端陽(たんよう)


ずぶ濡れのハボックの姿に宿の女将は目を丸くしながらも、部屋へとあげてくれる。ロイは大きな体を縮こまらせて
ついて来るハボックを肩越しに振り返ると言った。
「もうそのまま風呂に入れ。女将、部屋に露天がついているんだろう?」
「はい。もういつでもお使いいただけますよ。」
そう聞かれて答える女将に頷くと、ロイはハボックを部屋についている風呂場へと押し込んだ。
「そっちの扉から外に出られるだろう。」
ロイに指差されてハボックは頷くと濡れた服を脱ぎ捨てて扉をくぐる。ひんやりとした空気にふるりと体を震わせ
ながら、それでも目の前の岩風呂に嬉しそうに目を瞬かせた。
「おお、露天風呂っ!気持ちよさそうっ」
うきうきとそう呟くと隅の方にある洗い場で手早く汚れを落とす。そうして嬉々として湯に体を沈めると、大きく
息を吐いた。
「はああ…気持ちいい…」
手足を投げ出してゆったりと体を伸ばせば、湯の中に疲れが溶け出していくようだ。ハボックがのんびりと湯を
楽しんでいると、ガラリと戸が開いてロイが入ってきた。
「たっ、たいさっ?」
慌てて伸ばしていた脚を抱え込むとハボックはロイを睨む。
「何で入ってくるんスかっ」
「別に構わんだろう。2人で入ったところで狭くはないんだし。」
「でも…っ」
湯に浸かっているというだけではなく頬を染めるハボックに、ニヤリと笑うとロイは言った。
「それとも何か不都合でもあるのか?」
意地悪く聞かれてもごもごと答えるハボックにくすりと笑うと、ロイはさっさと汚れを落としてハボックの隣りに
入ってしまう。
「ちょっと…っ、なんで隣りに入ってくるんスかっ!」
「いいじゃないか、別に。」
「広いんだからくっついて入ることないでしょっ」
「何か不都合でもあるのか?」
もう一度そう聞かれて、ハボックは困ったように顔を伏せる。ロイはそんなハボックの濡れて色の濃くなった
金色の髪をかきあげた。
「たいさ…っ」
「なんだ?」
そう言って見つめてくる黒い瞳にどくどくと血がとんでもないところに集まっていくような気がして、ハボックは
慌てて立ち上がった。
「も、出ますっ」
そう言って湯から上がろうとするハボックの腕を引いて、ロイがハボックを湯の中に引き戻す。
「わっ」
バランスを崩して派手な飛沫とともにロイの腕の中に倒れこんでくるハボックを受け止めて、ロイは楽しそうに
笑った。
「どうした、落ち着かないな。」
するりと背を滑る指にハボックは慌てて身を離すとざばざばと湯の中を後ずさった。
「ちょっ…さわんないでっ」
「おかしなヤツだな。」
真っ赤になって慌てるハボックにロイは笑ってそう言う。
「アンタねっ」
わざとやっているのだと判っていても、過剰に反応してしまうハボックをロイは引き寄せるとその耳元に囁いた。
「かわいいな、ハボック…」
「っっ!!!」
びくぅっと大きく体を震わせると、ハボックはザバアッと湯を撒き散らして湯から飛び出す。わたわたと部屋の
中に逃げ込む後姿にロイはくすくすと笑うと、ゆっくりと湯から上がったのだった。

