| 一番苦手で一番大好き |
| 「あ、中佐っ?」 カチリとフックが上がる音にハボックは受話器に向かって勢い込んで話す。「おう」と短い返事が返るのに嬉しそうに目を細めてハボックは言った。 「来週、こっちに来る予定あるっスか?」 壁に掛かっているカレンダーを見つめて尋ねれば、ヒューズの声が聞こえた。 『ああ、そのつもりだぜ』 「ホントっスか?じゃあっ、バレンタイン一緒に過ごせる……?」 最後の方はちょっと躊躇うような自信なげな口調にヒューズが受話器の向こうで笑う気配がする。ちょっと悔しくて「もうっ」と唇を尖らせたハボックは、だが肯定の返事にすぐさま笑みを浮かべた。 「じゃあ、今年もチョコレート作って待ってるっスね!中佐が好きだって言ってくれたやつ!」 『お、そうか?そりゃ嬉しいな』 「ふふ、楽しみにしててくださいね」 『ああ。────おっと、会議の時間だ。悪いな、ハボック』 「あっ、すんません、オレの方こそ忙しいところに。じゃあ来週待ってるっスから!」 殆ど受話器を置きかけたヒューズの「またな」と言う声が遠くに聞こえたと思うと電話が切れる。ハボックはハァと息を吐き出して受話器をフックに戻した。 「よかった、バレンタイン、一緒にいられるんだっ」 よしっと拳を握り締めてハボックは小さく足を踏み鳴らす。 「中佐が好きなチョコ、頑張って作んなきゃ!帰りに材料買って帰ろう」 三年前のこと、ハボックはずっと好きだったヒューズに勇気を振り絞ってバレンタインにチョコを贈った。きっとあっさりフられてしまうだろうとギュッと目を閉じて返事を待つハボックの耳に聞こえてきたのは、ヒューズの「俺もお前のことがずっと好きだったんだ」と言う信じられないような言葉だった。その時ハボックがあげたチョコをヒューズはとても気に入ってくれて、それ以来ハボックはチョコが大好きだと言うヒューズに毎年同じチョコを手作りして贈っているのだった。 「今年は少し多めにあげようかな。中佐ってばいつもあっと言う間に食べちゃうし──おっと、演習の時間!」 旨い旨いと言いながら、ヒューズはあげたチョコをいつもあっと言う間に食べてしまう。ハボックはそうと決めると慌てて演習場へと向かった。 「ふぅ……」 チンと受話器を置いてヒューズはため息をつく。ドサリと椅子の背に体を預けて机の上のカレンダーを見た。 「今年もこの日が来たか」 ヒューズは14の数字を睨んで呟く。手を伸ばして数字をピシッと指先で弾いた。 「一体何処のどいつがバレンタインにチョコを贈るなんて決めやがったんだ。どうせ甘いもんならクッキーとかでもいいだろうが」 忌々しげに言ってヒューズは頭をガリガリと掻く。ぺしょんと机に懐いてため息をついた。 三年前のバレンタイン、ヒューズはハボックからチョコと一緒に想いを打ち明けられた。ずっと好きでなんとかして自分のものにしたいと想い続けていた相手から好きだと告げられて、すっかり舞い上がってしまったヒューズはハボックの手作りチョコを旨い旨いと食べた挙げ句、チョコが大好きなんだと言ってしまった。だが。 「チョコ……苦手なんだよなぁ」 大酒飲みでヘビースモーカーのヒューズだが、甘いものも結構好きだ。だがチョコレートだけは例外で今まで殆ど口にしたことはなかったのだ。バレンタインデー、貰ったチョコを旨いと言って食べるヒューズを見て、ハボックはヒューズがチョコを大好きなのだと思いこんでしまった。 「今更苦手ですとも言えねぇしなぁ……」 なによりちょっぴり頬を染めたハボックに差し出されたチョコを拒むなど考えられない。 『はい、中佐、チョコ……食べてくださいね』 にっこり笑うハボックの顔が思い浮かんで、ヒューズはだらしなく顔を弛めた。 「今年も一気食いで誤魔化すか」 時間をかけたところで苦手なものは変わらない。