| バレンタフマン |
| 「こんにちは、いつもありがとうございます!」 ドアベルの音に答えて扉を開ければ、週に一度乳酸飲料のセットを届けにくる販売員の女性が立っている。ハボックはニコッと笑って財布を取り出すと女性に向かって言った。 「ご苦労さま。寒いから大変だね」 「今日はお天気いいからまだ楽ですよぉ」 女性は言いながら手にしたセットをハボックに渡す。それから肩にかけた大きな保冷バッグを探って言った。 「こちらいつものセットです。あと今、バレンタインセールでこちらのドリンク剤にこのチョコつけて三百センズでお分けしてるんです。いかがですかッ?」 「え?ドリンク剤にチョコ?」 正直あまりそのドリンク剤は好きではなかったし、小粒チョコも量産品で特別なものではない。いらないと言ってしまってもよかったのだが、寒い中バイクで配達に回っている女性を見ていると無碍に断るのも悪い気がしてハボックは言った。 「んー、じゃあ一つ貰うよ」 「ありがとうございますッ!全部で1500センズになります」 言われた料金を支払うと女性は「また来週参ります」とにこやかに言って去っていく。ハボックは笑顔で答えて扉を閉めるとため息をついた。 「また余計なもの買っちゃった」 いらないならいらないと言ってしまえばいいものを、何故だかどうしても断りきれない。ロイのようにすっぱりきっぱり断れれば無駄な買い物も減るだろうに。そもそもこの乳酸飲料も最初にセールスに来た時断りきれずに買うことになってしまったものだ。 「まあ、いいや。大佐に飲んで貰おう」 ハボックがあげると言えばゴミでも欲しがるロイの事だ。好き嫌いはともかく変なものではないのだからきっと飲んでくれるだろう。ハボックはそう考えて手にしたドリンク剤を冷蔵庫に入れたのだった。 「明日はいよいよバレンタインだっ」 執務室の机の上に置かれた小さなカレンダーを見てロイは呟く。グリグリと14という数字に描かれた赤い丸を見て、ロイはにへらと笑った。 ひと月ほど前、ロイは念願叶ってハボックと恋人同士になった。最初は本気にしなかった部下を口説きに口説きまくってようやくオトしたのだ。 『いいんスか?オレ、男っスよ?』 男なんて嫌いだったはずだろう?と言う長身の部下をロイはギュッと抱き締めてその耳元に囁いた。 『お前がいいんだ、ハボック。お前が好きなんだ』 そう言ったロイに。 『……オレもずっと好きだったんス』 目尻を染めて答えたハボックは最高に可愛いとロイは思った。 「あの時のハボックは可愛かったな……」 机に両肘をついた手の上に顎を載せてロイは呟く。たまらずキスをしたロイを真っ赤になって押し返してきたハボックの潤んだ空色を思い出せば、思わず膨らむ鼻の穴を押さえてロイは言った。 「両想いになって初めてのイベントだからなっ。明日こそは絶対ハボックの全部を私のものにするぞッ!」 思いがけず口説き落とすのに時間がかかってしまったため、クリスマスもニューイヤーも一緒に過ごせなかった。まだキス止まりの恋人の心だけでなく全てをものにするにはバレンタインはうってつけのイベントに違いない。恥ずかしがってキス以上の事をさせてくれないハボックも、バレンタインならきっと全てを投げ出してくる筈だ。 「待っていろ、ハボック!明日こそ全てをこの手にッ!」 ロイはムンと拳を握り締めると気合いを入れるためにその手を頭上高く突き上げたのだった。 「バレンタインか……」 ランチを食べた帰り道、通り沿いの店を飾るバレンタインのデコレーションを見てハボックが呟く。並んで歩いていたブレダがそれを聞き止めて言った。 「なんだよ、チョコをくれたらいいなって思う相手でもいるのか?」 誰だよ、と小突いてくるブレダにハボックは苦笑する。 「そんなんじゃないって」 ハボックはそう答えて視線を戻した。 「今年もどうせ大佐の一人勝ちだろ?