浴衣を見につけて部屋に入って行くと、窓から身を乗り出すハボックの背中が見えた。
「たいさ、さっきのこいのぼり、ここから見えますよっ」
指差す先を見れば、木々の向こう、煌めく川の上を色とりどりの魚たちが泳いでいる。
「川が光ってて、なんだか水の上をはねてるみたいっスね。」
そう言うハボックの近くに寄れば、風呂上りのいい匂いがした。まだ湿り気の残る髪に手を差し入れて引き
寄せると、ロイは金色の頭に口付ける。
「たいさ?」
そうして無防備に見上げてくる空色の瞳にロイは苦笑した。何度も奪うように肌を重ねているのに、どうして
いつもこう信じきった目で見つめてくるのだろう。ロイは窓枠に腰を引っ掛けるようにして腰かけている
ハボックにグッと体重をかけていった。
「ちょっ…落ちるっ!」
グラリと外に向けて傾ぐ体に慌てたハボックがロイに縋りついてくる。暖かいその体を引き寄せるようにして
ロイはハボック諸共畳に倒れこんだ。
「たいさっ」
「いい香りがする…」
そう言って浴衣を肌蹴るロイにハボックが身を捩る。
「ちょっとっ!せっかく着たのに脱がさんでくださいよっ!」
「脱がせて欲しくて着たんだろう?」
「うわ…オヤジくさ〜っ」
そう呟くハボックにロイはムッとすると、解いた帯でハボックの両手を括ってしまった。
「なにするんスかっ!」
「可愛くないことを言うからだ。」
「やだっ…や、め…っ」
帯を解かれて止めるものを失った浴衣を大きく開いて弄りだすロイの指にハボックが息を荒くする。
「たいさ…っ…あ、んっ」
くりっと乳首を捏ねられてハボックがびくりと震えた。括られて不自由な手でなんとかロイを押しやろうと
するが、ロイはその手を容易くはねのけると立ち上がったソコに舌を絡ませる。
「ん…ふ…」
唾液を塗され舌で押しつぶすようにしてこね回すロイの愛撫にハボックは無意識に腰を揺らめかせた。
「腰が揺れてるぞ、ハボック。」
笑いを含んだ声でからかう様に言われて、ハボックの顔が真っ赤になった。
「も、いい加減に…っ」
「いい加減に、なんだ?」
耳元で低く囁く声にぞくりと快感が背筋を駆け上がる。すっかりと立ち上がってとろとろと蜜を零す自身を
揺らして、ハボックは手を束縛する帯を噛み締めた。
「ハボック…」
見つめてくる黒曜石の瞳にハボックはふるふると首を振る。必死に睨みつけてくるその欲に濡れた空色
の瞳を涙で濡らしてやりたくて、ロイはハボックの双丘の間にグイと指を差し入れた。
「んんんっっ」
帯を噛み締めたまま背を仰け反らせてハボックが喘ぐ。ぐちゃぐちゃとかき回されて喘ぐ唇の間で、帯が
唾液に濡れて色を濃くした。ロイはハボックの後ろを弄りながら蜜を零す棹を扱き出す。前と後ろを同時に
攻められて、ハボックが身悶えた。
「う…んふぅ…んんっっ」
執拗な攻めにハボックの中心がはじけようとした瞬間、ロイはくっと根元を押さえつけて熱をせき止めて
しまう。吐き出せずにびくびくと体を震わせるハボックに、ロイは意地悪く囁いた。
「どうして欲しいか、強請ってご覧。でないと、このままだ。」
ロイの言葉にハッと見開かれた瞳が苦しげに歪められる。腰を振ってロイの手を振りほどこうとするが
それはただ悪戯に快感を煽る事にしかならなかった。ハボックは咥えた帯をグッと噛み締めたあと、舌先
でそれを口から押し出す。空色の瞳に涙を滲ませるとかすれた声でロイに強請った。
「も、イきたい…イかせて…っ」
「私が欲しいか…?」
そう聞かれてコクコクと頷くハボックの中心を更に締め上げるロイに、ハボックは溜まらず声を上げた。
「欲しいっ…も、やだぁ…っ」
耐え切れずにポロポロと涙を零す空色の瞳にそっと口付けると、ロイは後ろに沈めた指を引き抜いた。
ハボック自身を縛めたままずぶずぶと滾る己を沈めていけば、ハボックの唇から悲鳴が上がった。
「あああああっっ」
ずくずくと乱暴に抜きさしされて、濡れた襞を擦る熱い塊に快感が走り抜ける。体の中を駆け巡る熱を
吐き出したくて、ハボックはロイに言った。
「イきたいっ…離してくださ…っ」
縋ってくる空色の瞳にうっとりと笑うと、ロイは縛めていた指を外すと同時に埋め込んだ自身を思い切り
突き上げた。
「アッアアア―――ッッ!!!」
びゅくびゅくと熱を激しく噴出して、ハボックはブルブルと震える。ロイは半ば意識をとばしたハボックの体
を抱きしめると、その最奥へ熱を注ぎ込んだ。

するりと帯を解く感触に、意識を引き戻されてハボックは自分に圧し掛かる男を見上げる。ぐったりと力の
抜けた体を起こすことも出来ず、ハボックはロイを恨めしげに見つめた。
「かわいいな、ハボック…」
そう言ってするりと頬を撫でる指を思いがけず気持ちよいと感じてしまってハボックは目を逸らした。逸らした
視線の先に窓から覗く蒼い空を見つけて、さっき見た魚たちを思い出す。
「ハボック…?」
心をどこか遠くにやってしまったようなハボックの様子に不安げに呼んでくるロイに視線を戻して、ハボックは
ロイの首に腕を回すとそっと口付けていった。


2007/4/24

ロイハボ版端午の節句ネタでした。1年前の今頃はまだロイハボ扱ってなかったんですね、エロも書けなかったし…(しみじみ)時の流れを
感じます〜。