さとうごろも


「うーん、どうしようかなぁ…。」
ハボックはカレンダーを見ながら呟いた。今日は3月10日。世間一般でホワイトデーと呼ばれるイベントは
4日後だ。
「バレンタインデーに一緒にチョコレートケーキ作ったしなぁ、あげてると言えばあげてるんだよね…。」
だがきっとロイは期待しているに違いない。何しろ今年はロイもハボックにチョコをあげようと悪戦苦闘したのだ。
結局は上手に作れずいじけてしまったのだが、上手くいこうが行くまいが、ロイにとってはその実績はしっかり
カウントされているはず。
「あげなかったら絶対ヘソまげるよね。」
とはいえ、バレンタインに一緒にケーキを作ってしまったので、またケーキというのも気が引ける。
「でも、薄給のオレが高給取りの大佐にプレゼントあげるのも…」
ハボックがうんうん唸りながら悩んでいると、整理しかけでラックに突っ込んである写真の束が目に入った。
何の気なしにそれを取り上げて中の一枚に目を留める。
「ちょっと季節はずれだけどリベンジしたがってたし、コレにするか。」
ハボックはそう言うと腕まくりをしながらキッチンへと入っていった。

ホワイトデー当日。
ロイは朝から落ち着かなかった。今年のバレンタインは頑張った。恥ずかしい思いをして手作りチョコセットを
買い、レシピと奮闘しながら初めてチョコを作った。結局は失敗してゴミ箱に食べさせてしまったが、幸いにも
袋に纏めてゴミ箱に放り込んでいたのをハボックが発掘し、無事ハボックの手元に届けることも出来た。
バレンタインデーに一緒にチョコレートケーキを焼きはしたが、自分の努力は報われてしかるべきだ。
だがしかし。
「ハボックなら『一緒にケーキ作ったじゃないっスか』などと言いかねんな…。」
それならまだいい。
「もし『あんな失敗作のチョコ、プレゼントになんてカウントされませんよ』なんて言われたらどうしよう…。」
一生懸命作ったものの白茶けてしまったチョコを、だがハボックは美味しそうに食べてくれた。
「それとも、『もう付き合う気はないのでお返しはありません』なんてことになったりして…。」
冷静に考えればどれもハボックの行動パターンには当てはまりそうもないことばかりなのに、尋常さを欠いた
ロイの思考はおかしな方ばかりに向いてしまう。ロイはソファーの上にごろごろと転がりながらああでもない、
こうでもないと考えを巡らせるのだった。

「あー、アレ、期待しつつも不安…ってとこだね。」
ハボックはリビングの入り口からそっと中を覗いて呟いた。クッションを抱きかかえながら天井を睨みつける
ロイの姿にくすりと笑うとハボックはリビングへと入っていく。途端に身を硬くするロイにハボックは手にした
箱を差し出した。
「たいさ。この間はチョコ、有難うございました。これ、オレからのお返し。受け取ってもらえますか?」
にっこり笑って差し出せばロイは目元を染めて手を伸ばした。
「仕方ないな、貰ってやる。」
素直でないことを言って、それでも嬉しそうに受け取るロイにハボックの心がほわりと暖かくなる。箱のリボン
をほどいて蓋を開けたロイの目がまあるく見開かれた。
「オレ達の愛の巣。作って下さいね。」
語尾にハートマークが見えるような甘ったるい声で言ったハボックがくれた箱の中には。
ジンジャークッキーハウスを作るためのクッキーのピースが入っていた。