食べなくてはならないものなら一気に食べてしまった方が辛くないと、ヒューズは贈られたチョコを毎年一気に食べてしまっている。今年も同じ手で誤魔化そうと心に決めて、ヒューズは急いで会議に向かった。 「これは大佐、こっちは中尉。後はブレダ達と小隊の連中」 ハボックは出来上がったチョコを箱に詰めて綺麗にラッピングする。一際大きな箱を手に取ると、特別な想いを込めて作ったチョコを詰めていった。 「そんでこれは中佐の」 フフッと笑ってハボックは最後の一つを箱に入れる。ちょっと躊躇ってからチュッと投げキッスをチョコに送った。 「わあ、恥ずかしい、オレってばっ」 自分しかいないアパートのキッチンで、ハボックは一人照れまくる。それでも幸せそうに微笑んで、チョコを詰めた箱に空色のリボンをかけた。 「今年も旨いって食べてくれるかな……」 嬉しそうに笑って食べてくれるヒューズの顔を思い浮かべて、ハボックはリボンにチュッとキスをした。 「これ、お前らに。いつもありがとうな」 「俺達にこれをッ?!」 「感激ですッ!!」 「一生の宝物にしますッッ!!」 「家宝にして大事にしますッ!!」 「いや、食ってくれていいから」 チョコを渡せば感激して涙を流す部下達に苦笑してハボックは言う。全員に渡して日頃の感謝を伝えると、ここぞとばかりにまとわりついてくる部下達をなんとか去なしてハボックは小隊の詰め所を後にした。 「後は大佐と中佐。中佐はまだ来てないか……大佐は会議から戻ったかな」 手にした紙袋の中に残ったチョコの箱を見てハボックは呟く。真っ先に渡したい人がまだ来ていない事に小さくため息をつくと、ハボックは司令室に戻った。 「大佐ァ、ハボックっスけど」 間延びした声で言いながらノックと同時に扉を開ける。例によって返事を待たずに入ってくるハボックに眉をしかめたロイだったが、ハボックが手にしたチョコの包みを見て顔を輝かせた。 「チョコか!楽しみにしてたぞッ」 「チョコなんて山ほど貰ってるっしょ。はい、いつもありがとうございます」 「お前のチョコは特別だ。こんなに旨いチョコはなかなか売ってないぞ」 ちょっぴり呆れて言うハボックに、毎年段ボール箱に何箱もチョコを貰う男は頬を弛めてチョコを受け取る。早速包みを開けるとチョコを一粒摘みポンと口の中に放り込んだ。 「うん、やっぱり旨いっ!お前、軍人やめたら菓子屋になれ」 「そんな簡単に軍人やめる気ないんスけど」 ロイの言葉に苦笑してハボックは言う。それからほんの少し躊躇ってから尋ねた。 「あの……中佐、何時に着くかって連絡来てるっスか?」 「ヒューズか?ヒューズならそろそろ来るんじゃないか?」 ロイは次の一粒をどれにするか悩みながら答える。こっち、それともこっちと指をさまよわせて漸くチョコを摘むと口に入れた。 「ヒューズがどうかしたのか?」 「えっ?えっと、中佐にもチョコ渡そうと思って……」 ちょっぴり顔を赤らめてハボックが答える。「ふぅん」と頷いたロイはもぐもぐと口を動かしながら答えた。 「ああ、でもアイツはチョコ、苦手だぞ」 「────え?」 「アイツも私ほどではないがそこそこモテるからな。学生時代バレンタインっていうとチョコを貰ってたが、一つも食わずに全部私にくれてたからな」 「ウソ……」 ロイの言葉にハボックは信じられないと言うように目を見開く。 「で、でもっ、好みが変わったとかないんスかっ?昔は苦手だったけど、今は食べるようになったとかっ!」 「いや、相変わらず苦手だと思うぞ。この間セントラルで有名な洋菓子店のチョコを送ってくれと頼んだら、こんなものわざわざ取り寄せてまで食べる奴の気が知れんとか言ってたからな」 こんな旨いものの味が判らん奴の方が気が知れんがな、と言うロイをハボックは呆然として見つめた。 「ハボック?どうした?」 