海に降る雨  Havoc×Roy


「あーあ…」
何度目になるかわからないため息をついて、ハボックは窓辺に寄りかかった。窓の外ではしとしとと雨が降り注いでいる。
「もういい加減にしろ。」
ロイがコーヒーを飲みながら呆れた声で言った。
「だって、せっかく海に来たのに。」
以前、出張の途中でたまたま行き合わせた海にもう一度行きたいと騒いだハボックが、久しぶりに非番が重なったロイ
を連れ出したのが昨日の午後。怪しい空模様にも予報を信じて出てきたのに、天気予報は大きく外れて今朝は朝から
雨が降り続いていた。
「まあ、のんびり出来るんだからいいだろう?」
ロイが言えば、
「のんびりするだけなら家でも出来るっス。」
とハボックが不満げに返した。
「ため息をつくと幸せが逃げるぞ。」
「オレ、今不幸ですもん。」
「お前な…。」
何を言っても浮上してこないハボックにロイは苦笑する。確かにこの間来たときは、青い空を溶かし込んだ青い海が
穏やかに波を打ち寄せて、とても綺麗だった。青い空の下、青い海の中で青い瞳に見つめられてかわしたキスを不意に
思い出して、ロイはどきりとする。そっとハボックを窺えば、その唇は情けなくぶら下がった煙草に占領されていた。
それが何となく面白くなくて、ロイはつと立ち上がるとハボックに近づいていく。窓辺に懐いてうな垂れていたハボックは
自分を見下ろすロイをふにゃりと仰ぎ見て、視線で問いかけた。そんなハボックの様子が耳を伏せて尻尾を垂れた犬の
ように見えて、ロイは思わずくすりと笑った。
「大佐?」
ピコリと煙草を跳ね上げて言うハボックの口から煙草を取り上げて、ロイはその唇に軽く口付けた。そうして目を瞠る
ハボックの唇に煙草を戻すと、また椅子に戻っていく。何事もなかったように平然とコーヒーを飲むロイを見つめて、
ハボックは目をパチクリとさせた。
窓の外に目をやれば、相変わらず雨は降り注いでいる。だが、雨を見つめるハボックの瞳は穏やかな光を湛えて
幸せそうに微笑んでいた。


2006/7/23


旅行先の電車の中でチマチマ書いたヤツです。手書きで書くとたくさん書いたつもりでもやっぱ短いですね。同じタイトルでロイハボ版も書いたので、出来ればそちらもお読みいただきたいなーとか思ってます。コンセプトはロイからチューです。