Homemade chococake


 扉の向こうからチョコレートの香りが漂ってくる。甘い香りに誘われて扉をそっと押し開けば、まとわりつくような甘ったるい香りがグッと強くなった。
「たいさ……」
 その甘ったるい香りよりもっと甘く呼ばれて、ロイは声のした方を見る。そうすれば、そこには一糸纏わぬ生まれたままの姿をしたハボックがベッドに横たわっていた。
 いや、一糸纏わぬというのはある意味正しくないかもしれない。なぜならハボックはその体にチョコレートをかけていたからだ。ハボックはベッドに幾つも並べた瓶の中に手を突っ込むとチョコレートを掬い取る。そうして手のひらのチョコレートを己の腹にトロリとかけた。
「ねぇ、大佐……今日はバレンタインっスね……」
 ハボックはそう言いながらトロトロと腹にチョコレートをかけていく。チョコレートは滑らかな流れになってハボックの腹から下腹へと流れていった。
「オレ、大佐の為にとびきりのチョコレートあげたいんス……」
 ハボックはそう言ってロイを見つめる。躯をくねらせるようにして、ロイに向かって胸を突き出した。
「ほら……このホワイトチョコ、旨そうっしょ……?」
 そう言って突き出された胸の辺りには白いホワイトチョコが塗ってある。プクリと尖った胸の紅い頂がホワイトチョコにほんのり透けて、その旨そうな光景にロイはゴクリと喉を鳴らした。
「大佐、ホワイトチョコ好きっスか……?」
「もっ、勿論ッ!大好きだともッ!」
 聞かれてロイは鼻の下を伸ばして答える。ゆっくりとベッドに近づけば、ハボックが蕩けた瞳でロイを見上げた。
「ここには……スイートチョコレートがいいっスか?それとも、ビターチョコ……?」
 そう聞きながらハボックは長い脚をしどけなく開く。大きく開いた脚の付け根、もうすっかりとそそり立った楔をロイの目の前に晒した。
「そっ、そこはッ、ビッ、ビターチョコがいいと思うぞッ!!」
 尋ねる視線にロイは鼻を膨らませて答える。そうすれば、ハボックはうっとりと笑って、瓶の一つに手を差し入れた。
「これ……ビターチョコっス。きっと大佐がそう言うと思って」
 用意しておいてよかった、とハボックは笑ってチョコを手のひらで掬い取る。その手を股間の上に掲げると滑らかな光沢を放つチョコをとろんと楔の上に垂らした。
「あん……ッ」
 そそり立った楔の先端にチョコが垂れて、ハボックは感じ入った声を零して喉を仰け反らせる。楔をココア色に染めながら垂れていったチョコレートが双丘の狭間へと流れて、奥まった蕾をも濡らした。ハボックはチョコレートに濡れた下肢を惜しげもなくロイに晒す。チョコレートに濡れた手を股間に伸ばすと、人差し指と中指で蕾を割り開いた。そして。
「たいさ……オレのこと、食って……?」
 妖艶な笑みを浮かべて囁くハボックに。
「ハボックぅぅッッ!!いっ、いたっいただきまッス!!」
 鼻の穴を膨らませてズボンを脱ぎ捨てたロイは、ハボックに向かって思いっきりダイブした。


「ハボ────、うわあああッッ」
 ガバッと飛び起きたロイはベッドから転がり落ちる。ドタンバタンと床に体を叩きつけたロイはよろよろとベッドに手を伸ばした。
「アイタタタタ……」
 ホークアイが見ていたなら鼻で冷たく笑われそうな無様な格好で、ロイはベッドに縋るようにして立ち上がる。打ちつけた腰をさすりながら辺りを見回せば、そこは自宅の寝室だった。
「夢……か」
 どうやらたった今まで見ていたハボックは夢だったらしい。そう気づけばロイの唇からは大きなため息が零れた。
「惜しかったなぁぁ……ッ」
 ハアアというため息と共にロイは唸る。目を閉じれば己の躯にチョコレートをかけながらロイを見上げる濡れた空色が思い浮かんで、ロイはだらしなく鼻の下を伸ばした。
「常々可愛いとは思っていたが、あんなに色っぽい面もあるとは……ッ」
 ベッドの上でハボックは、いつもとっても恥ずかしがってなかなかロイの思うように乱れてはくれない。それはそれでとっても可愛いと思っているのだが、あんな風に色っぽく自分を誘ってくれるハボックも見られるものなら見てみたいと思った。
「今年のバレンタイン……アレをやってはくれんだろうか」
『たいさ……オレのこと、食って……?』
 そう思った瞬間、躯にチョコレートをかけながら誘うハボックの姿が思い浮かんで、ロイは慌てて手のひらで鼻を覆う。
「そうだ、なんとしてもバレンタインにハボックのチョコレートがけを食うんだッ!」
 あんな色っぽいハボック、夢の中だけなんて勿体ない。是非ともこの目で拝んでそして。
「ハボックッ!今年もハッピーバレンタインだッッ!!」
 両方の鼻の穴から鼻血を垂らしながら、ロイはグッと拳を握り締めて誓ったのだった。


(それにしてもどうやってハボックにチョコレートを塗らせよう……)
 執務室の中、ロイは広げた書類の上に肘をついて考える。幾ら恋人同士とは言え、全身にチョコを塗らせてくれなど流石に簡単には言えなかった。
(うーん……。チョコレートを入れたバケツを持ってハボックの前で転ぶか……?)