嬉しそうにチョコを選んでは食べていたロイは、ハボックの様子がおかしいことに気づいて不思議そうに尋ねる。引き攣った笑みを浮かべるハボックにロイは言った。 「どうせヒューズにチョコを渡したところで食わんだろうからな。感謝の気持ちだけ伝えておけ、チョコは私が貰っておいてやろう」 ハボックの気持ちなどまるで察せずニコニコと笑ってロイは手を差し出す。そんなロイにハボックはモゴモゴと言葉にならない言葉を口にすると執務室を飛び出した。 「おい、ハボック?」 驚いたロイの声が聞こえたが、ハボックは乱暴に扉を閉める。大きな音に驚いて尋ねる視線を向けてくるブレダ達を無視して、ハボックは司令室を足早に抜けると廊下へ出た。 (だっていっつもオレのチョコ、旨いって食べてたのに) たった今ロイの口から聞いた事実に混乱したままハボックは廊下をもの凄い勢いで歩いていく。角を曲がり目の前にあった階段をズンズンと上れば辿り着いた扉を開けて屋上に出た。ひんやりとした空気が体を包んで、ハボックはブルリと体を震わせる。ゆっくりと屋上を横切り手摺りから遠くの街並みを見つめた。 (嘘……ついてたんだ。ホントはチョコなんて大嫌いのくせに旨いとか言って。食べたフリして後で吐き出してたのかもしれない) そんな風に考えればヒューズのなにもかもが嘘に思えてくる。 (オレのこと好きだって言ったのも嘘だったのかも。オレみたいのが中佐のこと好きだなんて言うのが可笑しくて、気紛れに抱いたのかも。どうせ普段はセントラルとイーストシティで離れててなかなか会えないんだから他に彼女がいても) 「ッッ!!」 自分で考えた事にハボックは酷く傷ついてしまう。手摺りに掴まった手の甲に、ハボックは涙が溢れそうになった目元をギュッと押しつけた。 「よお、ロイ。元気してたか?」 ガチャリと開いた扉から顔を出した友人にロイは思い切り顔をしかめた。 「書類と会議がなければもっと元気だがな」 そう言うロイの机に山と積まれた書類を見てヒューズはクスリと笑う。ロイはフンと鼻を鳴らすと引き出しからチョコの箱を取り出した。 「でもまあ今日はこれがあるからな。ハボックの私への敬愛の印だ」 「あ、そのハボック少尉だけど、どこにいるか知らねぇか?」 「ああ、そう言えばお前にもチョコを渡すとかなんとか言ってたな」 「そうなのかっ?で?少尉はどこに?」 ロイの言葉にヒューズはパッと顔を輝かせる。そんなヒューズに「知らん」と冷たく返したロイは思い出して言った。 「そう言えばハボックの奴、お前がチョコ苦手だと知らなかったぞ。チョコを渡すというからお前はチョコが苦手だと言っておいた」 「えっ?!」 「お前にチョコを渡してもどうせ食わんから私が貰ってやると言ったんだがな、ハボックの奴飛び出していってしまってなぁ」 折角チョコが沢山食べられると思ったのに、とぼやくロイの言葉もヒューズの耳には入ってこない。冷汗をかいているヒューズをロイは不思議そうに見た。 「どうかしたのか?ヒューズ」 「なんでそんな余計なことを……ッ」 「はあ?なにが余計なことなんだ?」 「クソッ!」 「あっ、こらっ、ヒューズ!」 低く呻いたヒューズはもの凄い勢いで執務室を飛び出していく。バンッと大きな音を立ててしまった扉を見つめて、ロイは首を傾げた。 「ハボックといいヒューズといい、一体なんだと言うんだ?────まあ、私には関係ないか」 ロイは肩を竦めるとチョコを口に放り込んでホワンと笑みを浮かべた。 「やべぇ、バレちまった」 ヒューズは足早に廊下を歩きながら呟く。ハボックの姿を探してうろうろと歩き回ったヒューズは、屋上に続く階段を見つけて足を止めた。 「────」 一瞬迷って、だがすぐに足を向けると一段抜かしで上っていく。上った先の扉を開けたヒューズは、手摺りにもたれ掛かる長身を見つけて慌てて駆け寄った。 