summer carnival
「大佐っ、祭っスよ、祭!」
部屋の扉が開いたと思った瞬間、顔をだしたハボックが叫ぶ。びっくりして読んでいた本から顔を上げたロイは訳が
判らず、ポカンとしてハボックを見つめた。
「ほら、そんないつでも読める本なんてほっといて、ねっ」
「…ハボック、きちんと話してくれないと判らないんだが。」
一人で盛り上がっているハボックにロイは眉を顰めて言う。ハボックはあれ?という顔をしたが、それでも説明を始めた。
「今夜、この町で夏祭りがあるそうなんスよ。夜店とかもたくさん出て結構賑やからしいっスよ。ね、だからそれ、
行きましょうっ!」
「お前、私達は視察でこの町に…。」
「だから、視察で夏祭りっ。」
「お前な…。」
ロイ達は昨日から出張でこの町の視察に来ているところだった。取りあえず見るべきものは見て、明日にはイースト
シティに帰ることになっている。今夜は特に予定もなく、ロイは食事の後、のんびりと本を読んでいたのだった。夏祭り
と騒ぐハボックを見やれば、その青い瞳を興奮にきらきらと輝かせてロイの言葉を待っている。その子供のような様子に
ロイは苦笑すると仕方がないとばかりに言った。
「しょうがないな、今日だけだぞ。」
「そう来なくっちゃ!」
嬉しそうに笑うハボックにロイの心臓がどきりと跳ねる。ごまかすように乱暴に本を置くと立ち上がった。
「それでね、浴衣貸してくれるって言うんですよ。」
「ユカタ?」
「東の島国の服らしいんスけど、ちょっと着てる人みたんですけどね、結構いいんですよ、コレが。」
「民族衣装か?」
「そんなもんです。で、ソレ、借りれることになったんで。」
「お前、いつの間に…」
「このホテルの知り合いのおばあちゃんが着せてくれるっていうんで、ほら、行きますよ。」
ロイの返事を待たず、ハボックはロイの手を取るとぐいぐいと引っ張るように歩き出す。ロイはこういう事に関しては妙に
手際の良いハボックに呆れて、ハボックに連れられるままにホテルを後にした。
「面白い靴だな。」
「下駄っていうんですって。」
ハボックに連れられるまま、あれよあれよという間にロイは浴衣を着せられて祭りに繰り出していた。ロイが着ている
のは濃いグレーの矢羽柄の浴衣だ。ロイの黒髪によく似合ったそれにハボックは嬉しそうに目を細める。
「大佐、カッコいいっス。」
「当たり前だ。」
さも当然と言うロイにくすりと笑うハボックは紺地の縞に鳳凰の入った浴衣だ。
「お前、そういうイカれた柄、似合うな。」
「それ、褒めてるんスか…?」
あまりのいいようにがっくり肩を落とすハボックだが、実際には大柄なハボックにその浴衣は良く似合っており、先ほど
からすれ違う女性達がちらちらと見ていくのをロイは密かに面白くなく思っていた。
祭にむかう人の波に乗って歩いて行くロイは後ろから走ってきた人に突き飛ばされるようにしてバランスを崩した。あ、と
思ったときにはハボックの姿を見失ってしまう。きょろきょろと見回していると後ろからぐいと腕を引かれた。
「大佐っ」
ハボックが人波に流されそうになるロイを自分の方に引き寄せる。
「迷子にならんでくださいよ。」
「…子供じゃあるまいし。」
口を尖らせるロイにハボックはくすりと笑うとロイの手に自分の手を絡めた。
「こうしてたらはぐれないでしょ?」
「…っ」
みるみる真っ赤になるロイに嬉しそうに笑ってハボックはロイの手を引いた。人の流れに乗って縁日の屋台が立ち並ぶ
ところまでやってくる。人々のさざめきや笑い声に混じっていろいろな食べ物の匂いがする。ロイは物珍しげにきょろ
きょろと辺りを見回した。
「あ、大佐っ、こっちこっち!」