俺たちなんて貰える当てもないのに」 ブツブツと文句を言うブレダにハボックが「ははは」と笑う。ブレダと言葉を交わしながらハボックは気持ち半分をここにいない男に向けていた。 (大佐、チョコ欲しがるだろうな……) 明日の夜はロイと食事をすることになっている。 『お前のために最高の席を設けたから』 そう言って魅力的な笑みを浮かべたロイを思い出して、ハボックは顔を赤らめた。 (大佐がモテるのって当たり前だよなぁ) つきあい始めてまだひと月ばかり。互いに忙しい身であるにもかかわらず、ロイはこまめにデートに誘ってくれた。デートができない時も、僅かな時間を二人のために割いてくれる。それはハボックにとってとても居心地のいい時間で、いつまでもそうしていたいと思わせるものだった。 (……ケーキ作ろう。オレのありったけの気持ち込めて) 日頃恥ずかしくてなかなかロイのように気持ちを表に現せない分、ケーキに込めて贈りたい。そうすればきっとロイも喜んでくれるだろう。 「ブレダ、先戻ってて。オレちょっとそこで買い物してくる」 「おう」 仕事が済んだら一刻も早く帰ってケーキを作りたい。ハボックはブレダに手を振るとちょうど通りかかった食材店に入っていった。 「保冷剤!たしか保冷剤あったよな」 バレンタイン当日、ハボックは司令部に行く支度をしながらそう言う。上着のボタンを留めながら冷凍庫を探り保冷剤を見つけだした。 「あとはケーキ、と」 雑貨屋で買ったケーキ用の箱をテーブルに置き、冷蔵庫を開ける。ケーキを取り出そうとしたハボックは、先日断りきれずに買ってしまったドリンク剤が入ったままになっているのに気づいた。 「そういや忘れてた。これも一緒に持っていこう」 ハボックはそう言ってケーキの箱と一緒にドリンク剤も袋に放り込んだのだった。 「おはよーっす」 「おはようございます、ハボック少尉」 司令室の扉を開ければすぐにフュリーの声が飛び出してくる。童顔の曹長ににっこりと笑いかけてハボックは言った。 「大佐、来てる?」 「はい、今日はもの凄く早くいらしたみたいです」 「へぇ」 いつもギリギリになってから飛び込んでくることが多いのに珍しいと、ハボックは目を見開く。そんなに急ぎの書類があったろうかと思いながら、ハボックは執務室の扉を叩いた。 「おはようございます、大佐」 そう声をかければ書類を書いていたロイが顔を上げて微笑む。 「おはよう、ハボック」 その爽やかな笑顔にハボックはドキリとして俯いた。 (やっぱカッコいい、大佐) 「今日は七時に予約を取ってあるから。それでいいか?」 「あっ、はいっ、大丈夫っス!」 聞かれてハボックは慌てて顔を上げて答える。見つめてくる黒い瞳と目が合えばますますドキドキして視線をさまよわせるハボックに、ロイはクスリと笑って言った。 「ハボック、それは?」 「えっ、あ……その、大佐に」 ハボックはそう言いながら手にした袋からケーキの箱を取り出す。目の前に置かれた包みを開ければ現れたおいしそうなチョコレートケーキにロイは目を見開いた。 「今日、バレンタインデーだから。オレが作ったんス。大佐が普段食べてるケーキほど旨くないかもしれないっスけど」 「ハボック」 赤い顔で俯いていたハボックはロイを見て言う。 「今夜でもよかったんスけど、オレが一番最初に大佐にあげたかったから」 毎年バレンタインデーにはそれこそ段ボールに何箱もチョコを貰うロイだ。それにいちいち嫉妬していてはキリがないと思ってはいても、せめてロイにチョコを渡す一番最初の人間でありたい。そう言って見つめてくる空色の瞳にロイは嬉しそうに微笑んだ。 「ありがとう、ハボック。とても嬉しいよ」 「大佐……」 喜ぶ言葉を返されて、ハボックの顔がいっそう赤くなる。ロイは手を伸ばして赤くなった頬に触れると言った。 