star festival
「あーあ、雨、止まないっスね」
窓から顔を出してハボックがぼやいた。ソファで本を読んでいたロイは顔を上げると窓辺で煙草をふかしているハボック
を見やる。
「なんだ、昨日からやたら天気を気にしてるな。何かあるのか?」
そうロイに問われてハボックは残念そうに言う。
「だって今日は七夕じゃないですか。」
「七夕?ああ、織姫と彦星の話か。」
「そうそう、せっかく年に1度のデートの日だってのに雨なんてね。」
そう言ってハボックは悔しそうにぷかりと煙を吐き出す。
「人のデートの心配してるのか、お前は。」
苦笑するロイにハボックは顔を顰めて見せた。
「別にデートの心配してるわけじゃないっスけど。七夕って星に願いをかける日でもあるわけでしょ?」
肝心の星が見えないんじゃ願いもかけようがないっスよ、とぼやくハボックにロイはふと興味を持った。
「星になんの願いをかけたんだ?」
特に深い意味も持たずに問いかけたロイに真摯な瞳が向けられてロイは一瞬言葉に詰まった。真剣な眼差しを向けた
ハボックは、次の瞬間眦を下げて笑うと
「ナイショ。」
と答えた。
「何だ、それは。」
不満そうに言うロイにハボックは
「だって、言ったら叶わなそうじゃないですか。」
「だが、短冊にかくならオープンじゃないか。」
「そりゃそうっスけど…。」
と呟いたハボックは何かを思い出したように僅かに目を見張ると
「そういえば、よく行く酒場の笹に『列車であった彼女と上手くいきますように』なんてのがありましたよ」
「なんだ、そりゃ。」
ロイが呆れたように言う。
「そんな事を星に願うヤツは絶対上手く行くわけないな。」
傲慢に言い放つロイにハボックはため息をつく。
「世の中の男全部が全部、アンタみたいに自信家じゃないっスよ。」
「星に願う程度の望みだってことだろう。」
尚も言い募るロイにハボックは肩を竦めた。
「で、お前は何を願ったんだ?」
「いいませんよ、どうせバカにするし」
「聞いてみなけりゃわからないだろう?」
「ナイショです。」
頑として口を割らないハボックにロイはムッとしてハボックに背を向けると本を開いて読み始めた。
(ありゃ、拗ねちゃったよ)
ハボックは子供っぽいロイの態度に小さく笑って、吸っていた煙草を傍らの灰皿に押し付けるとキッチンへ向かった。
エスプレッソマシンにコーヒーをセットしてスイッチを入れると暖めたカップにバニラシロップをいれ、牛乳を温めて
ホイッパーでフォームミルクを作る。出来上がったエスプレッソコーヒーをカップに注いでフォームミルクを入れて
キャラメルソースでさっと線を描いた。そのカップをリビングのロイのところへ持っていくと「ハイ。」と言って差し出す。
ロイはカップとハボックを交互に見つめていたが、甘い香りに誘われてカップを受け取った。一口飲めばふわりとミルク
とキャラメルの香りが広がって、気持ちが安らいでいく。ふとハボックを見上げればにこにことこちらを見下ろしている
のと目が合った。
「別にこんなもので懐柔されないからな。」
可愛げのない言葉も薄っすらと目元を染めて言ったのでは迫力に欠けるというものだ。ハボックは優しく微笑むと
ロイの髪にそっとキスを落とした。
「ねぇ、もしオレ達が1年に1度しか会えないとしたらどうします?」
「1年に1度?」
「そう、1年に1度。」
そう言うハボックにロイは意外そうに言い放った。
「お前は1年も私を放っておけるのか?」
そう言われてハボックは目を瞠る。
「どうなんだ?」
薄っすらと笑みを浮かべるロイを見つめてハボックは苦笑した。
「ムリっスね。」
「大体1年も放っておくなら忘れてやる。」
尊大な態度でそう言い放つロイをそっと抱きしめて。
「せいぜい忘れられないように努力します。」
「そうしろ。」
楽しそうに言うロイと啄ばむようなキスを交わす。
サーサーと、微かに雨の降る音が世界を包む、そんな午後。
2006/7/7
ロイハボ七夕ネタに比べて随分あっさりな出来になっちゃいました。でも、私のハボロイのイメージって結構こんな感じなんですよね。エチを期待されてた方が
いらっしゃいましたら期待はずれでごめんなさいデス。