the first sunrise
「たーいーさーっ、起きて!早く起きないとお日さま昇っちゃいますよ!」
ハボックの声にロイはブランケットから目だけを出す。
「もうちょっとだけ…」
そう呟くロイにハボックは目を眇めると容赦なくブランケットを引き剥がした。
「日の出は待ってくれません。大体アンタが初日の出みたいって言ったんでしょう。」
ハボックはそう言いながらロイの体を引き起こすとパジャマのボタンを外していく。ボーッとベッドに座り込んだロイを
手早く着替えさせるとそのほっぺたをぺちぺちと叩いた。
「ほら、目覚まして。それともお姫様抱っこで連れて行って欲しいんスか?」
ハボックの言葉にロイの瞳がパチリと開いた。
「今ので目が覚めた。」
そう言ってベッドから足を下ろしたロイに、ハボックは「残念」と呟くと、寝室を出て行くロイの後を追って部屋を出た。
「ハボック、車は?」
玄関の前に止めてある自転車にロイは目をパチクリとさせると背後のハボックに向かって言う。
「何言ってるんスか、あんなトコ車で行ったって入れてもらえませんよ。」
大体どこに止めておくんスか、と玄関の鍵を閉めながら言うと、ハボックは自転車に跨った。
「ほら、早く乗って。」
ハボックの言葉にロイは思い切り顔を顰めた。
「自転車なんて寒いじゃないか。」
そう言うロイにハボックは携帯用のカイロを放って寄越す。ゲンナリした様子のロイに、ハボックは苦笑すると言った。
「行くのやめますか?」
「…行く。」
ロイはそう言ってハボックの後ろに跨った。
「しっかり掴まってて下さいよ。」
ハボックは肩越しにロイに言うと、グンとペダルを踏み込む。前に進む反動で体が後ろに浮いたロイは、慌ててハボック
の腰に手を回すとぎゅっとしがみついた。そうしてハボックの広い背中に頬を寄せると薄っすらと笑って目を閉じた。
「げーっ、急がないと日が昇っちまう!」
小一時間もペダルを踏み続けたハボックはこの寒い中額に汗を浮かべていた。道の端に自転車を止めると寒そうに
自分の体を抱きしめるロイの手を取って坂道を駆け上がっていく。
「ハボ、お前大丈夫か?」
自分の手を引きながらぜいぜいと息を弾ませるハボックにロイは心配そうに声をかけたが、ハボックはそれには答えず
「あと少しっスから。」と荒い呼吸と共に言葉を吐き出すと足を速めた。
そうして走ること数分。2人の視界がぱあと開ける。丘の頂上に着いたのだと気づいたロイが足を緩めようとするのを
許さず、ハボックはロイの手を引いた。
「たいさ、こっち。」
そう言うと、今か今かと日の出を待ちわびる人々の間をすり抜けてその先の繁みへとロイを連れて行った。
「おい、そんなところに行ったら見えないんじゃ…」
「いいから。」
ハボックはそう言うと目の前の繁みを払った。一段高くなったところに足をかけて上がると、ロイに向かって手を差し
伸べる。
「ほら、たいさ。」
ハボックに引かれるままよじ登ったロイは、突然目の前に広がった光景に息を飲んだ。遠くに広がるイーストシティの
街並みの更に向こうの稜線が赤く染まり、まだ僅かに星の残る空を夜明けへと導こうとしている。
「たいさ。」
呼ぶ声に振り向けば岩の上に腰をかけたハボックが手招いている。ロイが隣りに腰を下ろすとハボックの手がロイの
頬に触れてきた。
「ああ、すっかり冷えちゃいましたね。」
ハボックはそう言うとロイが首に巻いていたマフラーを解いて、顔が半ば隠れるように巻きなおした。
「お前は汗だくだな。」
「あ、すみません。汗臭いっスか?」
ロイに言われてハボックは慌ててロイから身を離そうとする。そんなハボックを引き寄せると、ロイは小さく笑った。
「お前の匂いだ。」
ロイがそう言った時、ぱあっとあたりに光が走った。2人の視線が向いた先でゆっくりと今年最初の朝日がその姿を
現そうとしている。暫く黙ったまま朝日が昇る様を見ていた2人だったが、やがてハボックがロイの肩を引き寄せると
その耳元に囁いた。
「あけましておめでとうございます、たいさ。」
「おめでとう、ハボック。」
ロイはそう答えると引き寄せられるままに唇を重ねていった。
2006/12/30
冬ですね企画テーマ「初日の出」で。もう、ハガレンの舞台設定やら時代設定やらそんなものはどこに行ったというカンジの感が強い最近のssですが、
ただ二人乗りするハボロイが書きたかっただけっていう…。それなら別に初日の出でなくてもって気もしますが、その辺はうちのサイトに来て下さる方は
皆さんお心が広いと思っておりますので〜〜〜っ。