「好きだよ、ハボック……」 そう囁いて唇を寄せてくるロイからハボックは慌てて体を離す。そのまま執務室から飛び出そうとして袋の中に残っているドリンク剤に気づいて取り出した。 「あ、あと大佐、よかったらこれ飲んでください」 そう言ってハボックは机にドリンク剤を置くとにっこりと笑う。 「今夜、楽しみにしてますね」 じゃあ、と執務室から出ていくハボックをロイはポカンとして見ていたが、やがてゆっくりと机に置かれたドリンク剤に目を移した。 「これは……強壮剤?わざわざ強壮剤を渡して」 『今夜、楽しみにしてますね』 そう言ったハボックの声が頭に浮かんでロイはドリンク剤をガシッと握り締めた。 「お前の気持ちはよく判った!!楽しみにしていろ、ハボックっっ!!」 ロイはそう叫んで手にしたドリンク剤を掲げたのだった。 「急がないと遅れちゃうッ!」 なんとか定時過ぎに仕事を終えて、家に飛んで帰ってきたハボックは軍服を脱ぎ捨てると用意してあったシャツに手を通す。ロイのように上等のスーツは持っていないが、今日のために新調したシャツとボトムを身につけ、お気に入りの革のジャケットを羽織るとハボックはアパートを飛び出した。階段を駆け下りもうすっかり暗くなった通りを走っていく。長い脚をフルに活用して約束の店まで来ると立ち止まって息を整えながら店の入口を見上げた。 「……高そうな店」 自分なりに身なりは整えて来たつもりだったがやはり場違いではないだろうか。ハボックが入るのを躊躇っていると店の扉が開いてロイが顔を出した。 「なんだ、遅いから心配したぞ」 「大佐」 さほど遅れたとも思えないがそう言われてハボックは首を竦める。ロイは腕を伸ばしてそんなハボックを引き寄せると言った。 「待ち遠しくて仕方なかったからな。ほんの少しでも待っているのは嫌なんだ」 「……ごめんなさい」 そんな風に言うロイに申し訳ないことをしたと思うと同時に心がほんわりと暖かくなる。嬉しそうに笑うハボックを見て、ロイは伸びそうになる鼻の下を必死に引き締めた。 (可愛いっ!なんて可愛いんだっ!そのくせ私に強壮剤を贈る大胆さも持ち合わせているなんてッ!) 正直食事などすっ飛ばしてベッドに直行したい。 「行こう、ハボック。旨い食事が待っているぞ」 食事よりハボックの方がよほど食べたいと思いながら、ロイはハボックを促して店の中へと入っていった。 「すっごい旨かったっス」 食後のコーヒーを飲みながらハボックが言う。食事中に飲んだワインにうっすらと目尻を染めるハボックをロイはうっとりと見つめた。 「この後だが、ハボック。よかったら私の家にこないか?」 「えっ、大佐の家にっスか?」 「せっかく貰ったお前のケーキ、一緒に食べたいと思ったんだが」 極上の笑みを浮かべてそう言われれば、ハボックに断る術などない。 「じゃあ、ちょっとだけお邪魔します」 そう言って笑うハボックに、 (今夜は帰さないぞッ!!) 心に誓うロイだった。 「お邪魔します」 ロイが開けた扉をくぐりながらハボックは呟く。送迎で玄関先まで来たことは何度もあったが、家の中にまで入るのは初めてだった。 「さすが大佐……。きちんと片づいてる」 男の独り暮らしであるにもかかわらず、きちんと片づいて手入れの行き届いた部屋の様子にハボックはため息をつく。ずっと狭い己のアパートはもっと雑然としているのにとひたすら感心するハボックにロイは苦笑した。 「週に一回ハウスキーパーを頼んでいるからね。今夜はお前を招待しようと思ってたから昨日は特別丁寧に掃除してもらったし」 リ ビングだけでなく、浴室も寝室もピカピカだ。ハボックを手に入れるための準備は万端だとロイはにっこりと笑った。 「さあ、ケーキを食べようか」 「あ、キッチン借りてよければオレがお茶の用意するっスよ?」 「すまんな」 そう言うロイに笑って頷いて、ハボックはキッチンでお茶の用意をする。