「クリスマスに上手く作れなくてリベンジしたがってたでしょ。コレ、この家をモデルに作ったんで、上手に
 作って下さいね。」
ハボックに言われてロイは箱の中からクッキーを取り出した。確かにクリスマスの時、ロイがたまたま
貰ってきたジンジャーハウスクッキーのキットをせっかくだからと作っては見たものの、力の入れすぎで
クッキーを割りまくってしまったのだ。
「今回はクッキー、長く乾燥させたから結構丈夫だと思うんですけど。」
ハボックの言葉にロイはクッキーを軽く叩いてみた。コツコツと叩いてみると乾いた硬い音がする。
「これ、この家って言ったか?」
「そうっスよ。愛の巣。」
クッキーを持っていないほうの手で思い切りハボックの頭を殴れば、ハボックがいてぇと情けない声をあげた。
ロイはそんなハボックを放っておくと、箱の中から次々とパーツを取り出した。
「よし。」
失敗したままでは自分で自分が赦せない。ロイは腕まくりすると早速糊にするための砂糖と卵白を取り出す。
「レシピより硬めに作った方がよかったよな?」
「そっスね、あん時は柔らかすぎたから。」
上手くくっつかなくて力を込めるうち、パキンと割れてしまったクッキーは本当に切なかった。
「今度こそ上手く作ってやるっ!」
「そうしないと住む家なくなっちゃいますしね。」
嫌なことを言うハボックを睨みつけて、ロイは並べたクッキーのパーツを一枚取り上げる。そうして糊を付け
ながら家の壁を作っていく。
「手伝いましょうか?」
「いい。お前は他の事でもしてろ。」
ロイは真剣な表情で手元を見つめながら答えた。ハボックはくすりと笑うとキッチンへと行き、コーヒーを
落とし始める。だが、いくらもたたないうちにロイの呼ぶ声がしてハボックはリビングへと入っていった。
「ハボック、手が足りない。」
今ひとつ付きが悪い為クッキーを押さえているらしいロイに言われて、ハボックは「はいはい」と一緒に
クッキーを押さえてやる。
「お前、手がでかいんだから押さえていられるだろう。」
ロイは勝手なことを言うと押さえていた手を離してしまうので、ハボックは慌てて他のところも押さえなくては
ならなかった。
「ちょっと、たいさぁ」
「うるさいな、しっかり持ってろ。」
ロイはそう言うと他のパーツに糊をつけ始める。そうして次々とクッキーを繋げていくと、最後に屋根の上に
煙突をくっつけた。
「よーし!後は飾りつけだな。」
「たいさ、オレ、いつまで押さえてればいいんスか?」
最初は手出し無用のようなことを言っておきながら、結局半分はハボックに手伝わせている。しかもロイの
方が美味しいトコどりな気がするのは気のせいではないだろう。
「乾くまでに決まってるだろう。」
平然と酷い事を言って、ロイはコーヒーの香りに引かれてキッチンへと行ってしまった。
「なんか間違ってないか…?」
どうにも納得いかないままそれでも律儀にハボックがクッキーを押さえていると、ロイがコーヒーのカップを
2つ持って戻ってきた。
「ほら、お前の文も注いできてやったぞ。」
「有難うございます。」
とはいえ、両手が塞がっている状態で、とてもカップなど持てるはずもない。
「たいさぁ、コーヒー飲めないんスけど…。」
「文句の多いヤツだな。」
ロイは眉を顰めるとコーヒーのカップと手に取った。口元につけてくれるのだろうとハボックが待っていると、
ロイはそのカップに口を付け一口含むと。
「…っっ!!」
「ん…」
合わせたロイの唇から流れ込んできた暖かい液体に、ハボックは目を瞠った。唇を離して、だが何も言わない
ハボックにロイは首を傾げる。
「なんだ、足りないのか?」
ロイはそう言うともう一口含んでハボックと唇を合わせた。流れ込んでくる液体にハボックの頭の中でプツンと
何かが切れる音がして。
「うわっ?!」
気がついた時にはロイはハボックに床に押し倒されていた。
「なっ…?ハボックっ?!」
「たいさっっ!!」
「バカっ、手、離したら…っ…んんっっ」
床に押さえ込まれたまま強引に唇を塞がれる。コーヒーの香りのする舌先にきつく己の舌を絡め取られてロイは
呼吸もままならずにもがいた。
「ちょ…っハボっ…な、にを…っ」
組み敷かれて瞬く間に服を剥ぎ取られて素肌を弄られる。ロイは突然その気になってしまったハボックについて
いけずにジタバタと暴れた。
「なにすんだ、バカ…っベタベタした手で触るなっっ」
クッキーを押さえていた為にハボックの手はベタベタだった。その手でくりくりと乳首をこね回され、その妙にベタ