「ハボック!」 駆け寄りながら名を呼んだがハボックは振り向かない。あと数歩のところで立ち止まったヒューズはガリガリと頭を掻いた。 「あー、その〜だな、ハボック」 「中佐」 なんと説明しようかと口を開いたヒューズは、遮るように名を呼ばれて口を噤む。何を言われるかと身構えていればハボックが振り向いてヒューズを見た。 「嘘ついてたんスね。チョコ大好きだ、なんて」 「いやその、嘘つくつもりじゃなかったんだが」 「迷惑なら迷惑だって言えばいいじゃないっスか」 「別に迷惑だなんて思っちゃいねぇし!」 「それも嘘?」 「おい、ハボック」 なんだか雲行きが怪しくて、ヒューズは慌ててハボックに手を伸ばす。だが、ハボックは伸ばされた手を思い切り振り払った。 「本当は迷惑だったんしょ?チョコも────オレの気持ちも!」 「な……っ?何言ってんだ、お前っ」 「もういいっスッ!これまですみませんでしたッ!もう無理矢理チョコ食わなくてもオレのこと好きなフリしなくてもいいっスからッ!!」 「ハボックッ?!」 「────こんなものッッ!!」 ハボックは手にしたチョコの箱を思い切り地面に叩きつける。蓋が外れて散らばるチョコに唖然とするヒューズの脇をすり抜けて、ハボックは屋上から逃げ出した。 結局その日は司令室に戻らず小隊の詰め所やら射撃場で一日過ごした。机の上に書類が溜まっているかも知れないがそんなことは知ったこっちゃない。もしかしたらヒューズが探しに来てくれるかも知れないと期待していなかったといえば嘘になるが、ヒューズと顔を会わせる事もないまま一日が過ぎれば、やっぱりそう言うことかと思わざるを得なかった。 (結局ただの暇つぶし、気紛れだったんだ) 仕事を終えたハボックは賑わう通りを歩きながら思う。ヒューズがイーストシティに来ると言えばいそいそと片づけた部屋にヒューズを迎え入れ、甲斐甲斐しく食事の世話をし、夜ともなればベッドの中でヒューズにその身を任せていた。そんな自分をヒューズはどんな目で見ていたのだろう。 (なんて滑稽なんだろう) ヒューズも自分のことを好きだとばかり思っていた。でも本当は全くそんなことはなくて。 (チョコ……いっぱい気持ちを込めてたのに) 一粒一粒に込めたヒューズへの想い。きっとヒューズには嫌いなチョコの味と相まってその一粒一粒が重たく鬱陶しかったに違いなかった。 (中佐……) そう思えば悲しくて涙が零れそうになる。ハボックは激しく首を振ると手近の店に飛び込んで何も考えなくてすむようにと浴びるように酒を飲んだ。 浴びるように酒を飲んで、だがヒューズへの想いが消える訳でなく、むしろ飲めば飲むほどこれまでヒューズと過ごした時間が思い出されて、ハボックは痛む胸を抱えて通りを歩いていく。空を見上げれば冬の澄んだ夜空に月がぽっかりと浮かんでいた。その月を暫くぼんやりと見上げていたハボックは、またゆっくりと歩き出す。どこかに行ってしまいたくて何処にも行くところなどなくて、結局アパートへ帰ると錆びの浮いた階段をのろのろと上がったハボックは、自分の部屋の前に立っている人影に気づいて足を止めた。 「ハボック」 「なんでアンタがここにいるんスか?」 足音に気づいて顔を上げたヒューズを見てハボックが言う。じっと見つめてくる空色を見返したヒューズは持っていた袋の中から箱を取り出した。 「それは」 その箱がさっき自分が投げ捨てたヒューズにあげるつもりだったチョコの箱だと気づいて、ハボックは目を瞠る。そんなハボックを真っ直ぐに見つめてヒューズが大声を上げた。 「これが俺の気持ちだッッ!!」 ューズは言うなりチョコを摘んで口に放り込む。もぐもぐと噛んでゴクンと飲み込むと次から次へとチョコを食べていった。 「ちょ……っ?中佐っ?」 「お前が好きだッ!