自分の為にハボックがキッチンに立っていると思うだけで、ロイは最高に幸せだった。 「おっと、のんびりしてる場合じゃない」 ロイはそう呟いてポケットからドリンク剤のボトルを取り出す。キュッと蓋をひねると、腰に手を当てククーッと一気に飲み干した。 「これで準備オッケーだ」 ロイがそう言ったとき、ハボックがキッチンから出てきた。 「大佐、用意出来たっスよ」 こっちでいいんスか?と聞くハボックに頷けば、ハボックがケーキとお茶の用意を載せたトレイをリビングに持ってくる。テーブルにトレイの上のものを並べてハボックはナイフを手に取った。 「切ってしまうのが勿体ないくらいだな」 「大佐……」 綺麗に飾られたケーキを見てロイが言う。ハボックは嬉しそうに目を細めて笑うと言った。 「切りますね」 「ああ」 ロイが頷くのを見てハボックはケーキを切り分ける。互いの前にケーキを載せた皿を置くとハボックはロイを見て笑った。 「ハッピーバレンタイン、大佐」 「ハッピーバレンタイン、ハボック」 そう言い合えばそれだけでハボックは心が満たされるように思う。ロイがケーキを口にするのをハボックがドキドキしながら見つめていると、にっこりと笑ってロイが言った。 「旨い。しつこくなくて口の中で蕩けるようだ。今まで食べたケーキの中で一番旨いよ、ハボック」 「……ありがとうございます」 半分はお世辞かもしれないがそれでもそう言われればめちゃくちゃ嬉しくて、ハボックは顔を赤くしながらロイを見て笑う。その子供のような表情にカーッと頭に血が上ったロイは、乱暴な仕草で立ち上がるとテーブルを回ってハボックの隣に腰を下ろした。 「たいさ?」 突然傍に来たロイをハボックは不思議そうに見つめる。その表情にすら煽られて、ロイはハボックの肩をガシッと掴んだ。 「ハボックっっ!!」 さすがに今度ばかりは鼻の穴が膨らむのを押さえきれないまま、ロイはハボックに食いつくように口づける。いつもの優しいキスとは違う貪るようなそれに、ハボックは驚きに目を見開いてロイを押し返した。 「ンンッ!!ん───ッッ!!」 これまでならそうやって押し返せばすぐに離してくれたロイだったが、今夜は離してくれるどころか更に深く唇を合わせ圧し掛かってくる。気がつけばソファーに押し倒されていてハボックは目を丸くしてロイを見上げた。 「たいさ……?」 「可愛いよ、ハボック……」 ロイはそう囁いてハボックの耳元に舌を這わせる。チュッときつく吸い上げられ、シャツの上から体をまさぐられてハボックはビクリ震えた。 「な……ちょっ、やっ、待って、大佐ッ」 「……なんだ?」 愛撫の手を止められてロイは不服そうにハボックを見下ろす。大きく見開いた目でロイを見上げてハボックは言った。 「な、なにするんスかッ?!」 「なにって、この体勢ですることなど決まってるだろう?」 ロイはそう言って愛撫を再開しようとする。その手を必死に押さえてハボックは言った。 「決まってるって、どうしていきなりっ?」 キスから一気に最後まで行こうとしているらしいロイに、ハボックが慌てて声を上げる。ロイはムッと眉を顰めて言った。 「どうしてって、お前だってシたかったんだろう?」 「オレっ、そんな事ひとことも言ってないっス!」 ロイを押し返しながら叫ぶハボックにロイが言う。 「だってお前、私に強壮剤を渡して“今夜楽しみにしてますね”ってにっこり笑っただろうが」 「強壮剤?」 「これだ」 不思議そうな顔をするハボックにロイはもう一本残っていたボトルをポケットから取り出す。自分は飲まないからという理由だけでロイに渡したドリンク剤のボトルを見てハボックは目を丸くした。 「それ……」 「さっき早速一本飲んだぞ。ほら、もう準備万端だ」 そう言って下肢を押しつけられてハボックは悲鳴を上げる。圧し掛かってくるロイをめちゃくちゃに押し返してハボックは叫んだ。 