四月馬鹿


「ハボック、大事な話があるんたが」
執務室で書類に向かっていたロイはコーヒーを差し出すハボックに言った。
「なんスか、突然。」
ハボックはそう言うとロイの次の言葉を待つ。その空色の瞳をじっと見つめるとロイは言った。
「もう終わりにしないか?」
唐突なロイの言葉にハボックは僅かに目を見張ったが、フッと微笑むと答えた。
「いっスよ、アンタがそう言うなら。」
「えっ?」
「まあ、今すぐ部屋見つけるのはいくらなんでもムリなんで近日中に探すとして、オレ、今夜からホテル泊まり
 ますから」
ハボックはそう言うとにっこり笑った。
「今まで有難うございました。これからは部下の一人として大佐の役に立つよう頑張りますんで。大佐も新しい
 彼女とお幸せに。」
「え、あ…ちょっと、ハボック…」
じゃあ失礼します、と執務室を出ていく背中に為す術もなく手を伸ばして、ロイは呆然と閉じた扉を見つめた。
今日は4月の初めの日、いわゆるエープリルフールというヤツだ。この日につく嘘は冗談ですまされると、
ちょっとハボックを慌てさせてやろうと、ロイは別れ話を持ち出した。だが返ってきた答えはロイが期待していた
ものとはかけ離れていて。
「うそだろ…。」
ぼそりと呟いた途端、ロイはガタンと椅子を蹴たてて立ち上がった。扉に向かって突進するとそのままの勢いで
扉を開け放つ。
「ハボックっ!!」
怒鳴りながら辺りを見回しハボックがいないのに気付くとブレダに向かって喚いた。
「ブレダ少尉!ハボックを何処へやった!?」
目を釣り上げてそう怒鳴る上司をうんざりした顔で見やって、ブレダは答えた。
「ハボックならこの間の爆発事故の現場の復旧状況確かめに行きましたよ。今日はもうこっちには戻ってこない
はずです。」
「少尉のアパートに戻ってくるのか?」
当たり前のようにそう聞いてくるロイにブレダは軽い頭痛を覚える。
「ハボの家は大佐んトコでしょ。」
なんでオレんとこに帰ってくんだよ、とぶつぶつとぼやいたブレダはロイを軽く睨むと尋ねる。
「また喧嘩ですか?」
「喧嘩というか何と言うか」
ロイは困ったようにぼそぼそと呟くと事の経緯を話す。最初は黙って聞いていたブレダだったがロイが話し
終わる頃にはうんざりとした顔になっていた。
「はっきり言わせて貰いますけどね、大佐、馬鹿じゃないんですか?」
「う…」
「もしうちに来たら大佐んトコ帰れって言いますけどね。」
付き合いきれませんよ、と言われて、ロイはうなだれた。
「だが普通いきなり別れようと言われたらビックリして理由くらい聞かないか?」
「知りませんよ。」
冷たくあしらわれてロイは口をつぐむ。
「と、とにかく急いで探して…」
ロイがそう言い掛けた時、背後で冷ややかな声がした。
「マスタング大佐、お願いしておいた書類はもう出来上がってますでしょうか」
その声にロイが恐る恐る振り向くと、ホークアイが冷ややかな目でロイを見ていた。
「中尉、私はちょっと急ぎの用事が…。」
「書類が出来たらお帰り頂いて結構です。」
「いやだが、一刻を争うんだが…。」
「大佐。」
ジロリとホークアイに睨まれて、ロイはすごすごと執務室に戻ったのだった。