確かに俺はチョコが苦手だが、お前のチョコならいくらだって食べられるッ!!」 そう言いながらチョコを食べ続けるヒューズをハボックは目を丸くして見つめる。その時、あまりにチョコを頬張り過ぎたヒューズがゲホゲホと噎せるのを見て、慌ててヒューズに駆け寄った。 「なにやってんスかッ、そんなにいっぺんに食ったら鼻血が出ちまうっスよ!それにこれ、屋上にばらまいた奴……汚いっしょ!」 「鼻血が出ようが屋上にばらまいた奴だろうが、お前のチョコなら俺は食える!」 「中佐……」 きっぱりと言うヒューズをハボックは呆然として見つめる。ヒューズはハボックの腕を掴んで言った。 「チョコが大好きだなんて嘘言ったのは謝る。でも、お前の気持ちが迷惑だなんて思ったことは一度もない。俺はお前が好きだ、この気持ちに嘘はない!」 そう言って見つめてくる瞳の中に宿る強い想いにハボックは息を飲む。唇を噛みしめたハボックは震える声で尋ねた。 「じゃあ……オレの事本当に────?」 「好きに決まってんだろうがッ!」 「中佐……ッ!」 そう聞いたハボックの顔がくしゃくしゃと歪む。へなへなとしゃがみ込むハボックにヒューズはクスリと笑って手を伸ばした。 「好きだぜ、ハボック────愛してる」 「……オレもっ」 泣き出しそうなハボックにヒューズは噛みつくように口づける。忍び行ってきた舌に己のそれをきつく絡めとられて、ハボックは甘く鼻を鳴らした。 「ん……中佐、────ッ、ちょ……ッ、何してんスかッ!」 唇を離れたヒューズの唇が項を這い、その手に尻を揉まれてハボックは慌ててヒューズを押しやる。 「ここどこだと思ってんスかッ!」 「じゃあ中に入れろよ。でないとここで抱くぜ?」 「ッ!……アンタねぇ」 「こんな可愛い恋人を目の前にして何もシないなんて男じゃねぇだろ?それともここでヤるのがお望みか?」 「なわけねぇっしょ!」 空色の瞳に睨まれて、ヒューズはニヤリと笑った。ハボックはひとつため息をついてポケットから鍵を取り出す。鍵を開けようとして躊躇うハボックにヒューズが眉をひそめた。 「おい」 「……なんかここで鍵開けてアンタを部屋に入れたら、その……」 「なんだよ」 「────だ、抱いて欲しいって言ってるみたいじゃね?」 顔を真っ赤にしてボソボソと呟くハボックにヒューズは目を瞠る。次の瞬間プッと吹き出すヒューズを見て、ハボックが目を吊り上げた。 「なんスかッ!笑う事ねぇっしょ!」 「だってお前……ッ、今更ここでそんな事言うか?」 クックッと笑うヒューズをハボックが真っ赤な顔で睨む。何とか笑いを引っ込めて、ヒューズは手を伸ばしてハボックの紅く染まった頬を撫でた。 「俺はお前が欲しい。さっきからそう言ってんだぜ?お前は違うのか?」 「ッ」 ヒューズの言葉にハボックは目を見開く。頬を撫でる手から逃げるように背を向けると鍵を開けた。開いた扉からハボックは中に入るとヒューズを待たずにそのまま奥へと行ってしまう。そんなハボックにヒューズはクスリと笑って中に入り扉に鍵をかけた。ゆっくりと短い廊下を抜けてリビング兼ダイニングへ入れば、ハボックが部屋の真ん中に立ちすくんでいる。困ったように視線をさまよわせているハボックにヒューズは笑って手を伸ばした。 「ベッドに行かないのか?」 「えッ?いや、だってその……ッ」 シャイなハボックがベッドで自分を待つなんて事が出来ない事を知っていながらヒューズは尋ねる。ニヤリと笑ってヒューズはハボックの腕をグイと引いた。 「んじゃ、ここでヤっていいって事だよな」 「エッ?ちょ、ちょっと待……ッ、アッ!」 制止の言葉をしまいまで言わせず、ヒューズはハボックをソファーに押し倒す。大きく見開いた空色に笑ってヒューズはハボックの唇を奪った。 「んッ!んーッッ!!」 もがくハボックを押さえ込んで、ヒューズは深く口づける。