「違うッ!そういう意味じゃないっス!オレはただ純粋に一緒に過ごすのを楽しみにしてるって……」 「好きな者同士愛し合って結ばれるのは、純粋に一緒に過ごすという事ではないのか?」 不意に真剣な声で尋ねられてハボックは目を見開く。ハボックはまっすぐに見下ろしてくる黒い瞳に返す言葉を見つけられず、ロイを見つめた。 「ハボック……お前が欲しいんだ……」 熱く囁く声に逆らうことも拒むことも出来ず、ハボックはロイの背に手を回した。 柔らかいキスがどんどんと深くなっていく。巧みなキスに半ば意識を飛ばしているうちにハボックは着ていた服を全て剥ぎ取られていた。 「たい、さ……ッ」 煌々とした灯りの下、生まれたままの姿を晒されてハボックは羞恥に身を縮める。そうすればロイがハボックの背を優しく撫でて言った。 「見せてくれ、ハボック。お前の全部を……」 「でっ、でもっ」 「愛してるんだ、ハボック」 そう囁く男にハボックは息を飲む。ギュッと目を瞑るとおずおずと手足の力を抜いた。ロイは少し体を離すとリビングの灯りに照らされたハボックの体を見下ろす。均整のとれた鍛えられた体にロイはゴクリと喉を鳴らすと鼻の穴を膨らませた。 「綺麗だよ、ハボック」 熱のこもった声にハボックはビクリと震える。目を瞑ったままふるふると首を振って言った。 「あんま見ないでっ、たいさ…ッ」 恥ずかしい、と羞恥に白い肌を染めるハボックがロイは可愛くて堪らない。ロイは手早く服を脱ぎ捨てるとハボックの体をギュッと抱き締めた。 「……ッッ!!」 直接肌が触れる感触にハボックが大きく震える。ロイはそんなハボックに構わず白い肌に手を這わせた。 「たい……たいさっ」 「大丈夫、私に任せて……」 怯えるハボックを宥めながらロイはハボックの体に口づける。きつく吸い上げる度白い肌に紅い花びらが散るのを、ロイはうっとりと見つめた。 「綺麗だ、ハボック……」 「うそっ」 愛情を込めて囁く言葉にそんな風に返してくるハボックにロイはクスリと笑うとハボックの長い脚を押し開く。愛撫に立ち上がり始めた楔をそっと手で包み込んだ。 「ヒッ」 直接感じる部分を握られてハボックの体が大きく跳ねる。ゆっくりと扱き出せば楔はたちまち堅くそそり立ち、先端から密を零し始めた。 「や……ヤアっ!」 ふるふると首を振るハボックの顔を見つめながらロイは愛撫の手を早めていく。荒い息を零しながらハボックはロイに言った。 「だめ…ッ、出ちゃうッ」 汚しちゃう、と必死に耐えようとするハボックを見つめていたロイは、体をずらすとハボックの脚を押し開いて楔を唇に含む。生暖かい感触に包まれて、ハボックはギョッとして目を見開いた。 「な……ヤダぁっ!!」 視線を落としてロイがしていることを見たハボックは悲鳴を上げる。なんとかロイを押し返そうとするが、沸き上がる快感に力が入らずハボックは甘い泣き声をあげた。 「たいさ、いやあッ」 泣きじゃくる声にロイは咥えた楔を強く吸い上げる。そうすればハボックが大きく体を震わせて熱を吐き出した。 「アッ、アア───ッッ!!」 高い悲鳴を上げてハボックは背を弓なりに反らせる。びくんびくんと大きく震えながらロイの口中に熱を吐き出したハボックはがっくりとソファーに沈み込んだ。 「は……ああ……」 荒く息を弾ませてぼんやりと宙を見つめるハボックの顔をロイは覗き込んで微笑む。 「可愛いよ、ハボック……」 そう言ったロイは自分の指をしゃぶって濡らすとハボックの脚の間に手を差し込んだ。 「今度は私の番だ……」 ロイはまだ快感に朦朧としているハボックに囁くと、唾液に塗れた指を蕾に突き入れた。 「……ッッ?!ヒッ!!」 ビクッと体を跳ね上げて身を捩るハボックを優しく押さえ込んでロイは言う。 「大丈夫だ、私を信じて力を抜いて、ハボック」 「たい、たいさ…っ」 あらぬところに入り込んだ指にハボックが涙に濡れた目を見開いた。