七夕 2
「今年もまたこの日が来てしまった…。」
織女はカレンダーを見つめてぼそりと呟いた。今日は7月6日、明日7月7日は世間一般的に七夕祭りと言う日に
あたる。世の中の人々は年に一度しか会えない恋人達が無事に会うことが出来るよう、星に祈りを捧げ、ついでに
ちゃっかり自分達の願いも聞いてもらおうと短冊にしたためた願い事を笹の葉に括りつけたりするのだ。
「別に会えなくってもいいんだけど…。」
会えるようになどと星に祈りを捧げてくれなどしてくれなくていい、それよりも年に一度という期間限定イベントの
おかげでどれだけ自分が苦労しているかと言うことを皆に訴えたい。織女はそう思いながらため息をついた。
去年は結局散々だった。7日が来る前に身を隠してしまおうと家を出たところを、フライングでやってきた牽牛に
しっかり見つかってしまい、そのまま家に担ぎ込まれて24時間、飲まず食わずでヤられまくったのだ。最初の頃
こそ抵抗していた織女だったが、やはり1年ご無沙汰していたこともあって、ついうっかり自分からも強請って
しまった。
「あれがいけなかったんだ…。」
織女のオネダリが牽牛を喜ばせ付け上がらせてしまった。結局その後、織女がいくらやめてくれと言ったところで
嘘を言うな、とたっぷりと可愛がられてしまう事になり、去年織女は前年に引き続きその後3日も寝込む事になった
のだった。
「今年こそは逃げなくっちゃ。」
だが一体どこに逃げたらいいのだろう。織女は腕を組んでうーん、と唸る。ふと頭に幼馴染のちょっと太目の姿が
浮んだが、織女はふるふると首を振った。
「アイツはダメだ。前にかくまってくれと頼んだときも絶対嫌だとか言って、幼馴染のオレを牽牛に売ったんだから。」
わが身が大事とか言って、探しに来た牽牛にあっさりと引き渡した。その時のことを思い出して織女は心の中で
その幼馴染を罵る。だが、今はいつまでも過ぎたことを言っている場合ではない。とにかく一刻も早く逃げなくては
ならないのだ。去年だってしっかりフライングしてやってきた牽牛のこと、今年も絶対時計の針が7日になる前に
やってくるに違いない。織女は暫くの間腕を組んでうんうん唸っていたが、突然顔を上げるとポンと手を打ち鳴らした。
「そっか、別にこっち側で隠れることないんだ。」
牽牛は織女に会う為にこちら側へとやってくる。必死になって織女を探そうとするだろうからその目から逃れるのは
至難の業だ。だが、牽牛がこちら側にいる間、織女が向こう側に渡ってしまえば。
「そうだよ、なんで思いつかなかったんだろう。でもって向こうが帰るときにオレもこっち側に帰ってくればいい
んだから。」
織女は浮んだ考えが最高のものだと感じてうきうきと心を躍らせる。これで今年は安全だ。そうと決めたら善は急げ、
とっとと向こう側に渡るに限る。そう考えた時、織女の脳裏に牽牛の顔がふと浮んだ。その整った容姿と、強い
光を放つ黒曜石の瞳が蘇って、織女の心がツキンとなった。
「別にキライなわけじゃないんだけど…。」
織女はそう呟く。別にキライなわけじゃない、大体嫌いな相手だったら丸一日ベッドで一緒に過ごしたりする筈は
ないのだ。
「ただ加減ってものをしらないから、あの人…。」
もっと穏やかに過ごせるのなら24時間と言わず、ずっとずっと側にいたっていい。いや、ずっとずっと側にいたい
のだ。そうは言っても現実は織女にとってそんな甘いものではなく。
「いかん、つい絆されそうになってしまった。早いとこ向こう側に渡ろう。」
織女はそう呟くと、二人の間を隔てている川へと向かったのだった。
「あのう…。」
織女は川のほとりに立つ月の舟人の庵の戸を叩く。暫くすると扉が開いて金髪に鳶色の瞳をした舟人が姿を
現した。
「あら、織女。牽牛はまだ来ていなくてよ。お迎えには少し早いのではないかしら。」
そう言われて織女は慌てて首を振ると舟人に言う。
「迎えに来たわけじゃなくて、オレを向こう岸に渡して欲しいんスけど。」
織女の言葉に舟人は眉を跳ね上げた。
