Snowy Christmas


「駄目っスね、全然やむ気配がないっスよ」
 バタンと扉が開く音がして、小屋の中に冷たい空気が流れ込む。ハボックは足で扉を急いで閉めると、腕に抱えた薪を小さな暖炉の近くに置いた。
「寒くないっスか?」
 ハボックは窓辺に立っているロイに近づきながら尋ねる。見えるのは横殴りの雪ばかりだろうに、熱心に外を見ている細い体を背後から抱き締めた。
「何か見えるんスか?」
「いや、何も見えないな、雪ばっかりだ」
 返ってきた予想通りの答えにハボックはロイの髪に顔を埋めて申し訳なさそうにため息をつく。降ってきたため息にロイはクスリと笑って言った。
「天気が悪いのはお前のせいじゃないだろう?」
「そりゃそうっスけど」
 ロイの言葉にハボックは答える。せっかくのイブなのにと背後でボヤくハボックが唇を子供のように尖らせているであろう事を想像して、ロイは笑みを深めた。
 奇跡的にクリスマスに休暇が重なったのを利用して、ハボックとロイは郊外にあるリゾート地に来ていた。近くの湖が綺麗だと聞いて散歩に出た二人は、せっかくだからと足を延ばした帰り道、突然変わった天候に足止めを食らって通りかかった小屋に逃げ込んだのだった。
「本当なら今頃ホテルでディナーだった筈なのに」
 ハボックはそう言ってロイの髪にため息を吹き込む。
「オレがもう少し先まで行こうなんて言わなけりゃ」
 と、すっかり萎れてしまったハボックの腕をロイは叩いた。
「お前だけが言った訳じゃない、私も行こうと言ったんだから」
 そう言われてもハボックはしょげ返ったままだ。ロイはハボックの腕から抜け出すと暖炉に近寄り拾い上げた薪を放り込んだ。
「湖の管理用の小屋っスかね?」
「そうだろう、見つけてくれて助かった」
 刻々と強くなる雪の中、ホテルまでの距離が永遠のように思えた時、ハボックが木立の中に立つ小屋を見つけたのだ。一時避難させて貰おうと入った小屋は、時折使われているのか手入れがされており、小さな暖炉と薪までが用意されていた。
「寒いっスか?もう少し火を大きくする?」
 薪をくべるロイを見てハボックが尋ねる。ロイは首を振って暖炉の側に座り込んだ。
「いや、側にいれば大丈夫だ」
 ロイがそう答えると、ハボックはロイの隣に腰を下ろす。何度目かのため息を漏らすハボックをロイは睨んだ。
「いい加減にしないと殴るぞ」
「でも、イブにこんな風に休みが重なるなんて滅多にないじゃないっスか。それに日頃忙しいアンタにゆっくりして欲しかったのに」
 家で過ごそうと言ったロイに休みを利用してここに来ようと提案したのはハボックだ。
「それなのにこんな寒くて固い床に座らせてるなんて」
 ごめんなさい、とうなだれるハボックにロイは僅かに目をみはる。それからフッと笑ってハボックの肩にもたれかかった。
「別に場所が何処だろうが関係ない。お前がいるところなら何処だって私には暖かい安らぐ場所だ」
「大佐」
 滅多に気持ちなど口にしてくれないロイの意外な言葉にハボックは目をみはる。寄りそう温もりが愛しくて、ハボックは肩にもたれかかってくるロイの体を腕の中に抱き締めた。
「ハボック」
「それ、クリスマスプレゼントっスか?」
「なにがだ?」
「だってアンタがそんな風に言ってくれるなんて」
 嬉しいと抱き締められてロイは目を見開く。それからからかうように言った。
「随分安上がりなクリスマスプレゼントだな」
「アンタの言葉はオレにとって値が付けられない位価値があるっスから」
 混ぜっ返すように言ったつもりが素直に返されてロイは顔を赤らめる。抱き締めてくる腕に赤らんだ顔を埋めてロイは言った。
「ならもっと言ってやろうか?」
「え?」
「……好きだ、何時までもこうして側にいて欲しい……」
「大佐っ」
