
「────隊長」
「……あ、えっと……」
 一斉に見つめられて、ハボックが驚いたように口ごもる。照れたような笑みを浮かべるハボックの躯から滲み出る得も言われぬ色気に、部下達はゴクリと唾を飲み込んだ。
「今日の演習、悪いけどちょっと延期させてくれる?ちょっと、その……躯がしんどくて」
 困ったように笑ってハボックはそう言うと「じゃあ」と詰め所を出ていってしまう。その背を無言のまま見送った部下達の誰かがボソリと呟いた。
「マスタング大佐……殺す」
「────おお、そうだ、殺そう」
「そうだッ、よくも我らの隊長をッッ!!」
「絶対に赦さんッッ!!」
 ウオオッッと部下達が雄叫びを上げる。
「マスタング大佐を殺って我らの隊長を取り戻すんだッ!!」
 オオッッ!!と一斉に叫んで全員が拳を突き上げて、にっくきロイを倒す事を誓った。


「ヘェックショイッッ!!」
「大佐、風邪っスか?」
 サインを認めようとしたロイが大きなくしゃみをするのを見て、ハボックが目を瞠る。心配そうに見つめてくる空色に苦笑してロイは言った。
「いや、誰かが噂でもしてるんだろう」
「────大佐、モテますもんね」
「ハボック」
 ほんの少し拗ねたように言うハボックにロイがクスクスと笑う。唇を突き出して睨んでくる空色に、ロイは腕を伸ばした。
「私が好きなのはお前だけだと言っただろう」
「大佐」
「愛してるよ、ハボック」
 ロイは言ってハボックを引き寄せる。引き寄せられるまま近づいてきた唇に己のそれを重ねたロイは、ゾクリと背筋を駆け抜ける悪寒に眉をひそめた。
「寒気がする」
「やだな、気をつけてくださいね、大佐」
「お前が暖めてくれれば大丈夫だ」
「たいさっ」
 異様な悪寒を笑ってすませて、ロイは顔を赤らめるハボックにもう一度口づけていった。


2016/02/08


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


阿修羅さまからいただきました「ハボがロイがいない時にロイの机にチョコを名前も書かずに好きですとだけメッセージを書いて置いて。筆跡だけでロイはハボだとわかり、相思相愛だったと気が付き仮眠室で眠るハボくんに夜這いをかける。しかも目撃者ありで翌日に司令部全体に知れ渡り、ハボに好意持っている奴らに狙われるロイ」というネタでございました。最後の狙われるロイっていうのが中途半端になってしまった感じですが、がっつり書くと終わらなくなっちゃいそうだったので(苦笑)久しぶりにエロ頑張ってみましたがどうでしょう。お楽しみいただけたら嬉しいです。阿修羅さま、楽しいネタをありがとうございますv