「牽牛がこちらに渡ってくるのが決まりだったのではなくて?」
「や、そうなんスけど、今年はオレを向こうに連れて行ってくれないかなぁって。」
へらりと笑う織女を舟人は胡散臭げに見つめていたが、やがて肩を竦めると言った。
「私は別にどちらでも構わないけれど、ただ後になって天帝に何か言われるのは困るわ。」
「あ、それなら大丈夫。何かあったらオレが全部責任取るっスから。」
「そう。ならいいけれど。それじゃあ7日になったらまた来て――」
「今すぐ渡して欲しいんスけどっ」
バッと舟人の手を握り締めて必死の形相で言う織女に舟人は驚いて目を見開く。パチパチと瞬きをすると少し
考えるように首を傾げてから言った。
「私、この間食べたオレンジケーキが好きなのだけど。」
「紅茶のクッキーもつけてお持ちしますっ」
「今、舟を用意するわね。」
にっこりと笑って庵に入っていく舟人の後姿に織女はホッと息を吐く。
「これで何とか逃げられる…。」
織女はあと数時間後に迫った約束の日を、今年こそは平穏無事に過ごせそうな事に胸を撫で下ろしたのだった。
舟人の操る舟に乗って川を渡った織女が川岸にその足を下ろすと、櫂を手にした舟人が言った。
「明日また戻るのでしょう?」
「あ、はい、そん時も乗せて欲しいんスけど。」
織女の言葉に舟人はちょっと考えると言う。
「行きはフライングで舟を出せたけど、天帝の目もあるし明日以外に舟を出すことは無理だと思うわ。」
舟人はそう言って織女の鼻先に指を突きつける。
「いい?つまり8日になって向こうに渡りたいって言われてもムリってことよ、いいわね。」
そう言われて織女はコクコクと頷いた。そんな織女に舟人はにっこりと笑う。
「それじゃケーキとクッキー待ってるわ。上手く隠れおおせるといいわね。」
そう言うと舟人は舟を操って向こう岸に戻ってしまった。
「…オレが牽牛から逃げてるの、バレてやがる…。」
しっかり見透かされていた事に織女は眉を寄せたが、すぐにきょろきょろと辺りを見回す。
「のんびりしてる場合じゃない、早く隠れるとこ見つけないと。」
もう夜はすっかり更けて、あと1時間ほどで7日になる。去年は10数分フライングしただけの牽牛だったが、今年
はもう向こうに渡っているかもしれない。織女はなるべく人目につかぬよう、そっと道を歩き出した。と、その時。
「おい、織女じゃねぇか。」
突然かかった声に織女は飛び上がる。ギョッとして振り向けばそこには眼鏡の奥で常磐色の瞳を面白そうに
輝かせた男が立っていた。
「河鼓…っ」
それは牽牛の親友の河鼓だった。随分と前に一度会っただけだったが、牽牛の親友だと言うだけあって、その
強烈な人柄は織女の記憶に強く焼きついていた。
「どうしてこんなとこにいるんだ?牽牛ならとっくに向こうに渡ったぜ。」
不思議そうにそう尋ねる河鼓に織女はへらりと笑う。
「あ、それじゃ行き違っちゃったんスね、じゃあ急いで戻んないとっ。」
それじゃ、と手を振って背を向ける織女の腕を河鼓はむんずと掴んだ。
「まあそう慌てんなよ。牽牛には俺から連絡入れてやるから。」
そう言って携帯を取り出す河鼓に織女は慌てて河鼓の携帯を持つ手を掴む。
「や、大丈夫っスからっ、オレ、自分で連絡入れるしっ」
「そうか?ならそんなに慌ててあっちに帰らなくても平気だな。」
「は?」
きょとんとする織女の手をとって河鼓はにっこりと笑った。
「まだ7日までには1時間くらいあるし、久しぶりに会ったんだ、少し話でもしようぜ。」
そう言ってぐいぐいと引きずるようにして河鼓は織女を自分の家まで連れてきてしまう。織女は思いもしなかった
展開に、どうしたものかとオロオロと辺りを見回した。
「えと、話をしたいのはやまやまなんスけど…。やっぱり牽牛を待たせたら悪いかなぁなんて。」
あははと笑って言う織女を河鼓はにんまりと笑って見つめる。
「そんな事言って、ホントは牽牛から逃げてきたんだろ?」
「えっ?!」
図星を指されて慌てる織女に河鼓はワザとらしくため息をついた。