 そんなことを考えてみたものの、それでは服の上から被るだけで躯に塗るのとは違うと言う事に気づく。うーん、うーんと真剣に悩んでいると、扉をノックする音がしてハボックが執務室に入ってきた。
「大佐、これにサイン────って、どうかしたんスか?」
 難しい顔をしているロイに気づいて、ハボックが首を傾げて尋ねる。なにも答えずじっと見つめてくるロイに、ハボックは困ったように視線を俯けた。
「……大佐?」
 その鋭い眼差しで見つめないでほしい、そう思いながらハボックは上目遣いにロイを見る。一体なにを悩んでいるのだろうと見つめれば、ロイがおもむろに口を開いた。
「ハボック、チョコレートは好きか?」
「へ?えっと、そうっスね。甘いものはあんまり食べないっスけど、疲れたときなんかチョコを一つ二つ食べたりはしますね」
 嗜好品というよりエネルギー補給の為という感じだ。ハボックがそう言えば、ロイがフムと考える仕草をする。一体なんなんだろうとハボックが見つめる先でロイが言った。
「ハボック、今日の夜の約束だが、うちに来ないか?」
「えっ?大佐の家に?」
 今日はバレンタインデー。二人で一緒に食事に行く約束をしていた。忙しい中、ロイに渡すチョコレートも一生懸命選んでちゃんと用意した。一緒に食事をしてチョコレートを渡せれば、もうそれで十分と思っていたのだが、ロイの家で二人きりともなれば言うことなしに幸せな時間を過ごせるだろうとハボックがほんのり目尻を染めた時、ロイの声が聞こえた。
「チョコレート風呂に入らんか?」
「は?チョコレート────」
「風呂だ。疲れがとれて気持ちいいぞ」
 そう言ってにっこりと笑うロイをハボックはまじまじと見つめる。それから遠慮がちに言った。
「いや、折角っスけど、チョコレート風呂は遠慮します」
「えっ?なんでだッ?」
「だって……チョコレートっしょ?疲れがとれる前に甘い匂いで気持ち悪くなりそう」
「疲れがとれるんだぞッ!いいと思わんかッ?」
「ふつうの風呂で十分っス」
 必死に言い募ってみるがハボックは苦笑するばかりだ。何とか説得しようとロイが尚も言おうとしたとき、ノックの音が聞こえてホークアイが入ってきた。
「────お取り込み中でしたか?」
「や、もう済んだっスから」
 小首を傾げるホークアイにハボックはそう答えて執務室をでていってしまう。追いかけようと腰を持ち上げたものの、ホークアイにジロリと見られてロイはすごすごと尻を椅子に戻した。
「大佐、今は勤務時間中です」
「わ、判っているともッ」
 冷たく見つめてくる鳶色に頬をひきつらせて、ロイは差し出された書類にガリガリとサインを認めた。


「チョコレート風呂はダメか……」
 ホークアイが書類を抱えて出ていくと、ロイは再び机に頬杖をついて考える。
「恋人同士、一緒に風呂なら怪しまれないし忽ち全身チョコ塗れでいいと思ったんだが」
 そもそもチョコレート風呂という発想自体が怪しいということに全く思い至らずロイは呟いた。
「うーん、ハボックにチョコを塗る方法……なにかないか?」
 書類には全く見向きもせずロイはウンウンと唸っていたが、パッと顔を上げるとポンと手を叩く。
「よし、やっぱりこれだろう、これしかないッ」
 ロイは浮かんだ考えに満足げな笑みを浮かべた。


「ああ、疲れた……」
「お疲れさまです、ハボック少尉」
 疲れた表情で演習から戻ってきたハボックにフュリーが労いの言葉をかける。それにハボックが「ありがとう」と返した時、執務室の扉が開いてロイが顔を出した。
「ハボック」
「あ、はい」
 呼んですぐ引っ込んでしまったロイに、ハボックは慌てて立ち上がり執務室に向かう。ノックは省略して中に入れば、ロイがにっこりと笑って迎えた。
「演習ご苦労だったな。疲れたろう」
「ええ、まあ……。今日は色々盛り込んだし」
 ここのところ演習が遅れ気味だったこともあり、今日は普段より内容の多い演習プログラムだった。ハボックを始め体力自慢の部下たちも流石に疲労の色は隠せず、白い顔に疲れを滲ませるハボックにロイが言った。