ついた感触がいつもと違う感覚をロイにもたらす。
「あっ…いやっ」
乳首がハボックの指に妙に張り付く感じで、離れる時も僅かに引かれる感じがする。ねちねちと散々にこね
回した挙句、ねっとりと舌を這わされてロイはふるふると首を振った。
「や…やだっ…ハボっ」
「甘い…大佐のここ、すげぇ甘いの。」
「お前がそんな手で弄るからだろうっ」
ぺろぺろと舐めまわされて、ロイは胸をそらせて喘いだ。
「おいしい…」
「ばか…っ」
ハボックは悶えるロイの乳首を散々に舐めたり吸ったりしていたが、ようやくソコから唇を離した。体を起こして
ロイの顔を覗き込めば、目元を朱色に染めてとろりとした表情で宙を見上げている。そんなロイにぞくりと体を
震わせると、ハボックは立ち上がってボウルに入れてあった糊用のグラスロワイヤルを取り上げた。それを
とろりとロイの胸や腹、そしてすっかり立ち上がってとろとろと蜜を零す棹にもかけていく。
「ひ…っ」
冷たい感触にぞくりと身を震わせるロイを押さえつけると、ハボックは垂らしたグラスに舌を這わせていった。
「コレ、白いから妙に卑猥ですね…」
くくっと笑うハボックをロイは熱に潤んだ瞳で睨みあげる。
「このっ…ヘンタイ…っ」
「でも気持ちいいデショ?」
意地悪くそう聞かれて、反論することも出来ずロイはぎゅっと目を瞑った。ぐいと脚を押し開かれそそり立つ棹を
ぺろりと舐めあげられて思わず腰が跳ねる。
「ひぅっ」
「たいさの蜜とグラスが混じってて…ヤラシイ…」
くすくすと笑うハボックの吐息がロイを刺激して先端からとろりと蜜が溢れ出た。
「いつも甘いけど、今日はまた一層…」
あまくておいしい…と囁かれて、恥ずかしさのあまりロイの瞳からぽろりと涙が零れる。ひくっとしゃくりあげる
ロイ自身を咥えこむとハボックはじゅぶじゅぶと唇で擦りあげた。
「んっ…あ…ぅふっ…」
喉奥で締め上げ袋を指先で揉んでやるとロイの体がブルブルと震える。唇から零れる吐息が熱さを増し、ロイは
焦点の合わない目を開いた。
「あっ…ハボ…でるっ」
ロイがそういった途端、びゅるりと熱が迸る。ハボックは吐き出されたそれを全て口中に受け止めるとごくりと
喉を鳴らして飲み込んでしまった。舌先で棹を綺麗に舐め取ると体を引き上げてロイの頬を撫でる。
「すげぇ、美味かったっスよ…」
あまくて、と囁かれてロイは真っ赤になった。そんなロイの蕾に指を這わせると、ハボックはつぷりと中へ差し
入れた。
「あっっ」
途端に強張る体をそっと抱きしめて、ぐちぐちとかき回す。もう1本指を増やし、中でバラバラと動かせばロイの
唇から熱い喘ぎが零れた。熱に浮かされたその表情にハボックはもう我慢がきかなくなる。乱暴に指を引き
抜くと滾る自身を取り出し戦慄く蕾へと押し当てた。そうしてぐっと一気に押し入れば、ロイの唇から嬌声が
上がった。
「アッ、アア―――――ッッ!!」
ずぶずぶと押し入ってくる熱い塊に敏感な粘膜を擦られる快感にロイは射精してしまう。ハボックは2人の間に
吐き出された熱を、先にロイの体に垂らしたグラスと混ぜるようにしてロイの体に塗りたくった。そうして指に
残ったそれをロイの口の中へとねじこむ。
「ぅん…んっ」
無理矢理に味わわされるそれに、ロイが微かに首を振った。だが、ハボックは差し入れた指でロイの舌や歯列
を思うままに蹂躙しながら、一方でロイの最奥を乱暴に突き上げる。
「んんっ…ん――っ」
「美味いでしょ…?」
上下の口を犯される快感にロイの意識が朦朧としていく。ロイは幾度となく熱を吐き出さされながらハボックの
与える快楽に溺れていった。

「はい、できた。」
ぐったりと横たわるロイに睨まれながらハボックはなんとかジンジャークッキーハウスの最後の飾りを取り
付ける。途中でほったらかしにされていたそれはかなり歪んでしまっていた。
「…また失敗したじゃないか…っ」
怒りに震える声でそう言うロイにハボックは答える。
「あー、でもオレの気持ちはたっぷり味わってもらえたでしょ?」
そう言ってへらりと笑うハボックに、ロイはグラスロワイヤルが入っていたはずのボウルを思い切り投げつけた
のだった。


2007/3/13


ホワイトデーというよりクリスマスみたいな話ですがーーーっっ!だってだって適当なケーキが思い浮かばなかったんだもんっっ。しかもなんか
ヘンタイプレイになってしまったしorz バレンタインデーネタと同じくえっちはなしでいこうと思っていたのに…!
こんはしょもないホワイトデーネタでスミマセンです(滝汗)