「まあ、あいつもちょっと暴走し過ぎってとこもあるからな、お前さんの気持ちもわかるぜ。」
「はあ。」
うんうんと一人頷く河鼓に、織女はなんと答えたものかと適当に相槌を打つ。すると、河鼓はぐいと身を乗り出して
織女の肩をぐっと掴んだ。
「そんなわけで、今年から俺に乗り換えねぇか?」
「…はい?」
ポカンとする織女を河鼓はソファーに押し倒してしまう。スプリングで僅かに跳ねた体にハッと我に返った織女は
慌てて河鼓を押し返した。
「ちょっとっ、何するんスかっ!!」
「この体勢でやることと言ったら決まってんだろ。」
そう言ってにやりと笑うと河鼓は薄い布地の上から織女の乳首をきゅっと摘む。
「あっ!」
ぴくんと震える体を押さえつけて、河鼓はぷくりと立ち上がってきたそれを円を描くようにして撫ぜた。時折押し潰す
ようにして刺激を与えると、布地の上からでさえ堅く尖っているのが見て取れる。
「や、だっ」
必死にもがいて逃れようとする織女を河鼓は易々と押さえ込むとその顔を覗き込んだ。
「優しくしてやるから…牽牛より断然イイ思いさせてやるぜ。」
そう囁くと強引に織女に口付ける。
「んうぅっ…んんっ」
首を振って何とか逃れようとした織女だったが、むしろ強引に割り込んできた舌に口中を舐めまわされてポロリと
涙を零した。
「やだっ…いやだっ…」
いつの間にやら忍び込んできた手が、織女の素肌を弄る。その感触にぞっとして、織女が悲鳴を上げた、その時。
「河鼓っ!きさまぁっ!!」
バンッと勢いよく扉が開いて牽牛が飛び込んでくる。そのもの凄い形相に織女に圧し掛かっていた河鼓は体を
起こすとにやりと笑った。
「なんだ、結構早い到着だったな。」
「河鼓っ、お前、織女に何をしていたっ?!」
目を吊り上げて迫ってくる牽牛に、河鼓は面白そうに言う。
「んー、協力賃代わりにちょっと味見を。」
「河鼓〜〜っっ」
「ああ、はいはい。お詫びに家を提供してやるから。」
怒り狂う牽牛に河鼓はそう言うと立ち上がった。
「んじゃ、ごゆっくり。」
そう言って手を振りながら出て行く河鼓の背を見送っていた二人だったが、バタンと扉が閉まった途端、顔を
見合わせる。織女はソファーの上に肘をついて半身を起こすと牽牛に向かって言った。
「どうしてここに?」
自分がこちら側にいることなど舟人を除けば誰も知らないはずだった。それなのに今ここにいる牽牛を織女は信じ
られない物を見るようにして言う。
「河鼓から連絡を貰ったからな。お前のことだ、たぶんこちら側に逃げ込んでくるだろうことは想像がついていた。」
自分の行動をしっかり読まれていたらしい事に織女は僅かに顔を赤らめた。それにしてもいつの間に連絡したんだ
ろうと、密かに悩む織女のすぐ側に跪くと牽牛はまっすぐに織女を見つめて言う。
「そんなに私に会うのが嫌だったのか?そんなに私が嫌いか?」
その声に滲む悲しそうな色に、織女は慌てて首を振った。
「別にアンタが嫌いっていうわけじゃ…」
「それでは私が好きか?」
まっすぐに見つめてくる強い瞳に織女は目元を染めると小さく頷く。それを聞いた牽牛が嬉しそうに笑ったのに
織女の心臓がドキンと跳ねた。
「織女…」
そっと重なってくる唇にぴくりと震える織女を牽牛はそっと抱きしめる。啄ばむような口付けが深く貪るそれに
変わっていき二人はきつく舌を絡めあった。
「ん…ぅん…」
河鼓にされたときは死ぬほど嫌だったキスが相手が牽牛だというだけで、蕩けるものに変わる。角度を変えて
何度も口付けるうちに、織女の体からはすっかり力が抜けてしまっていた。
「あ…」
くたりと体を預けてくる織女にうっとりと笑うと、牽牛は力の抜けた体を抱え上げる。そうして寝室へ入っていくと
ベッドの上に織女の体をそっと横たえた。その身に纏う布地をあっという間に取り去ってしまうと、牽牛はその
白い肌をするりと撫で上げた。
「あっ!」
思わず零れた声に慌てて口を押さえる織女に牽牛はにんまりと笑う。
「いい声だ。」
「何言って…っ」
「もっと聞かせろ。」
牽牛はそう言うと織女の乳首をくりくりと捏ねた。