「それでな、ハボック。疲れがとれるいい方法があるんだ」
「へぇ?どんな方法なんスか?」
「チョコレートマッサージ」
「────は?」
「とっても疲れに効くそうだ。今夜家にきたら私が直々にやってやろう」
 ニコニコと笑って言うロイをハボックはじっと見つめる。それから困ったように視線を逸らして言った。
「折角っスけど、それは遠慮したいっス」
「えっ?とってもよく効くんだぞっ。疲れてるんだろう?筋肉痛にもよく効くしッ」
「そりゃあ疲れてるっスけど、チョコレートマッサージはちょっと……」
 そう言って苦笑するハボックにロイが尚も言い募ろうとした時、コンコンとノックの音がしてフュリーが顔を出した。
「お話中のところ申し訳ありません。ハボック少尉、急ぎの電話が入ってます」
「あ、ホント?すみません、大佐、失礼します」
「あっ」
 言ってハボックはフュリーの横をすり抜けて出ていってしまう。ジロリと扉の所に立つフュリーを睨めば、「すみませんでしたっ」と叫んだフュリーが執務室から逃げ出した。


「チョコレートマッサージも駄目か……」
 マッサージならチョコをかけるだけでなく直接触って塗りまくれて一石二鳥と思ったのだが、ハボックにはすげなく断られてしまった。
「くそーっ、もう時間がないというのにッ」
 ハボックと二人楽しく食事もいいだろう。その後うまくすればエッチにも持ち込めるかもしれない。だが、あの夢のハボックを知ってしまえば、やはり恋人たちの祭典バレンタインはハボックのチョコレートがけを是非とも食したかった。
「何かいい方法はないものか……」
 うんうんと唸って知恵を絞り出そうとしていると、執務室の扉を叩く音がした。
「失礼します。コーヒーお持ちしたっス」
「ああ、ありがとう」
 コンコンというノックに続いて入ってきたハボックがロイの前にカップを置く。相変わらず難しい顔をして何か考えている様子のロイに、ハボックが言った。
「なにか問題でもあったんスか?」
 さっきからずっと悩んでるみたいだしと言うハボックをロイはじっと見つめる。そうすれば困ったようにハボックが顔を赤らめて俯いた。
「大佐……真剣な顔もカッコいいっスね────って、すんませんっ、オレッ!」
 大佐、真剣に考えてるのにッと申し訳なさそうに言うハボックにロイは笑みを浮かべる。
「いや、構わんよ。お前がそんな風に言ってくれるなんて」
 嬉しい、と最高の笑みを浮かべて見せれば益々顔を赤らめるハボックの頬をロイは撫でた。そうされて恥ずかしそうに目を伏せたハボックが上目遣いにロイを見る。少し躊躇って、それから意を決したように言った。
「あ、あの……大佐。さっき今夜大佐んちに呼んでくれたっしょ?あれなんスけど……大佐んちでケーキ作っちゃダメっスか?」
「えっ?」
 突然の申し出にロイは目を見開く。驚いて見つめてくる黒曜石にハボックは恥ずかしそうに言った。
「チョコレート風呂やチョコレートマッサージはちょっと遠慮したいっスけど、甘いケーキ食べるのも疲れがとれるんじゃないかなって。大佐、難しいこといっぱい考えてて、そういうのオレは手伝えないっスけどケーキ作るくらいなら出来るし、甘いもん食べて少しでも疲れがとれたらって……。今日はバレンタインだし、チョコレートケーキ作りにいっちゃダメっスか?」
「ハボック」
 目元を染めてそんな風に言うハボックにロイは目を見開く。思わず膨らみそうになる鼻を必死にこらえて、ロイは極上の笑みを浮かべた。
「ありがとう、嬉しいよ、ハボック。それじゃあ作ってくれるか?チョコレートケーキ」
「っ、はいッ!じゃあ、材料と道具持って大佐んち行きますねッ」
 ロイの言葉に頬を染めたハボックが顔を輝かせる。そんなハボックを引き寄せて、ロイは軽く唇を合わせた。
「待ってるよ、ハボック」
「……は、はい……」
 間近で囁いて唇をぺろりと舐めればハボックが真っ赤になって頷く。それじゃあ後でと執務室を出ていくハボックを手を振って見送ったロイは、パタンと扉が閉まると振っていた手をグッと握り締めた。
(よっしゃあッ!)