ハボックに引かれるままに近寄った屋台では浅い桶の中にたくさんの金魚が泳いでいた。
「金魚?」
「ほら、大佐、あれ。」
ハボックが視線で指す方を見れば子供が紙で出来たおおきなスプーンのようなもので金魚を掬っている。
「やってみます?」
ロイが答える前にハボックは金魚ポイを2本、金を払ってもらってくると一本をロイに渡した。ロイは桶の側にしゃがむと
手にしたポイをそっと水につけ金魚を掬おうとする。金魚が紙の上に載った瞬間もちあげようとするが、果たして紙は
金魚の重みであっけなく破れてしまった。
「あ…」
ハボックはそんなロイをにやにや笑ってみていたが袖をまくるとロイのとなりにしゃがみ込む。
「んじゃ、今度はオレの番。」
ハボックはそっとポイを水につけて濡らすと金魚が近くに来るのを待ち、桶の壁際にきた金魚に狙いを定めてすっと水面
すれすれに差し入れるとあっという間に金魚をすくって手に持った椀の中へと入れてしまう。
「おっしゃあっ」
ガッツポーズをとるハボックをポカンとみていたロイだったが次の瞬間、酷く悔しそうな顔をすると屋台の主人に金を
渡した。
「もう一つくれ。」
そうして再度チャレンジするが結果は同じ。ロイは敗れたポイを腹ただしげに見つめるともう一度金とポイとを交換した。
ムキになって5度、6度と挑戦しても芳しくない結果にロイは唇を歪める。
「大佐、才能ないっスねぇ。」
そういうハボックの手元を見れば椀の中には5匹の金魚が泳いでいた。しかも、ハボックが持っているのは最初に買った
一本目のポイである。
「お前、前にやったことあるんじゃないのか?」
「初めてですよ。」
答えるハボックにロイは疑わしげな視線を向ける。
「あ、もう、自分が出来ないもんだからそんなこと言って。」
「うるさい。大体こんなもの出来たからってなんだって言うんだ。」
ロイはむすっとして立ち上がるとさっさと他の屋台へと歩き出してしまう。ハボックは手元の椀を隣にいた小さな子に譲る
と慌ててロイを追いかけた。
「たいさっ」
そう言ってロイの腕を掴めば不機嫌そうにハボックを見上げてきた。子供のような表情にハボックは顔を緩めると、近く
の屋台を指差す。
「大佐、あそこ。」
さり気なく指を絡めてきたハボックに引かれて指差す屋台に近寄れば甘い香りが漂ってきた。丸い機械の中央の筒に
粒の粗い砂糖を流し込むと機械の淵から雲のようなものがふわふわと出てくる。それを器用に棒に絡め取ると差し
出してくる主人に金を払ってハボックは受け取った。
「はい。」
ロイはハボックの差し出すそれを受け取るとそっと舌をつけた。
「…あまい。」
「綿みたいっスね。」
ハボックは指でちょっと摘み取ると口に放り込む。べたつく指を舐めながらロイを見下ろすと小さく笑った。
「ついてますよ。」
そう言ってロイの頬に顔を寄せるとそこについた綿菓子を舐める。
「な…っ」
ぎょっとして身を引くロイに楽しそうに笑ってハボックはロイの手を引いて歩き出した。ロイは目元を染めて、それでも
ハボックの手を振りほどこうとはしなかった。人波の中を居並ぶ屋台を覘きながらゆっくりと歩く。いつしか指を絡めて
いただけの手はしっかりと握り合って、ロイの口元には優しい笑みが刷かれていた。
「あれなんてお前むきなんじゃないのか?」
ロイが指差す先ではたくさんの並べられた景品にむけて空気銃を撃つ人々の姿があった。
「射的っスね。」
意気揚々と金を払って銃を受け取ると、ハボックは狙いを定めて銃を撃つ。ところが。
「あっれ〜っ?!」
「…お前、真面目にやってるのか?」
撃った弾はことごとく外れ、掠りさえしなかった。