ハボックの脚の間に体を割り込ませ、開いた上着の間から手を差し入れシャツ越しにハボックの体を弄った。 「アッ、や……ッ、待って、中────ッ」 「待てねぇ」 押し留めようとするハボックの言葉を短く遮ってヒューズは膝でハボックの股間を押し上げ、シャツの裾から差し入れた手で胸の飾りを摘む。グリグリと指でこねれば、ハボックの体が震えた。 「アッ!ヤダッ、灯り……ッ」 「これからヤるって判ってて点けたんだろ?明るいところでシたいってことだろうが」 「違……ッ、これはつい癖でッ」 夜、アパートに戻ったら灯りをつける日頃のくせでついスイッチを押してしまった。そもそも自分からベッドに行くのが恥ずかしかっただけで、ここで事になだれ込むつもりもなかったのだ。そう訴えようとした瞬間、膝でグリグリと股間を押し潰されてハボックは悲鳴を上げる。涙の滲む瞳でヒューズを睨めば、ヒューズは悪びれた様子もなく笑った。 「そんな目で見たって煽るばっかだっての」 「なに勝手なこと言って──、んんッ!」 詰る言葉を唇で塞がれて、ハボックはヒューズの胸を叩く。だが、ヒューズはそんな些細な抵抗などものともせずにハボックのボトムに手をかけると下着ごと引き下ろしてしまった。 「アッ!ヤだッ!」 灯りの下、下肢を剥き出しにされてハボックが慌てて身を捩ろうとする。だが、ヒューズは素早くハボックの脚を押し開き胸につくまで押し上げた。 「やだァッッ!」 頭を擡げ始めた楔とその奥の慎ましやかな蕾とを灯りの下に晒け出されて、ハボックは顔を真っ赤に染める。ヒューズは顔を股間に近づけるとペロリと楔の先端を舐めた。 「ヒャッ!」 その途端大人にしては色の薄い楔がクンと勢いを増す。ペロペロと舌で刺激すれば瞬く間に腹に着くほどそそり立ち先走りの蜜を垂れ流す楔に、ヒューズはクスクスと笑った。 「こっちは正直だな」 「やだッ、恥ずかし……ッッ!!」 ハボックは腕を交差させて紅く染まる顔を隠す。ヒューズは楔を伝って零れる蜜を舌先で辿ると、双丘の狭間で息づく蕾に舌を這わせた。 「やあッ!」 ぬめぬめと動き回る舌にハボックは何とか逃れようとしてもがく。だが、入口を這い回っていた舌先が中に潜り込めば、ただもう小刻みに身を震わせて喘いだ。 「あふ……ちゅうさァ……」 「欲しくなってきたか?」 甘ったるい声で呼ばれてヒューズがクスクスと笑う。股間から顔を上げると唾液に濡れた蕾を指先で捏ねた。 「もう少し我慢な」 ヒューズは言って指をグッと押し込む。ググーッと中へ押し込んでグチョグチョと掻き回した。 「アッ……んあッ!」 狭い肉筒を掻き回されてハボックは喉を仰け反らせて喘ぐ。張り詰めた楔からタラタラと零れる蜜が蕾を濡らしヒューズの指の動きを助けた。 「ふふ……物欲しそうに涎を垂らしやがって」 「い、言うなッ」 クスクスと笑うヒューズにハボックが真っ赤な顔で叫ぶ。両手で顔を隠してイヤイヤと首を振っていたが、指の間からヒューズを見上げて言った。 「も……挿れてッ」」 ハアハアと息を弾ませて強請るハボックをヒューズは楽しそうに見下ろす。蕾を嬲る指を引き抜き、手を伸ばして顔を隠すハボックの手首を掴んで引き剥がした。 「じゃあ自分で脚広げて」 そう言うヒューズをハボックは目を見開いて見上げたが、ゆっくりと両手を膝裏に宛がい脚を開いた。 「俺の事、好きか?ハボック」 「────好きっス」 「欲しい?」 判りきっているのに意地悪に聞いてくる男をハボックは恨めしげに睨む。一度目を逸らし、真っ直ぐにヒューズを見つめた。 「好き、欲しいっス。アンタはオレに挿れたくねぇの?」 「────挿れたいに決まってんだろッ」 チッと悔しそうに舌打ちするヒューズにハボックが笑う。ヒューズは手を伸ばすと箱の中に一粒残っていたチョコを摘んだ。 