 心の中で叫んでロイは握り締めた拳を突き上げる。
(ケーキを作りたいだとッ!それはもうどう考えても“オレを食って”状態ッ)
 ロイの頭の中にはスポンジではなく己の躯にチョコを塗るハボックの姿しか思い浮かばない。
「あれは正夢だったんだな……」
 ロイは両手を頬に当てでろーんと鼻の下を伸ばす。
「ああ、今夜が楽しみだッッ!!」
 どうやってハボックをデコレーションしようかと、ロイは仕事そっちのけで考えていたのだった。


「こんばんは、大佐」
 チャイムの音に玄関に飛び出せば、ほんのりと頬を染めたハボックが立っている。中へ通すとハボックは袋の中から小さな箱を取り出した。
「これ……最初はこれ渡すつもりで。ケーキ作ることにしたからどうしようかと思ったんスけど、これも一生懸命選んだから」
 食べてくれますか?と恥ずかしそうに差し出すハボックに、ロイは伸びそうになる鼻の下を必死に引き締めて笑みを浮かべる。
「勿論もらうよ。ありがとう、ハボック」
 そう言えばハボックも嬉しそうに笑った。
「じゃあ、作りますね」
「ああ、頼むよ。何でも好きに使ってくれ」
「はい」
 ロイの言葉にハボックは頷いてキッチンへと入っていった。


 暫く待てばスポンジが焼けるいい匂いが漂ってくる。ロイはいそいそとキッチンに入ると焼けたスポンジをオーブンから取り出しているハボックに言った。
「どうだ?上手くいってるか?」
「大佐」
 ロイの声にハボックが振り向いてにっこりと笑う。スポンジを濡らして絞ったふきんに包むと粗熱をとるために網の上に置いた。
「スポンジが冷めたらチョコ塗りますんで」
 ハボックはそう言いながら刻んだチョコレートをボウルに入れて湯煎にかける。木べらでかき混ぜてチョコレートを溶かすハボックの手元を覗き込みながら、ロイは言った。
「今日のチョコはスイートチョコレートか?」
「あ、ビターチョコの方がよかったっスか?」
「ホワイトチョコなんかもいいかなと思ったんだが」
 ロイがそう言えばハボックが眉を下げる。
「すんません、今日はホワイトガナッシュは考えてなくて……好みを聞けばよかったっスね」
「ああ、いや!スイートチョコも好きだから」
 ごめんなさいとしょんぼりするハボックにロイは慌てて言ってにっこりと笑った。
「もしかしてザッハトルテか?」
「あ、はい。バレンタインだからチョコチョコしいのがいいかなって」
 恥ずかしそうにそんな風に言うハボックの可愛らしさにロイは荒くなる鼻息を必死にこらえた。
(乳首にホワイトチョコがないのは残念だがいっぺんにやってしまってはつまらんからなッ)
 ロイはそんなことを思いながらハボックを見つめる。湯煎にかけられたチョコレートはよいとろけ具合でハボックにかけるには丁度良さそうだった。
(問題はどうやってハボックの服を脱がせるかだ……)
 美味しそうなチョコレート。スポンジなんかにかけられては勿体ない。そのためには一刻も早くハボックの服を脱がせなければとロイはキッチンの中をぐるりと見回した。
「作ってもらうばかりじゃ悪いから、私が片づけをしよう」
「えっ?いいっスよ、そんな。オレやりますから」
 ロイの申し出にハボックが慌てて言う。
「いくらバレンタインと言ってもお前にばかりやらせるのは申し訳ないからな」
「大佐……ありがとうございます」
 優しく笑ってそう言われて、ハボックは嬉しそうに笑った。
(ううッ、なんて可愛いんだッ、ハボック!今すぐチョコを塗ってやりたいぞッ!)