「んっ…」
声を上げるまいと唇を噛み締める織女を面白そうに見下ろしながら、牽牛は両方の乳首を指先でこねたり
引っ張ったりする。弄るにつけその色を増していくそれを、牽牛は飽きることなく嬲り続けた。
「やっ…も、やめ…っ」
散々に弄られて快感とも痛みともつかぬものに織女はついにぽろぽろと涙を零してしまう。
「素直に声を聞かせないからだろう。」
牽牛はそう言うと織女の乳首をぎゅうっと抓りあげた。
「いたあっっ!」
びくうぅっと織女が体を仰け反らせると同時に、その中心が白く爆ぜる。快感に呆然と目を見開く織女の顔を
覗き込んで牽牛はうっとりと笑った。
「痛いのがいいとは、いやらしい体だな…」
「あ…」
牽牛の言葉に織女は顔を真っ赤に染めると目を伏せる。そんな織女に軽く口付けると、牽牛は織女の長い脚を
押し開いた。
「やっ…」
脚を大きく開かされてその中心を曝されて、織女は恥ずかしさのあまり交差させた腕で顔を隠してしまう。先ほど
放った熱で濡れそぼったそこは、既にゆるりと立ち上がっていた。牽牛はその様にうっとりと笑うとぺろりとその
先端を舐めた。
「ひ…っ」
びくんと震えた織女の中心がとろりと蜜を零す。硬度を増す棹を舌ですぅっと舐めあげると、押し開いた織女の
脚がぴくぴくと震えた。牽牛が深く咥えこんで唇でじゅぶじゅぶと擦り上げる。舌を絡め先端の穴を押し開く
ようにして舌先でくりくりと捏ねれば、織女の唇から喘ぎが零れた。
「あっ…うんっ…んふ…」
熱い吐息を零す織女の蕾に牽牛はつぷりと指を差し入れた。途端に強張る体も中心を嬲られて身悶える。
「んっ…くうっ…あふ…」
熱い口中で自身を嬲られ、後ろは長い指でかき回されて、織女はぐずぐずに蕩けそうな快感に荒い息を零した。
前と後ろをいい様に嬲られて、織女は耐え切れずに自らの指をしゃぶる。
「あっ…やっ…も…ヘンになる…っ」
ビクビクと体を震わせる織女の中に沈めた指を、牽牛はグイと突き入れた。
「ひあっ…でるっ」
囁くように言った途端、ぐっと嵩をました織女自身が熱を迸らせる。口中に吐き出されたそれを牽牛は体を
起こして織女に圧し掛かると口移しで飲ませた。
「うっ…んんっ」
突然流し込まれた青臭い液体に、苦しくて織女は牽牛に縋りつく。必死に飲み込んで荒い息を零す織女に
にやりと笑うと牽牛は言った。
「どうだ、自分の味は?美味いだろう?」
「…サイテー」
そう呟いて、それでも睨みつけてくる空色の瞳に牽牛は楽しそうに笑うとするりと織女の蕾を撫で上げる。
「欲しいだろう?」
低い声でそう囁かれて、織女は背筋をゾクリと快感が駆け上がるのを感じた。悔しそうに睨んでくる織女を
見つめながら牽牛は仰向けにベッドに横たわった。
「おいで。」
そう言って手を差し出せば、織女は牽牛を睨みつけたままへたり込んでいたが、やがてゆっくりと身を起こすと
牽牛の体を跨いだ。脚を大きく開き、天を突くようにそそり立った牽牛自身をその蕾に宛がう。ゆっくりと身の内に
牽牛を迎え入れていこうとする様を、牽牛はじっと見つめた。
「あ…ふ…」
いやらしく蠢く蕾が押し当てられた牽牛自身でじわりと押し開かれる。柔らかい襞を目いっぱいに開いて牽牛
を飲み込んでいく様を見つめながら、牽牛はにんまりと笑った。
「すごいな、丸見えだ。」
そう呟いて牽牛を咥えこむそこを指先でするりと撫でる。
「見ないで…っ…あっやっ」
繋がる部分を何度も指で擦られて、織女はいやいやと首を振る。強い牽牛の視線を感じて恥ずかしくて消えて
しまいたいと思うと同時に、いつも以上に感じてしまっている事に織女は酷く興奮した。牽牛にその身を犯され
ながら、織女の中心は萎えるどころか一層高くそそり立ち、その先端から蜜を垂れ流している。根元まで牽牛を
飲み込んでホッと息を吐く織女の手を取ると、牽牛は自身をギュッと握らせた。
「後ろは私が可愛がってやるからこっちは自分でやってご覧。」
「あ…そ、んなっ」
そう呟いたとたんガツンと突き上げられて、織女の唇から悲鳴が上がる。