「これ、絶対銃身が歪んでるかなんかしてますよっ」
「腕が鈍ったんだろう。」
人の悪い笑みを浮かべて自分を見つめているロイをハボックは悔しげに見返すと、乱暴に銃を台の上に戻した。
「ちぇっ、ムカツク…」
悔しがるハボックに屋台の主人が小さな包みを差し出してきた。
「残念だったね、これ、残念賞だよ。」
ハボックは苦笑いしてそれを受け取ると屋台を後にする。
「何を貰ったんだ?」
手元を覗き込んでくるロイに包みを開けるとそこには数本の線香花火が入っていた。
「線香花火だ。」
「懐かしいな。」
ハボックは辺りを見回すとずっと上に続く石段を見つけロイに言った。
「せっかくだからちょっとやりましょうか。」
首を傾げるロイに石段を指差す。
「あそこ、多分上のほうにお社とかそんなものがあるんですよ。そこだったらあんまり人、いないだろうし。」
そう言って歩き出すハボックに続いてロイは石段に向かった。明かりの届かない薄暗い石段をかなり登ったところに
ハボックがいうようにおそらくは土地の守り神をまつっているのであろう社があった。人で賑わっていた階下とはうって
変わってここは明かりもなく人っ子一人いない。
「はい、半分こ。」
薄闇の中でハボックは手にした花火の内半分をロイに渡す。そうして袂からライターを取り出すとしゃがんでロイを
見上げた。その視線に促されるままにロイはハボックの隣にしゃがむと線香花火を一つ手にする。シュボッと音がして
ライターの焔が上がる。その上にそっと花火の先端をかざすとシュッと火が付いた。ライターを引っ込めて、息を詰めて
線香花火を見つめる。ジジジと音を立てながら火の付いた先端がゆっくりと丸く膨らんでいった。やがて。
パッ。パパッ。
丸く膨らんだ火球のまわりに火花が散り始めた。最初は1つ2つ。だんだん増えて次々と連鎖するように沢山の火花が。
闇に浮ぶ小さな花をハボックとロイは何も言わずに見つめていた。大きかった火球が小さくしぼんで消えてしまうと
手にしたそれを置いて、もう一つ取り出す。同じように綺麗な花を闇の中に咲かせながら、ハボックはそっとロイを
見やった。その時、同じようにハボックへと顔を向けたロイと視線が合う。柔らかく笑む黒い瞳に微笑んでハボックは
花火に視線を戻した。瞬く間に手にした花火を全て使いきってしまい、ハボックはゆっくりと立ち上がった。
「あーあ、なくなっちゃった…。」
でも、久しぶりで楽しかったですねと言いながらロイを見下ろすとロイは膝の上に頭を載せてしゃがんだまま手にした
花火の燃えかすをぼんやりと眺めていた。
「たいさ…?」
ハボックの声にゆっくりと見上げてきた艶やかに濡れる黒い瞳にハボックの心臓がとくりと鳴る。ハボックはロイの腕を
引いて立ち上がらせると自分の腕の中にロイを閉じ込めた。そうして顎を掴んで仰向かせるとゆっくりとその唇を塞いだ。
「ん…」
舌を差し入れてロイのソレを舐めればロイが絡めてくる。お互いの舌を絡めあって口内をくまなく嘗め回す。
「ふ…ぅん…」
鼻から抜けるような甘いロイの声にハボックはロイを抱く腕に力を込めた。襟元を割って手を差し入れるとロイの胸を
弄る。ぷくりと立ち上がったそこに指を這わせると指先でくりくりと捏ね摘みあげた。
「あっ…んあっ…」
胸への刺激に揺れる体をかき抱いて、ハボックはロイの項に唇を這わせると時々強く吸い上げた。ぴくんと震えるロイの
唇から熱い吐息が零れる。ハボックはロイの襟元を強引に開くとその胸に舌を這わせた。
「あ…はぁ…ハボ…」
緩く首を振るロイをうっとりと見下ろしてハボックはロイの乳首を舌と指で思うまま弄っていく。身を捩るロイの裾を割ると