 ロイは荒くなりそうな鼻息を大きく息を吐いてこらえると、カウンターに置かれた小麦粉の袋に手を伸ばす。一度取り上げたそれからさりげなくパッと手を離した。
「あっ」
「えっ?うわッ!」
 ロイの声に振り向いたハボックは、胸にぶつかるようにして目の前に落ちた小麦粉の袋から舞い上がる粉に、声を上げて顔を背けた。
「すまん、ハボック、手が滑ってしまった!」
 ロイは大声で言って足下に落ちた袋を取り上げようとする。だが、持ち上げようとした袋を再び取り落として、更にハボックに粉をかけてしまった。
「ケホッ、ケホケホッ」
 粉を吸い込んでしまったのだろう、ハボックが激しく咳き込む。そんなハボックに手を差し出してロイは言った。
「粉塗れだ、すまん」
「大丈、夫……うわ、真っ白」
 申し訳なさそうに言うロイにハボックは笑って答える。パタパタと粉をはたくハボックにロイが言った。
「このままと言うわけにもいかんだろう。シャワーを浴びておいで」
「え?でも、ケーキ途中だし」
「そんな粉塗れで作ったらケーキも粉塗れになってしまうだろう?」
「そうっスね……」
 確かにロイの言うとおり、このままケーキを作ってもきっとチョコの上に小麦粉が散ってしまうだろう。
「すみません、じゃあシャワー借りるっスね」
「ああ、こっちは片づけておくから。そうだ、すまんがゲストルームのシャワーを使ってくれるか?風呂場はシャワーの調子が悪くてね。湯温が安定しないんだ。タオルやバスローブは置いてあるのを使ってくれればいい」
「はい」
 ロイの言葉に一瞬目を瞠ったものの、ハボックは頷いてキッチンを出ていく。ロイはハボックが出ていった後、散らかったキッチンはそのままにそっと足音を忍ばせてハボックを追った。ゲストルームの扉に耳を押し当て中の様子を伺う。奥のシャワールームから水音がしているのを確かめて、ロイは扉を開けると足早に中に入った。ハボックがシャワーを浴びているその手前、タオルやバスローブが置かれた棚の前に来ると中身を全部出してしまう。それからキッチンにとって返すと湯煎したチョコをいそいそと運んでベッドの陰に置いた。そうして準備万端整えて、ロイはリビングに行くとソファーに腰掛けて待った。
「ハボックは恥ずかしがり屋だからな。タオルもバスローブもないとなればきっとベッドに潜り込むだろう。そうしたら」
 フッフッフッとロイは怪しげな笑みを零す。まだかまだかと待っていれば、ゲストルームからハボックが困りきってロイを呼ぶ声が聞こえた。
「大佐ァ、タオルもバスローブもないんスけどッ」
「ああ、今行く!」
 ロイは答えてスキップしそうな軽い足取りでゲストルームへと行く。扉を開けて中に入れば、思った通りハボックはブランケットにくるまっていた。
「す、すんません。濡れちゃうと思ったんスけどっ。タオル、ちゃんと確かめてからシャワー浴びなかったから……」
「いや、私の方こそ悪かった。てっきり棚にあると思ってたから」
 そう言いながらロイはベッドに片膝をかける。ブランケットにくるまるハボックに笑みを浮かべて手を伸ばした。
「えっと……大佐、あのっ、服貸してください。ケーキ作っちゃいますから」
 ベッドに上がってくるロイを見つめてハボックが言う。だが、それに答えずブランケットに手を伸ばしてくるロイにハボックは目を大きく見開いた。
「ハボック……」
 ロイは大きく見開く空色を見つめながらブランケットを掴むと強引に剥ぎ取ってしまう。小さく悲鳴を上げて手足を縮こまらせるハボックの肩を掴み、ベッドに押し倒した。
「大……っ、んんッ!」
 ロイはそのままのし掛かるようにしてハボックの唇を塞ぐ。もがくハボックを押さえつけて耳朶を甘く噛んだ。
「たいさっ、ケーキ……アッ」
 ケーキ作らなきゃと訴えるハボックの肌にキスを降らせ、手を這わせてその自由を奪っていく。ビクビクと震えて濡れた瞳で見上げてくるハボックにロイはうっとりと笑った。
「ケーキも食べたいが、私はお前を食べたいよ……」
「大佐……」
「バレンタインデーなんだ、チョコより甘いお前を食わせてくれ……」
 いいだろう?と囁きと共に耳に入り込んでくる濡れた舌先に、ハボックは身を仰け反らせて喘ぐ。ほんの少し不服そうな顔をしながらも、ロイが望むならとおずおずと腕をロイに伸ばした。
「たいさ」
「食ってもいいか……?」
 そう囁けば顔を赤らめたハボックがコクコクと頷く。その紅く染まった頬を撫でて、ロイはハボックの瞳を覗き込むようにして言った。
「言ってくれないか?“オレを食って”って……」
「えっ?」
 そんな事を言われてハボックが目を見開く。ハボックが嫌とか無理とか言い出すより先に、ロイが言った。
「今日はバレンタインデーだろう?だから……」
 甘く強請るロイをハボックが無言のまま見つめる。ロイはハボックを間近から見つめて笑みを浮かべた。
「ハボック……?」
 促すように呼ばれてハボックがピクリと震える。ハボックは大きく見開いた瞳でロイを見つめていたが、その視線を困ったようにさまよわせ、それからもう一度ロイを見た。
「その……たいさ……」
「ん?」
 にっこりとこれまでにないほど優しい笑みをロイは浮かべる。そうすれば、ハボックがコクンと唾を飲み込んで言った。
「オ、オレのこと……く、く、食って……ッ」
 首まで真っ赤になりながらもロイの望みを叶えようと、ハボックが言う。言って羞恥のあまり交差させた腕で顔を隠してしまったハボックを見下ろして、ロイは興奮に鼻を大きく膨らませた。
(よしっ、ここで一気にチョコレートだッッ!!)