 囁かれる言葉にハボックは腕の中の顔を覗き込む。見つめてくる空色を見返してロイは言った。
「クリスマスだからな」
 紅い顔で、それでも目を逸らさずに普段口にする事のない言葉を言うロイにハボックは嬉しそうに笑った。
「ずっと側にいますから」
 ハボックはそう言ってロイに口づける。何度も何度も口づければ、ロイの唇から零れる吐息が温度を上げていった。
「大佐……好き」
 キスの合間に囁いて、ハボックはロイの上着のボタンを外す。シャツの裾から手を滑り込ませ滑らかな肌を撫でた。
「ハボック……アッ!」
 肌を滑るハボックの指に胸の突起を摘まれてロイはビクリと震える。ハボックは指先でクリクリと乳首を何度もこね回すと、その手をそのままロイの背に滑らせた。背骨に沿って手を滑らせボトムの上から双丘の狭間を撫でながら、もう一方の手でロイのボトムを緩めた。そうして今度はボトムの中に忍ばせた手で双丘を直接撫でる。形の良い尻を揉むように撫でるとロイが甘い吐息を吐き出してハボックに縋りついた。
「あ……んふ」
 吐息を吐き出す唇をハボックは己の唇で塞ぐ。それと同時に尻を撫でていた手を下に滑らせ、狭間で息づく蕾に指をねじ込んだ。
「んんッ!!」
 潤いの足りない蕾にねじ込まれロイは震えながらハボックにしがみつく。それでも抵抗せずにいれば、ハボックの太い指が慣らすようにグチグチと蕾を掻き回した。
「んふぅッ!ンッンッ!!」
 僅かに痛みの伴うそれにロイは涙を滲ませて震える。やがて蕾が緩やかに息づき花びらを開けばロイの吐息に甘さが滲んだ。
「大佐……腰上げて」
 僅かに唇を離してハボックが囁く。言われるままロイが腰を上げれば、ハボックはロイのボトムを下着ごと器用に片手で剥ぎ取った。
「ハボック」
 小さなランプと暖炉の焔だけが光源の小屋の中、ロイの白い下肢が艶めかしく揺れる。ハボックは沈めていた指を抜き去ると己を取り出しロイに脚を開かせ腰を跨がせた。
「大佐……」
 ハボックはロイを見つめながら細い腰を引き寄せる。ゆっくりと引き下ろした体の奥の蕾に楔の先端が触れた瞬間、反射的に逃げようとした体をハボックは強引に引き寄せ一気に貫いた。
「アアアッッ!!」
 ズブズブと押し入ってくる牡にロイは目を見開いて背を仰け反らせる。一息に根元まで埋め込んだ楔を、ハボックは今度は入口まで引き抜き再びガツンと突き入れた。
「ヒィッ!ヒィィッッ!!」
 ガツガツと容赦なく突き上げられてロイの躯が跳ねる。嬌声を上げる唇をハボックは噛みつくように塞いだ。
「ンンッ!ン―――ッッ!!」
 強烈な快楽を逃す術を奪われて、ロイは涙を流しながら身悶える。ガツンと最奥を抉られ、ロイはガクガクと震えた。ハボックの肩に掴まるロイの指に白くなるほど力が入る。再びハボックの楔が最奥を貫いた瞬間、ロイは目を見開いて絶頂に達した。
「―――ッッ!ッッ!!」
 上げる悲鳴すら奪われてロイはガクガクと震える。その直後、体の奥底を熱く焼く熱にロイは背を仰け反らせて意識を手放した。


 パチパチと薪のはぜる音にロイはゆっくりと目を開ける。気がつけば乱れた服はきちんと直され、ハボックの厚い胸に頬を預けていた。
「大佐?」
 僅かに身じろぐロイに頭上から声が降ってくる。顔を上げれば暖炉の焔を映す空色がロイをじっと見つめていた。
「メリークリスマス、ハボック」
 笑みを浮かべて囁けば、僅かに見開いた空色が笑みに解ける。
「メリークリスマス、大佐」
 そう答えた唇が降りてきてロイのそれを塞いで。
 雪に降り込められた小屋の中、暖炉の灯りにゆらゆらと照らされて、二人だけのイブの夜は静かに更けていった。


2011/12/24


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


どんな場所でも二人きりならそれだけで幸せかなぁと。