「好きだぜ、ハボック。俺の気持ち受け取れよ」 ニヤリと笑ってヒューズはハボックの蕾にチョコを宛がう。ハッとしたハボックが身を捩ろうとするのを押さえつけてグッとチョコを中に押し込んだ。 「ヤッ、中佐ッ!」 「挿れたい、挿れるぞ、ハボック」 「待……ッ、アッ!アアアッッ!!」 ヒューズはハボックの制止などお構いなしに押さえ込んだハボックの躯を一気に貫いた。 「ヒアアアアッッ!!」 ずぶずぶと押し入ってくる熱い塊にハボックの唇から悲鳴が迸る。入口にあったチョコを押し込みながらハボックの躯に己を沈めると、ヒューズはチョコを潰すように腰をグラインドさせた。 「アッアッ、嫌ァッ!」 ハボックの躯の奥で溶けたチョコの甘い匂いが部屋の中に漂う。嫌々と激しく首を振るハボックの脚を抱えなおして、ヒューズはガツガツと激しく腰を突き挿れた。 「ヒアアッッ!!アッ、アアーッ!!」 「ハボック、ハボックッッ!」 甘い香りが漂う部屋の中、ハボックの甘ったるい悲鳴とイヤラシい水音が響く。ガツンッと思い切り奥を抉られて、ハボックはびゅくりと熱を吐き出した。 「ヒャアアッッ!!」 「くぅッ、堪んねぇ……ッ」 キュウッと締め付けてくる蕾にヒューズが目を細める。気を遣ってビクビクと小刻みに震える躯をガンガンと突き上げ、熱くうねる内壁をグチョグチョと掻き回した。 「ヒィッ!ヒィィッッ!!い、やあッ!!」 達したばかりの躯を容赦なく攻め立てられてハボックが身悶える。ガクガクと震えながら締め付けてくる蕾を何度も強引に抜き差ししたヒューズは、最後にぎりぎりまで引き抜いた楔を思い切り最奥まで突き挿れた。 「ヒアアアアアッッ!!」 衝撃にハボックが再び熱を吐き出す。きつく締め付けてくる蕾に今度は逆らわず、ヒューズはハボックの躯の奥底に熱を叩きつけた。 「くぅぅ……ッッ!は……イイッッ!!」 熱く絡みついてくる肉壁に熱を叩きつける快感にヒューズは眉をしかめて呻く。小刻みに突き上げて、ヒューズはハボックの躯をギュッと抱き締めた。 「ハボック……ッ」 「ん……っ、んんッ」 荒い息を吐き出す唇をヒューズは乱暴に塞ぐ。逃げる舌を絡めとり深く口づければ、腕の中の躯が力なくもがいた。 「……ハボック」 長い口づけを終えて唇を離したヒューズは間近から見つめてハボックを呼ぶ。その声にゆっくりと開いた瞳がヒューズを恨めしげに見上げた。 「……ヒドイっス……チョコ入れるなんて……」 「いいだろ、俺の気持ちだって」 「オレがあげたチョコをっ」 「俺が食うよりこっちに食わせた方が楽しいだろ?大丈夫、後でちゃんと洗ってやるから」 クツクツと笑うヒューズをハボックがグイグイと押しやる。 「いいっス!自分でやるからッ!」 「挿れたのはオレなんだから最後まで責任もってやってやるよ」 「……アンタ、絶対遊ぶっしょ!」 眼鏡の奥の瞳が宿す不穏な光にハボックが顔をひきつらせる。 「絶対御免っス!!」 「愛してるぜ、ハボック」 ニヤリと笑ったヒューズにその後風呂場で散々啼かされたハボックは、来年からチョコを贈るのはやめようと心に決めたのだった。 2016/02/11 |
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ なおさまからいただきました「ヒュハボで、毎年チョコレートをあげていたハボックだったが、実はヒューズはチョコレートが苦手であると知って…」というネタでございました。エロやオチはお任せと言うことでしたのでこんな話に。苦手なチョコなら自分で食べるよりハボックに食べさせたいかなって(爆)こんなオチですみません(汗タイトルも上手く思いつかなくて……相変わらずタイトル苦手だぜ(苦)ともあれ、お楽しみ頂ければ嬉しいです!なおさま、大好きヒュハボネタをありがとうございましたvv |