 ロイはハボックが見ていないうちにベッドの陰に潜ませておいたチョコレートを取り出す。片手でチョコを掬うと、ハボックの胸の上にとろりと垂らした。
「ヒャッ?!」
 胸に垂れてきたチョコの感触に、ハボックがビクッと震えて腕をおろす。そうすれば自分がケーキ用にと用意したチョコを垂らすロイの姿を見て、驚愕に目を見開いた。
「な……ッ、なにしてんスかッ?!」
「食ってくれと言ったじゃないか」
「そ、それはっ、言いましたけどッ」
 だからと言ってどうしてチョコをかけるんだと声を張り上げるハボックにロイはにんまりと笑う。
「バレンタインデーだからな。私はチョコもお前も味わいたいんだ……」
 いいだろう?と囁いてロイは胸に垂らしたチョコを掌で伸ばす。チョコに濡れた指先で胸の頂を摘んでクリクリとこねた。
「アッ!」
「チョコとお前と……両方食べさせてくれ……」
「たい……っ、たいさ……ッ」
 幾ら好きなロイのおねだりと言えど流石に躊躇われるのだろう。なかなか「うん」と言わないハボックに、ロイは焦れてチョコに塗れた乳首をパクリと食べた。
「ひゃんッ」
 ロイは口に含んだ乳首を舌でねぶり吸い付き甘く噛む。顔を上げるとハボックの顔を覗き込みうっとり笑った。
「旨い……もっと食いたい……」
「あ……」
 低く囁く声にハボックが目を見開く。低い声に縛られたように身動き出来なくなったハボックに笑みを浮かべて、ロイはチョコを掬うとハボックの腹に垂らした。
「んぁ……ッ」
 たらりとチョコが流れる感触にハボックがビクンと震える。たっぷりと垂らしたチョコはハボックの腹から零れて金色の繁みを濡らし、頭をもたげ始めた楔を濡らした。
「やあ……んッ」
「ふふ……旨そうだ」
 ロイは楽しそうに言って腹に垂らしたチョコを舐める。そこからチョコの流れを辿るように舌を這わせて、楔を濡らすチョコをペロペロと舐めた。
「ああ、んッ」
 甘い刺激にハボックの楔がクンと勢いを増す。その先端から零れる先走りの蜜がチョコレートと混ざりあったのを、ロイはねっとりと舐めた。
「ん……いい味だ。お前味のチョコだな……」
「馬鹿……ッ」
 こんな恥ずかしいことをされて感じてしまっている事に、ハボックは羞恥のあまり息が止まりそうになる。イヤイヤと首を振るハボックの脚を押し上げるように開いて、ロイはそそり立つ楔に更にチョコを垂らした。
「ハア……ッッ」
 直接チョコが垂れる刺激にハボックが喉を仰け反らせて喘ぐ。ビクビクと震えるハボックの脚を大きく開いて、ロイはチョコに塗れた楔を咥えた。
「ひゃうッ」
 じゅぶじゅぶとロイは楔を唇で擦る。チョコの甘さと滲み出る蜜の苦さが合わさって、独特の味が口中に広がった。
「あふ……ああ……ッ」
 直接的な刺激に、ハボックは股間に顔を埋めるロイの髪を掴んで喘ぐ。ハアハアと息を弾ませ無意識にシーツを蹴るハボックが射精が近いと見て、ロイは咥えていた楔から子を上げた。
「あ……」
 切なげに濡れた瞳で見上げてくるハボックにロイは笑みを浮かべる。ベッドサイドの引き出しから細い紐を取り出すと、射精寸前まで追い上げたハボックの楔の根元をギチギチと縛ってしまった。
「あ……?なんで……ッ?」
 絶頂直前で射精を禁じられて、ハボックは苦しさに顔を歪める。泣きそうな顔で見上げてくるハボックにロイは言った。
「ハボック……、今度は自分でデコレーションしてごらん」
「……え?」