その中へ手を差し入れた。そこには既に息づいてとろとろと蜜を零すロイ自身がハボックの手を待って震えていた。
きゅっと掴むとロイの背が綺麗にしなる。
「い…っ…ああっ…」
ゆっくりと扱いていくと瞬く間に硬度を増し、腹につくほど反りあがる。ぐちゅぐちゅと蜜を塗して擦り上げるとロイがびく
びくと震えながらハボックの腕にすがり付いてきた。
「あんっ…あっ…はあっ…」
ハボックは零れる蜜を後ろに塗りこみ、ゆっくりと指を沈めた。熱い襞を指でぐるりとかき回すと一際ロイの声が高くなる。
「やあっ…あっあ…ハボック…っ」
腕の中で自分の思うままに乱れるロイの姿にハボックはうっとりと笑った。ハボックは近くの木の幹にロイの両手を
つかせると浴衣の裾を捲り上げた。肩越しに濡れた視線を投げてくるロイに微笑んでハボックはロイの双丘を押し開くと
猛る自身を突き入れていく。
「あ、あ、あ…」
背筋を仰け反らせるロイの腰を引き戻してハボックは最奥まで一気に突き上げた。
「ああっっ」
ぐちゅぐちゅと濡れた音が薄闇の中に響き熱い喘ぎが夜の中に溶けていく。
「あ…ああっ…やあっ…ハボ…っ」
「たいさ…っ」
太いモノでぐるりと熱い粘膜をかき回されてロイはがくがくと体を震わせた。
「ひああっ…あ…イイっ…」
ぼろぼろと涙を零しながら身悶えるロイにハボックの熱も高まっていく。容赦なく突き上げてくるハボックにロイはあられ
もなく喘ぎ続けた。
「やあっ…ああっ…んああっ…」
がんがんと突き上げられて耐え切れずにロイの中心からびゅるびゅると白濁した液が迸った。
「く…っ」
達したロイに締め付けられてハボックもロイを追う様にロイの中へと熱を吐き出す。身の内を焼かれてロイは高い悲鳴
を上げて木の幹に縋るようにしてくず折れた。
手馴れないまでも何とか浴衣を整えてハボックはロイを立たせるとその唇にそっとキスを落とした。
「大丈夫っスか?」
優しく髪をかき上げて顔を覗き込んでくるハボックをロイは目元を染めて睨みつけた。
「聞くくらいなら最初からするな。」
「それはムリっス。」
困ったように囁くハボックをロイは見上げる。
「たいさ…」
唇を寄せてロイの口の中へ「スキ」という囁きが吹き込まれる。ロイはうっとりと微笑むとハボックの首に腕を回して深く
口づけていった。
2006/8/3
夏企画でssを書き始めたはいいけど、何書こうかなって思っていたら「ハボロイで夏祭りが読みたいです!いちゃいちゃした甘いのがいいな!」というリクをいた
だきました。それに「花火でも線香花火とかでとても甘いお話を読んでみたいですね!明るく てエッチィハボロイ話を待ってますv 」というリクを併せて書いたのがこれです。
それにしても、浴衣の柄を文章で説明できなくて困りました。ネットで調べると画像があるヤツは文章で説明、ないでしょ?どんなに柄が気に入っても「なんと
表せば???」ってカンジで(苦笑)ロイが着ているのは実はピンク色でスゴイ可愛いやつだったのですが、いくらロイでもピンクはないだろうってことで色を変えてしまいました。で、ハボの方ですがこれ、背中に鳳凰柄のちょっとすげ〜って感じのなんだけど、実はこの浴衣を見つけたのはワンちゃんに着せる浴衣のサイトだったりして。もう、思わずハボに着せるしかないよねっと飛びついてしまいました。モデルは小型犬でしたが大型犬のハボにも似合いそうでしょ?(笑)金魚すくいのあの紙で出来た道具、金魚ポイって言うの知ってました?判らなくて調べたらそんな名前で載ってて思わず冗談かと思いましたよ。
ともあれ、私としてはすんごい久しぶりにフツーのハボロイ書いた気が…。どうでしょう、イチャイチャ甘々になってますでしょうか???