ホークアイの監視の下、必死に書類を片付けたロイだったが、それでも司令部の建物を出た時には9時を
回っていた。出る前にブレダの家に電話してみたがハボックは来ていなかった。片っ端からホテルに電話
で問い合わせてみたがハボックらしき人物が泊まっている様子はなかった。ロイは以前ハボックが住んで
いたアパートの辺りに行き、それからハボックの小隊の連中が多く入っている独身寮界隈を捜し回る。
最後の望みをかけて捜し回った酒場にもハボックの姿を見つけることは出来なかった。ロイはとぼとぼと
家への道を歩きながらため息をついた。もうすぐ日付が変わる。明日になってしまったら嘘が嘘でなくなって
しまう。ロイは馬鹿な嘘をついた自分を心底呪った。
「ハボック…」
そう呟いた時、自宅の玄関先に辿り着いたことに気付いて、鍵を開けようとロイは俯いていた顔を上げた。
「っ?!」
途端目に入った窓から零れる暖かい灯りにロイはドアノブに飛び付くとガチャガチャと鍵を開け、家の中に
飛び込む。
「ハボックっ!」
慌ててリビングに駆け込めばソファーに座ったハボックが読んでいた本から顔を上げてにっこりと笑った。
「遅かったっスね、どこ行ってたんスか?」
「おま…っ、どうしてここにっ」
「どうしてって、ここ以外にオレがどこに帰るって言うんスか?」
そう言って首を傾げるハボックにロイはがっくりと膝をついた。
「だがお前、出ていくって…」
「アンタがしょうもない嘘つくからでしょうが。」
ハボックの言葉にロイはハッとして顔を上げる。
「気が付いて…」
「伊達に今まで付き合ってた訳じゃないっスよ?」
そう言って笑うハボックの襟首を掴むと、ロイはハボックの首下に顔を寄せた。
「どれだけ捜し回ったと…っ」
「オレが悪いんスか?」
軽く睨まれてロイは口をつぐむとフッと息を吐き出す。
「私が悪いんだな。」
「もう、ああいう心臓に悪い嘘はごめんです。」
「悪かった…」
ロイはそう呟くとハボックをそっと抱き締めた。
「抱いても?」
殊勝な顔つきでそう聞いてくるロイにハボックはくすりと笑う。
「らしくないっスよ、たいさ…」
「…そうだな。」
顔を見合わせて小さく笑い合うとゆっくりと唇を重ねていく。ついばむような口付けがすぐさま貪るそれに
変わり、ハボックはソファーに押し倒されていた。
「あっ…んっ」
いつになく乱暴にまさぐる手のひらにハボックの息があがる。気が付けばシャツははだけられ、ズボンは
下着ごとはぎ取られていた。
「たいさっ」
性急なロイの様子にハボックが声をあげる。
「すまん、余裕がない。」
そう言った途端蕾に指を差し込まれて、ハボックは悲鳴を上げた。
「ひっ!やっ、待っ…」
ぐちぐちと乱暴にかき回されてハボックは切れ切れに悲鳴を上げる。指を抜かれてホッとしたのもつかの間、
脚を高く抱え上げられ熱い塊を押しつけられた。反射的に身を硬くした瞬間、ぐっと押し入ってくるソレに
ハボックは息を飲んだ。
「あっ…いっつぅ…っ」
ろくに解していない蕾は強引な挿入に快感よりも痛みを覚える。だが、ロイの形を散々に教え込まれている
ソコは、押し入ってくる熱い塊を従順に迎え入れた。
「あっ…ああっ」
「ハボック…っ」
熱っぽいロイの囁きに薄っすらと目を開ければ欲に濡れた黒い瞳がハボックを見下ろしていた。ずんと突き
上げられてハボックは背を仰け反らせる。
「あっ…あうっ…ひあっ…た、いさぁ…っ」
ガンガンと突き上げられて綻びていく蕾はハボックの体を快楽に染めていく。ハボックはロイの首に腕を
まわすと唇を寄せていった。
「ふっ…たい、さっ」
キスを強請るハボックの仕草にロイは小さく笑うと唇を合わせる。舌を絡めあいながらもズンズンと突き上げ
られてハボックは溜まらず熱を迸らせた。
「アッアア―――ッッ!!」
熱を吐き出す共に締め付けてくるのに逆らわず、ロイもハボックを追うように滾る熱をハボックの中へと吐き
出す。身のうちを焼き尽くす熱い飛沫に、ハボックはびくびくと体を震わせながらロイにしがみ付いた。
「あっあはあっ…イ、イイ…ッ!」
熱い吐息を絡ませて互いの唇を貪りながら、2人は更に激しく互いを求め合うのだった。


2007/3/29

ハボロイ版と同じ始まりで違う方向に持っていってみましたー。って両方読んでなきゃ判らないですね(苦笑)だからロイってばその嘘は
キツイって。私は単純なのですぐ騙されてしまいますがきっとロイハボのハボならこんなロイの嘘はお見通しだろうと。つか、ロイが自分から
ハボを手放すなんてよっぽどのことがない限りありえないですね(笑)そんなわけでロイハボ版エープリールフールネタでしたー。