「私に美味しいケーキを作ってくれる筈だったろう?ほら、チョコでデコレーションして、私に食わせてくれ……」
 ロイは興奮と期待に伸びそうになる鼻の下を引き締めながら妖艶に微笑んでみせる。涙ぐんだ目を見開いて見上げてくるハボックの手にチョコが入ったボウルを押しつけた。
「私に最高のチョコレートを食わせてくれ……」
 そう囁いてロイはハボックの唇をぺろりと舐める。ピクリと震えるハボックにロイは促すように頷いた。
「あ……」
 見つめてくる黒曜石の強さに操られるように、ハボックはボウルの中に手を浸す。チョコレートを掬いとって己の腹に垂らした。
「あ……ッ」
 ピクンと震えるハボックの腹をチョコがとろとろと流れていく。脇腹に流れていくチョコを、ロイは顔を近づけその流れに逆らうように舐め上げて腹を舌で辿ると、臍の窪みに溜まったチョコを舌先で舐めた。
「アアッ」
 臍を舐める舌の動きにハボックが喉を仰け反らせる。ハアハアと息を弾ませるハボックを下から見上げて、ロイは言った。
「もっとだ、ハボック……」
 そう促されてコクリと唾を飲み込んだハボックは再びチョコを掬いとる。根元をきつく戒められてそそり立った自身を見開いた目で見つめると、その先端にチョコを垂らした。
「んあ……ッ」
 とろんと垂れたチョコの刺激にハボックが甘い声を上げる。チョコは楔の先端から広がるように垂れて、そそり立った楔にいく筋ものチョコの線が出来た。
「いい感じにデコレーション出来たな」
「や……っ、言わないで……ッ」
 クスリと笑うロイに、ハボックが真っ赤になって震える。そんな可愛らしい表情を見つめながら、ロイはチョコに塗れた楔に顔を近づけた。ぺろりと先端を舐め、零れるチョコの筋を辿るように舌を這わせる。ねっとりと舐め上げチュウチュウと吸いつけば、ハボックが胸を仰け反らせて喘いだ。
「ああ……嫌ァ……ッ」
 ロイの舌の動きにあわせるようにピクピクと楔が震えその嵩を増す。そうすれば根元に巻き付けられた紐が食い込んで、ハボックは射精を禁じられる苦痛に涙を零した。
「もう解いてェ……ッ」
 はらはらと涙を零してハボックは訴える。ロイは楔を濡らすチョコを綺麗に舐め取って言った。
「まだだ、ハボック……まだココをデコレーションしていないだろう?」
「ヒッ」
 言うと同時にロイの指が奥まった蕾に触れて、ハボックはビクンと躯を震わせる。やわやわと蕾を嬲られ、ハボックはふるふると首を振った。
「やだ、そんなとこ……ッ」
 そんなところにチョコを垂らすなんて考えられない。恥ずかしくて恥ずかしくて「もう、やめて」と訴えるハボックに、ロイは悲しげに眉を寄せた。
「私にチョコをプレゼントしてくれるんじゃなかったのか?甘いチョコを食わせてくれて疲れを癒してくれるんじゃなかったのか?」
「そ、それは……ッ」
 確かにロイにチョコを食べさせたいと思ったが、それはスポンジにチョコを塗ったチョコレートケーキで、決して己の躯ではなかったはずだ。それでも黒曜石の瞳でじっと見つめられれば、抗うことも出来ずにハボックはボウルに手を浸した。だが、流石に今度はすぐにはチョコをかけることが出来ず、ハボックは視線をさまよわせる。そうすればのし掛かってきたロイがハボックに優しく口づけた。
「好きだ、ハボック……お前を食わせてくれ……」
「あ……」
 熱く囁かれて、ハボックは目を見開く。間近から黒曜石の瞳に見つめられて、ハボックは小さく頷いた。
(よっしゃあッッ!)