ロイは食いしばる唇にチュッチュッとキスをしながら言った。 「愛してるよ、ハボック」 そう言いながらロイは沈める指を増やしていく。クチュクチュとかき回す指の違和感に息を飲むハボックを宥め賺して蕾を解すと、ロイは指を引き抜いてハボックの脚を抱えあげた。 「たいさ……?」 大きく目を見開いて見つめてくるハボックにロイは優しく笑いかける。 「一つになろうな、ハボック」 そう囁くロイを見上げたハボックは、落とした視線の先にそそり立つ巨大な楔を見つけて悲鳴を上げた。 「無理ッ!!そんなの入らねぇっス!!」 「ちゃんと解したから大丈夫だ、ハボック!!」 「無理っス!!お願い、今日は勘弁してっ、大佐ッ!!」 涙を零してそう哀願するハボックをロイはじっと見つめる。赦してくれるかと期待した瞬間、ロイはニヤリと笑って言った。 「無理だ。お前がくれた強壮剤のおかげでもうパンパンだ。諦めろ、ハボック」 「そんな……ッ、待って、たい───」 逃げる間もなく蕾に巨大な楔が押し当てられる。次の瞬間ヌプ、と割り入ってきた楔にハボックは目を見開いた。 「…ッ、ヒッ……ヒアアアアアッッ!!」 悲鳴を上げて逃げをうつ体を引き戻してロイは容赦なく突き入れる。激しい突き上げに切れ切れの悲鳴を上げるハボックをロイは激しく揺さぶった。 「ハボック……ハボックッッ」 「アヒィっ!!ヒーッ!!」 ぼろぼろと涙を零すハボックにロイはどんどん煽られてしまう。ガツンと突き上げればハボックが背を仰け反らせて喘いだ。 「たい……たいさ…っ」 「愛してる、ハボック…ッ」 犯されて体に走るのが痛みなのか快感なのかハボックには判らない。それでもロイの言葉に嘘は見えず、ハボックはロイに必死にしがみついた。 「……ッ?…や、おっきくな…っ」 そうすればググッと嵩を増す楔にハボックが目を見開く。狭い肉筒を乱暴に蹂躙されて悶えるハボックの表情にロイは噛みつくように口づけると同時に思い切り奥を抉った。 「ヒアアアアッッ!!」 背を仰け反らせたハボックは体の中を濡らす熱い飛沫に目を見開く。声もなくびくびくと体を震わせて、ハボックはフッと意識を失った。 「───ック、ハボック」 呼ぶ声にハボックはゆっくりと目を開く。気を失っていたのは時間にしてそんなに長い事ではなかったのだろう。自分を見下ろす黒い瞳にふわりと笑ったハボックは、まだ自分の中に入ったままの楔に気づいてギクリと身を強張らせた。 「たい、さっ、も、抜いて…ッ」 強引に受け入れさせられた体は軋むようだ。まだ快感を得るほどには男同士のセックスに慣れていないハボックは、そう言ってロイから体を離そうとした。だが。 「すまん、ハボック。お前がくれたアレ、相当効き目が強そうだ」 「……え?」 すまなそうに言うロイの楔が自分の中でムクムクと頭をもたげるのを感じて、ハボックは顔をひきつらせる。 「無理……死んじゃう、たいさ…っ」 一度受け入れるだけでいっぱいいっぱいだった。これ以上なんて絶対無理だ。 「大丈夫、今度はもう少しゆっくりしてやるから」 そう言ってゆっくりと動き出す男に。 (もう絶対何を勧められても買うもんかッ) 堅く心に誓ったハボックだった。 2010/02/14 |
バレンタインネタ、ロイハボ版です。うちでは隔週でヤクルトさんが届けに来るんですが、先日「バレンタイン企画でタフマン二本にチョコつけてお分けしてるんですがいかがですか?」って勧められましてね。その時は何も考えずに「飲みつけないのでいりません」とお断りしたのですが、後になって「バレンタインにタフマンって……ッッ」って思わず(苦笑)そんなわけでこんな話になりました。本当はもっとがっつりエロにしたかったんですがちょっと時間切れ(苦笑)若干物足りない気もいたしますが、少しでもお楽しみいただければ嬉しいですv |