「あひっ…あっあっ」
身悶える織女の手を、牽牛は包んで動かしてやった。
「ひあっ…いっ…ひゃあん」
ぐちゅぐちゅとかき回され擦り上げられて、織女は身悶える。脳天を突き抜ける快感に織女は背を仰け反らせて
喘いだ。
「あっあっあっ…イくっ…イくぅ…っ」
びゅくびゅくと熱を噴出す織女を牽牛は思い切り突き上げる。
「ひゃああああっっ」
快感に震える体の最奥に熱を叩きつけられて、織女はフッと意識をとばしてしまった。だが、その途端、ガツンと
突かれて意識を引き戻される。
「ああっ…あっ…待って…ひああっ」
がくがくと震える織女の体を抱え込むと、牽牛はグイと体を起こし織女と体勢を入替えてベッドに組み敷いてしまう。
脚を高く抱えなおすと情け容赦なく突き上げた。
「ひぃっ…あっ…ひああっ」
感じるところを攻め立てられて、織女はぼろぼろと泣きながら熱を吐き出す。
「やあ…んっ…も…ゆるし…っ」
「何言ってる…まだまだこれからだろう。」
そう囁いて噛み付くように口付けられて、織女は牽牛の望むままに啼き狂わされていった。
ふわりと浮んだ意識に織女はぼんやりと天井を見上げる。自分に抱きつくようにして眠っている牽牛をちらりと
見ると、ため息をついた。
「なにやってんだろ、オレ…。」
今年こそは安らかに過ごすためこちら側に逃げ込んできた筈だった。しかし蓋を開けて見れば結局は牽牛の
腕の中で啼き狂わされていて。織女はもう一つため息をつくとベッドサイドの時計を見た。あと30分ほどで
七夕祭りの一日が終わる。織女は牽牛の腕の中からすり抜けると、崩れ折れそうになる体を叱咤して壁
伝いに必死に歩いた。最後は殆んど這うようになりながら川岸までやってくると、川面をきょろきょろと見渡す。
「いない…。」
帰りたいということは言っておいた筈だ。姿の見えない舟人を不審に思いながら、織女は携帯を取り出して
舟人に連絡を入れる。数回呼び出し音がなった後、携帯の向こうで舟人の声が聞こえた。
「もしもし?」
「あら、織女。どうしたの?」
「オレ、帰りもお願いしますって言ったと思ってたんスけど。」
「私も7日中でないと無理って言ったと思ったけど?」
そう言われて織女はきょとんとした。日付が変わるまで、まだ後15分はあるはずだ。そのことを言おうと
織女が口を開こうとした時。
織女の背後から伸びた手が携帯を奪い取った。
「あっ!」
慌てて振り向いた織女の前に立っていた牽牛は取り上げた携帯を耳に当てると話し出す。
「やあ、久しぶり。ああ、すまないね、騒がせて。…ああ、大丈夫。…悪かったね、ありがとう。」
牽牛は電話の向こうの舟人にそう話すと携帯をきってしまう。そうして織女に向かってにっこりと笑いながら
言った。
「河鼓の家の時計、30分遅れてるんだ。」
「…え?」
「つまり、今は8日の0時15分だ。」
牽牛の言ったことがすぐには理解できずに呆けたように立ち尽くす織女に牽牛はにんまりと笑うと言う。
「よかったな、これでこれから1年間、ずっと一緒だ。」
牽牛の言葉をようやく理解した時、帰らなければという思いだけで立っていた織女の体から力が抜けた。へなへなと
座り込む体を牽牛が咄嗟に支える。
「毎日たっぷり可愛がってやるから楽しみにしていろよ。」
耳元でそう囁かれて、織女はスッと気が遠くなったのだった。
2007/7/5
去年書いた七夕ネタの続きですー。いや、まさか1年後に続きを書くとは思いもしませんでした。1年続けたんだなぁ。なんだかしみじみしますね。
流石に3はないと思いますが…。今年はロイとハボ以外にも渡し守のホークアイやらロイの悪友のヒューズやら出してみました。天帝が大総統なら
ハボは大総統の娘になっちゃいますね(苦笑)ヒューズの名前で使った河鼓は中国星座でアルタイルのことなので牽牛と同じなのですが、他にいい名前が
出てこなかったので、ま、いっかと使ってしまいました。その辺、大目に見てくださいね〜。
何はともあれ、相変わらずなロイハボですが、お楽しみ頂ければ嬉しいです〜。