 優しい笑みを浮かべながらロイは内心拳を突き上げる。そのままむしゃぶりつきたい気持ちをこらえて身を離せば、ハボックがおずおずと脚を開いた。それからボウルからチョコを掬う。双丘の狭間、ひっそりと息づく蕾にとろりとチョコを垂らした。
「あん……ッ」
 チョコが蕾を濡らせば、ハボックの唇から甘い声が零れる。とろとろとチョコをたっぷり蕾にかけたハボックは、顔を真っ赤に染めながらチョコに濡れた指で蕾を少しだけ開いて見せた。
「食って……たいさ……」
「ハボックッッ!!!」
 真っ赤な顔でチョコに濡れた蕾を指で開いて見せるハボックに、流石にもう我慢の限界を超える。鼻を大きく膨らませたロイはババッと服を脱ぎ捨て、ハボックの躯に飛びついた。
「アッ」
 長い脚を抱え込みグイと大きく開く。そうしてチョコに塗れた蕾に己を押し当て、一気に貫いた。
「ヒアアアアアッッ!!」
 ズブズブと押し入ってくる楔にハボックの唇から悲鳴が上がる。本能的に逃げようとする躯を引き戻して、ロイはガツガツと突き挿れた。
「ヒィッ!ヒィィッッ!!」
「ハボック……っ、ハボックッッ」
 激しく突き入れれば蕾を濡らしたチョコが泡だってハボックの白い尻を汚す。強くなる甘い香りに興奮を煽られて、ロイは一層激しく突き上げた。
「アアッ!!」
 熱い粘膜をこすられ前立腺を潰されて、ハボックが嬌声をあげる。激しい攻めに忽ち追い上げられたものの、根元を戒める紐に射精を封じられてハボックは泣きじゃくった。
「イかせて……ッ!いやあッッ!!い、や……ッッ!!」
 悲鳴を上げたハボックが背を仰け反らせてガクガクと震える。激しく攻め立ててくるロイの腕に爪を立てて訴えた。
「たいさァッ!イきたい、イかせて……ッ」
 ハアハア喘いで涙ながらに訴えるハボックを容赦なく突き上げながら、ロイはハボックに囁いた。
「ハボック……来年もこうしてチョコを食わせてくれるか?……来年も再来年もずっと……ッ」
「食わせるっス!……オレの、ことっ、食っていいからッ!」
 イかせてくれと懇願するハボックにロイはにんまりと笑う。
「約束だ」
 と、囁いた耳朶を甘く噛んで、ロイは楔を戒める紐を解いた。それと同時にガツンと思い切り奥を抉る。最奥に突き挿れると低く呻いて熱を吐き出した。
「あ。────アアアアアッッ」
 躯の奥底を焼く熱にハボックは目を見開いたハボックは、漸く赦された解放に熱を迸らせた。
「あ……ああ……」
 あまりに強い解放の快感に、ハボックは目を剥いてビクビクと躯を震わせる。長い射精のあと、がっくりとベッドに沈み込む躯をロイはギュッと抱き締めた。
「ハボック……ッ」
 熱く名を呼んで深く唇を合わせる。長い口づけの後、漸く唇を離すとぐったりとしたハボックの頬を優しく撫でた。
「チョコレート……旨かったよ、ハボック……」
「……たいさ」
 そんな風に言われて、ハボックは羞恥のあまりロイの胸に顔を埋める。ロイにチョコをあげたかったがこんなつもりは全くなくて、想像もしないバレンタインにハボックはロイの顔が見られなかった。その上。
「来年から毎年こんなチョコが食べられるなんて……嬉しいよ、ハボック」
「えっ?……あ」
 射精出来ない苦痛に耐えかねてとんでもない約束をしてしまったことに気づいて、ハボックはギクリとする。なんとかなかった事に出来ないかと慌てるハボックに、ロイは楽しそうに言った。
「その前にホワイトデーがあるな!お返しはたっぷりしてやるから楽しみにしておいてくれ。いやいや、それよりもまだ食い足りないな……ハボック」
 そう言ってチョコを掬いとるロイに。
(もしかしてオレ……とんでもない人とつきあってるんじゃ……)
 今更ながらに気づいたハボックだった。


2014/02/14


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

なおさまからいただきましたv
「チョコレートを躯に塗りつけながら「俺を食べて、大佐…」と妖艶に迫ってくるハボックの夢をみたロイがなんとかその夢を現実にさせようと色々奮闘する話。エロエロしいハボックをv」……です!
いやあ、思ったよりも大佐に奮闘して貰えなかったというか、エロエロしいハボックの方に気が入ってしまったというか……(苦笑)その割にエロエロしさが足りない気もするのですが(苦)取りあえず精一杯エロエロしくしてみました!後は皆さまの想像力で補填して頂くと言う事で(コラ)
なおさま、エロエロしいリクをありがとうございましたvv